くらげのかみさま
あおいあおいうみのなかで
きれいなきれいなうみのなかで
ひとりのおんなのこがうかんでいました
おんなのこのなまえは「みずは」といいます
みずははうかぶだけでした
およぐことはできませんでした
なぜなら、みずはは
くらげたちのかみさまだからです
およげないみずはには
だれもさわることができませんでした
みずはもさわることができませんでした
なぜなら、かみさまだからです
いろとりどりのさかなたち
きれいにひろがるさんごたち
てをのばしてもとどきません
みずははうみをすきなようにあやつれます
でも、かれらにさわることはできませんでした
すきなところにいくこともできませんでした
とてもとてもながいじかんがたち
さびしくなったみずははなきました
くらげたちは、みずはをそんけいしてくれます
なぜならかみさまだからです
しっていることをおしえてくれます
なぜならかみさまだからです
でも、くらげたちは
うみのながれにさからえません
くらげたちのいのちのながさも
みずはがまばたきするあいだのものです
おなじくらげにあうことは
いくらみずはでもできませんでした
だれにもさわれない
だれにもさわられない
さびしくてないているみずはは
あるひめずらしいものをみつけました
それはうみのいきものたちとは
ちがうかたちをしていました
ちがううつくしさをしていました
あかいいろのなにかをながしながら
うみのそこへしずんでいきました
おなじものがたくさんたくさん
みずはのまえをしずんでいきました
くじらよりもおおきくておもそうな
とてもおおきくてかたいものが
たくさんのあわといっしょにしずんでいきました
くらげたちはいいました
「あれは、にんげんだよ」
「それはなあに?」
「よくしらないけど、こわいものなんだって」
「ふうん」
そういわれてみずはもこわくなりましたが
にんげんをまたみてみたいともおもいました
しばらくじかんがすぎました
さびしくてないているみずはのまえに
またにんげんがあらわれました
またちがうすがたでした
またあかいものをながしていました
またおおきくてかたいものもしずんできました
たくさんしずんでくるにんげんたち
めずらしいこうけいに
みずははうれしくなりました
そしておぼえました
おおきくてかたいものがしずめば
にんげんをみられるということを
うみのなかをただようのが
みずはにはたのしくなりました
にんげんといっしょにしずんでくる
おおきくてかたいものは
いつもすがたがにていたからです
さめともくじらとも
すがたがちがうそれは
とてもうみではめだちました
とてもかんたんにみつかりました
それをしずめることなんて
うみをあやつれるみずはには
とてもかんたんなのでした
くらげたちから「ふね」とよばれる
おおきくてかたいものをしずめると
にんげんもたくさんしずんできました
はやくしずめればそれだけたくさん
らんぼうにしずめればそれだけたくさん
おおきくてがんじょうなふねほど
たくさんたくさんにんげんがしずんできました
おどるようにしてしずんでくるにんげんたち
それをみてみずははわらいました
さびしくなくなりました
にんげんはいろいろなすがたをしていて
ひとつひとつがとてもたのしかったからです
みずははきょうもうみのなかで
ながれにまかせてただよいながら
くらげたちにあいされてただよいながら
ふねがとおるのをまっています
ふねをみつけるとみずははわらいます
くらげたちはそれをみてよろこびます
かみさまがわらった
かみさまがわらった
ぼくたちのかみさまがわらった
おわり
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