ふらふら業務日誌


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8月15日   サイト移転のお知らせ
赤ん坊の誕生後怒涛の一ヶ月が過ぎ、ようやく落ち着いてきた。二人目で経験がある分、一人目より多少は余裕があるが、大変なことに変わりはない。特に母親の苦労というものは並大抵のものではない。みなさん、街で小さい子連れの母親が困っていたら親切にしてあげてください!
 
さて、開設以来一年半ほど続けてきた当サイトですが、第二子誕生を機に更新の簡便化をはかり、エキサイトブログに移行することにしました。
 
『悪徳書店員日誌U』  akuto9book.exblog.jp
 
多少趣向を変えていくつもりなので、引き続き閲覧頂けたら幸いです。
これまで本当にありがとうございました!

7月17日  
先週、長女が誕生したので、今週一週間育児休暇をもらいました。
ありがたいことです。

6月29日   だめな美容院
これから新しい美容院をオープンする、という男性客から電話があったので、店用のファッション雑誌の定期購読の申し込みかと思ったのだが、「25歳から30歳の女性向けファッション雑誌にはどんなものがありますか」ときた。こんなことをいまさら聞くような美容院はダメだよなあ、と思った。

6月27日   いろいろ
しばらく書くのをサボっていたので思うことをまとめていくつか。
 
●荻原浩『明日の記憶』が渡辺謙主演で映画化とのこと。中年層がメインターゲットになるだろうが、堤幸彦監督なのでどう料理されるか楽しみ。小説の映画・ドラマ化はベストセラー確実なので、荻原さんよかったですね。
 
●長新太さんが亡くなられた。私は今年になって絵本を浴びるように読むようになったので、長さんの偉大さが前よりもよくわかる。長さんの作品は膨大な点数に及び、画期的・衝撃的な作品も数多く、絵本界に与えてきた影響は計り知れないだろう。もう、あの変な絵の楽しい絵本が新作で出ないのは本当に淋しい。
 
●最近、「11歳」「12歳」を売りにした少女の写真集が多いように思う。テレビの子役などで出演している子が多いようなので、本人や親は将来のアイドル・女優への第一歩みたいに思ってるのかもしれないが、購買者は完全にロリコン男だぞ。水着ショットも入ってるようだけど、いいのか、そんなんで?

6月8日   マツケン
『マツケン・サンバUフォトブック』(竹書房)が発売。例の東京ドームコンサートのライブ写真集で、マツケンが来ていた衣装の金のスパンコールが封入されているなど話題騒然!と、ワイドショー番組で報道していたのを見て、ちゃんと部数が入ってくるだろうかと心配していたのだが、意外にも問いあわせゼロ。マツケンの人気がかなりアップしているのは間違いないはずだが、写真集の売れ行きと結びつかなかったようだ。そこらへんが読みの難しいところだ。
ちなみに、「暴れん坊将軍」のテーマ曲は名曲中の名曲だと思う。

6月7日   今年もムシキング
昨年、「甲虫王者ムシキング大図鑑」(小学館)が出た時、かつての虫捕り少年魂に火がつけられ、たくさん仕入れて大いに売りまくった。子どもたちの間ではすでに流行っていたが大人の認知度はまだまだで、先取りして売ったという自負があった。しかし人気が高まり本の種類が増えベストセラーになるにつれ、飽きっぽい私は「もうムシキングはいいや」としばらく放っておいた、しかし。今年も夏が近づき、「ムシキング大図鑑2005」が出たりするのを見ているうちにまた、自分の中でムシ気分が盛り上がってきた。さっそく、ムシキングを中心にカブト・クワガタコーナーを設置。今年はムシキング効果でカブトのフィギュアとか図鑑とかもあるから、かなり賑やかになった。やっぱり、虫捕り少年は夏が命。真夏が待ち遠しい!

