No.70:俺って不幸?
私には、数年前にひとつ悟った事があります。まぁそんなにたいそうな事ではないんですが。

それは「誰もが一番辛く、楽しい」と言う事です。何の事だかさっぱり分らないと思うんですがまぁそういう事です。

私のこれまでの人生は消して平坦なものでは無かったと自分では思っています。結構他の人に比べると苦労して人生歩んできてると。とはいえそんな事をみんなに言ったところでどうなるわけでもなし、苦労話を人にするなんて”ガラ”でも無いのでその事をほとんど口にする事無く今まで暮してきました。そんな中で私は高校の頃、ある友人と出会いました。気さくな人で周りのみんなからもそれなりに人気があって、私とも気の合う人でしたが、その人には一つだけ困った事がありました。それは何事に対しても妙に被害者意識が強いと言う事です。特に私にとってこたえたのは「自分の人生は今まで大変だった。特に親の虐待はひどく、それに耐えて生きてきた。こんな普通に育ってきたのが不思議なくらい」という内容の話です。その人はその話を結構本気で語るんですよ。わざわざ事例を添えて。みんなと居る時だけでなく、二人だけで居る時も。私はそういうシミッタレた話はもともと嫌いだからすぐに明るい話題に切替えてしまうんですが、正直私から見ればそんなたいしてひどい話では無いんですよね。本人は自殺しようかと思ったとか言ってるほどだけど、私にしてみればゴミのような話です。世界で一番辛い人生歩んできたと思ってるその人は、私がもっとキツイ人生送ってきたなんて事は微塵も知らずにその事を折に触れ話かけてくるので私もそのうちハラが立ってくる程でした。

まぁあの頃は私も若かったんですねぇ。(注:今も十分若い、むしろ心はTEEN-AGER。)
そして高校も卒業し、その人ともだんだん疎遠になったある時ふと、冒頭の事に気が付いたわけです。その人にとってその人の人生が唯一なのだという事に。私にとっての人生が現在どんな状態にあるにせよこの苦しみ、楽しさは私だけ、他人には分かるはずも無く、また私にとってこれ以上の苦しみもこれ以上の楽しさも味わった事が無いのです。それはまたその友人にとっても同じ事。その人はその人なりに、私は私なりに一生懸命(時には妥協も)、自分にとって唯一の人生を生きてきてこれからも生きていくということを。生まれながらに金持ちで何不自由なく暮らしているような人でもその人なりに悩みもあれば苦しみもあり、その人なりに一生懸命生きている(ハズ)だと。
そうしてちょっと強引ながらも前向きに考えるようになり、高校の頃その友人に時折抱いていた感情を恥ずかしく思ったものでした。
偶然にもちょっとした縁でその友人と最近また会うようになったのですが、私の気分の中では随分と違った接し方が出来ているようです。ま、その友人は何も知らないでしょうけど。

ちょっとマジメな話でした。

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