死の協奏曲(コンツェルト) 〜Luke〜 後編

 

この処、あまり参謀部が荷担するような事件も、戦闘もないためにルークは暇を持て余していた。
彼の性格上、溜まったままにしてある書類もなく、一名、部屋の中でお茶を飲んでいる時間が多い・・・はずだったが。
何故かそこにはいつもデーモンが目の前にいた。
「ルークが入れる茶は本当に美味しいなぁ。」
嬉しそうに大きめのカップを啜り、取り留めない話をしている。
しかし、ルークは話の内容に集中できないでいた。
あの時のあの密談。
そして、彼を見たときにいつも感じる奇妙な感触。
拭い去ろうとしてもできない。
それ以上に。
デーモンが時々自分に見せる試すような・・・品定めをするような鋭い視線。
あれは何なのか?
それを尋ねようにも、デーモン自身はその視線に似合った話題を一切してこないのだから尋ねようがない。
そしてそれは自分だけの勘違いなのかもしれない。
思いが交錯する中で、必然的にルークの表情はいつも硬くなった。
「・・・ルーク?吾輩の話はちゃんとお前の耳に届いているのか?」
怪訝そうに尋ねられるのもこのところの彼らの日課でもあった。
はっとしてルークは笑顔を返す。
「なんでもない。」
「お前の口癖のようだな、その【何でもない】っていうのは・・・。」
呆れたようにデーモンはテーブルの上に空になったカップを置いた。
そしてルークの机の傍まで近付いてくる。
「どうした?」
「少し外に出ないか?」

 

連れ出された先は魔宮のほぼ中央に位置する小さな庭園。
ありとあらゆる世界の植物たちが、この庭の手入れを一切任された文化局理事長の趣味のままに咲き誇っている。
「うわぁ・・・綺麗だなぁ・・・。」
何にでも興味を示す性格らしい彼は、花園の中で一時もじっとしていない。
ルークも少し気を緩めたらしく、軍服のボタンをすべて取り去り、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
「ここにはいつも来るのか?」
初めてルークから出た彼への質問にデーモンは嬉しそうに肯く。
「そうだ。吾輩、ここが一番気に入っているところなんだ。」
気に入っているから・・・と言って彼はその花々たちに直接手を触れることはない。
それに気が付きルークもようやく初めて破顔して見せた。
「おっ!!ようやく笑ったな。お前は笑うと良い顔するんだな。」
まじまじと自分の顔を見詰めてくる瞳。
今はそう、あのいやな感触もない。
今なら・・・。
「デーモン・・・。一つ聞いても良いか?」
デーモンは返事の代わりに少し首を傾げて見せる。
「・・・何でお前は成長が止まったんだ?」
瞬間、彼の表情から全ての感情が消え去った。
そしてあの鋭い視線だけが表に出る。
「・・・聞いてどうする?」
それはルークが質問したことを不快に思っての詰問ではなく、真剣に話をしようという意志の現れのようだった。
「・・・お前が知りたいからだ。」
ただ純粋に。
それだけだった。
「・・・ダミアン殿下に・・・言わないと約束するか?」
確かめるように聞き返すデーモン。
「言わないと約束する。必ず。」
アクアブルーとアメジスとの視線がかち合った。
しばしの沈黙の後、デーモンはため息を吐いて、口を開いた・・・その瞬間。
「ルーク!!!!!!」
デーモンの表情が驚きを隠せていない。
はっとして後ろを振り向いたがその時はもう遅かった。
視線の先にはあからさまな敵意を貼り付けた瞳。
力の限り振り下ろされた鉄の棒。
瞬間、ルークの視界は真っ赤に染まった。
遠くで聞こえる鈍めの音。
自分が撲り倒されたことに気が付いたのは、全身から力が抜けて鼻孔のすぐ傍に紅い滴を浴びた花弁を見つけた・・・その時だった。

 

 