5月18日   山周賞/三島賞
第十八回山本周五郎賞に、荻原浩『明日の記憶』(光文社)と垣根涼介『君たちに明日はない』(新潮社)が、第十八回三島由紀夫賞に鹿島田真希『六〇〇〇度の愛』(「新潮」2月号)が選ばれた。当HPをご覧頂いてる方はご存知かと思うが、荻原浩は悪徳書店員がこの一年ほどプッシュしていた作家。はっきり言って直木賞よりもレベルが高い山周賞を受賞したことは本当に嬉しい。応援していた作家がビッグタイトルを受賞すると、嬉しい反面、もう自分の役割は終わったなと、積極的に売る意欲が失せてしまうのが私の悪い癖なのだが・・・。世間一般的には山本周五郎賞なんていってもピンとこないはずだから、本当はこれからが力の入れどころなんだけどね。次は、「書評」の方に書いた『太陽の塔』の森見登美彦を売ろうと燃えているところ。まあ、売れないとは思うけど・・・。

5月11日   ちびくろさんぼ
復刊された『ちびくろ・さんぼ』(瑞雲舎)がよく売れている。それは「児童書としては良く売れている」というレベルではなく、オールジャンルのベストで上位を続けている。この作品に対する関心がこんなにも高かったことに驚かされた。

5月4日   『半島を出よ』はすごい!
発売一月を過ぎて、いよいよ村上龍『半島を出よ』の売れ行きが伸びてきた。著者がテレビに出たり、書評が出るようになった効果だろうが、この作品に関しては口コミで噂が広まっている面もあると思う。これだけとんでもないものすごい小説は滅多にないから、読んだら人に何か語らずにはいられないのだ。上下巻の長大な作品だが、売れて当然のすごい内容。今年のナンバー1は、これで決まりでしょう。とにかく多くの人に読んでほしい。問題作だ。

4月22日   グイン・サーガ100巻
先日「グイン・サーガ」第100巻『豹頭王の試練』が発売された。刊行当初は「全100巻」という構想だったようだが、だいぶ前から「100巻では終わらない」と著者が宣言していて、今ではいつ終わるのか著者ならぬ神のみぞ知るだ。なんたって、100巻なのにまだ主人公(豹頭王グイン)の「試練」なんだから。94巻で主な話が終わったかと思ったんだが、まさか××××になっちゃうなんてね。
 で、早川書房企画の「100巻記念全巻フェア」というのをやっているのだが、完全な続き物語だから途中から始めるわけにはいかない。これはむしろ「途中で挫折した人よ、再び!」という挫折者呼び戻しの意味合いが強いフェアなのかな、と思った。ところが先日1巻から10巻までまとめて買っていったお客さんがいた。これから100巻に挑戦するとは!気合が入っているな。えらい!

4月20日   もうついていけない
それにしても、各社から出ている「祝ケータイかいツー!たまごっちプラス」の本は売れ続けているなあ。これだけ売れるということは当然、たまごっち本体を買った人がたくさんいるというわけで、私の周りには誰も持ってる人がいないのでなんとも不思議な感じ。昔のたまごっちと比べて、携帯と連動したり他の人と通信したり、やたらと多機能になってるようで、説明のHPを読んでいるだけでわけわからなくなった。めんどくさいことが苦手な私にとって、こんなめんどくさいおもちゃで遊ぶなんて狂気の沙汰。ついていけん。今の子どもじゃなくてよかった、と思うあたりもう過去の人間。たまごっちプラスで自由に通信してる小学生にコンプレックスと嫉妬心を抱く32歳。

4月19日   絵本でイチコロ
元気があり余って夜遅くまでなかなか寝なかったうちの息子が、3歳過ぎてから絵本を読んであげるとコロリと寝るようになった。少し長めのお話にも興味を持ってきたおかげなのだが、寝かせ用にたくさんの絵本が必要になり毎週のように図書館に通うようになった。絵本ばかり借りていたら図書館の人が「お父さんの本が借りれなくなっちゃいますね」と言って子どもの分の貸し出しカードも作ってくれた。3歳の子もカードが作れるなんて!親切だ。図書館では新刊がなかなか借りられないので、結局自分の本は店で買って、親子のカード合わせて10冊の絵本を借りているのであった。絵本読みは奥深いです。

4月12日   半島を出よ
村上龍の最新刊『半島を出よ』(幻冬舎)にはまっています。久々に、とんでもない小説。こうしてる間にも早く続きが読みたい!

