No.84:オトコだったら乗ってみな!
よく、洗剤のCMで「従来品」と「新製品」と書かれた2つの洗剤で白い布を汚したものに2つの洗剤を適用して洗浄効果の違いを見せるのがやってますよね。昔から。決まって新商品は驚くほどの白さを発揮し、従来品の方で洗った方は汚いままですよね。あれを見ると技術の進歩は目覚しいななんて感心してしまうのですが、それと同時にホントに界面活性の分野はこれほどの技術革新の余地が残っていたのか?もう十分完成されてても良いと思うんだけどなぁなんて事も思ってしまいます。そもそも新製品で汚れが落ちるのは良いとして従来品はなぜあんなに汚れが落ちないのか。あれじゃ不良品・粗悪品です。いままで我々にそんな物売りつけてたのでしょうか。その従来品だって出た当時のCMでは同じような感じで更に古い洗剤に対して圧倒的な能力を発揮してたはずです。コレは如何に?!あのCMは嘘なのか?しかし日本にはJARO(Japan Advertising Review Organization,inc./社団法人日本広告審査機構)と言うものがあるからあのCMとてそれほど大嘘と言うわけではないでしょう。だとすれば、昔の汚れと今の汚れは質が違うのでしょうか?しかし汚れの質が日々進化していくと言うのもなにか信じがたい話です。他に考えられる理由は洗剤の能力が下がったという事。すなわち新商品として出てきたときには圧倒的能力でありながら徐々に、且つ意図的にその能力を下げていき、あるときその商品の新登場当時の洗浄能力+α程度の洗剤を新商品として世に送り出しているのではないか?と言うことです。コレもちょっと信じにくいような話ですが、自社製品の品質を意図的に下げると言うことは実際にある話なのでまだこっちのほうが真実味があります。もし私の推測が当たっているとすれば我々は洗剤屋に踊らされているピエロと言うわけです。おのれ洗剤屋め。
とはいえ別に値段もそんな上がるわけでもないし、旧製品は新製品の登場とともに市場から姿を消すので実害は無いと言えば無いのですが。
と、そんな事は雑誌に限らず世の中には数多くあるわけです。「新商品は従来品に比べてこんなに違う」みたいな事が。
と、ここまで長々と振っておいてここからはやっぱり車の話。新スカイラインのネタで。
誰もが知ってる日産自動車が国内に誇るスポーツカー、スカイライン(世界に誇るのはフェアレディZ)。平成元年に登場したR32型は、自慢の直列6気筒RBエンジンから繰り出される圧倒的なパワー、端正なデザイン、久々に復活したGT-Rの影響もあり爆発的な人気でした。連続ヒットを狙って基本的にはキープコンセプトで出されたR33はスポーツカー低迷の状況からか、少しサイズを大きくしすぎた為か、R32ほどの人気にはなりませんでした。状況打開を狙って出されたR34も、懲りずに大きくしたボディのせいか、デザインがあまり受け入れられなかったせいか、901運動でボディ剛性を上げた見返りに重量が重くなりすぎたせいか、状況を打開することは出来ませんでした。
そして気づけば日産の景気は地に落ち、CEOは異人さんになり、普段街を走っていても日産の新車を見ることが少なくなってしまいました。去年は過去最高の利益をあげたと声高に叫んでみても、その儲けは資産売却や人件費削減によるもので、車の販売台数は一向に回復していません。
そんな状況の中、来る6月18日に新型スカイラインV35型が発表されます。今度は低迷を続けるR34を完全に捨てて新しいコンセプトで作り直したモデルになります。とりあえずは4ドアのセダンモデルから、2ドアクーペは出るのかどうかもまだはっきりしません。
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簡単にV35の特徴を説明すると、エンジンはその型式が示すようにスカイライン伝統の直6ではなく遂にV型6気筒エンジン、おなじみのVQ型をさらに改良してガソリン直墳にして搭載するようです。排気量は2.5、3.0、3.5の3種類で、すべてNA。エクステリアもほとんどの日本人が今までスカイラインに持っていたイメージを大きく覆すなんともオヤジ臭い、おとなしく小洒落れたデザイン。ヘッドライトあたりを新インプレッサみたいに丸く膨らませてあるあたりが今風かも。インプレッサのそれは初心者には車幅感覚が掴みやすいとかあるらしいけど、スカイライン(4ドア)のメインターゲットにもなると思われるオジサン世代には「運転していて目障りで邪魔でムカツク」と好評を得ています。個人的には格好も悪いと思うし。ついでにスカイライン伝統の丸形テールランプも廃止されています。
