つきのうさぎ

昔、あるところに空を飛びたいといううさぎがいました。 うさぎは、空を見上げながら、毎日のように言っていました。
「あぁ、空を飛びたいなあ。どうしたら空を飛べるんだろう」
あるとき、小鳥がやってきて言いました。
「見て見て、私、やっと飛べるようになったのよ! ほら!」
うさぎはうらやましくて仕方がありません。
「小鳥さん、どうやったら空を飛べるの?」
「この羽根を、ばたばた動かすのよ」
うさぎには羽根なんてありません。
「羽根が無いと、空を飛べないのかなあ……」
うさぎは落ち込んでしまいました。

その夜、猫がやってきて言いました。
「おや、うさぎさん。何をそんなに落ち込んでいるんだい?」
「羽根が無いと、空を飛べないんだ。それがくやしくってくやしくって」
猫はおかしそうに笑いました。
「あはははは。そんな事で悩んでたのかい?  空なんか飛べなくったっていいじゃないか。 あたしたちは、大地を駆け回る事が出来るんだからさ」
うさぎは口を尖らせて言いました。
「でもやっぱり空を飛びたいんだよ」
「どうしてそんなに空を飛びたいのさ?」
「空を飛んで、あのお月様に行きたいんだ。 月に一人ぼっちで居るうさぎさんの遊び相手になりたいんだ」

その日、うさぎは空を飛ぶ夢を見ました。 羽根とロウで作った翼で、空を自由に飛ぶ夢でした。
「ああ、なんて気分が良いんだろう!  やっぱり空を飛ぶのは気持ち良いなあ!」

朝目を覚ますと、うさぎは夢で見たのと同じ翼を作りました。 たくさんの羽根をロウでしっかりと固めた翼です。 そこに小鳥と猫が現れました。
「おやウサギさん、そりゃぁなんだい?」
「これを使って空を飛ぶんだ」
「へぇ、そうなんだ。がんばってね!」
うさぎは翼を腕につけると言いました。
「それじゃあ、行くよ!」
うさぎはばたばたと翼を動かしながら坂を駆け下りました。 すると、うさぎの体がふわりと浮かび上がったのです。
「あっ! 浮いた!」
うさぎは一生懸命はばたきました。うさぎは高く高く浮かび上がります。 うさぎはうまく風に乗り、高く舞い上がるとあたりを見まわしました。
「うわぁ! すごくいい眺めだなぁ!  小鳥さんと猫さんがあんなに小さく見えるよ!  よーし、もっと高い所に行ってみよう!」
さて、うさぎが何で翼を作ったか覚えていますか?  羽根と、ろうです。ろうは、暖まるととけてしまうのです。 固められていたろうは、太陽に暖められて、少しずつ、少しずつ、とけてきてしまったのです。 うさぎは、ろうがとけてきていることに全然気づいていません。

「えいっ!」
うさぎはもっと高く飛ぼうとしてはばたきました。 すると、どうでしょう。翼は、ばらばらになってしまったのです。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
うさぎはまっさかさまに落ちていきます。

下で見ていた小鳥と猫はびっくりしました。 2人はうさぎを何とかたすけようと、大きなクッションを落ちてきそうなところに置きました。 やがて、たくさんの羽根が落ちてきました。 しかし、その中にうさぎの姿はありません。
「うさぎさんはどうなったんだろう?」
2人が顔を見合わせていると、そこにひときわ大きな真っ白い羽根が舞い落ちてきました。 2人が空を見上げると、そこには見たことも無い、大きくてきれいな鳥が飛んでいました。 その鳥は、一度大きく回ると、空の彼方に飛んでいきました。

小鳥と猫が空を眺めていると、お月様が上ってきました。
「あっ!」
前は一人だったうさぎが、2人になっていたのです。2人のうさぎは仲良く餅つきをしています。
「うさぎさん、月に行けたんだね」
「そうか、良かったねえ」

みなさんも、夜空のお月様を眺めてみてください。 もしかしたら、仲良く餅つきしている二人のうさぎが見えるかもしれません。

おしまい。

+コメント+
この話は、パネルシアターのために書いたものです。
イカ○スですね。

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