馬の耳に念仏


Oさん(26歳・♀)、自主経路走行担当。
今まで何回か、教習を担当してきたOさん、
人当たりはいい感じ。
「いつもニコニコしてる」っつー印象を、わし、持っていたんですネ。

が、しかし。

どーやらニコニコは、何か自信の無さの裏返し&誤魔化しのニタニタだった模様。
聞いてみた。


「前回、どーでした?」

「全然、出来ませんでした〜♪ ニヤニヤ」

「(ハンコ押してあるぞ・・)どんな説明を受けました?」

「覚えてませ〜ん♪ ニヤニヤ」

「・・・・・。」


この時点で、Oさんのやる気の無さを感じたわし、
ちっとカチンと来たわけデス。


で、今日は自主経路。
基本的に、NO道案内デス。
だもんで目的地を指示し、あとは放っておいたんですネ。

ひとつめの交差点を曲がってから、早くもシドロモドロな運転のOさん。
50キロ制限の道でも20キロくらいでタラタラ走り、

「わからな〜い♪ わからな〜い♪」

を連発。
わし、しらんぷり。
ニコニコ顔のOさんの顔にも笑顔は消え、いつしか焦燥感が滲む。
本来、通過するはずの交差点を、右折しよーとして、
道端の電柱に思いっきり突っ込みそうになる。
わし、思いっきり補助ブレーキ。
それでもわしは黙ってた。
それ以来Oさん、笑顔は全く消え、
なにやら顔に何度も手を持っていくよーに。




「・・・・・。(・・・泣いてるのか。)」





別に、出来ない、失敗する、わからないっつーコトをどうこう言う気はないんですネ。
何が腹立たしかったかっつーと、
もう卒業を目の前にして、その緊張感の無さ、まるで他人事のよーなその態度に、
免許に対する安易さを戒めようとして、放っておいたんですネ。
自主経路とは言っても、そこそこの助言はしますヨ。
普通はネ。
きっとOさんにも家庭はあるはず。
その身内が、テキトーな運転をしている初心者に轢かれたらどんな風に思うのでしょーか。

「初心者だから仕方ないよ」

で、済むのでしょーか。
免許はあくまでも、「卒業証書」じゃなくて、「ライセンス」。
運転歴30年のヒトも、運転歴3日のヒトも、
要求されるものは同じなのデス。
初心者だから、「まーいいか」じゃ許されないんデス。


道端に停め、しばらく泣いてるOさんに、それを言おうかと思ったけど、
何も言わずに黙って待ちました。
こーいう状況では、何を言っても無駄だっつーのは今までの経験で知ってマス。
教習を終わる寸前に、軽く一言言っておいたけど、
きっと無駄に終わったんだろーなぁ。
次に担当した、適当で有名な指導員と、満面の笑みを浮かべながら路上に出て行ってたし。


いつも虚しくなる。
どこまでわしの想いを語っていいものか。
言ったところで、どこまで伝わっているのか。
単に喋り疲れてオシマイなんじゃないか。


「暖簾に腕押し」
「馬の耳に念仏」


そんな言葉が頭に浮かばずにはいられませぬ。




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