性能的な目玉はリップルショックアブソーバーと言う物の採用でしょうか。コレの採用で微振動を吸収しながらも消して柔らか過ぎない乗り心地だそうです。なんかオヤジ臭そうですがコレはコレでオトナの走りで良いかも。4ドアセダンだし。
あとはATのみってのも大きな特徴ですね。しかも日産自慢のエクストロイドCVT。いくら直墳エンジンとマニュアルミッションのマッチングが悪いとはいえ、いくらオヤジ4ドアとはいえ、日産の誇るスポーツカーからマニュアルモデルがなくなるのはいかがなものかと思いますが。
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で、そのV35の雑誌での取り上げ方が凄い。スクープ紙が騒ぐのは当然として一般の自動車雑誌でもほぼすべてで巻頭記事として大量のカラーページを割いています。まぁ素人目にも日産が大量の広告費をつぎ込んだのは明白なのですがいくらなんでも凄い扱いです。景気の悪い自動車メーカーが過去の伝統だけを引きずって今や御荷物にさえなっている車種に大幅テコ入れをするだけで、そんなに騒ぐほどのものか。エンジンもミッションも完全新開発ではなく、デザインも別に奇抜と言うわけでもなく、目玉のリップルアブソーバーにしても完全な初登場ではなく、R34型のGT-RのM-specに既に採用されているものです。冷静に見るとそんな凄いものとは思えません。
更にコレだけの情報を頼りに私が思うのは「スカイラインはスポーツカーからちょっとスポーツ風オヤジセダンになった」という事。大人し目のデザイン、当面4ドアしか出ない、馬力自慢のターボから燃費の良いNAへ、リップルアブソーバーで快適運転、MTは無し、コレではスポーツ辞めましたといってるようなもんです。それでも雑誌記事ではスポーツ色を前面に押し出している。
「性能はR34を大きく上回る」「コーナー2つでR34を置き去りにする」ホントかオイ。
この記事は日産がそう書くように雑誌社に命令しているのではないかと思ってしまう。
これはスカイラインという車の国内他社には無い非常に特殊な位置付けが原因ではないかと思う。スカイラインは日産にとってスラッグシップスポーツであると同時に普及車種でなくてはならないという事。スープラ、RX-7、S2000などに引けを取らない性能を確保しながらもマークII三兄弟やアコードあたりと同等の販売台数も確保しなければいけない。だからこそスカイラインには4ドアセダンと2ドアクーペ(セダンベース)が存在し、NAもあればターボもあったのです。一昔前ならともかく、今のスポーツ低迷の時代にソレは非常に難しいと思う(スープラ、RX-7、S2000は初めから販売台数目当てでは作られていないし、アコードもマークIIは販売台数を第一に作ってあるハズ)。それでもその使命があるから日産はV35をオヤジセダン風に作っておきながら雑誌社にはスポーツ色を強調させる。
今こそスカイラインはスポーツ色を抑えて販売台数を伸ばすのに専念してスポーツフラッグシップをフェアレディに任せるか、スカイラインをクーペのみにして販売台数はローレル、セドリックに任せるべきだと思う。セドリックはモデルチェンジしたばかりでしかも販売台数は全く芳しくないから当分はちょっと厳しいけどローレルなら今から新しいのを出して何とか成功させるチャンスもあるハズ。ソレなのに日産はローレルをいまさらFF化しようとしてるしワケワカラン。既にFFセダンにはサニー、プリメーラ、セフィーロ、ブルーバードとフルラインナップ揃っているではないか。それにローレルまで当てて自車どうして潰しあうつもりだろうか。
こんなことを続けている日産がいつ販売台数を伸ばして「真の復活」を果たせるのか楽しみです。
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