空 色 の 涙
act 7
温かそうな湯気が立ち昇る。
そのお湯をティーサーバーに注ぎこんだ。
お湯の勢いで舞い踊る茶葉に蓋をしティーコージーを被せ砂時計を逆さにする。
残りのお湯をティーカップに入れた。
ゆっくり落ちていく時間が、長く感じられた。
テーブルに飾ってある花に顔を近づけ香りを確かめる。
立ち昇る紅茶の匂いと、甘い花の香りが鼻孔をくすぐり、緊張していた身体をほぐして行く。
砂時計はもうすぐ落ちてしまう。
ティーコージーに手を掛け、取り去ろうとした時、最後の砂が落ちた。
それを待っていたかのように1滴、そしてまた1滴と落ちていく雫を、花弁は優しく吸い込んで行った。
後ろから近付く気配に、ゼノンは素早く涙を拭く。
「だーれーだ。」
「ライデンでしょ。」
「ちぇ。」
目を塞がれた手を外しながら振り返ったゼノンが見たものは、簡単に当てられて膨れるライデンの顔。
「分からないわけ無いでしょ?」
笑いながら言う。
「どうしたの?」
「ん? 別に。」
「デーモンでしょ。僕のところに行けって言ったの。」
「ピンポーン。」
嬉しそうに言った。
「そう・・・。」
ゼノンは立ち上がると、ティーカップをもう一客用意した。
「お茶、飲むでしょ?」
「お菓子つけてね。」
「分かってるって。」
山盛りのお菓子の籠を持って来る。
「エースに似てたんだって? その天界・・・『エース』って言ったけ?」
ライデンは訊いた。
「らしいよ。鋭いとこ突いて来るって、デーモンも言ってた。だから、あの程度の戦力しかなかったんだろうって。」
「ふーん。」
「『エース』として油断させる為の、いわゆる囮だったんだろうってさ。」
「何か、可哀想・・・。」
「そうかもしれないね。でも・・・。」
ゼノンは、ルークを浄化させる時、『エース』の想いを感じ取っていた。
「彼は、『エース』だったから。デーモンに最後を託せて・・・。本当はどうだったんだろうね。」
ライデンはゼノンの言わんとしている意味を理解した。
「幸せだったら良いね。」
デーモンは、エースの屋敷を訪れた。
真っ暗な部屋の中に、じっと佇むエースの姿に、気付かれぬよう溜息を漏らす。
「こんな事だろうと思った。」
デーモンを振り返らず言った。
「ルークの怪我は俺の所為だな。」
「そう言うだろうと思った。」
パチンと明かりを点ける。
眩しそうに目をしかめた。
デーモンはエースの目の前に立ち、瞳を覗く。
「誰の所為でもないだろう? どうしてもというのならば、責任は吾輩だ。吾輩のウィークポイントを見事に突かれた作戦だ。」
ふふっと笑う。
「流石に、あの顔に剣を突き刺すのは躊躇したからな。」
「デーモン・・・。」
「顔は傷付けなかったぞ。」
くすっと笑うエースに、微笑む。
「やっと笑ったな。」
窓から明るい光が差し込んできた。
fin
presented by aoi
あとがき
私の作品では最大長編。
皆様、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
構想1週間。執筆・・・サボりまくって1ヶ月・・・位?
・・・って、全然苦労してなさそうだけど、才能ない私にしてみれば、壮大なストーリーでありました。(←大袈裟な・・・。)
閣下が主役だったはずなのに、何故か参謀になったような感がありますが、私の作品、参謀が出てくると、必ず彼に持って行かれます。
はい、自覚あります。
参謀が出てきた時点で、こうなる事は分かっていました。
もっともっと長い話を書く予定だったんですが、私の頭ではコレが精一杯みたいです。
もう、飽和状態。
最近は、この話で頭一杯だったんですよ。
何が大変だったって、何時誰を泣かそうかという事かな。
最初に「泣き」を入れてしまったので、収集つかないのなんのって。
そうです。
今回のテーマは「涙」。
全ての構成員様に泣いて頂きました。
結構、強引に泣いて頂きました。
いかがでしたでしょうか?
葵 拝