「・・・・ク・・・・・・・・・・・ルー・・・・ク・・・。」
ダミアンの声が頭に響く。
うっすらと目を開けたその中に、ダミアンの心配そうな顔が飛び込んできた。
「・・・良かった・・・。気が付いたようだな。驚いたぞ、お前が庭園に血塗れで倒れていたのを見つけたときには・・・。私がここまで運んでやったん
だからな。ありがたく思えよ。」
一安心したのか、怪我悪魔を労る言葉には到底思えなかった。
苦笑しながらルークも起き上がろうとするが・・・鈍い痛みが後頭部にあり、思わず顔を顰める。
「あまり無理しない方が良いぞ。」
そう言われてそっと頭をなぞってみる。
大き目の布が巻かれて、きちんと手当てがしてあった。
「・・・さっきまでゼノンがいたんだが・・・。局員が探しに来てね、持っていかれてしまったよ。」
ため息を吐いてダミアンが執務用の机に座る。
その表情はいつもの柔和さがなく、厳しいものだった。
「どうした?何か・・・・・。!!!デーモンは?!」
そう言えばつい先程まで自分の周りでうろついていたデーモンがいない。
「・・・こんな手紙が投げ込まれていた。」
これには答えず、ダミアンはくしゃくしゃにされた紙切れを取り出す。
ルークは痛みも忘れて立ち上がり、その手紙をひったくった。
お世辞にも綺麗とは言い難い走り書きで、実に簡潔な文章が並んでいる。

【・・・返してほしかったら皇太子候補を辞退すべし。】

「そういうことか?」
ルークは鋭い視線でダミアンを睨みつけた。
「そう言う事を俺に言いたかった為に、デーモンを引き合わせたのか?」
アメジストの瞳が氷点下の海を思わせるかのように薄い藍色へと変化する。
しかし、ダミアンの表情は少しも変わらない。
それどころか、その通りだと言わんばかりに頷いた。
「・・・アレがこのまま消滅させられてしまおうとも、私にとって何の痛手でも無い。私は皇太子候補を降りるほど優しくもないし、そんな子供騙しのような脅しには動じないよう父上から・・・育てられてきたからね。」
猫目石は相変わらず平静を装ってルークの怒りを映し出している。
「お前は・・・デーモンを見捨てると?」
ルークは一言一言搾り出すように言い放つ。
その質問の直接的な返答を返すつもりなど、ダミアンには毛頭無かろうが。
「・・・それはお前の独断だ。ただし。」
そこで切ると、ダミアンは椅子から立ち上がり、窓の外を見た。
「首謀者達は恐らく、彼がどのような立場の者かを知らない。」
「・・・!!」
ダミアンの言葉を最後まで聞くまでも無くルークは、あっという間にその場から消えてしまった。
彼にとって、そのルークの行動は予想された範疇のものであり、あまりにも予想通りに事が運んで思わず笑みを洩らす。
が、デーモンが必ずしも救出されるというのは百パーセントの事実ではまだ無い。
改めて引き結ばれたダミアンの唇は、外の夕暮れを見つめながら・・・噛み締められた。

 

庭園に残されたデーモンの気配から始まって、彼の意識の名残を追って、全神経を集中させて辿った先には・・・。
思わずルークもごくりと生唾を飲み込む。
一度も訪れたことは無いが・・・、この豪勢な館が一体誰のものであるかぐらい知っていた。
大魔王の旧知の友、大公爵シュグルトのものだった。
「・・・。」
思わず言葉を失ってしまう。
たかが一介の軍事局参謀であるルーク。
堂々と乗り込んで、デーモンを返せと言っても・・・きっと相手にされない。
それどころか、明日の朝には胴体と首が離れ離れになってることだろう。
それは・・・イヤだった。
痛む頭を騙しながら更に魔力を高めてデーモンの影を捜す。
そして・・・。
「居た!!」
地下牢の最奥、鎖に繋がれた姿で、デーモンが萎れている。
「・・・・許さない!!」
ルークは後先を考えずに一気に館の非常線を真正面から突破した。

 

 

