爬虫類の密室(戯曲)
登場人物・・・
高田勲 (22):大学生
高田美香(26):OL、勲の姉
西口 (56):A県警警部
有沢翔冶(22):推理小説好きの青年
萌 (18):有沢の恋人
医者、鑑識、刑事数名、医者の助手
場所:名古屋
時代:現代
第一幕
第一場、公園
内幕閉まっている。萌、舞台中央にいて、歩き回っている。
萌 :(腕時計を見ながら)遅いなぁ・・・。11時*に待ち合わせのはずなのに・・・
有沢、走りながら登場。萌の前で立ち止まると息を切らせる。呼吸が整うと、
萌 :遅い!何かおごってよね。
有沢:ごめんごめん。実はさ、出かけるちょっと前に警部が来て・・・
萌 :警部さん?
有沢:うん、また事件を解いてくれ、って言ってきたんだ。
萌 :どんなの?聞かせて?
有沢:じゃあ、おごらなくてもいいかい?
萌 :話によっては考えてあげる。
有沢:鍵の掛かった部屋で死んでたんだ。死因は絞殺だけど凶器が見当たらない。
萌 :聞かせて聞かせて!
有沢:じゃあ、萌ちゃんが真相に行き着けるように事件を解くのに必要な手がかりは全て言うからね。
二人、話しながら下手から退場。内幕、開く。
第二場、勲の部屋
下手側に扉がある。上手側には水槽が置いてある机がならんでいる。舞台中央に勲が倒れている。机と椅子、2脚ずつ。
美香、下手から登場。ノックする。
美香:(ぞんざいに)勲、入るわよ。
しかし、返答はなくノブを回してみる
美香:鍵が掛かってる・・・。と言うことはまたあの蛇やトカゲと遊んでるんだわ。あぁ、気持ち悪い!どこが可愛いのかしら?
と、合鍵を取り出し、開ける。
美香:勲・・・、蛇なんて飼うの止めなさい!飼うんならハムスターとか・・・もっと可愛いのにしたら!?ここはあんただけの部屋じゃないのよ!
と、倒れている勲を見つけて驚く。
美香:ちょっと!大丈夫!?
と、勲に駆け寄り、揺する。
美香:なんだ・・・死んでるだけじゃない・・・。脅かさないでよ、まったく。
と、椅子に座りしばらく仕事をする。が、事態の重大さに気付きパニックになる。
美香:とりあえず・・・警察と救急に・・・。
と、携帯電話を取り出し、掛ける。
美香:もしもし、警察ですか?弟が死んでいるんです。・・ええ、死んでいるんだと思います。ぐったりしてて動きません。・・・住所は名古屋市港区興和26の1です。・・・あぁ、高田美香、高い田んぼで高田、美しい香りで美香です。・・・それではよろしくお願いします。
SE:携帯電話を切る電子音。
美香:何で・・・だから蛇なんて飼うの反対だったのよ・・・まったく・・・あのバカ。本当、バカ・・・。お母さんもお父さんもいなくなって・・・あんたまでいなくなったら、私、一人ぼっちになっちゃうじゃない・・・。そりゃ、いつも喧嘩ばかりしてたけどさ・・・。
しばらく泣きじゃくっていると遠くでパトカーのサイレンの音。徐々に大きくなって、やがて止まる。チャイムの音がすると立ち上がり、下手から退場。しばらくして美香、西口、医者、刑事たち、鑑識、下手から登場。
西口:(優しく)お辛いでしょう。・・・弟さんがお亡くなりになって・・・。
と言って、部屋の扉を開けて仰天する。医者は死体を検死、刑事たちは箪笥、勲の机の上、中などを調べる。鑑識はカメラや指紋を取る。
美香:どうなさいました?
西口:あ、いや・・・その・・・、なかなか個性的なペットを飼われているんですね・・・。
美香:あぁ、蛇とかトカゲとかですか?残念ながら、私の趣味じゃないんです。
西口:弟さんの?
美香:はい、爬虫類が大変好きでよく買ってました。
西口:そうですか・・・。それじゃ、お辛いでしょうが、お話をお聞かせ願えませんか?その、弟さんの死体を発見した時のご様子などを。
美香:はい、私は仕事から帰るといつものように部屋に行きました。
西口:とすると、共同部屋ですか?
