昔、外国人などあまり来ないタイの田舎の食堂で炒飯(チャーハン)
を注文したときのこと。
炒飯(タイ語で、カーオパット)は、タイではどこでも食べられる
ごくありふれた料理と聞いていたので、バンコクから汽車で田舎に着
いたばかりの私は、とりあえずこれを注文してみたのだ。
「カオパッ」と言って席に座ったが、店の人はきょとんとしてこち
らを見ているだけだ。「カオパッ」と再び言って、手でライスを食べ
る仕草をしてみる。それでもまだ通じない。おかしいなと思って、と
うとう「カーオパッ!」とどなってみた。するとやっと通じたらしく、
店の人は笑いながら「カーオパッ、カーオパッ」と私のイントネーシ
ョンを直してくれた。
私はアクセントが単語の手前にくることが多い日本式のイントネー
ションで、つい「カオパッ」とやっていたわけだ。ところが正しくは
「カーオパッ」と後ろ上がりのイントネーションになるのである。
とくにタイ語は、この後ろ上がりの言いまわしが独特で、聞いてい
て耳にやさしい。
*寺小屋だより(1992春の号)