「ルーク!!!!」
予想しなかった救出の手を見たデーモンは、思わず彼の名を呼んだ。
「早く!!!鎖ぐらい力で断ち切れるだろう?!」
急がないと新手の敵が押し寄せてくる。
ルークは苛立ち、自然と声も荒くなる。
しかし、その声にデーモンは悲しそうに呟く。
「すまない・・・吾輩の力は・・・封印されているんだ・・・。」
「何だって?!」
魔力を封印された一族の統領なんて聞いたことも無い。
遠くで複数の足音が聞こえ始めた。
もう時間はない。
ルークは力任せに鉄柵を広げると、牢の中に入り込んだ。
「じっとしてろ!!!」
突然自ら牢に入ってきたルークを見てデーモンはビクリと体を震わせる。
「居たぞ!!早く!!ラウル様達に報告を!!!」
衛兵たちが騒ぐのがすぐそこにある。
「くそったれ・・・。デーモン!!お前を拉致したのは一名か?それとも複数か?」
鎖を千切りながらルークが慌しそうに尋ねる。
「・・・何名も居た。」
「分かった!いいか?しっかり掴まってるんだぞ?」
フワリとデーモンを抱きかかえたままルークは浮き上がり・・・一瞬にして牢の天井を崩壊させる。
たった一撃でそれは呆気ないほど脆く崩れ、二名は外への脱出に成功した。
「うあわああああああ!!!!」
何名かの断末魔の叫び声が聞こえる。
恐らく崩落に巻き込まれたのだろう。
だが、今はそんなことに構ってる余裕すらない。
とにかく、この城と追っ手から逃げ切ることの方が先決だった。
「待て!!!」
残った衛兵たちと、高級官僚の息子たち・・・いわゆる皇太子候補の狂気に歪められた顔が見て取れる。
その面子はルークが予想したとおりの連中だった。
自分はその肩書きでしかものを言う事が出来ない、ある意味可哀相な種類になる宮廷のオブジェ達。
ルークは振り返り、顔を見た。
「・・・アレが皇太子候補という連中なのか?」
彼の胸元で呟く声が聞こえる。
ふと見遣ると、先程の怯えた表情とは打って変った表情のデーモンがいた。
「・・・そうだ。お前は・・・。」
ダミアンのスケープゴートだ・・・言いかけて、デーモンに遮られてしまった。
「殿下は吾輩を見捨てろと仰ったのか?それとも、吾輩を救出せよと・・・・お前に仰ったか?」
思いもかけない質問に、ルークは絶句してしまう。
「・・・どっちだ?」
なおもデーモンは詰め寄ってくる。
しかし、本当のことを口にはできなかった。
「・・・俺の独断だ。」
それ以上は何も言わず、彼は大地の砂を蹴り、ひたすら走り、逃走を試みる。
その言葉だけで十分理解できたのか、デーモンは一瞬泣きそうな顔になったがすぐにニッコリと満足げな微笑を浮かべた。
「良かった。それでこそ次期代魔王候補ナンバー1と言われるだけある、ダミアン殿下の御言葉だ。吾輩の父上の判断に狂いは無かった。」
「え?」
失望こそはすれど、逆の意味を持つ台詞にルークは聞き返す。
「お前はそれで良いのか?!」
「それで良いんだ。」
そう、一言呟いて。
デーモンは自らルークの腕から逃げ出した。
「デーモン!!!!」
全力疾走を命令していた足に寸でのところでストップをかけ、ルークは砂埃が舞う中に立ち止まる。
「ほほう・・・もう観念したというわけか?」
欲望のみを表した醜い悪魔達が二名が止まったのを確認すると不敵な笑みを洩らした。
「いや・・・。観念などするものか。」
デーモンはザクリと一歩、足を進めた。
「・・・デーモン・・・。」
「我が父上は、最初からこの陰謀を知っていた。」
突然語り始める彼にルークは言いかけた言葉を止める。
「ダミアン殿下・・・大魔王陛下の一族をお守りするのが我らデーモン一族の運命(さだめ)。父上は情報局で独自の調査網を広げ、彼奴らの計画を
阻止しようと・・・したらしい。今から八万年前の話だ。」
「どうした?何をぶつぶつと呟く?命乞いでもしたいのか?」
じりじりと距離を縮めてくる。
が、デーモンは物怖じしない・・・それどころか、距離が縮まるに従って激しいオーラが、魔力とはまた別の、もって生まれた威圧感だろうか?
策謀者たちの身体を包み込んでいく。
「・・・だが・・・何処からは知らないが、父上の行動が洩れてしまい・・・。・・・父上は、殺された。吾輩の前で。」
「・・・なに?それじゃぁデーモン公は戦死ではなかったのか?」
ルークが知られざる事実に驚きを隠せない。
それもそのはずである。