美香:はい、ですからご覧のように机が二つありますでしょう?
西口:なるほど。で、部屋に行かれて?
美香:はい、鍵が掛かっていましたからきっと蛇と遊んでるんだろう、と思って合鍵で開けました。
西口:蛇と遊んでいる時はいつも鍵を掛けるんですか?
美香:はい、前に飼ってるペットが逃げ出したことがありましてね。蛇が洋服掛けから上りノブに巻きついて、ドアが開いてしまったことがあって。
西口:それ以後、鍵を?
美香:はい、それでそういうことですので私は合鍵を使ってドアを開けたんです。
西口:なるほど。そしたら弟さんが倒れていた・・・とこういうわけですね?
美香:はい。
西口:何か気付かれた点などは?
美香:(しばらく考えるが、やがて)特にありませんね・・・、すみません。
西口:いやいや、謝る必要などありませんよ。
そこに医者が西口に近付く。
西口:ちょっと失礼。
と医者に
西口:先生、何か解ったか?
医者:あぁ、詳しくは司法解剖しなくちゃ解らねぇが死因は警部圧迫による窒息死、つまりは絞殺だな。索状痕がくっきり残っとった。
西口:凶器の形は解るか?
医者:あぁ、幅5センチほどの紐状のもの。かなり強い力で絞められとる。
西口:・・・コロシか?
医者:多分な。(下手側に)おい!ホトケさんを病院まで運ぶから手伝ってくれ!
医者の助手、下手から手ぶらで登場。
医者の助手:お呼びですか?
医者:あぁ、ホトケさんを病院まで運ばなきゃいけねぇから手伝ってくれ。
医者の助手:はいはい、じゃあ私、足持ちますから、先生は手をお願いします。
と医者の助手、被害者の足を掴んで持ち上げようとする。医者、はたと気付き、
医者:担架はどうした?
医者の助手:あ・・・、忘れました。
医者:バカ野郎!早くもってこい!
医者の助手、大慌てで下手から退場。しばらくして担架を担いで下手から登場。担架に勲を乗せ、下手に向かう。
美香:あの、すみません。弟は殺された・・・んですか?
西口:まだ断定はできませんが、他殺である可能性が濃いでしょうな。
美香:そ、そんな。だって、弟はまだ寝ていたから私、戸締りをちゃんとして出たんですよ。
西口:それは確かですか?
美香:はい。
西口:勝手口の鍵は掛けましたか?
美香:はい、確かめてから出るようにしてますから、間違いありません。
西口:合鍵の隠し場所は解りやすくありませんか?例えば植木鉢の下だとか・・・
美香:家の鍵は私と弟が持ってる二つだけです。
西口:(刑事に)おい!鍵は部屋の中にあったか?
刑事:いえ、まだ見つかっていません。
西口:外で見つかるといいんだが・・・、中で見つかると厄介なことになっちまうな。ただでさえ厄介なのに・・・。
美香:あの、すみません。どうして外で見つかるといいんですか?
西口:鍵が外にあったとしましょう。犯人が外側から鍵を掛けて、外に放ったという可能性も残されますよね。でも部屋の中で見つかったとすると密室殺人ということになります。
医者:おいおい、時代遅れの推理小説じゃあるまいし、今時、密室殺人なんて・・・。
金属が落ちる音がして一同、目を床に向ける。
西口:これはどこの鍵ですか?
と言って鍵を拾い上げる。医者と医者の助手、下手から退場。
美香:この部屋と家の鍵です。
西口:本当ですか?
美香:疑っていらっしゃるんなら試されたらいいでしょう!?
西口:それもそうですな。(刑事に)おい、やってみてくれ。
刑事、ドアより下手に行く。西口、ドアを閉める。鍵を掛ける音。西口、ドアを開けようとするが当然開かない。
西口:よし、ちゃんと鍵が掛かってるな。その鍵で開けてみてくれ。
刑事、鍵を使って、ドアを開く。
西口:ご苦労。(考え込むように)本当にここの鍵みたいだな・・・。
美香:だから言ったでしょう?
