緋 色 の 輝 き
何故、人混みの中は、孤独を感じるのであろうか?
自分だけが、独りで歩いているわけではないのに・・・。
それとも、すれ違う人々全てが、孤独を抱えているのであろうか?
あまりにも深い孤独は、何者にも、何物にも癒やされることがない、・・・ような気がする。
いや、そんなものに癒やされるような孤独の感じ方ではないような気がするのだ。
簡単に癒やされてはならないような、妙なプライドを持っている。
しかし、癒やされないと気が狂いそうになる。
−−− 永遠にこのまま独りなのか? −−−
そんな不安に押しつぶされそうになるのも事実であった。
孤独とは、厄介である。
独り、歩いていた。
いつの間にか背中が丸くなっているのに気付く。
少々感じ始めていた孤独感を振り払うかのように心持ち背筋を伸ばした。
正面を見ると、ずっと続いている道が見えた。
始めて見たような気がする。
数え切れないほど歩いたはずの道を、こんな場所から、こういう風に見るのは初めてだ 。
いつも下ばかり向いているのであろうか?
気が付けば、立ち並ぶ店も、以前と多少変化している。
そんな事にも気付かないほど、周りが見えない生活をしていたのだろうか?
そう考えると、また心の中に、寒い風が通り過ぎていく様な気がした。
自分だけ置いて行かれる様な焦燥感。
そして、もう一度顔をあげる・・・。
「あれ?彼奴何してるんだ?」
見慣れた顔。
先ほどまで一緒に仕事をしていた。
声をかけようと、自分の方に近づいてくる者の方へ近寄ろうとしたとき。
「・・・。」
声をかけるのを躊躇うような表情。
あんな顔見た事がない。
先ほどまでは、あんなに笑っていたのに。
たった小1時間の間に何が起こったのか?
勇気を出して声をかけてみた。
「よ。何してんだ?こんな所で。」
彼奴は、ちょっと驚いていたようだが、俺の顔を見ると、満面の笑みをこぼした。
「別に。なんとなく人混みの中に入りたくて歩いてたんだ。」
−−− 何故? −−−
「変な奴。」
俺の言葉が気に障ったのか、少し暗い表情に変わる。
「そんな事ってないか?」
ボソッと呟く彼奴。
「雑踏の中は、孤独を感じる。」
−−− えっ? −−−
「でも、疲れてるときは、その孤独が心地良いんだ。」
−−− お前も? −−−
「少々自虐的だけど。」
黙っている俺に問いかける。
「変か?」
俺は無言で首を横に振った。
彼奴は嬉しそうに小さく微笑んだで言った。
「でも、今日はお前に会えて良かった。やはり寂しいのはあまり好きじゃない。」
俺は、彼奴の背中を軽く叩いて言った。
「俺も好きじゃない。腹減ってないか?食事でもどうだ?」
彼奴は、俺が好きな笑顔で大きく頷いた。
お前の孤独は、俺が癒やそう。
お前が疲れたときは、俺に寄りかかればいい。
お前の横に居るときが、俺が一番癒やされるときだから 。
お前が笑っていれば、満足だから。
俺は月になってお前を照らそう。
お前が寂しくないように。
夜も昼も・・・。
Fin
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「あとがき」
お好みのカップリングでお召し上がり下さいませ・・・。
葵 拝