〜ドジなのは似てるかも〜
多田かおる「イタズラなKiss」
私はとっても‘ドジ’なヤツである。学生時代には‘おおドジさん’などと呼ばれた事もある。
ついこの間もコケて捻挫して、ひょこたんひょこたんと歩いていた。
娘の学校への提出物に、自分の名前を書いてしまうなんて、しょっちゅうだ。
つくづく、看護婦さんみたいに、失敗すれば取り返しがつかない職業につかなくって良かったと思う。
ところが、私よりも‘ドジの達人’琴子が、看護婦になっちゃっうのだ。
私が「イタズラなKiss」を知ったのは、たまたま見た佐藤藍子と柏原崇が出てた月8ドラマ。
めったにドラマなんか見ないのに、主人公琴子の‘ぶっとび’にはまってしまって、
ついに最終回まで見続けてしまった。
エンディングにデビューしたてのSPEEDが「Stead'y」を歌い、
どうも原作らしいきれいなイラストが映し出される。
よく行くレンタルビデオ店で貸本のコミックを見つけ、「あ、あのイラストだ!」。
レンタルで全部読んだのにかかわらず、今では本棚に全23巻そろっている。
それどころか、多田かおるの全作品、そろってしまった。
これ以上増える事はない。なぜなら、多田かおるは1999年に急逝してしまったから。
相原琴子が、天才しかも超美形少年(おまけに女ギライ)の入江直樹に
ひとめ惚れしちゃうのは、斗南高校の入学式。
だけどクラスは成績順で、直樹はA組、琴子はF組
(‘F’自体、落ちこぼれという意味があるらしい)。
3年になって最後のチャンスとばかりにラブレターを差し出すが、もののみごとに玉砕。
なのに、ひょんな事からその入江くんの家で同居するハメになってしまうのだ。
入江くんの‘女ギライ’には、トンデモナイわけがあり、それが彼の最大の弱み。
(何と彼のママが女の子欲しさに、息子にずっと女の子の格好をさせていたという・・・!)
相手の弱みをつかんで以来、物語はがぜん琴子のペースになっていく。
ここまでの展開はドラマも原作も変わらないのだが、エピソードもキャラも少しずつ違ってくる。
原作の入江くんは、どこまでもスマートに次から次ぎへと降りかかるトラブルに対処していくのに、
ドラマの入江くんは、実に人間的で、しょっちゅう「これでいいのか」と悩んでいる。
刺激を求めて万引きをやっちゃった、という過去を持っていたりする。
このへんで「ドラマの方はキライ、原作と全然違う」と、思うファンが多いようだ。
しかし、原作に忠実に入江直樹を実写で描こうとすると、ひどくつまらなくて雰囲気を壊すか、
ギャクになってしまうか、どちらかだと思うがいかがか。
ドラマから入った私には、どちらのキャラもエピソードもそれぞれ好きだ。
とにこかくにも、トラブルを乗り越えて琴子と直樹はめでたく学生結婚をする。
(コミックスでいえば10巻のこのあたり、何度読んでもぐっと来る、ナミダが出る。)
少女マンガの常識をやぶり、彼らが結婚した後もさらにお話は続いていく・・・。
そして、医者を志した入江くんの後を追って、大学の4回生というのに、琴子は看護婦を目指す。
琴子という人物は、実に楽しいキャラではあるが、
見方によっては実に頼りない、自立心に欠ける面があると言える。
入江くんにフラれてもフラれてもあきらめない根性はいいが、
ではどんな生き方をしたいのか、方針を全然持たない。
(この点で、このマンガが好きになれない人もいるかも。)
琴子自身、十分自覚しているようで、‘1番なりたい自分’は、と悩む。
そして、いつも助けられている入江くんの、今度は自分が役に立ちたいと思って、
自身のドジを省みず「看護婦になりたい」と思っちゃうワケなのだ。
入江くんにとってはエライ迷惑だろうが、彼はよやく自立しようとしている妻の決心を尊重する。
(入江くんの本当のカッコ良さは、こういう所にあるのだろう。)
一方の入江くんは、一見まったくスキが無い完全無欠の人間のようだが、幼い頃のトラウマで、
感情表現に乏しい、それどころか感じる事もない(良く言えばクール)な人間になってしまっている。
IQ200(!)だが、EQ(心の知能指数)は・・・・というヤツ。
その彼が、自分自身の弱さを自覚し、
弱さを持つ事で初めて‘人間らしく’となれた感じる事、
そして、それは琴子と共にいるからだと、彼女が必要だと、
人前で口に出して言う。
(このエピソードが載る16巻が、10巻と並びファンの支持がある。)
どうしよもなく頼りない琴子が、入江くんの心を開き、彼の全人格を支えているのだ、
という所が、このマンガの最大のツボなのだ。
入江くんは念願の小児科医に、そして琴子は、三年間の看護学科の課程を終え、
めでたく国家試験に(どーゆーワケか)一発合格を果たす。
‘ドジの達人’琴子は、お約束通り騒動を巻き起こしては婦長さんや主任さんの頭痛のタネになる。
琴子とはお友達になりたいけれど、絶対注射して欲しくない。
医療ミス多発の昨今、新聞ザタになるミスを起こさなかった事は奇跡かも。
自分がどんな人間か自覚している琴子には、ひょっとしてそれなりに工夫している事が
あったのかもしれないが、マンガでは描かれてはいない。
インフルエンザの患者が病院にあふれる頃、入江くんと一緒の当直の早朝、
琴子は初めて幼い急患の母親に感謝される。
ようやく琴子の夢が叶った一瞬。
(そのすぐ後に貧血でぶったおれてしまったけど)
家で気が付いた琴子は入江くんに告げられる。
「おまえ、妊娠してないか。」
この回の別冊マーガレットを本屋で立ち読みして、何日かたった後、
見たのだ、
読売新聞の追悼抄を。
私がネットにズブズブとハマったのは、
読売の、追悼記事の反響の大きさを伝える記事で紹介されていたHPから。
今年になって、新しいHPも増え、来年にはなんと多田かおる公式サイトが出きるというニュースも。
ネット上では、琴子も入江くんも、赤ちゃんも無事に産まれて、元気でがんばっている。
私よりも上の年代から中学生まで、実に幅広い世代のファンがいる事をネットで知った。
いまだに「多田かおるが無くなった事を初めて知った」という方もいる。
さらにすごい事に、新しくファンになった、と言う人も訪れている。
私自身、多田かおるの死を知って、誰かにモヤモヤとたまった悲しみを話したくて、
心の中に澱のようにたまったものが、消えていったように思う。
「ネットにはこんな力があるのか」と思った事が、今の私のHP作りの原点・・・かな?
*****
琴子と入江くん以外のぶっとびぞろいの登場人物の事、多田かおるの他の作品
(「愛してナイト」、「デボラがライバル」etc,)について語りだしたらキリがない、
実際マンガを読んでいただくか、関連HPを波乗りしていただいた方がよろしいかと。
(無責任なヤツ>自分)
りんくぺーじにイタKiss関連HPの紹介があります。
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