No.98:スポーツカーの黄昏

トヨタ スープラ
トヨタ MR-S
トヨタ トレノ
ニッサン スカイラインGT-R
ニッサン シルビア
マツダ RX−7
ホンダ NSX
富士重 イン○レッサ

これは2001年のJGTCにエントリーしたマシンのベース車両の名前です。これら以外にもディアブロ、911GT3、バイパー等の外国産車種もいたのですが今回は国産車だけの話で。
各メーカーの現役スポーツカーをチューンしてレースで活躍させ、お客さんにそのベース車を買わせるという意味も多分にあるので、基本的にベース車両は現在でも生産が行われている車を使うのが一般的です。だからこれらは全て現在も生産が行われているものです(トレノだけは特別)。
MR-Sやシルビア、イ○プレッサあたりもJGTCに出るとそれなりにグランツーリスモとしての雰囲気を出してるので感心します。

で、話は変わって今はエコの時代です。「21世紀の車は環境との共存だ」ということで世界的にエコな車の開発は進んでいます。先日のモーターショーで、「21世紀の車はITだ」なんてトボけた事を言っていたメディアもありましたが、ITなんかより大事なのはエコです。うむ。
世界は内燃機関を持たない、排ガスの出ない車の完成を求めています。でもちょっとそれは先のことになりそうなので、もう少し簡単な、内燃機関は仕方ないけど、できるだけ排ガスを綺麗に、少なくしようという事も同時に取り組まれています。
燃費が良いことは排ガスの絶対量が少ないことだし、排ガスをクリーンにすればソレだけ環境を侵さないという考えです。
だから環境にやさしい車は税制的に優遇されるし、逆に古い車は環境に悪いということで税制的にペナルティを加えられます。ハチロクなんかもろアウト。
そして車を持っていたりする人なんかなら一度は聞いたことがあると思われる「排ガス規制」という言葉。日本で自動車の製造販売を行おうとする車種は必ず国土交通省の認可が必須なのですが、排ガスの測定値が決められた値をパスしないと認可してくれないというものです。その基準値が先日かなり厳しく見直されて、それ以後新しく認可を受けた自動車はみんな新基準値をパスした車になっています。
で、改正前に認可を受けた車で新しい基準値をパスできない車の為に一定の猶予期間を設けて、「その間は継続販売は許可するけどその期間内に新基準値をパスできるように改良して認可をとりなおせ」という事になっていたのです。で、その猶予期間が2002年の8月。
つまり、今も新車として販売している車の中で、新しい排ガス基準をパスできていない車は2002年8月までしか売ることができないわけです。
排ガスの汚いクルマ。日本ではそれはスポーツカーのことを指します。世界的に見ればフォードやGMのピックアップとかの方がもっと環境に悪いのですが、日本で売ってるクロカンやRVはそれらに比べればガキのオモチャみたいな物なのではそんなに排気ガスは汚くない。
で、そのスポーツカーで現在猶予期間措置としてなんとか生産させてもらっているのが、

トヨタ スープラ
ニッサン スカイラインGT-R
マツダ RX−7
ニッサン シルビア

あたりになります。なんと冒頭に書いたJGTCのベース車両はほぼ壊滅。大変な話です。ちなみにNSXはベース車両はNAだし、ホンダ技研自体がもともとクリーンエンジンを得意としているので実は規制をパスしてます。
一番下のシルビアは来年の2002年8月までに改良を行って継続生産するか、一旦生産を止めてスグに新型シルビアを出すかという話らしいですがどうなるかはまだ微妙なところ。
問題は上の3台。どれも500万円クラスの日本を代表するGTスポーツなのですが、これらは全て2002年8月で生産終了が決定しています。そして当分は後継モデルの予定もなし。どのメーカーも自慢のフラッグシップスポーツを失う事になります。

トヨタはスープラを殺して新しく4000GTを出すらしいけどF1参戦でかなり金を使っているので、どうなるかは微妙。出るとしてもそんなスグには出ないだろうから格下のMR-Sか、匂いの違うアルテッツァ、セリカに代役をさせるのか。
ニッサンもモーターショーで時期GT-Rを出したけど明らかにとってつけたような苦し紛れの「いつかは出す」程度の物だから当分は期待できないしその穴埋めを新フェアレディZにさせるつもりだからフラッグシップスポーツは当分はフェアレディZになるらしい。ちょっとランクダウンか。JGTCもフェアレディZでいくらしいし。
そしてマツダはRX-7を殺して2003年にエボルヴ改め「RX-8」を出すので約半年はGTスポーツ不在。スポーツはロードスターのみになってしまう。

どれも高い開発費を投じて燃焼効率の見直しや触媒の改良を行えば規制をパスすることはできるらしいのですが、今はスポーツカー冬の時代。莫大な開発費を投じても回収は見込めないのでそのまま切り捨てられてしまうのです。
個人的にはRX-7の消滅が特に悲しい。全世界に誇る世界唯一のロータリーエンジン車。GTとしての機動性を有しながらも1200kgという超軽量ボディ。最新のメカではなく、50:50の重量配分と高いパワーウェイトレシオを武器にした走り、そして何よりあのローボディ、ノングノーズショートデッキ、リトラクタブルヘッドライト、ダブルバブルルーフのあのデザイン。マツダ RX-7がなくなると思うと飯も喉を通りません。
一足先に2000年に生産を終えた三菱のGTOとあわせて、日本からGTスポーツというものが綺麗に姿を消してしまう。残るのはちょっと格の違うプレミアムスポーツのNSX、ロードスターとしての色が強いS2000、世界に誇るラリーウェポンとしてのランサー/インプ○ッサ。どれもターボを聞かした分厚いトルクで力任せに走っていくような車ではありません。
世の流れとはいえなんとも悲しい。オイルショックでテールフィン、マッスルカーを失ったアメリカ人の気持ちをちょっと分かったような気がします。

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