4月6日   本屋大賞発表!
昨日、2005年本屋大賞が発表された(http://www.hontai..jp/)。
大賞は下馬評どおり、恩田陸『夜のピクニック』。悪徳書店員的には盛り上がらない作品だったが、まあ無難なところでしょう。注目すべきは、2位に荻原浩『明日の記憶』が入ったこと!恩田陸はすでに超メジャーなので、今年は荻原浩をガンガン売って大ブレイクの年にしたいところ!
私の大嫌いな『袋小路の男』が4位という上位に来ていたことが理解できずショックだった。傑作と言える『私が語り始めた彼は』が9位だったのも残念。

4月1日   一息
取次(本の問屋)が3月末決算なので、3月後半はやたらと荷物が多くて大変だったのだが(決算前に在庫を減らそうと荷物をためずにどんどん送ってくるのだ)、4月になったとたんに笑っちゃうほど荷物が少なくなって今日は楽勝だった。またすぐに多くなるだろうが、こういう一息つける日があると嬉しいものだ。もっとも荷物は楽でも、春休みなので店頭に子どもたちが襲来して極めて忙しかったのだが。

3月27日   めがね
子どもと激しく遊んでいたら、眼鏡を壊されてしまった。見事に折られて再起不能。早速新しいのを買いに行ったが、納品まで5日かかるとのこと。やむなく昔の度が弱い眼鏡で代用しているが、見えにくくてたまらない。なにより、文字が読みづらいことは、活字中毒者にとってこれ以上ない苦難である。

3月26日   醍醐味
本屋の仕事の中でいちばん楽しいのが新刊の荷物を開けるときだ。毎日いろいろな本がやってくるが、変な本やすごく面白そうな本が出てきたときの「おっ、これは!」という驚きは一度味わうとやめられない。仕事を中断してすぐに読み始めたい衝動に駆られることもしばしば。昨日は村上龍の『半島を出よ』(幻冬舎)の分厚い上下巻が出てきてプンプンと面白そうなオーラを発していたので、ん、これはなんだか久々にすごそうだ、とすぐに読み出したくなった。事前に出版情報を得ている本でも、現物を見てみないと面白そうか意外とショボイか、つまり売れそうかそうでないか、は実感としてつかめない。やはり本は「モノ」なんだなあと思う。

3月24日   福山雅治
昨日、福山雅治のデビュー15周年記念写真集+インタビュー集『伝言』(集英社)が発売されたが、即日売り切れ。事前予約はそれほど多くなく、値段も5000円と高価なので売れ残りを懸念して控えめに注文したのが甘かった。同僚の、「福山雅治も、もう昔ほど人気ないだろう」という根拠のない発言にも惑わされた。多めに仕入れとけばガンガン高額本を売れたのに。残念。読みが甘かったなあ。

3月23日   個人情報保護法
4月1日から個人情報保護法が施行されるということで、『これだけは知っておきたい個人情報保護』(日本経済新聞社)が全国的にベストセラーのトップを続けている(500円という安価も要因のひとつだろう)。書店においても毎日新規の客注で個人情報を得ているので、法に則った対策をしなければならず、結構大変だ。思い返せば去年の今頃は、価格の総額表示対応に追われていた。近い将来、新消費税対応に追われることになりそうな予感・・・。

3月20日   となり町戦争
小説すばる新人賞受賞作『となり町戦争』三崎亜記(集英社)が地味にロングセラーを続けている。かねがね、現代日本を舞台に市町村や県・地方どうしが戦う小説があったら面白いだろうなと思っていたので、この小説はほぼタイトル買い。ところが・・・。悪くない小説だとは思うけど、自分の期待していた方向に話が進まなかったのでかなり残念だった。「見えない戦争」がこの作品のテーマのようだったのだが、『吉里吉里人』のようなタイプのものが読みたかったのでね。まあ、自分の望みどうりの展開を期待する方が傲慢なんだけど、たまにぴったりはまるととても嬉しい。馳星周の『漂流街』はまさにそんな作品だった。

