紫 苑 の 夕 暮 れ

 

「あ、やっと来たね。」

中庭を通って、ゆっくりと歩いて近付いてくるゼノンを、ルークは満面の笑みで迎えた。

ここは、魔界のとある場所にある隠れ家。

強固な結界をかけてある為、外部からは見えない。

ただの森の中だ。

「夕食をね、一緒に食べないかなと思ってね。ライデンも呼んであるんだよ。」

テーブルの上に積まれた食材の山を見つめながらゼノンは言った。

「何作るの?」

「ま、お楽しみにってところかな。今日は俺がやるから、ゼノンは座ってて。何か飲む?」

−−− 彼らしくない −−−

そう思ったが、ゼノンは敢えて口にして訊きはしなかった。

−−− どうしたのか? −−−

と。

大体の見当は付いたから。

「紅茶飲む?僕が淹れるよ。」

ゼノンはそう言ってお湯を沸かし始めた。

透明のティーポットの中に葉を入れ熱湯を注ぐ。

葉が踊る様に舞うのが見えた。

2人分のお湯を入れると、砂時計を逆さにする。

ゼノンは、その間にティーカップを温めた。

ルークは、料理の手を休め、椅子に腰掛け、ティーポットの中へ葉がゆっくりと落ちていく様を、そして、砂時計が落ちていく様を、じっと見つめていた。

「砂、落ちてしまったよ。」

「OK。」

ゼノンは、カップを温める為に入れていたお湯を捨てて、テーブルの方へ戻る。

ルークは、ゼノンがカップに紅茶を注ぐのをも、身動きせず見ていた。

「お待たせ。」

カップをソーサーに乗せて、カタンの置く。

「ありがとう。」

ルークは、カップを両手で包み、ゆっくりと口へ運んだ。

「美味しい・・・。」

ルークの言葉にゼノンも微笑む。

「そうでしょう?とっておきのやつなんだよ。」

他愛のない会話が続き、その会話がふっと途切れた時。

「あとの2名は呼んでないの?」

突然のゼノンの言葉に驚く。

「あ・・・。ああ。今日はデートだってさ。」

ぶっきらぼうなその言い方に不信感が募る。

「デート?今日は、重要な打合せがあるって言ってたよ、2名でさ。別に色っぽい事言って無かったけどなぁ。呼んだら来・・・。」

「同じだよ。俺にとっては。」

わざと茶化す様に言っていたゼノンの言葉を、想像以上の強さでルークは遮った。

「ルーク・・・。」

「あ・・・、ごめん。大きな声を出すつもりじゃなかった・・・。」

慌てて謝ったルークは、酷く悲しそうである。

「ごめん・・・。どうかしてる。」

もう一度、謝るルークにゼノンは優しく言った。

「叶わない想いなの?」

「え?やだなぁ。俺、そんなつもりじゃ・・・。」

「って、以前、訊いた事があるんだ。」

「えっ?」

「殺したい程愛している相手がいるって言うからね。」

ゼノンはにっこり微笑む。

そんなゼノンに、ルークは恐る恐る尋ねた。

「・・・誰が・・・誰を・・・?」

しかし、ゼノンは微笑んだまま。

「誰かが自分を愛してくれるか、ではなく、自分が誰かをどれだけ愛すか。」

「・・・。」

「ってね、これも受け売りなんだけどね。」

ルークの瞳から、すーっと1筋の涙が零れた。

「あ、ごめん。泣くつもりなんて・・・。」

しかし、溢れ出した涙は、止まる事を知らなかった。

今までの想いを全て包み込むかの様に。

「泣きたい時は、泣きたいだけ泣けばいい。でも、次に顔を上げた時は笑顔で・・・ね。これは、僕の意見。」

 

 

 

Fin

 

 

 

Presented by aoi

 

 

 

「あとがき」

 

「お姉ちゃんの参謀って何時も悩んでるし、和尚はすっごく物分かりが良い」

何て事を、雅に言われてしまいました。

確かに・・・。

でも、このキャラ設定で突っ走ります!(笑)

 

葵 拝