T I M E S T A L K E R
目の前に聳え建つは昼間でも闇のみが支配する暗黒の城。
現在の時刻は真夜中過ぎ。
黒いベールのような雲が時々、無数に存在する窓の光を反射する。
珍しく何かが行われているらしく、全てが明るい。
「ちっ・・・何のためのパーティーだか・・・。聞かなくとも分かるぜ・・・・反吐が出るわ。」
半分も吸っていない煙草をその場に吐き捨て、足で揉み消した。
「分かりきってるさ。祝いの宴だ。何を祝ってるのかは・・・・。」
ファサリと黒い髪が風に舞い、邪魔くさそうに掻き上げた。
「さぁ・・・準備はできたよ。いつでもオッケーだ。」
そう言うと、ゼノンは大型の銃器をルークに手渡した。予想以上の重さにルークの受け取った腕の筋肉がピクリと振動する。
「どわっ!!・・・・サンキュー、ゼノン。さぁて・・・・・行きますか?エース。」
そのまま肩に担いで、不敵な笑顔で後ろを振り返った。
「ああ・・・夜が明けないうちに全部片付けないとな・・・。情報局長官が遅刻なんてしたら大目玉だ。」
「俺はいつまでかかってもどうってコト無いけどね。」
クスクスと笑いながらライデンがエースの肩らへんから声をかける。
「そりゃそうだろうよ。お前はまだ皇太子サマの御身分だからな。暇で暇でしょうがなくって俺達に付いてきたんだもんな。」
「何だよそれ!!俺だって・・・俺だって・・・・・・・・・・・・。」
怯みそうになりながらエースに必死の抗議をしようとするが、罵詈雑言が言葉となって出てきてくれない。
「まぁまぁ・・・。早くしないと・・・本当に明日遅刻はしなくても、寝不足で業務になんないでしょ?」
たしなめるゼノンに2名は黙る。
自然に4名は闇黒城の方へ視線を向けた。
そのまま城に向かって歩き始めた。
門番はあっけなく倒れた。
図体はデカイがあまり頭はよろしくなかったらしい。
力任せに襲いかかってきたが、魔界の上層部を一手に取り仕切っているトップクラスの悪魔にとっては所詮雑魚にすぎなかった。
「・・・死んじゃったかな?」
心配そうにライデンが門番をひっくり返してみる。
「大丈夫・・・だろう。そんなに本気じゃなかったから。暫くすれば目を覚ますさ。」
何でもないようにエースは言い放ち、先を急ごうとする。
「・・・多分だけどね。」
最後の一言にはちょっと引っかかるモノがあったが・・・。
とりあえず長い廊下を4名は進んでいった。
大広間らしき最奥の扉に辿り着いた。
そこまで行き着くまでにもちろん妨害はあったが、門番同様、大したこと無かった。
エースがもう少し落ち着いていれば、死人は出なかったと思うが・・・。
扉の中からは優雅な笑い声と音楽が聞こえてくる。
雰囲気から言ってかなりの人数がこの中にいるらしい。
「どうするの?かなりいっぱいいるみたいだけど・・・。」
答えは分かり切っているのにゼノンは一応尋ねた。
「・・・まぁ殆どは、何の祝いか分からないで馬鹿騒ぎしてる連中だ。別に傷つける必要もあるまい。・・・刃向かったら別だが・・・。」
にべもないエースの言いようにルークは呆然と後ろを見つめた。
「・・・その温情・・・今まで倒したヤツにも向けてやれば良かったのに・・・。」
4名が辿ってきた道のりに沿ってもう数え切れないほどの衛兵達が倒れていた。
・・・生きてるのはきっと片手で数え切れてしまうだろう。
