カプチーノ

 

いつもの席でいつものを。

それが日課。

彼女の大切な日課。

一目あなたに。

ただそれだけを待って。

心臓に悪い事を繰り返して、いつもの席で、いつもの様に煙草なんて吸いながら。

冬を着飾りつつある外に合わせて、熱々のカプチーノで暖を取る。

挙動不審を紛らわせる為に、自分宛のメールを意味無く書き綴り。

今だって。

読み返すと意味不明の言葉を連ねていたり、誰かへの想いを綴っていたり。

 

不意に絡んでくる視線に気が付き顔を上げた。

曇ったガラスの向こう側から手を振る笑顔が見える。

思わず手を振り返して・・・はっとする度に慌てて手を下ろしてみたりして。

結構、単純な自分に噛み殺す照れ笑い。

 

カプチーノのクリームが溶けるのと同じように、彼女の顔から笑みが零れて溶けていく。

 

だけど。

彼女は絶対にこのことを口にはしない。

多分・・・・一生。

絶対的秘密。

この想いだけは永遠に、彼女の中でゆっくりと甘く、切なく、琥珀色の中へ溶けて流れていく。

まるで・・・カプチーノのクリームみたいに。