3月17日   学参期
多くの人にとって本屋の学習参考書売場は、高校卒業または大学入試終了後から全く縁がなくなるだろう。しかし、少子化とはいえ学生がいなくなることはないから、本屋の春の売上げにおいて学習参考書の占める割合は非常に高い。よって、3月4月を「学参期」と呼び売場構成・商品手配に力を入れるのである。しかし商品自体は、表紙は地味、書名はみんな似てる、内容もつまらない、というわけで本を売る楽しみはあまり味わえない分野でもあり私は苦手だ。辞書はともかく、いわゆる「教科書ガイド」は例えば同じ出版社の『数学T』でも、教科書番号という番号(表紙の上に書いてある002とか004とか)が違うと内容も違ってくるので、店の近隣の複数の学校がそれぞれどの教科書を採択しているかを把握していなければならず、非常に面倒なのだ。うちの店の担当者は毎年それをきちんとこなしてくれているので、頭が下がる思いだ。

3月16日   海賊
マラッカ海峡で日本船が海賊に襲われた事件が世を騒がせているが、さっそく出版社から海賊関連本のFAXが来た。事件やニュースがあると必ず便乗して関連本を売ろうとするのがこの業界の常だが、「海賊」というのは初めてだよなあ。当然だけど。これまでマイナーな専門書でしかなかった本が、何かのきっかけで突然脚光を浴びる(そんなに浴びてないけど)、そういうのはなかなか嬉しいものだ。

3月8日   カラフル?
久々に新書の棚を覗いたら、何やら目がチカチカする。赤青緑黄とやたら目立つ背表紙が棚のあちこちに散らばって賑やかだ。統一されたデザインで地味な担当分野の代表格である新書には大いなる異変だ。昨年デザインをリニューアルした新・講談社新書のせいなのだが、当初は「変なの」くらいにしか思わなかったが、新刊点数が増え、既刊もカバー替えが行われて棚が色づいてくると、なかなか壮観だ。カラフルで楽しいとも思えるし、見づらくて鬱陶しいとも思う。みなさんは、どう思いますかね?たまには新書の棚も覗いてやってください。

3月7日   金持ち講談社
昨年、講談社がやたらと拡材を送ってくるので捨てるのに困る、ということを書いたが、映画『ローレライ』公開に合わせ、講談社文庫『終戦のローレライ』&福井晴敏フェアのPOPやらチラシやらオリジナル新聞(!)やらが大量に送られてきてまたまたうんざり。もう貼るとこないですよ!私の嫌いな作品だけにうんざり度も増しているのだが・・・。しかし講談社は金持ちだなあ。

3月2日   悪徳書店員的本屋大賞ベスト10
本屋大賞は候補作10作を全部読んだ上で、ベスト3のみを順位をつけて投票する仕組み。けれどせっかく読んだので今年も10作全部に順位をつけてみた。
 
●1位●『明日の記憶』        荻原浩   (光文社)
●2位●『私が語り始めた彼は』  三浦しをん (新潮社)
●3位●『対岸の彼女』        角田光代  (文藝春秋)
●4位●『犯人に告ぐ』        雫井脩介  (双葉社)
●5位●『家守綺譚』          梨木香歩  (新潮社)
●6位●『チルドレン』         伊坂幸太郎 (講談社)
●7位●『夜のピクニック』      恩田陸   (新潮社)
●8位●『そのときは彼によろしく』 市川拓司  (小学館)
●9位●『黄金旅風』         飯嶋和一  (小学館)
●10位●『袋小路の男』       絲山秋子  (講談社)
 
実は、一番のめりこんで夢中になった作品は『犯人に告ぐ』だったのだが、どうしても投票の推薦文が書けず、泣く泣く4位にした。このように、面白い本なのになぜかうまく紹介文が書けない本がたまにある。もちろん自分の力量不足でもあるのだが・・・。『明日の記憶』は当初4位だったのだが、本屋大賞の主旨が「本屋さんがいちばん売りたい本」というようなものなので、今いちばん売りたい作家、荻原浩を1位に抜擢。正直、『明日の記憶』は大賞には弱いけれど、『メリーゴーランド』とあわせて2004年の大賞ということならいいかな、と思ったので。
一方、ダントツの最下位は『袋小路の男』。久々に大っっっ嫌いな最低の小説と出会った。読んで大損した気分。とはいえ、川端康成文学賞を受賞して評価されている作品ではあるので、人によってはいいと思うのかもしれないが・・・。理解できん。
 
本屋大賞の公式発表は4月5日。どうぞお楽しみに!
 