「・・・軍事局参謀、作戦は?」
唐突に聞かれて、ルークは弾かれたようにエースを見た。
「・・・作戦なんて・・・あるのか?」
「・・・ないな。」
緊張感の無い台詞に密かに吹き出すライデン。
「行くぞ・・・・・・!!」
ドアノブに手を掛け、エースは一気に扉を開けた。
突然広がる光の洪水。
まぶしすぎるシャンデリアの灯りの下で、大勢の悪魔達が豪華な装いに身を包み、談笑をし、踊り、酒を酌み交わしている。
その中に軍服姿で片手に重装備を施した高級官僚が4名も登場したのだ。
場違いにも程がある。
突然の来客に全員の視線は釘付けになり、全ての音がやんだ。
「・・・楽しんでいるところをすまないが、火急の用だ。通してくれないか?」
上層部一の冷酷な美を兼ね備えるエースの声が血の色をした唇から零れ落ちる。
あまりのことに暫く動くことを忘れていた客達はその声で我に返り、慌てて道をあけた。
「すまないな。」
装備を抱えたままエースの後について3名はその道を進んでいく。
ゆっくりと歩くその4名の先では一際豪華な椅子に腰を下ろしている者が柔らかな微笑を浮かべている。
「これはこれは・・・情報局、軍事局、文化局のお揃いで・・・。ほほう・・・。雷神界の皇太子まで・・・どうされたのですか?私は今宵の宴に招待しましたかな?」
この不夜城の主はその微笑みを崩さずに4名に最敬礼した。
しかし、4名は武器を降ろさない。
「宴に招待もされずにしかもそのような物騒なモノを持ち出されてるとは・・・。いささか失礼ではありませんかな?」
城主・ブラウは温厚そうな仮面を剥がさない。
「・・失礼いたしました。確かに我らはこの宴に招待はされておりませぬ。しかし、我らが主はそちらに御邪魔している筈。明日の執務に支障がある
ので早く帰るよう進言いたしたのですが・・・・。まだ帰城されない故、こうしてお迎えに参上した次第。」
そこまで言うと、エースはきっと顔を上げ、ブラウを睨んだ。
「我らが主をお返し下さいませ。」
一瞬の沈黙。
しかしそれを破ったのはブラウの思いがけない笑い声だった。
「はっはっは・・・・・・これは失礼。」
4名の瞳が怒りに満ちていることに気付き、ブラウは笑いを一旦止めたが、完全には止められなかったらしく、くっくっくと含みのあるモノを残して言葉
を続けた。
「失礼失礼・・・いやぁ、エース長官とあろう者がそのような戯れ言を申されるとは・・・情報局長官は冗談がお好きなようで・・・ふっふっふ・・・このすす
汚れ、没落貴族の我が城に現・副大魔王様がいらっしゃるとは・・・。他と間違えられたのではありませんかな?」
ブラウの表情はある種相手を小馬鹿にしたような・・・見下すような顔でエースを見つめてくる。
エースはアクマでも冷静な表情を取り繕って口を開いた。
「そうですか・・・失礼いたしました。では早々に・・・。」
そこで一旦言葉を切り、後ろを振り返った。
「そうそう、早くこんな所から出て行きなさい。今宵の無礼は大魔王様には秘密にして置いて上げますからねぇ・・・。」
完全に馬鹿にしくさった言い様である。
知らずに周りの列席者達からも笑いが微かに漏れた。
瞬間、エースは再びブラウの方に向き直ったかと思うと、右手に握りしめたロケットランチャーを構え、城主に向けて一発ぶっ放した
ズダン・・・・・・!!!!
