砂漠のサンタ

遠い遠い砂漠でのお話です。
昔、砂漠の真中にぺぺという一人の男の子が住んでいました。 ペペは親も兄弟もなく、一人ぼっちで暮らしていました。

そんなある日、ペペは砂漠で女の子が倒れているのをみつけました。
「もしもし、大丈夫ですか?」
すると女の子は小さな小さな声で、「水を……」と言いました。 ペペはその女の子を家につれて帰って、水を飲ませてあげました。

女の子は困った顔で言いました。
「私はサンタクロースの見習いで、ココといいます。 まだそりに慣れていなくて、振り落とされてしまったんです。 私のそりを見ませんでしたか?  子供のトナカイが私のそりを引いているんです」
ペペはずっと砂漠に住んでいたのでそりとトナカイがどんなものだかわかりません。
「ぼくは、そりもトナカイもどんなものだかわからないよ」
こういうものだ、とココはその二つの絵を描きました。 それでもやっぱりペペには見覚えがありませんでした。
「ぼくはわからないけど、町に行けば見たって言う人が見つかるかもしれないよ。 大変そうだから探すのを手伝ってあげる」
二人は町へ出かけていきました。

二人は町でいろいろな人に聞いて廻りました。 けれども返ってくる答えはわからない,というものばかりでした。 二人はとうとう町の人みんなに聞いて廻りました。 最後に聞いたおばあさんが言いました。
「そういえば、ちょっとまえに空を何か鳥のようでそうでないものが飛んでいったよ」

二人は飛んでいった方に向かって歩き始めました。 空を見ながら、二人はずっと歩きつづけました。 けれども、ココのそりはどこにも見当たりません。

日が沈んで、空に月が昇ったころ、二人はオアシスを見つけました。 一日中歩き回って、2人はもうくたくただったので、そこで一休みすることにしました。 ぺぺが樹に登って木の実を集めると、2人でわけあってそれを食べました。

空を見ながらココが言いました。
「そりが見つからなかったらどうしよう。 そうしたら私、もう家に帰れなくなってしまう。」
ココは悲しくなって泣き出してしまいました。 ペペは何とか励まそうとして言いました。
「大丈夫だよ。きっと見つかるよ。 トナカイだって、ココのことを一生懸命探してるよ。 だから、きっと大丈夫だよ。ぼくも、一生懸命探すから。ね?」
ココは何とか泣き止むと、言いました。
「ありがとう。私も一生懸命探すわ。」

次の日も、二人は砂漠を歩きつづけました。 日が高く上っても、夕焼けに空が赤く染まっても、そりは見つかりませんでした。

また、空に月が昇りました。 2人は砂漠の真中で横になっていました。 満点の星空を見上げながら、ココは自分の住んでいた国のことを話しました。
「私の国ではね、冬になると雪がふって町中真っ白になるのよ」
ペペは雪が何かも知りません。
「すごく、きれいなの。見せてあげたいなあ、ペペにも。」
ココは、微笑んで言いました。

そのときでした。
ペペは空に白く輝く尾を引いて、飛んでいる何かの影を見つけました。
「ココ、あれを見て!」
その影は静かに空中で方向を変えると、ゆっくりとこちらに降りてきました。
「あ! あれが私のそりよ!」

小さく鈴の音を響かせながらそのそりは地面に降り立ちました。 首にかわいらしい鈴をつけた"トナカイ"がうれしそうにココにすりよりました。
「ザザとルルっていうの。私の大事な友達。良かった、また会えて」
ココはうれしそうにザザとルルの首や背中を撫で回しました。

うれしそうなココを見ながら、ペペはなぜか悲しい気分になりました。 ココのそりが見つかったのが、うれしくないわけではありません。 けれども、せっかくできた友達がいなくなってしまうのが寂しかったのです。

ココがぺぺを振り返って言いました。
「探すのを手伝ってくれてどうもありがとう。これで帰ることができるわ。」
ココのうれしそうな顔が、ペペの悲しそうな顔を見て少し曇りました。
「ぺぺ、どうしたの?」
ペペは悲しそうな顔で言いました。
「ココ、良かったね、そりがみつかって。 ぼく、今までずっと一人ぼっちだったんだ。 だからココといっぱい話しができて楽しかった。 でも、もうココは帰ってしまうんだね。 また一人ぼっちに戻るのが寂しくてたまらない。 ぼく、ココが帰ってしまうのが悲しいんだ。」
ペペは静かに泣きました。

ココはぺぺをしばらく見つめました。 そして、言いました。
「ぺぺ、一緒に私の国に行きましょう?  それなら2人でいつまでも一緒にいられるわ。 お父さんも、お母さんも、すごく優しいもの。 きっとペペを大事にしてくれる。 ザザも、ルルも、ペペのこと気に入ってるわ。 ね、いっしょにいきましょう?」
ペペはきょとん、とした顔で言いました。
「いいの? ぼく、一緒に行ってもいいの?」
ココはにっこりと笑っていいました。
「ええ。一緒に行きましょう! ペペに雪を見せてあげる。」
2人はそりに乗り込みました。 ココが軽く手綱を引くと、ザザとルルはゆっくりと走り出しました。 鈴の音を響かせながら、そりは砂漠をかけました。 そして、ふわりと空に舞ったのです。 二人を乗せたそりはだんだん空高く上り、砂漠と星空の間をかけていきました。
それから2人はココの国で、いつまでも仲良く、幸せに暮らしたということです。

おしまい。

+コメント+
紙芝居になりました。
人の名前が覚えにくいと大不評。
作画におわれてちょっと辛い気持ちになったいわくつき。


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