2月27日   投票終了
昨晩ようやく本屋大賞の投票が完了!(締切りは明日だった)。今年は最後まで悩みました。悪徳書店員のランキングは近日中に発表します。
 
今週はジャニーズ・カレンダーが入荷(ジャニカレは学生向けに4月始まりのスクール・カレンダーなのです。しかしどう見ても30代のジャニーズ・ファンも結構予約していた)。また、皇太子が紹介したドロシー・ロー・ノルトの本(紹介した詩が載っている『あなた自身の社会』(新評論)や、ベストセラーの『子どもが育つ魔法の言葉』(PHP)など)の問い合わせが殺到。皇室の影響力は甚大である。
なかなか忙しい一週間だった。

2月19日   難航
「本屋大賞2005」の候補10作品をようやく読み終えた。一作品を除いて、みな面白く楽しく読めたが、昨年のように「これだ!」という決め手の作品はなかった。傑作揃いだった昨年に比べ、今年はずば抜けたものがなく、順位をどうするか選考が難航しているところ。この賞を自分がどうとらえるかで、薦める本が大きく変わってしまいそうなので難しい。まあ、悩むのも参加する楽しみの一つなんですがね。悪徳書店員の順位が決まったら発表します。最下位だけは、はっきり決まってるんだけど・・・。

2月13日   『Tarzan』だけ
不景気な世相になってから、銀行や病院、美容院・床屋などの待合室用に購入される雑誌の数は明らかに減った。真っ先に経費削減の対象にされてしまったのだ。まあそれは理解できるのだが、雑誌の全くない待合室というのも退屈なものだ。私の行きつけの床屋は激安床屋なので経費削減ぶりは徹底していて、雑誌はほとんどない。「ほとんど」というのは、なぜか『Tarzan』だけが置いてあるのだ。この店の店長の立派な体格を見ると、あんたの私物を流用しているんだな!とわかりすぎて突っ込みたくなる。活字中毒患者ではあるが明らかに反体育系の悪徳書店員に『Tarzan』はつらい。でも一応全部読んだけど。(こういうときは女性週刊誌が一番面白いんだけどなあ)

2月12日   風邪で
この一週間ほど風邪でくたばってました。熱や頭痛もつらかったけど、接客中の咳と鼻水が何よりつらい。自分の意志に反して出てしまうものは止められないし、お客さんには申し訳ないし。健康は大事ですね。健康雑誌があんなにたくさん出ているのも良く理解できるような気がしなくもない一週間でした。

2月4日   恥ずかしいオビ
先月芥川賞を受賞した阿部和重『グランド・フィナーレ』の単行本が発売された(講談社)。芥川賞受賞作は『文藝春秋』の2月10日発売号に掲載される慣わしになっているので、そこで読者を取られる前に講談社が急いで単行本化したのだろう。まあ、受賞を見越した発売計画だったとは思うけど。落選した時はお決まりの「芥川賞候補作収録」というオビをつけてね。オビと言えば、この本のオビの文句は「文学が、ようやく阿部和重に追いついた」というこっ恥ずかしいもの。編集者の思い入れもわかるし、評価が遅かったというのは事実だが、正しくは「芥川賞が、ようやく阿部和重に追いついた」とするべきだろう。皮肉ではなく。芥川賞が文学の最先端をきちんと評価しえていないのは少し小説を齧った人なら誰でも知っていること。政治の片手間に選考委員やってる奴もいるしね。
ともあれ、『グランド・フィナーレ』単行本は、受賞作だけでなく、他3つの短編も収録されているのでお買い得であるのは確か。

