記憶に残る


『記憶に残る生徒』とは?

正直に言うと、





普通の運転をする生徒様は記憶に残らないわけで。





あ、勿論、これはわし個人の感じ方デス。



当校がランダム制っつーせいもあるのかもしれないのですが、
ひとりの生徒様を何時限も担当するっつーことが、あまりないんですネ。
だもんで、必然的に規定時限数をオーバーしてる生徒によく当たるわけデス。
つまるとこ、記憶に残りやすいっつー簡単な仕組み。

単純計算で、1日10人、月に22、3日の出勤日、それを12ヶ月、
それプラス複数教習もあるので、
年間3000人近くの生徒との接触がある訳デス。





覚えられないネ!





元々記憶力のいいほうじゃないし。


前の時限に担当した生徒様の名前すら忘れてる時もあるし。


わし、入社時に指導員の名前と顔が一致するまでに半年かかったニンゲンだし。


それだけの記憶力があるニンゲンだったら、別の仕事をしてますネ。




あとは珍しい名前の生徒様でしょーか。
覚えているのって。







「自分の事を覚えておいて欲しい」という欲望。



何も教習所だけでなく、それって誰もが持ってる自己顕示欲だと思うんですネ。

「認めてもらいたい」
「知ってもらいたい」
「忘れないで欲しい」

教室の机に自分の名前を彫りこむなんて一番解り易い例えでしょーか。
自分の名刺をばらまいてみたりとか。

この世の中、たった独りで生きていく事は、おそらく出来ないわけデス。
誰かと関わりあいを持ち、誰かと接触をして、そして誰かに認めてもらって、
初めて自分の存在価値を客観的に知り得る。
そしてホッとする。
あいでんてぃてぃーが保たれるって言うんでしょーか。


だもんで、生徒様がそー思うのは、間違いではないと思うんですけどネ。


でも・・・。

たった数ヶ月の教習所生活。
あくまでも自分の一生の中で、ほんのちょっと通り過ぎただけの教習所生活。
指導員の記憶に留めることに、それほどの意味を持たない気もするんですネ。
もっと濃密な関係が出来上がってるなら別だけど。


わしも、卒業生の方々に記憶に残っていて欲しいとはあまり思わないデス。
勿論、覚えていてくれたら嬉しいには違いないけど。
わしも自己顕示欲ムクムクの方だし。
ただ、わし自身が記憶に残らなくても、
わしが発した言葉の断片が、いつまでも記憶に残っていて欲しいとは思うんですネ。
ドラマのセリフのよーな訳にはいかないけど、


「どーいう言葉が記憶に残るのか」


「どーいう言葉が説教臭くなく、頭にこびりつくのか」


時々考えてみたりします。
それがその生徒の車に乗る上での幸せに繋がると信じて。
自己満足かもしれないけどネ。




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