淡 黄 の 砂
海。
辿り着いた時には、既に陽は傾き掛けていた。
昼間であれば、不純物が気になるのだろうが、斜めに差し込む太陽が水面に反射して、塵までもが輝いて見えた。
「綺麗だね。」
思わず俺・・・ルークは、声に出していた。
「ああ。」
俺の横に立ったデーモンも同意してくれた。
オフの1日。
俺は、昨日、無理を承知でデーモンを誘った。
断られる事を覚悟して。
スタジオでデーモンと別れ、彼が帰り着き、一息ついたであろう頃を見計らってダイヤルした。
タイミングが良かったのか、穏やかな声で受話器は取られた。
「はい。小暮です。」
俺だと分かると、更にリラックスした雰囲気になる。
俺は、勇気を出して言った。
「・・・明日・・・、・・・暇・・・?」
デーモンは快く次の日の、つまり、今日、俺の呼び出しに応じてくれた。
そして、今。
2名で、砂浜とは名ばかりの、石が散らばったゴツゴツとした岸辺に腰を下ろしていた。
足元に、近づいては遠ざかっていく波を見つめる。
満潮なのだろうか?
寄せてくる波が、少しずつ近くなっているような気がした。
どれくらいそうした無言の時間が続いただろうか。
俺は、何気なく・・・を装って訊いた。
「ねえ、デーモン。好きなヒトいる?」
俺と同様、打ち寄せる波を見ていたデーモンが、驚いたように俺を見つめた。
「何だ?突然に・・・。」
再び視線を海へと向ける。
「いる?」
デーモンの問いには答えず、繰り返した。
いつの間にか、西の空が紅く染まり出し、その夕焼けを背に、デーモンの横顔は静かに微笑んだ。
「ルークが言っている『好き』は、どういう『好き』なんだ?」
「恋愛。」
即答する。
デーモンの笑顔が苦笑いに変わる。
「いる様な、いない様な・・・。」
答えを探し、言葉を選んでいるのが分かる。
「自分の気持ちが分からないんだ。自分の『好き』がどういう『好き』なのか・・・。お前は?」
逆に訊かれて、戸惑った。
「いるよ。」
しかし、俺は迷わず言った。
「でも、きっとダメなんだ。」
「きっと?何故?」
当然と言えば当然の言葉。
「その相手、いるんだ、好きなヒト。まだ付き合ってはいないみたいだけどね。でも、分かるんだ、俺。きっと、お互い想い合っているんだろうなってさ。
そのヒトの『好き』は俺には向かってない・・・。」
「ふーん。確かめたのか?」
これもまた当然の言葉。
それに対して無言で首を横に振った。
「想像が確信に変わるのが怖いんだ。」
−−− 伝えたら、今までの関係ではいられなくなる。 −−−
それが本音。
「デーモンは?」
「それが、そういう『好き』だったとして・・・。しかし、その想いを伝えたら、今の関係が崩れるかもしれない。それだけは避けたい。」
あ・・・、一緒なんだ。
「それに。」
そう言って、デーモンは立ち上がった。
「誰かに愛されるか、ではなく、誰かをどれだけ愛せるか、でいたい。」
あ、それ。
前にゼノンから聞いた・・・。
そうか。
誰かってデーモンだったんだ。
俺もデーモンの横に立ち上がった。
「デーモンって、強いね。」
デーモンは、運転席に乗り込みながら言った。
「お前もな。」
俺は、溢れそうになる涙を誤魔化す様に、勢いよく助手席に滑り込んだ。
Fin
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「あとがき」
あ・・・。
続いているかも・・・。
しかも、結構いろいろな話から。
どの話の続きか分かります?
そういう私も、タイトル忘れたんだよな。
何だっけ?
葵 拝