トメキチさん(仮名)


あー、11月。
のえべんばー。
飲兵衛BAR。
今年も残すとこ、2ヶ月、実質労働日数も40数日ってとこでしょーか。
がむばってGO!


普通車担当。
我が校では、あらかじめ1日のスケジュールが前もって決まってるんですネ。
ドタキャンとか、予約の空きによるキャンセル待ち乗車を除いて。
で、今日の予定は特にイベントも無く、平和な筈でした。
平和な・・・。


3時限目開始の音楽が爽やかに流れる。

(あれ?)

我が担当車両に、なにやら見慣れぬ男性が。

(キャンセルで予定が変わったのかねー・・・。)

そー、思いつつ、原簿を受け取る。
原簿の色が違うぞ。
あ。
ペーパーのヒトだ。

「よろしくお願いしますっ!」

元気な初老の男性デス。原簿を覗き込む。



(し、昭和4年生まれデスカ・・・。)



72歳・・・。

もうそれだけでビックリなのに、72歳のトメキチ(仮名)さんは、
更に驚くべき言葉を元気に発したのデス。



「今日、高速道路を走りたいんです。」



え”っ。



高速デスカ・・・。
危ナイデスヨ・・・。
100km/hデスヨ・・・。
一蓮托生ナンデスネ・・・。
逝ク時ハ。



昭和4年、1929年。
時は大正の重苦しい空気を引き摺り、やがて向かう軍事国家への足音が。
張作霖爆殺事件の責任をとる形で田中義一内閣が倒れ、浜口雄幸内閣誕生。
北海道駒ケ岳が最後の大噴火、阪急百貨店が誕生。
早慶戦が初めて行われ、第1回モナコグランプリもこの年から開催。
NY市場で株の大暴落、やがて世界恐慌へ。
「アンネの日記」のアンネフランクや、向田邦子、オードリー・ヘップバーンがこの年、誕生。







トメキチさん(仮名)、もはや歴史上の人物デス。







トメキチさん(仮名)、平成の世に高速に!
なんでも40年振りの運転だとか。


なんだか、長くなりそーなので、つづく。

『トメキチさん(仮名) in the Highway編』は明日。



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で、72歳のトメキチさん(仮名)デス。
運転中、聞いてもいないのに、トメキチさん(仮名)は雄弁に話し始める。
なんでも、以前は車に乗ってたらしいのデス。


なんだー、トメキチさん(仮名)ってば、もぅ。
乗ってたこと、あるんですかぁ。
そーいう事は、最初にちゃんといってくださいよぉー。
まったくもぅ。





40年前だそーで。





あ。
どーりで、ぐちゃぐちゃな訳だ。

40年前って。

日本のモータリゼーションは始まってたんでしょーか。
そもそも日本の道路は舗装されてたんでしょーか。
まだ、馬車や人力車がメイン輸送方法だっつー話がチラホラと。


調べてみると、

トヨタ・パブリカ・、スバル360、三菱500、マツダ・R360クーペ、ニッサン・セドリック・30型、
トヨペット・コロナ、ダットサン・ブルーバード、トヨペット・コロナ、マツダ・ファミリア、
ダットサン・サニー、トヨタ・カローラ・・・。

こんなとこらしいデス。
当時の車は。
そうそうたる歴代の名車(旧車)っつー感じデス。



で、トメキチさん(仮名)、何が怖いかっつーと、

すぐに急ブレーキを踏むっつーこと。

後ろでドデカイ超大型トレーラーが、エアブレーキを、
プシュプシュと鳴らしています。
何度か嫌な汗をかきつつ、やっとこ高速入口の到着。
チケットを・・・。


・・・届かないし。


慌てて手の届かないトメキチさん(仮名)に代わって、
わしがチケットを車から降りて、ふて腐れたよーにもぎ取り、さぁ、れっつごぅ。

さぁ、加速車線デス。
本日1番の恐怖の、メインイベントデス。
トメキチさん(仮名)、加速だけは素晴らしいものを持っている模様。

グングンと上昇する速度計。
唸るエンジン。
さぁ、確認だ。トメキチさん(仮名)!
ミラーだけじゃなくて、目視も必要だよ!
さぁ、後続の様子はどう?
ダイジョーブだったら合流しちゃおー!!!


・・・・・。


確認する前に合流してどうする?>トメキチさん(仮名)


後続車が慌ててレーンチェンジ。
72歳とは思えない、とんでもない力でハンドルを離さないトメキチさん(仮名)からハンドルをぶん取る。
トメキチさん(仮名)は、ひたすら平身低頭。
謝りながら、急にアクセルオフ。
迫り来る後続車。
慌ててアクセルを踏ませる。
あー、補助アクセルが欲しいとこデス。


とりあえず。
とりあえず、本線車道に出れた。
あー、良かった、良かっ・・・。


トメキチさん(仮名)! 蛇行! 蛇行しまくりー!


まるでF1グランプリのウォーミングアップ走行みたい。
もう、タイヤは充分に温まってるから、真っ直ぐ走るべき!




・・・・・。




もういいや。
キリがないデス。
ずっとこんな感じでした。



とりあえず、なんとか教習所に戻ってこれたっつーことだけ報告しておきます。

その後に担当した62歳の所内のオジサマがすごく上手に見えたのは、
まさに気のせいデス。



うむ。
家族は止めないのだろーか?
いいのだろーか?
ホントーに。




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