西口:うーむ、おっしゃるとおりでした。疑っていたわけではないんですが、部屋の中で発見されたとなると密室殺人になってしまうわけで・・・。
床を探していた刑事、ボタンを拾い、駆け寄る。
刑事:警部!こんなものが落ちていました。
西口:ボタンか・・・。(事件の謎が解けた嬉しさを抑えつつ)これは誰のものですか?
美香:私のですけど。
西口:そうですか。なら事件は簡単です。鍵が掛かっていたという話が嘘なら全て説明がつく。
美香:鍵は掛かってました。第一どうして嘘をつかなきゃいけないんですか?バカバカしい。
西口:それはただ一つ、あなたが殺したからですよ。
美香:冗談じゃないわ!何で私が殺さなくちゃいけないのよ。
西口:では、何であなたのボタンが落ちていたのかお聞かせ願いましょうか?弟さんともみ合った際に引きちぎられたんではありませんか?
美香:知らないわ!ここは私の部屋でもあるのよ。私のボタンが落ちてるのは当たり前じゃない!
西口:まぁ、詳しくは署の方で聞きましょうか。
西口と刑事、嫌がる美香を連行する形で下手から退場。美香は口汚く警察を罵ったり、無実を訴えながら退場。
第三場、取調室
ステンレス製の机が舞台中央に、パイプ椅子が挟んで置いてある。舞台下手には扉。美香が西口、刑事に連行される形で入ってくる。西口、刑事は上手側の椅子に座る。美香、戸惑っている。
西口:お掛けになって下さい
安心したように座る。
美香:何度も言いますけど私やってません。
刑事:嘘は止めた方が身のためだぞ。そんなものはいずれ捜査が進むに連れ、解ることだ。
西口:(刑事を制し)あなたが殺したかどうかは私たちが判断することです。そんなことより今は知っていらっしゃることを全て話してください。
美香:ですから、部屋に私が入ったら死んでたって何度も言ってるでしょう!第一、何で密室だって嘘を吐かなきゃいけないんですか?
刑事:そんなもん、・・・捜査を撹乱するためだろう
美香:ふん、バカバカしい。
西口:まぁまぁ、そう言わずに協力して下さいよ。
美香:これ以上、どう協力しろと?
刑事:自白すればいいんですよ。私がやりましたってね。
美香:やっていないものを言えるわけないでしょう?
西口:・・・タバコ吸っても構いませんか?
美香:ええ、どうぞ。
西口:あなたもどうです?
美香:いえ、いりませんわ。
刑事、灰皿を引き寄せてやる。
西口:ありがとう。
と、タバコを吸う。
美香:・・・刑事さんはボタン一つで私を疑ってるみたいですが・・・
西口:他にもいろいろとあります。
美香:それは?
西口:あなたの言うとおり、仮に現場が密室だとしましょう。
美香:現に密室でしたよ。
西口:まぁまぁ、・・・・それで鍵は部屋の中にあった。
美香:はい。
西口:この状況で密室を作れるのはあなたしかいないんですよ。これが私たちがあなたを疑っている証拠の一つです。
美香:状況証拠よ。
刑事:でも密室を作れたのがあんたしかいないんだよ!
美香:じゃあ、お聞きしますけど、凶器は見つかったんですか?
西口:それは私の部下があなたの家を捜索して見つけ出すでしょう。
刑事:時間の問題・・・だな
美香:ムダな努力です。だって私、やっていませんもの。
刑事:警察をなめるなよ。
美香:あら、痴漢とかワイセツ行為とか不祥事ばかりの警察をなめるなって言う方が無理ですよ。今もこうやって誤認逮捕してますしね。
刑事:なんだと・・・。
西口:誤認逮捕かどうかは私が決めることです。
と刑事の方を向き、
西口:そう熱くなるな。この商売は忍耐が必要なのはお前も知っているだろ。それにあと少しで司法解剖の結果が出るはずだ。そうすりゃ、こっちのもんだぞ。
美香:言っておきますが、今日一日ずっと会社にいました。何なら上司に聞いても構いません。
刑事:死体の第一発見者はあんただ。いくらでも嘘は吐ける。
美香:そんな。
刑事:いづれにしても結果待ちだな。
美香:じゃあ、結果が出たらまた来ます。
と言って去ろうと立ち上がる。刑事、扉に立ちふさがる。
美香:通してください。
刑事:君が協力的になってくれないと俺たちも困るんだがね
美香:冗談じゃないわ!これ以上何を協力しろって言うの?
