No.83:相手の気持ち
私の小さいころから学校にはイジメと言うものはちゃんと存在してて、最近の人の命にかかわるようなほどのレベルでは無いながらも、ちゃんとイジメ行為は行われてました。もちろん私はいじめられるよりいじめるほうでしたね。断っておきますが「どちらかといえば」ですよ、別に積極的にいじめてたわけじゃありません。まぁそんなことはどうでも良いのですが。
イジメってのは質的、量的に弱いものに対して勝つと分かっている戦を仕掛けるようなもんですから、結構現実的で、ある意味スマートな物かも、なんてちょっと思ったりもします。相手に対して圧倒的に強いからこそいじめる事ができるわけで、強いものの特権、「悔しかったらオレをイジメてみろ」ですからね。本来世の中ってのは、強い者は弱い者を自由に操り、時には命までもを掌握するべきなのです。
ちょっと話がキケンな方向へ向かいそうなので戻します。で、誰もが学校で一度は耳にしたことがある、いじめてた人なら絶対一度は言われたことがある「いじめられる人の気持ちになって・・・」という有名な言葉。何度聞いてもクサイ言葉なんですが、どうですかコレ。そんなもんいちいち気にしてたらイジメなんて出来んわコラ!とか、分かっててやるから楽しいんじゃボケ!なーんてイジメっ子達の心の声が聞こえてくるようですが、こんな事いわれてイジメをやめる人なんているとは思えません。そもそも、小学生や中学生みたいなまだ小便臭いクソ坊主どもに、物事を自分とは反対の立場から考えることなど無理なのです。自分とは反対の角度から物事を考える、見る。このイジメの例で行くと、いじめている人がいじめられている人の気持ちを考えるのです。当然イジメている自分の気持ちは捨てて。一度イジメた事のある人間にいじめられた事しかない人間の気持ちなんてわかるとは思えません。
相手の気持ちを考える。コレは我々社会人にとっても、基本的な事ながらとても重要、そして難しい事です。個人としての人間関係はともかく、サービス業では言うまでも無く成功のためには必要不可欠だし、最近では製造業でもとても重要なファクターです。ちょっとここで私の得意なファミレス業界で見てみましょう。ファミレスも当然サービス業ですから、相手(客)の気持ちを考えていかなければ成功はありえません。そんな事当然わかりきっているのですがコレがなかなか難しい。サービスを提供する側の事情をわかっているだけになかなか純粋な客になれない。
たいていのファミレスは注文を受け付けてから10〜20分で料理を提供する事を目標にし、任意の時間(ここでは20分とします)にラインを置いてそれ以上時間を超えないようにしています。そしてその成功率(時間内提供率)を数字で出して管理するのです。あたかもコレが客の満足度のすべてであるかのように。しかし、時間内提供率はあくまで目安であることを忘れてはいけません。客の中には15分で料理が来ないと「遅い」と文句を言う人も居るだろうし逆に30分でもなんとも思わない人も居るかもしれません。こんなあたりまえのことさえも提供する側に徹しているとわからなくなったりするのです。
また、3人のお客さんが3品の料理を注文した事を考えてみましょう。この3品が5分>15分>20分の順番で順に出されたとします。この場合提供する側にしてみれば「すべての料理を規定時間(20分)までに出し終えた」という結果が残ってメデタシメデタシとなるわけです。では逆にすべての料理が21分で同時に出されたらどうでしょう。「規定時間オーバー、客の満足は得られなかった、申し訳ない」となるわけです。でも客の立場になって考えてみるとどうでしょう。おそらく大多数の客は後者の方が満足するでしょう。前者の場合は始めの料理が出されてから最後の料理が出るまで15分の時間差があります。最後の料理が出る頃には始めの料理は食べ終わっているだろうし、食べずに待っていたら完全に冷めて(ぬるくなって)しまって居るはずです。3人組のお客さんならたいていの場合は話も弾んでいるだろうし、21分ぐらいなら平気で待ってくれるはずです(まぁ当たってるだろうけどコレも私の勝手な予想に過ぎないのですが)。こんな基本的な事すらもサービスを提供する側にまわってしまうと見えなくなるのです。恐ろしい。
更にファミレスはその名の通りファミリー(一般家族。「裏切り者には死を」とか言ってる黒ずくめの男たちとは全然違います)をメインターゲットに据えているので当然お子様向けの料理も用意しています。お子様が個人で来る事は考えづらいのでお子様料理単体に儲けを回収する事はさせずに結構安い価格にされています。当然お子様料理はそのテーブルで他に注文された料理よりも早く提供する事が至上課題です。こんなのは何処でもマニュアル化されています。ソレを提供側の都合で順番を違えて出してしまってはお子様のお怒りはごもっとも。愛息の機嫌を損ねられたお客さん(財布の持ち主)も怒って店員に文句を言ったりするわけです。この瞬間にメインターゲットである大事な家族(客)を一組失ったかも知れないのに、文句を言われて逆切れしたり、裏に戻って愚痴を言い出したりする。これはもう既に「相手の立場になって・・・」とか言う気は全く無いとしか思えません。
ファミレスには「中間下げ物」という物があります。食べ終わった皿をまだ座ってるお客さんのテーブルから引き上げてくる事なのですが、客のテーブルから邪魔な皿を取ってくるという意味もありますが、早めに下げてきてさっさと洗ってしまったほうが楽なんていう提供側の都合も多分に含んだサービスです。コレも本来は違反ギリギリのきわどいサービスです。3人で食べにきて、2人が食べ終わってまだ1人は食べいる最中に2人の皿を下げたらどうなるでしょう。食べてる1人に無言のプレッシャーをかけてるようなもんです。半数ぐらいの客は心の中で不快感を覚えるに違いありません。全員食べ終わっていたとしても「皿を下げる=早く帰れ」と不快に思う客も居るでしょう。だからこそ中間下げ物では「お皿をお下げしてよろしいでしょうか」と伺いを立てるのは当然だし、必須なのです。伺いを立てずにいきなり皿を持っていこうとして客の怒りを買うのは当然です。ともすれば、そんな事さえもわからないのです。
相手の気持ちになる。人生20年以上生きてきた私にすら難しいです。
人の心なんてそう簡単に分かりはしません。
|