1月28日   回収
最近、新刊本の回収が立て続けにあった。本屋で「回収」といった場合、何らかの理由で販売が適当でなくなった本を返品するように出版社から依頼されること。内容に間違えがあったり、差別用語など不適当な表現が使われていたりした場合はわかりやすいが、意外に多いのがバーコードの不備。例えば本の価格表記は
1600円になっているのに、バーコードを読むと30000円になってしまうとか。事前にきちんとチェックしておけば防げるはずのものが多いのだが、出版社も忙しいから発売されて読者に指摘されて初めて気がつくのだ。仕方ないこととは思う。
しかし、話題の本だけは回収騒ぎになると非常に困る。販売数が多いから読者からの問い合わせも多いし、直接出版社に着払いで送ればすぐに交換してくれるケースがほとんどなのだが、それでも面倒だから書店を通して換えたいという人も多いので大変なのだ。で、今回面倒だったのが、『ソン・スンホン写真集』(竹書房)。一部のページにのりづけののりがはみ出していて、うまくめくれない、あるいはめくると剥がれてしまうのだ。しかも、ほとんどの本で。写真集でこの不備はまずいなあ。しかもよりによって韓流スター。でもまあ、まだ、イ・ビョンホンとかじゃなくてよかったのかもしれないが・・・。

1月21日   今年も引き続き
明日発売の『SPUR』にペ・ヨンジュンの記事が載る、とワイドショーで放送したようで、電話での問い合わせが相次ぐ。今年もまだまだ人気が続きそうです。

1月20日   レコスケくん
聴こうと思いつつ長い間聴かずじまいだった、ジョージ・ハリスンのアルバム
『オール・シングス・マスト・パス』をようやく買う。噂に違わぬ名盤で、ジョージらしい温かさに満ちた良い曲揃い。ビートルズが解散した1970年に出た作品だが、ビートルズのサウンドにおいて、ジョージがいかに重要な役割を果たしていたか、このソロを聴いて実感した。こんなことを言うと、何をいまさら!とレコスケくんに怒られそうだ。「レコスケくん」は私が最も敬愛する漫画家/イラストレーターである
本秀康の代表キャラ。「ミュージック・マガジン」や「レコード・コレクターズ」で連載していたロック趣味マンガ(?)で、レコード・コレクターズ増刊『レコスケくん』(ミュージック・マガジン)で、まとめて読める。で、そのレコスケくん(というか作者の本秀康氏が)ジョージの大大大ファンなのである。レコスケくんが、このアルバムのことを「完ペキなロックの金字塔」と評していたのでずっと気になっていたのだ。このアルバムの他にも、『レコスケくん』のおかげで多くのロック名盤に出会えた。感謝!

1月14日   本屋大賞候補作発表!
さてさて、「本屋大賞2005」候補の一次予選通過10作が発表されました。
http://www.hontai.jp/
10作中、既読の作品は3作のみ。もちろん、私の投票した3作品は選外!ああ。
今年は昨年の『終戦のローレライ』のような上下巻の大作がないのでまずは安心(ちょうど今日、『ローレライ』の文庫が発売された。もう2度と読みたくない・・・)。
寝不足の夜が続きそうだが、新しい作品との出会いを楽しみに頑張ります。

1月13日   阿部和重
ついに、というべきだろう。阿部和重氏が第132回芥川賞を受賞した。
「J文学」という言葉が存在していた頃、彼の『インディヴィシュアル・プロジェクション』(新潮社)はその「J文学」の代名詞的作品だった。私が書店に勤め始めた頃に力を入れて売っていた作品だったので思い入れも深い。それから時は流れて。やや寡作ではあるが挑発的な作品を書き続け、私は非常に面白く読んできたが、なんとなく小粒でいまひとつインパクトに欠ける面も否めず、芥川賞受賞は逃してきた。それが、2003年の記念碑的大作『シンセミア』(朝日新聞社)で飛躍的な成果をあげ、その実力と際立った個性を見せつけた後での今回の受賞。誰も文句はないだろう。と、受賞作を読む前から褒めまくっているが、偶然にも昨年末から読み続けてきた『シンセミア』をもうすぐ読み終えるところで、作品の凄さに興奮している最中なので、余計に今回の受賞が嬉しいのです。現代社会の不安感を描き出す才能は当代随一。早く受賞作も読みたい。

1月10日   訂正
昨日、「『とってもミニモニ』や『娘。物語』を売りにしていた『なかよし』」と書いてしまいましたが、『とっても!ミニモニ』は『小学一年生〜四年生』で連載していたものでした。私の勘違いでして、お詫びして訂正いたします。それにしても、講談社と小学館の大手2社に二股かけてたんですね。抜け目ないこと。