SE:携帯電話の音
西口:はい、もしもし・・・、あ、先生・・・、ふむ、ふむ、ふむ・・・今朝十時から夕方四時の間だな。ありがと。
と言って携帯電話を切る。
西口:今朝十時から十六時の間、どこで何をしていらっしゃいましたか?
美香:(勝ち誇ったように)その時間は会社に行ってました。何なら上司に確認しても構いませんよ。
刑事:どうしましょう、警部。これ以上引き止めるのは無理です。
西口:うむむ・・・、密室を作れたのはこいつしかいないんだが・・・。
美香:それにお医者さんの話だとかなり強い力で絞められたと。
西口:え、ええ、そうです。
美香:だとしたら女の私は犯人のはずないんじゃありませんか?
西口:う・・・。
美香:そういうことですから、私帰らせていただきます。
と、立ち去ろうとする。
西口:待ってください。
美香、振り向いて、
美香:何か?
西口:(呟くように)何かアリバイを作るやり方があるはずだ。
美香:何をぶつぶつおっしゃってるかは知りませんが、用がないなら私、帰らせてもらいます。
西口:待って下さい。蛇やトカゲはどこに住んでいるかご存知ですか?
刑事:何を言い出すんですか?警部。・・・あっ、そう言うことですか。
西口:そう、蛇やトカゲは砂漠に住んでる。と言うことは、室内は暖房を付けてた可能性が高い。できるだけ住んでるところの気候に合わせるのは動物を飼う基本だからな。
美香:私がエアコンを点けてアリバイを作った、とおっしゃりたいんでしょうが、残念ながらそれは無理ですよ。だって、エアコン点けることないんですもの。
西口:何ですって?
刑事:おい、あんた出鱈目言ってるんじゃないだろうな!
美香:出鱈目言ってるのは刑事さんたちでしょう?あの部屋にいた動物はみんな、砂漠に住む蛇じゃないんですから。
第四場、有沢の事務所
舞台中央にコーヒーテーブル、それを挟むようにしてソファ。有沢と西口、座っている。コーヒーテーブルにはファイル、数枚の写真が置いてある。
西口:・・・というわけなんだ。どう思う?
有沢:なるほど、確かに不可解な状況ですね。では状況を整理してみましょう。間違っているところがあったら、警部、指摘して下さいね。
西口:うむ。
有沢:爬虫類を飼ってる大学生が殺されてると二人暮らしの姉から通報があった。
西口:(不機嫌そうに)被害者の趣味なんて関係ないだろ。
有沢:警部、些細なことほど何より重要なんですよ。
西口:解ったから先続けろ。
有沢:姉の高田美香はOLをしていて、会社から帰ったところ、殺されていた。
西口:しかも現場は密室で、鍵は中にあったぞ。
有沢:(ファイルを読みながら)それで、凶器は見つかったんですか?
西口:いや、まだだ。庭中、くまなく探したんだが・・・
有沢:部屋の中は?
西口:もちろん探した。
有沢:凶器は幅5センチ。恐らくバスタオルか何かを捻ったものだと書いてありますが・・・。
西口:バスタオル、手ぬぐい、その他凶器になりそうなものは皆探して鑑識に回した。
有沢:どうでした?
西口:ダメだった。
有沢:解りました。では確認の続きをしましょう。部屋の中には姉のボタンが落ちていた。それを根拠に警部は彼女を連行した。ここまではあってますか?
西口:ああ、それに密室を作れたのはヤツしかいないからな。
有沢:(ファイルを見ながら)でも彼女は犯人じゃないと言ってますよ。
西口:そんなもの嘘に決まってる。
有沢:いや、彼女が犯人だとすると不可解な点が残りますよ。例えば
と言って写真を1枚つまみ上げる
有沢:この索状痕ですが、医師の方がおっしゃるようにかなり強い力で絞められています。女性が絞めたんじゃ、こんな強くは鬱血しませんよ。(ファイルを見ながら)ほう、爪の間に蛇のうろこが・・・。
西口:被害者は直前まで蛇をいじってたそうだ。だから何でそんなに興奮しているのか、解らん。
有沢:何で興奮するかですって?警部にはこの証拠の大切さが解らないんですか?