ルークが仕官学生時代、天界と魔界を破壊しかねない程の力を暴発させた大戦が繰り広げられた。
その時の魔界の功労者はデーモン一族の統領、前デーモン公だった。しかし、讃えられるべきである本悪魔の姿は・・・大戦終了と共に消滅した。
それが歴史だった。
ルークとっては目の前にいるデーモンの存在自体さえ驚愕した事実なのに、今まで自分が信じていた歴史が嘘だったとは。
それが一番ショックだった。
その感情を汲んだのか、デーモンは一瞬だけ笑う。
「歴史とはそういうものだ。本当の事は全て歴史の隅に廃棄されるものだ。・・・当時吾輩は父上が何かを目論んでらっしゃることは知っていたが、
それが何なのかは知らなかった。ある日、尋ねようとして父上の部屋を訪れたその瞬間、父上の背中が吾輩の身体の上に倒れこみ、そして次々と
衝撃が父を通して伝わった。気が付いた時には・・・父上の顔は潰され、強靭な肉体は引き裂かれ・・・。吾輩の知っているあの方では無かった。」
敵から目を離さずにデーモンは相手が仕掛けるのを待っているかのようだった。
魔力は封じられている。
彼はさっき、確かにそう言った。
なのに何だろう?
この自信に満ちた気は。
ルークは何故か不安に駆られる。
「最期の力を振り絞るかのように、父上は吾輩に全てを伝えた。全身を使って、自身の思いを、運命(さだめ)を、そして吾輩が何をすべきか
を。そして吾輩は・・・。自分の意思によって吾輩を隠蔽し、成長を止めた。」
それは宮廷の庭園でルークが問うた事の答え。
「・・・何故?お前は成長を止める必要があった?・・・まさか・・・・・・・・お前は戦うことが・・・。」
その瞬間、初めてデーモンはルークの顔を真正面から睨みつけた。
「違う!!吾輩は逃げたのではない。・・・デーモン一族は、全ての魔力が解放され、その者の力が成長し終わらないと表に立つ事を許されてい
ない。当時、勿論吾輩は力は解放しきれてなかったのでずっと館の中で生活していた。吾輩の存在自体も公けにされることも無く、吾輩はそれを
利用することにした。成長を止め、魔力を封じ、影ながらダミアン殿下をお守りする、その為にダミアン殿下の傍にいることにした。殿下以外の者た
ちには吾輩の事を口止めしていただいて。」
デーモンはさも可笑しそうにくいっと顎をしゃくり、もう目と鼻の先にいる野獣達を指した。
「見てみろ。奴らは吾輩を殺そうとしているらしいぞ?」
つい・・・とデーモンは両腕をピンと伸ばして身体の前に差し出した。
「・・・止めろ・・・。デーモン・・・!!!」
ルークは思わず叫んだ。しかし、デーモンは一瞥しただけですぐに顔は奴らに向けられる。
フワリと湧き上がるデーモンのオーラ。
びりびりと空気を引き裂きながら、膨大な力の渦がデーモンの両手の中に集まってくる。
「ほほう・・・なかなかな力を持ってるらしいな。が、我々皇太子候補の力を押さえ込むことが出来ると思うのか?我らが力を合わせれば、この魔都
を吹き飛ばすなぞ造作も無いことなんだぞ?」
無言の合図で策略者たちの力が全て集中を始める。
それは参謀部で激戦を潜り抜けてきたルークさえも震え上がらせるのに十分なものだった。
「・・・ダメだ!!デーモン、封印を解いたとしても、お前のその身体では支えきれない!!お前が壊れてしまう!!!」
「吾輩は殿下を守り、殿下に命を投げ出す為に生まれてきた。そうして吾輩の父上も死んでいったんだ!!!父のためにも・・・吾輩は!!!」
瞬間。
ルークの脳裏に何かのビジョンが飛び込んできた。
遠くに見える破壊する惑星。
ツキンと冷たく・・・死にかけた華の最期のように薫る、【死】の匂い。
重なる金色と藍色の瞳。
それは・・・彼(デーモン)から香るモノとダブった。
「・・・・死ねぇ!!!」
ほぼ同時にそれは解放された。
狂気に満ちた塊と、明るすぎる純粋な怒りが。
「・・・・・っ!!!!」
そして、もう一つ。
「ルーク?!」
片手を突き出し、燃え上がる鈍色の破壊エネルギーは、策略者達を塵にするには十分すぎるものだった。
「・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!」
次々に細胞以下までに崩壊していく。
砂地に突如として出現したフレアが、それだけでは収まり切れず二名に向かって怒涛のように突き落とされてきた。
「デーモン!!!!!!!」
ルークの声に彼は振り向いた。
そこで、記憶はふつりと途切れた。

