〜クックロビン音頭のルーツを知っていますか。〜
萩尾望都「小鳥の巣」
私が中3だった頃、ある晩、部活(吹奏楽部)の友達から電話。
「‘誰が殺したクックロビン’に曲つけたよー!」
「えー、聞かせて聞かせて」「ちょっと待ってー、ジャンジャンジャン(ギターの音)」
電話からテープに録音された歌が聞こえて来た。
何だか‘デビルマン’の主題歌風だったような・・。
(ゴメンよ、Yちゃん、ネタに使って・・・。)
私は中2までは‘文学少女’だった。(自分で書くと、うさんくさいけど)
マンガと言えば小学館&学研の学習雑誌に載っているモノくらいだった。
それが突然、受験の年というのに中3になってから、友人たちとマンガ誌の貸し借りを始める。
‘りぼん’の山岸涼子の「アラベスク」、一条ゆかりの「デザイナー」、
‘少女フレンド’の大和和紀の「はいからさんが通る」
‘マーガレット’の池田理代子の「ベルサイユのばら」・・・・そして‘少女コミック’の萩尾望都。
今思えば24年組といわれる作家たちが、一斉に花開き始めた頃なのだ。
そして、自分で初めて買った雑誌‘少女コミック’に連載されていたのが、
‘ポーの一族’シリーズの「小鳥の巣」。
‘ポーの一族’は永遠の時を生きるバンパイヤの少年エドガーとアラン、
そして、エドガーの妹メリーベルのお話。
「小鳥の巣」は、まだ冷戦時代(1959年)の西ドイツのギムナジウムが舞台。
‘誰が殺した〜’は、マザーグースの歌のひとつだが、お話の中で張り出し窓から
墜落死する少年ロビン・カーの比喩として使われる、暗く不気味な歌。
(原曲は知らない^^;。案外楽しい歌だったりして)
後年「パタリロ!」のアニメでクックロビン音頭を見た時にゃ、
「なんじゃこりゃー!」と、ぶっとんでしまった。
永遠に14歳の少年たちは、普段は歳を取っていく‘大人’たちの中にあって
、彼らに時間の流れの外にあるものに気づかせる役目をはたしているようだ。
だが、「小鳥の巣」では見かけは同じ14歳の少年たちのただ中。
エドガーもアランも、彼らの間で、やたら大人びていたかと思えば、とても傷つきやすかったりする。
そして、もうひとりの主人公キリアン。
ロビン・カーを殺してしまったのは自分だという思いを背負い、誰より傷付いているのに、
人一倍ハリキリボーイの彼が、何と痛々しかった事か。
そして私たちは、当時14歳だったのだ。
誰かが誕生日を迎えるごとに、「あーん、エドガー様の歳をおいこすー!」と、嘆いたものだ。
毎日を部活と受験勉強に明け暮れる田舎の中学生に、なんとも、彼らの世界がまぶしかった。
マンガの中で朗読されるワーズワスの詩を、図書室から探し出し、競って暗唱したっけ。
(おい、英単語は、公式はどーなった?!)
決して逃げていたわけじゃない、私たちはあの時代をツライなりにおう歌していた。
そして、あの頃の14歳は同じ年頃の子を持つような歳にになっても、
エドガーやアランたちと永遠の時間を旅する事ができるのだ。
それとも、「リデル 森の中」の、エドガーとアランに育てられる少女リデルは、
私達自身だったのかも知れない。
今はすっかり変色してしまった、当時買ったコミックスがちょっと悲しいけど。
(ついでに、この頃私はファンレターを出してしまった。
私がファンレターを書いたのは、他には美内すずえだけだ。)
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‘ポーの一族’シリーズは、1971年の「すきとおった銀の髪」に始まり、
途中他の連載をはさみながら、1975年の「エディス」に終わる。
5年の間に、絵柄も変化すれば、キャラも何だか変わってくる。
1973年の「小鳥の巣」の頃が、萩尾望都の絵柄で、もっとも線が細く、
細かく書き込まれていた頃だったと思う。
この後すぐ連載が始まった「トーマの心臓」から、
一気に絵柄がシンプルになり、ちょっとびっくりしたものだった。
「ポーの一族」で消えていったエドガーの最愛の妹メリーベルは、
13歳という年齢設定なのに、小学校低学年並の感じだったが、
「エヴァンスの遺書」で、父の一族の前に現れた彼女は、実に魅力的なバンパイヤとなっていた。
5年にも渡るシリーズになるとは作者は思っていなかったのだろう、
設定が少し苦しくなっているところがあったりする。
中でも【ポーの村】の存在が、一番ツラかったと思う。
なくってもお話は成り立つのだが、2番目に描いちゃった以上、取り消せない。
「ピカデリー7時」で、どうやらそれは時の狭間にあって、
彼らとて簡単には行けないらしいと言う事になっている。
それから、極めつけ、【キリアン・ブルンスウィッグ】はどーしてくれる!
バンパイアになったマチアスに血を吸われ、
「キリアンの体内に深くしずんで存在した それは潜在的な因子として子孫にうけつがれてゆき・・
それはもっと後の話となる」と描いておきながら、ほったらかしとなってしまった。
「ランプトンは語る」で、テオの元に研究用に血を置いていったらしいが、
「それだけ?」と、がっかりしたものだった。
私はキリアンの子孫と出会うエドガーたちの話をを期待していたのだけど。