内幕、閉まる。有沢と萌、上手から話しながら登場。
有沢:さて、ここで話をいったん、ストップするよ
萌 :えー、何で?
有沢:だって、事件を解くのに必要な手がかりは全て出揃ったもん。
萌 :本当に?
有沢:疑ってるな?
萌 :当たり前じゃない。こんな少ない手がかりで解けるわけないよ。
有沢:いや、それが解けるんだな。
萌 :えー
有沢:(意地悪く)ギブアップかい?
萌 :十分間待って、ね?
有沢:今から十分間って言うと十時二十分*だな。よし。じゃ僕はあっちで缶コーヒーでも買って、休憩してるよ。僕が近くにいるとヒント言っちゃいそうだから。
ここで10分間の休憩を挟む。
第五場、公園
舞台中央にベンチ。萌、ぶつぶつ言いながら、舞台中央をぐるぐる回るように歩く。しかし、やがて諦めたように座る。
有沢、缶コーヒーを持って登場。左手にはジュースを持っている。
有沢:どう?解けたかい?
萌 :ダメ。降参
有沢:はい、ジュース。
と言って、ジュース缶を手渡す。
萌 :ありがとう。・・・で、犯人は誰なの?やっぱり美香さん?
有沢:どうしてそう思うの?
萌 :だって密室を作れたのって彼女しかいないじゃない。
有沢:でも凶器はどこに?どうして女性があんな強い力で絞め殺せるの?
萌 :うーん・・・。
有沢:それに彼女にはアリバイがあるんだよ。会社にいたって言うアリバイが。難しく考えすぎなんだよ。犯人と二人っきりになってたんだ、被害者はね。
萌 :犯人と・・・、なら犯人はどこにいったの?
有沢:どこへも行ってないんだよ。いて当然だからね。
萌 :いて当然?
有沢:解らないかい?
萌 :まったく。かえって混乱したよ。
有沢:まだ難しく考えてる。
萌 :だって・・・
有沢:OK。ヒントは蛇のうろこだよ。
萌 :蛇のうろこって被害者の爪の間にあった?
有沢:うん、よく覚えてた。ということは、被害者は直前まで蛇と遊んでたってことになるね。
萌 :そうだね
有沢:ということは?
萌 :解らないわ。
有沢:もう少しだよ。頑張って。
萌 :うーん・・・降参。
有沢:本当に降参?
萌 :本当だよ。
有沢:笑わない?簡単すぎて。
萌 :うん
有沢:実はね、蛇が犯人だったんだよ。
萌 :・・・えっ?
有沢:僕がいつも言ってるだろ?あらゆる可能性を考えて、完全にありえないものを除外していく。その結果、最後に残ったものがいかに信じがたくても真実だって。この場合、外部犯じゃないことは確かだ。密室なんて作るよりさっさと逃げるからね。さて、美香さんが犯人だとしよう。僕が犯人なら死体を埋めるし、唯一の証人ならもっとうまいこと言うだろう。さらにさっきも言った理由から除外しても構わない。
萌 :自殺の場合は?
有沢:凶器がなくなるなんてことある?幽霊が持ってったわけでもなし。さあ、残る可能性は?
萌 :事故死・・・
有沢:そう、犯人はいなくなったんじゃなくて見つけられなかったんだ。凶器も自分の身体だからね。
萌 :でもボタンはどうなるの?
有沢:あぁ、たまたまだよ。言われて見れば簡単だろ?
萌 :なるほどね・・・
有沢:いい頭の運動になった?
有沢、立ち上がって時計を見る。
有沢:おっと、もうそろそろ十二時*だ。昼ごはん**にしようよ。
二人、雑談しながら上手に退場。
(幕)
*は現在の時刻をはさむ
**十二時なら昼ごはん
十四時なら喫茶店に入ろう。
十六時なら帰ろう
など時刻に応じて変化させる
この作品はいかがでしたか?
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