16の春



「朗報! 今なら通常の○万円引き!」

「奥様! 空いてる今がチャンスです!」

「今ならすぐ取れます! ○日間で卒業可!」


そんな新聞折り込み広告がボチボチ出回ってきそーな気配が漂ってきた今日この頃、
教習所閑散期突入直前ですが、まだまだ予約は埋まっています。



普通二輪担当。
午後の教習、受け取る原簿を見ると、
とにかく16歳16歳16歳16歳16歳16歳16歳16歳16歳16歳16歳16歳。
もう、これでもかっ!っつーくらいに16歳ばっかり。
よくもまぁ、これだけ集めたねっつーくらいに16歳ばっかり。
進路相談室でも始めた方がいいんじゃないかっつー勢いの16歳大集合デス。

16歳じゃ当然車の免許を持ってるはずもないので、
なかなかクラッチっつーシステムに対する理解や、右足でリアブレーキをかける習慣がないので、
どーしても規定時限枠をオーバーしがち。
元気だけはいいんだけど。

そんな中、T君(16歳・♂)を担当。
見た目は派手な格好、顔もなんだか30代がその顔色だったら完全に、
「肝臓が悪いんでしょ?」
って言われそーなくらい、日焼けサロンで焼いた風情の浅黒さ。
教習を始め立ての頃はニコニコ楽しげにやっていたものの、
自分の進度の遅さが目立つようになってきた頃から、
段々と不貞腐れ気味になってきた。
今日なんかそりゃーもう、完全なブンムクレ状態。

不貞腐れることがどれだけ自分の首を絞めちゃうか、彼はわかってません。
コチラ側は、ちゃんと出来てさえいれば喜んで押印するのデス。
そんな不貞腐れ君は放っておいて、もう1人の生徒の方へいっちゃいましょ。
それでも遠目で見ていると、
発進は滞り、後方確認もしないで突然飛び出し、
ギアチェンジは出来ない、止まってみればエンストの嵐。
そのへんはまだいいや。
問題は、減速をまったくもってしよーとしないコト。
直線は遅いのにも関わらず、カーブになると途端にふっ飛ばす。

あーあ、全然コチラの言ってることを守ろーとしないんだねぇー。

はいはい、もう少しがむばってね。
ヒトの言うことはちゃんと聞くものダヨ。
そう思いつつ、原簿を返して教習終了。

自分の原簿を見て、ハンコが1つも押されてないのに気付いたのか、
半ばキレかかり気味で問いかけてくる。





「何をがんばればいいんだよ!」







全部。







そー言ってやろーと思ったが、
懇切丁寧にさっきも言ったことを二度手間と思いつつも、もう1度初めから説明。
果たして彼は理解してくれたのでしょーか。


不貞腐れればOKが出る、泣けばOKが出る、キレればOKが出る、
そんな甘いもんじゃございません。
世の中、自分の思ったとおりにコトが進むと思ったら大間違いデス。
少しずつ世の中の厳しさも理解してもらわなきゃいけない16歳の春デス。




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