黄金の都


派手なライトアクションが俺の周りで繰り返される。
客席には数えられないほどの手。
ギターのソロも少ない曲で俺は客席を煽りながら目はチラチラと横を向いていた。
平均身長175センチ以上の俺達の中で明らかに小さな身体がステージ狭しと走り回る。
(あの小さくて細い身体からよくあれだけの元気が出てくるな・・・。)
思わず笑みを浮かべていた。
会場全体のテンションを一気に高めていくあいつの天性の能力は改めてすごいと思う。ここまで10数年、俺とあいつは共に歩んできた。
時には喧嘩もしたり、小さないざこざもあったりしたけど、一つ一つ階段を登っていくように進む。
表舞台は何よりも派手だが、裏を返せば何よりも地味な仕事のこの世界、何より歌うことが大好きなあいつは、ミサのステージでは何の屈託もない笑顔。
客席にだけ向けられる笑顔。
奇妙な嫉妬。
そんな俺の思いを全く気付きもせずにあいつはクルクルと走り回る。

が・・・。いつの頃だったか、あいつは俺の方を突然見た。
俺の密やかな思いをすべて見透かされたのかと、ギクリとする俺に向かってスタスタと近付いてくる。
それからずっと。
この曲ではあいつは俺の元に来るようになった。
いつしか俺の方からステージ中央へ出向くようになっていった。



そして今・・・。
俺はあいつを見た。
客席に見せる笑顔に嫉妬していた俺を吹き飛ばしてくれる満面の笑みが俺を迎えてくれる。
差し出されたマイクに向かって俺は息を吸った。



《夢にまで見た  
EL・DORADO

  
                                                             presented by  高倉 雅