モザイクのLove Maze 〜サクラちって サクラ咲いて 3 〜
昨夜開けっ放しにしたままの窓から、一枚の花弁が入り込み、顔を擽った。
大きな欠伸を一つ。
俺はノロノロと起き上がった。
ベッドの横に据えられた鏡で寝起きの姿を映し出す。
半開きの両目、全然カッコつかない様子が見える。
「ふあぁあああああ・・・・。」
何でこんな早くに目が覚めたのだろう?
はめたままの腕時計を見て愕然とした。
まだ・・・午前十時じゃないか・・・。
昨夜布団に潜り込んだのが多分・・・明け方の六時・・・。
四時間・・・。
がっくりと肩を下ろし、溜息を吐く。
「マジかよ・・・。」
それもこれもあの奇妙な夢の所為だ・・・。
遠くで俺を呼んでいる。
男なのか女なのか見当もつかない。
ただ、その声はとても魅力的で俺が作った曲のイメージにぴったりだった。
この世に存在しないかも知れないと感じさせるほどに甘くて切ない・・・黄金に程近いセピア色の音。
追いかけて行く自分。
手に掴みとろうとした瞬間・・・いつも目が覚める。
ここ数ヶ月、いつもこの夢を見ていた。
いいかげん安眠妨害だ。
自分の見た夢にケチつけるのもなんだが、悪態つきながらもその夢は・・・俺にとってそう、煙たい物ではなった。
「あ・・・そっか・・・。」
途端に思い出す昨日の先輩の言葉。
端正な顔に少し高めの声。
同じ大学のサークルの先輩で、俺と同じバンドでギターを弾いている。
昨日も、その先輩と呑んでいたおかげで朝帰りしたのだ。
『・・・明日は新入生が来るからね。お前も来るんだぞ。』
『何でですかぁ?!俺が行ったって・・・何も変わりませんよう!!』
『ばぁか、サークルの中で一番綺麗な顔してるお前が行ったら・・・女が入って来るだろう?』
理由になってるのかどうか良く分からない。
ぼりぼりと頭を掻く。
自分にとってサークルに女が入ってくることは嬉しいが・・・だからといって・・・。
それににっこりと意味ありげに笑った先輩の顔も気になる・・・。
とりあえず俺は・・・着替える為に立ち上がった。
「やぁ、来たね。」
先輩は昨夜と同じ微笑を浮かべて大学の正門前に佇んでいた。
「おはようございます〜〜・・・。」
まだ眠気の取れないまま俺は先輩の前に立った。
「まだ眠気満々だな・・・。さぁ、そのカッコいい顔をシャンとさせて・・・お客が来るぞ。」
親指を立てて校舎の方に導く。
俺は仕方なく先輩の後ろをついて行った。
どちらかと言えば先輩に釣られて行く女多いような気がしなくも無いんだが・・・。
言いたいのをグッと堪えて、俺はサークル勧誘のチラシを配り、名簿に名前を書かせていく。
さすがに退屈してきた。
だから・・・なんで俺がこの場に必要だったのだろう?
その気持ちが先輩に伝わったのか、不意に俺が持ってた事務用品を取り上げてにっこりと笑った。
「お前も勧誘しておいで。ほら・・・あそこに丁度良さそうな奴が居るよ。」
指差された先には誰かが空を見上げていた。
「え?」
「ほらほら・・・。早く!!」
先輩に背中を押されて俺は歩み寄った。
桜の花が満開の下で誰かは俺の存在に気が付いたようだった。
瞬間、風が舞い上がり誰かの姿を隠そうと花弁の壁を作りかける。
「っ!!」
俺は無意識の内に誰かの手を掴んでいた。
そしてぐいっとその掴んだ手に引かれ、壁の向こうへ入り込んでしまった。
「うわぁあ!!」
目に入ったのはその者が付けていた左耳の飾り・・・。
稲妻を象った銀色のイヤリング。
「・・・また会えたな。」
その声は・・・夢の中の甘い声。
瞬間・・・更に桜が勢いをつけて狂ったような風を起こした。
ピキリと・・・何かが剥がれていく。
彼はイヤリングを外し、俺の耳につけた。
同時に頭の中・・・いや、身体中を駆け抜ける記憶、感情、想い・・・。
俺は・・・俺は・・・。
閉じた瞳を再び開いたときに飛び込んできたのは湖水の瞳。
黄金の髪を靡かせて、俺を見る・・・純粋な笑顔。
何故忘れていたんだろう?
何故気が付かなかったのだろう?
「デーモン・・・・・・?」
思わず呼んだ名前に彼・・・デーモンは嬉しそうに瞳を細めた。
「そうだ。エース・・・吾輩だ。エース・・・!!!!」
喜びを隠さずに飛び込んでくるデーモンの身体はあの時と変わらない。
いつの間にか止んだ花吹雪の向こう側に、先輩・・・いや、ダミアンの微笑む姿が見える。
「デーモン・・・・・!!!」
俺は自然にデーモンを抱き締めていた。
「吾輩を・・・見つけてくれたな・・・。もう、離さない。」
二名はいつまでも離れられなかった。
モザイクのLove Maze
迷路を抜け出す手立てはただ一つ。
あなたを捜すこと。
愛しい人に・・・運命に逆らおうともそれが回り道になろうとも・・・。
抜け出して・・・。
紅蓮の炎を背に焔の化身を従えて、お前を守る。
全てから。
例えそれが我が安息を奪おうとも。
お前と共にあるのなら・・・厭わない。
――――――永遠に・・・。
F I N
presented by 高倉 雅
Back Grand Music by Seikima-II
Mozaiku no Love Maze
Tears in the rainbow
Siturakuenn ha Hutatabi
(SYOUMAKYOU 【Damian Hamada】)
mozaiku no Love Maze
MASQUARADE
Yaburezaru mono tati
ARCADIA
Sakura titte Sakura saite
Special thanks to
My sister AOI
・・・and all reader