弾が発射されるのと同時に高い天井に吊り下げられたシャンデリアがミシリと揺らめき、足下も震える。
「・・・!」
声も出す暇もなく、ブラウは胴体のほぼ中央直径20センチの風穴を空けて、恐ろしいほどの視線を目の前で立ちはだかっているエースに向けた。
「返せって・・・言ったんだ。俺は・・・。我らが主を・・・・デーモンを返せと・・・!!言ったんだ!!!」
ものすごい破壊力で内臓は影もなく吹き飛び、何故ここで生き続けているかさえも不思議に思う。
ブラウはそんな不安定な身体のまま一歩一歩彼らの前に歩み寄った。
「ほざいていろ・・・そんなところで私を殺したとて・・・貴様らの主は見付からない。ふふふ・・・ふ・・・ふは・・・・はははははははははは!!!」
狂気に満ちた笑い声の余韻を残してブラウは煙のように消えた。
「・・・やったか・・・?」
ライデンが恐る恐る尋ねる。
「・・・いや・・・。」
腰辺りまで抱え込んでいた重機を降ろし、エースは振り返った。
唖然とここで起こった出来事を見ている何百の瞳。
しかしモノともせずにエースは接客用の笑顔を顔に張り付けた。
「失礼。そういう訳があって・・・。今宵の楽しみを汚してしまって申し訳なかった。今ここで見たことは他言無用にしていただきたい。まだ用事が残って
いるのでどうかこの場は立ち去っていただきたいのだが・・・よろしいか?」
誰も一言も言わずに頷くと、大広間を出ていった。
エースはゼノンの方に目配せをする。ゼノンは頷いて左手を一振りした。
「・・・大丈夫か?」
確認するように尋ねてみる。
「大丈夫。この城から一歩でも出たら今見たことはおろか、ここに来たことも忘れるはずだよ。」
安心してエースはルークの方に向き直った。
「匂う・・・か?」
ぺろりと上唇を舐めてルークは嬉しそうに頷いた。
「もちろん。彼奴はまだ生きている。・・・まぁあれくらいで死ぬようなヤツではないって思ってたけどね・・・・。それにしてもしぶといなぁ。」
「なぁに、彼奴の身体は不死身さ。」
いとも簡単に言ってのけるとエースは手招きした。
「行こう、あの奥の部屋だ。」
祭壇の裏に秘密の扉があった。
身を屈めて中に入り込む。
地下道を少し抜けたら、すぐに半開きの扉があった。
いかにも自分達を招き入れているような・・・。
「罠だよなぁ・・・。十中八九・・・。」
ライデンの顔が苦笑に満ちていた。
「雷神界の皇太子サマは別にここでお待ち申し上げていてもよろしいんだぜ?」
厭味タップリ、エースが振り向く。
「・・・行くってばよ。」
ライデンは再びむくれた。
「そうこなくっちゃ・・・。」
ルークは代わりにニコリと笑った。
辿り着いた部屋は奇妙な造りだった。
大きな鏡が一枚あるだけ。
ただそれだけだった。
「ゼノン・・・。何か感じるか?」
周りを見渡しながら尋ねるエースにゼノンは大きく頷き、床を指す。
「ほら・・・。ここに大きな血溜まりがあるよ。多分、奴はこの中だ。罠だとは思うけど?」
答えは判りきっている。一応の確認のためにゼノンは聞いているのだ。
「行くしかないだろう?でないと・・・!!!」
鏡を見た瞬間、エースの表情は固まった。
「・・・デーモン・・・!!!」
鏡の奥で叫ぶようにガラスを叩く姿。
蒼ざめた表情。印象を残す金糸も少し張りが無くなっている。
紛れもない・・・彼らの主・・・そして仲魔である彼の姿だった。
もう、迷いも何もなかった。
「行くぞ・・・。」
エースが一番に飛び込んでいった。
上も下も分からない。
不安定な足元を睨みながら、ルークはあたりを見回した。
「何もないなぁ・・。」
ただただ銀色の世界。
自分の影もなく、ただ、自分だけの世界。
無性に・・・怖くなっていった。
「・・・ちょっと・・・怖いけど・・・。」
さすがのゼノンも怖気ついたらしい。
「それにいても・・・ブラウはどこだ?」
そんなこと気にせず、エースの目は鋭く、些細なことも見逃そうとしない。
瞬間!
