遅
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ゴソゴソ。
なんでしょ。 娘さん1号がベッドの上で蠢いています。 「あ。」 嫌な予感がします。 慌てて時計を覗き込むと、午前7時55分です。 頭の中で色々なことを考えてみます。 考えてみます。 考えてみます。 とっても考えてみます。 今、ボクはベッドの上で時計を見ています。 そして我が職場の出勤時間は、たしか午前8時がリミットです。 人間、究極的な場面に出くわすと思わず笑っちゃうんだってことに気付きました。 それこそ急げばなんとかなるっていう時間じゃありません。 確定です。 もはや覆すことの出来ない事実です。 泣いても喚いても、見事なまでに、ぐったりするくらいの遅刻です。 どんなにあがいても、間に合うはずがありません。 扉の向こうが、指導員室に繋がっていたとしても、 着替えをしている間にタイムリミットです。 あぁ、目覚まし時計よ。 どうして君はそこに黙って佇んでいるんだい? どうして君はボクに反抗的な態度を見せるんだい? 無機質な物体に話しかけるほど、壊れてるわけじゃありません。 まずは一服といきましょう。 そして職場にTELをしておきましょう。 それが社会人のマナーです。 それが大人のモラルです。 その前に社会人として、大人として、ちゃんと早起きしたいものです。 TELで1時限目の遅刻は宣言しておきました。 二輪担当だったのですが、先輩指導員にHELPも頼んでおきました。 上司の余りにも冷酷な言葉で目も覚めました。 先輩指導員の受話器の先のとっても楽しげな笑い声で、 ボクもなんだか楽しくなってきました。 さあ、出勤準備を始めましょう。 時間にゆとりがあるっていうのは、非常に心が和みます。 ただ残念なのは、時計の短針が1時間ほどずれていること。 もうこの際、のんびりさせてもらいましょう。 それ、出勤だ。 職場に着くと、皆、ピリッとした顔で働いています。 なかなか活況があっていいことだと思います。 そんな中をまるで社長のように威風堂々とタイムカードを押すべく事務室にログイン。 よし。 誰もコチラを見てません。 今のうちにそれっ! 「ガッシャン!」 古いタイムカードは嫌いです。 物凄い音がします。 一斉に、デスクワークに励んでいた事務員達がボクを見てます。 「おはようございます。」 なにごとも朝の挨拶が肝心です。 皆、笑顔で挨拶を返してくれました。 いい職場です。 挨拶が出来る職場って。 ただ、なんだか笑顔っていうよりも、ニヤニヤって感じだったのが気になるけど、 上司だけは、目すらあわせようともしてくれなかったけど、 まぁいいや。 さぁ、今日も1日が始まります。 がんばって働きましょう。 1時限目を終え、指導員たちが指導員室に戻ってきます。 皆、笑顔です。 とっても笑顔です。 嫌になるくらいの満面の笑顔です。 ボクのことを、 「社長、おはようございます!」 なんて言ってくれる人もいます。 よせやい。 照れるだろう。 ボクはそんなに偉くはないよぅ。 もう、これでもかっ!っつーくらいの嫌味をありがとう。 なんだか1年分の嫌味を言われた気分デス。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 明日から気をつけます。 |