No.87:現代ラリーの基礎知識
今回はコラムとは呼ばないな・・・

私は自動車レースが好きだ。もちろん私などには参加できるのもではないので見る専門ですが。
自動車レースといっても世の中にはいろんな種類があるのですが、私は特にラリーが好きです。日本のように法定最高速度60kphなどと言っているケツの穴の小さい厳しい国では なかなか大規模なものは開催できないし、完全にクローズドなサーキットで走る事すらも何故か一般には理解されていないような国では、一般道を使用するラリーは認められよう筈もなく、大半の人がラリーの一般的なルールすら知らないのが現状です。
そこで今回はラリースポーツ、特にWRCというものを見て楽しめれる程度に勉強してもらいましょう。
そもそもWRCとは世界ラリー選手権(World Rally Championship)の略で、F1、WGPと並ぶ世界3大選手権のひとつです。1年間に十数戦(2001年は全14戦)を戦ってポイントを争い、総合優勝を目指します。現在使用されている車のカテゴリーはGr.AとGr.N、WRカーの3種類です。

 

カテゴリー:
FIA(世界自動車連盟)が定めたレース車の種別。現在グループA(Gr.A)からE、Gr.N、プロトタイプ、WRカーがある。2002年からはスーパー1600というクラスも登場、WRCにも参戦可能になる。Gr.A〜Cは市販車ベースで販売台数、改造範囲によって区別され、DはF1、F3000用のフォーミュラマシン、Eはレーシングカートになる。Nはほとんど市販されているままの状態の車。WRカー(World Rally Car、WRCと略すと世界ラリー選手権と混同するのでWRカーと呼ぶ)はGr.Aの発展した形で改造許可範囲が大きい。具体的にはWRカーは年間25000台以上を販売した座席4つ以上の車をベースとし、NAのターボ化、2WDの4WD化、リアサスペンションの形式変更やバンパーの開口部拡大、果ては同社グループA車両からのエンジンの移設まで許される何でもありの規格。グループAは年間2500台販売した2000cc以下の4座席車、サスペンションの形式や駆動方式の変更は不可、ターボ化や排気量変更も不可。Nに至っては更に厳しく、サスペンションの改造とエンジンのバランス取り、安全強化(ロールケージ装着等)ぐらいしか変更は認められないのでほとんどノーマル車である。ちなみにBとCは現在ではほとんど使用されないカテゴリーになっている。

自動車メーカーの全面バックアップを受け、メーカーの名前を冠する。、いわゆる「ワークス」とそうではなく、個人的なチームで参加する「プライベーター」が混在して合計60チームほどでレースを行います。もちろんメインはワークスチームで最終順位の上位はほとんどワークスで埋まります。偶にプライベーターがワークスの中に食い込んでくる事もあり、そういったチームのドライバー達は腕を認められ、ワークスチームから声がかかるわけです。そして目指すものは3つのタイトル、ドライバー、コドライバー、コンストラクターのチャンピオンです。実際のところはチャンピオンになるようなドライバーは年間通じて同じコドライバーと組んでいるので2つのタイトルはペアですが。


何をするのか?
名目上はWRCは速さを競うものではありません。スタートからゴールまで、如何に目標時間に対して正確に到達できるかを競うものです。たとえるなら「大阪から東京まで600分(10時間)で行け」みたいなものです。で、その間を3つの区間(レグ)に分けて1日1レグつづ、計3日で目的地まで行きます。結果的に3つのレグの合計タイムが600分に近い人が優勝、600分より早くても遅くても駄目です。そしてスタートからゴールまでの道はただの一般道を使います。一般道と言っても舗装路(ターマック)から砂利、泥、雪、氷、いろんな道を走ります。他の一般車も走っているし、その国の交通法に沿った車で走らなければいけません。もちろん触媒の無いような違法改造車では整備不良で捕まるし、ガンガン飛ばせば地元警察にスピード違反で捕まります(実際、スピード違反で捕まる事がたまにある)。そうしてゴールまでのタイムの正確さを競うわけですが、このタイムというのが最小計測単位が「分」で、600分と言っても600分0秒から600分59秒までなら同タイム扱いになります。更にこの目標タイムというのが結構余裕を持った時間ですのでプライベーターならまだしも、ワークスのマシンが目標タイムより遅くゴールすることはまずありえません。先にゴール付近に待機して目標タイムまで待ってればいいだけなのでほとんど全車が目標タイムちょうどでゴールします(たまに時間の計算を間違えたりもする)。
じゃぁそれでみんな1位優勝かというとそうでもなく、トータルタイムが同じだった場合、今度は全SSでのトータルタイムの速い順に順位が決定します。だから実際はSSで速いものが優勝する。スピード勝負になるのです。

SSとは?
ラリーには前述のように一般車にまぎれて走るロードセクションともうひとつ、SSと言うものがあります。SSとはスペシャルステージの略で、一般道のある一定区間を一般車が入れないように完全に閉鎖してタイムを競う区間です。1つのSSで20〜50kmぐらい、それが1レグに6〜10ぐらい用意されています。SS内は交通法は関係ないので各車触媒を外して制限速度も無視です。前述のように実質、SSでのタイムが一番速い車が優勝するのでここはみんな全力でアタックします。このSSでの迫力ある走行こそがWRCの魅力であり、観客はその走りをコース脇(道端、ガードレールのすぐ外)で間近に見られるのです。

コ・ドライバー?
さっきから度々出てくるコドライバーとはドライバーの横に座るナビゲーターの事です。この人は何をしてるのか、まさに道案内です。WRCはSSだけでも400kmあるとても長い距離を走らなければいけません。更に目的地へ向かっていくので基本的に同じ道は2度と走らないのでドライバーがコースを確実に覚える事は不可能です。その為WRCは本戦の1,2週間前にレッキと呼ばれる合同下見走行時間が与えられてそこでコドライバーがペースノート(レッキ帳)と呼ばれる文字で書かれた地図を書くのです(レッキに使うのは本戦で使う車以外でないといけない)。記述方法は自由ですが「500m3L」なんて具合にかかれているようです。これで「500m先に3(コーナーの深さ)の左コーナーがある」という意味になります。こんな事がずらずらとレッキ帳には書かれています。そして本戦でコドライバーがそのレッキ帳を見ながらドライバーに指示を出すわけです。ドライバーはそれを信じて先が見えないようなコーナーでも全開で飛び込んでいけるのです。コドライバーは他にも車の計器類を常に監視し、異常を早期に発見したりトラブルの際にはドライバーと協力して作業をします(ラリー中は故障しても2人で修理できるならその場で直して走る)。こうした重要な役目を負うナビゲーターの事を敬意を表して「もう一人のドライバー」「コ・ドライバー」と呼ぶのです。

全車同時スタートでは無く、各車1,2分間隔で順次スタートというのもラリー・WRCの特徴です。早くゴールするのではなく、短いタイムでゴールするのが目的になります。

つらつらと書いてみましたがコレだけ分かっていればもうWRCを見ても十分に楽しめるはず。今でも三菱ランサー、スバルインプレッサ、プジョー206といった日本でも街中で普通に見かける車がワークスという、メーカーの威信を背負った世界最速のドライバー達の手で、普通の道を物凄い速度で駆け抜けていくのがWRCなのです。
ヨーロッパでは日本とは比べ物にならない凄い人気のF1、それと同等、それ以上の人気があるWRC。みんなで応援しましょう!

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