 

 

 

 

 

微妙な霞みを作って、視界はやっと開かれる。
デーモンは辺りを見回した。
そこは先程までいた大地とは違い、薄汚れた茶色の岩肌が映る。
何とはなしに見上げると、遥か上空に切り立った鋭い影が見えた。
「っ!!ルーク?!」
「ここだよ。」
あから様に不機嫌な声がすぐ後ろから返ってくる。
振り向くと、あちこち埃にまみれて額から血を流しながらこちらを見つめるルークが居た。
「良かった・・・無事だったのか・・・。」
気が緩んだのか、デーモンの表情からは緊張がほどけて大きな瞳から涙が零れそうになる・・・が。
瞬後の恫喝にそれは硬直した。
「バカヤロウ!!!!!!無事だったから良い様なものを・・・ふざけるんじゃねぇ!!とんでもなく長く生きる予定の悪魔だって、命はたった一つ
だ!!!失ってからでは遅いんだ!!!あんなヤツの為にくれてやるんじゃねぇ!!!自分の為に生きろ!!自分の為に捨てろ!!!俺の前で
もう二度と、誰かの為になんて言葉吐くんじゃねぇ!!!」
自分でも少しオカシイと思った。
何に関してもどうでも良かった筈の自分が、どうして彼の為にこれだけ怒りを表せる?
「・・・吾輩は・・・。」
何かを反論しようとするが、デーモンの口からは言葉じゃないものしか出てこない。
「自分から・・・死に急ぐことは無いんだ。」
ポツリと零された台詞。
「・・・吾輩は・・・。」
語尾が心なしか震えている。
心配になってルークは顔を覗き込んだ。
「・・・おい・・・?」
「吾輩、今から・・・成長する。そして、デーモン一族を治める。」
膝の上で握り緊められた手の甲に落ちて滲む、涙が一つ。
「そうか・・・。じゃぁ・・・帰ろう。」
先に立ち上がったルークは大きな手を彼に差し出した。
そして・・・。
彼もその手を取った。

 

遥か遠い未来が【現実】となった時も。
彼からあの香りが抜けることは無かった。
そう、それは俺が感じた。
纏わり付くように、それは彼の行方を指し示していた。
【死】の香り。
小さく、悲しく、それは香りを伝える為に響く。
協奏曲(レクイエム)。

 

                                                                     F I N

                                                            presented by  高倉 雅

                                                                  Lukeday 4/12

 

Postscript

   S.g.t.ルーク篁三世参謀、御発生日おめでとうございます。
   なんともまぁ、遅れに遅れてしまいましたけどね。(苦笑)
   それはともかく。
   私の中の参謀のイメージは・・・しなやかに強い(笑)です。
   綺麗ですよねぇ、参謀って・・・。
   でも、けっこうワイルドな綿も見え隠れしちゃったりなんかしちゃったりして・・・・。
   今回は・・・かなりなワイルド参謀ですね。
   参謀を何かの曲に例えますと・・・。

   「GLORIA GLORIA」 「嵐の予感」

   です。(^−^)