ユラン・・・と、何かが揺らめいた。
「そこだ!!」
右手に仕込んでおいたスタンガンの標準をあわせ、引き金を引いた。
「・・・!!!っちぃ!!」
手ごたえはなく、直前で弾が粉砕するかのごとく、ガラスの向こうの彼の姿が悲しく浮かんでは消えていた。
「デーモン!!」
【フフフフ・・・・どうしたかな?私はここだよ?エース長官・・・。】
奇妙な響きを持ったブラウの声が全ての所で反響する。
「どこだ?!出て来い!!出てきて戦え!!」
エースは怒声を響かせる。
【君のような優秀な諜報部員がこんな所まで出てくるとはね・・・。そこだけは褒めてあげるよ・・・。でもここでお終いだ。】
姿を現したブラウに4名は思わず息を呑んだ。
大量の血を吐き出し、それでも笑い続けている。
何とも言えない気味の悪さに怯みながらもエースは言葉を発した。
「・・・・・・・・・・・卑怯者が・・・。デーモンをどうするつもりだ?!」
【どうするって・・・どうもしない。そのかわり、ずっとここにいてもらうのさ。】
そう言って手の中に一枚の鏡を取り出し、映し出す。
その中には金色の髪を振り乱し、その壁を叩き、何かを叫ぶデーモンの姿が映し出された。
【美しいとは思わないかね・・・この金の翼を持つ悪魔を・・・。美しいものは永久でなければいけない。私は彼の美しさを永久のものにしてあげられる力を持っている。君だってこの美しいものを永久に自分のモノにしたい欲求があるだろう?】
エースの中に不快な感情が渦のように巡り始める。
「やめろ・・・頼むから・・・やめてくれ・・・!!!」
【君はずっと思っていたはずだ、この悪魔をその胸に抱きたい。私は知っている。そのドロドロとした醜い感情を私の前に曝け出してごらん・・・。】
ブラウの言葉は魔力だった。
今まで口にも・・・いや、考えたことも無かったような心の奥が、自分の五感を侵す。
「やめて・・・くれ・・・!!!」
激しい頭痛がエースを襲い、手にしていた銃がカタリと落ちる。
やっとの思いで瞳をこじ開け、周りを見渡すと他の3名も自分と同じようにもだえ、苦しんでいる。
「やめろ・・・!!!イタ・・・・・・い・・・!!!」
「違う・・そうじゃないんだ!!」
ルークもゼノンもライデンも・・・それぞれの悪夢にその身を押さえつけられている。
このままでは・・・。
エースは残った力でブラウの方を見据えた。
「畜生・・・・!!!」
そんな様子をいとも楽しそうに見つめる悪しき権化、ブラウ。
鏡に映し出されたデーモンの悲鳴。
【端正な、美しいものが歪み、歪む姿・・・それは究極の美・・・。素晴らしいとは思わないか?ほら・・・!!】
ブラウの手が鏡に向かって手を一振り・・・。
髪を掻き毟り、今にもその雄叫びが聞こえてきそうなデーモンの表情・・・。
彼も今・・・理由の判らない恐怖が締め付けられてくるのだろう。
【お前の手にはもう、この悪魔は戻らない・・・。全ては私のものだ・・・。彼も・・・お前も・・・私のコレクションだよ。】
「なにぃ?!」
瞬間、エースに纏わりついた呪縛が解けた。
【何だと?!】
ブラウの顔色が変わった。
「お前のコレクションだと?!冗談じゃねぇ!!」
すばやくエースは落とした銃を拾い上げ、標準をブラウに合わせた。
まだ頭は張り裂けるように痛む・・・が、もう、そんなのは関係なかった。
「ふざけるな!!デーモンを・・・俺のデーモンを返しやがれ!!!」
一瞬の沈黙。
しかしそれを打ち破ったのはブラウのやはり笑い声。
【・・・ふふふふふ・・・・。私は不死身だ。そんな銃が効くとでも思ってるのか?】
しかし、エースも浮かべた冷徹な微笑みは消さなかった。
「効くとは思ってないさ。この銃はこう使うんだ!!」
叫ぶや否や、引き金を引く。その先には・・・・。
がしゃ〜〜〜〜ん!!!!!・・・・
砕け散った鏡。
信じられないという顔でこちらを見つめるデーモンが無数の破片に映し出され、足元に落ちてゆく。
【いいのか?!これでデーモンは永久に戻ってこないのだぞ!!】
ブラウが蒼ざめた表情で足元に散った破片を拾い集める為にしゃがんだ。
「戻ってこないのなら・・・・・・俺の手に戻らないのなら・・・いっそのこと俺の手で・・・。」
フルフルと細かく手が震えている。
「デーモンは俺のものだ!!お前のものじゃない!!俺の・・・俺の・・・!!!」
【・・・・ああああ・・・私の美しい・・・美しさが・・・私の・・・ああああ!!!!】
感情が暴走を始める。
ブラウの体が奇妙な変化を始めた。
衛生状態が悪くなったテレビのように所々、歪んでくる。
「お前は醜い・・・全てのモノの中で何よりも醜い!!!お前のような者にデーモンは渡さない!!」
【うおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!】
ブラウの指先が塵と化してゆく。
グズグズと溶けていく様に血液も流れない。
【私は・・・私は何よりも美しいんだ・・・美しい私には・・・うつ・・・く・・・し・・・・・・・・い・・・も・の・が・・・・。】
融けていった。
何もかも。全ての想いと、隠される感情諸共。
「エース!!」
ルークが駆けつけてくる。
「大丈夫なのか?!」
「終わったんだよ。」
エースはブラウの残骸を見つめた。
既に元の形を成さない塵。
ピシリと音をたて、ひび割れた鏡の壁の隙間から滑りこんだ風にそれは流されて、何も無くなった。
「崩れる!!急いで逃げるんだ!!」
走り出そうとするルークにライデンは肩を引いて止めた。
「待って!!手っ取り早い方法があるから!!」
そう言うと、ライデンは両の手の中に大きな光を出し、壁に向かって放り投げた。
もの凄い爆音がし、ヒトが一人入れるかどうかぐらいのギリギリな穴が空いた。
その向こうの景色は見たことのある部屋だ。
「急ごう!!」
4名は次々と外に出た。
次の瞬間。
空間の歪みが先ほどと同様の轟音をたてて、完全に閉じた。
「助かった・・・。」
ライデンはその様子を見ながら、緊張が解けたかのように床にへたり込んだ。
「・・・デーモンは?!」
今ごろ気付いたかのようにルークはエースに問いただす。
「ああ・・・そうだったな・・・。」
彼も忘れていたらしく、思い出したように手の中に収まっていた破片を手の平に置いた。
「出て来いよ・・・もういいだろう?」
エースが囁く。
破片が虹色に輝いた。
オーロラのようにそれは大きくなり、金色の悪魔の姿が現れた。
「・・・やぁ・・・エース。」
バツが悪そうにデーモンは彼らの前に立った。
「・・・お帰り。さ、もう夜明けだ・・・・仕事が待ってるよ。」
何でも無かったかのようにエースはデーモンの肩を叩いた。
「え・・・・ああ・・・。」
「さぁて・・・やっぱり徹夜だね・・・。」
ゼノンが指差した先には紅い月が顔を出し始めている。
「行こうか?」
ルークは先に歩き始めた。
「もう寝る時間ってないかな?」
のんびりとした声でライデンが背伸びをする。
それに付いてエースも歩き始める。と、後ろでまだ立ち竦んでいるデーモンに気付いた。
「?・・・何やってるんだ?」
弾かれるように声の方を見る。
そして・・・歩き始めた。
鏡の中に閉じ込められている間・・・何も聞こえなかった、何も見えなかった。
全ては闇の中。
でも唯一つだけ。
「デーモンは俺のものだ!!!」
明らかにエースの声だった。
吾輩は・・・エースの・・・・・・・・・・?
エースは・・・・・・吾輩を・・・・・・・・・。
それだけが未だに耳に焼き付いて離れない。
今宵の恐宴が終わってしまった今。疑惑だけを残して・・・・。
飲み込まれてしまうくらい紅い、紅い・・・炎の月が世界の目を覚ましてく。
F I N
presented by 高倉 雅