1月9日   名プロデューサー
1月6日にモーニング娘。のことを書いたら、駄菓子屋をやっている友人から、小学生の間ではもうブームが去ったらしく全く売れない、という報告をもらった。そういえば12月の新聞に、小学生のインターネット検索キーワードベスト10が載っていた。記事によると前年ベストに入っていた「モーニング娘。」が200位以下に落ちていたとのこと。『とってもミニモニ』や『娘。物語』を売りにしていた『なかよし』が最近凋落しているのも納得。先の検索ランキングで『りぼん』と『ちゃお』はベスト10に入っていたのに。特に『ちゃお』はいま、破竹の勢いですね。
さて、ファンは減っているのにメンバーだけはやたら増殖してしまったモー娘/ハロプロは、バブル期の過剰需要が激減して余剰設備や人員を抱えて崩壊寸前の企業そっくりです。もっとも、大ブレイクのきっかけとなった『LOVEマシーン』からして、バブル期の雰囲気のパロディあるいはオマージュのような曲だったのだから、考えようによれば、バブル経済→バブル崩壊→不景気/リストラまで責任を持って演出しているつんくという人は凄いプロデューサーなのかもしれません。

1月8日   ズバリ儲かってるわよ!
年末年始のTV特番に出まくった甲斐あって、細木数子大先生の商品(本・手帳・カレンダー)が飛ぶように売れてます。先生ありがとうございます。ああ、嘆かわしい世の中だ・・・。先日うちのバイトが困っていたのでどうしたのか聞いてみると、電話でおばあさんが自分の生年月日を告げ、「私は何星人なのか知りたいので調べてほしい」と尋ねられたとのこと。詳しくは知らないが、あれは色々計算しないとわからないので面倒らしい。で、ようやく調べて連絡すると、今度は家族5人の分も調べてほしいと頼まれたと・・・・。新年早々災難でかわいそうでした。
 ある種の人たちに対する細木氏のカウンセリング能力は評価せざるをえないが、六星占術そのものは秩序ある嘘っぱちだと私は思っているので、そんな人物に言いたい放題言わせて子供もたくさん見てるゴールデンタイムに放映しまくるテレビ局の品性のなさには怒りをおぼえるよ。「2005年は大変な時代の始まりだ」みたいな予言を自信たっぷりに言ってたけど、そういうのはインチキ宗教家たちの常套句なんだよ!金満バーサン、世相が悪いほど儲かっていいですね!

1月7日   坊主丸儲け
某宗教団体Aのボスの奥さんの本が出て、Aの婦人部のオバサンたちからの注文が殺到して疲れました。さらに別の宗教団体Bのボスの新刊も出て、こちらもAと競い合うように売れております。不景気というのに、宗教産業は儲かりますなあ。経費と、取次と書店の取り分以外は全部、教団関係の利益になるんだから。坊主丸儲けとは、このことを言うのでしょうか。言うんでしょうね。AもBも仏教系だし。

1月6日   学習の機会
モーニング娘。の若いメンバーの名前を覚えられなくなって(覚える気がなくなって)久しい。が、彼女たちは活動しているし、ファンもまだいる。ワニブックスから順々に彼女たちのソロ写真集が発売されるたびに、そして予約が入るたびに、このグループのことを思い出させられ、名前を覚えることができる。絶え間なき学習の機会を与えられているわけだ。それにしても、ハロプロ関係の写真集その他は相変わらず乱発され続けており、ファンは大変だな。同情の余地はないが。しかし、あこぎな商売だ。いや、売れなくなってきたから乱発せざるをえないのかも。

1月5日   正月
昨今は書店も年中無休のところが多いので、働く者にとっては正月風情も何もあったもんじゃない。もちろん、うちの店も。まあ、年末年始は物流が完全にストップするので、普段荷物に埋もれてできないたまった仕事をバリバリ片付けてやろう!と思っていたのだが・・・。気がつくともう新しい雑誌が入荷し始めたよ・・・。

12月28日   その後の電車男
先日は『電車男』読後に興奮して人にすすめまくっていたのだが、落着いて辺りを見回してみると、『電車男』への批判が結構見つかり、それらを読むのもまた面白く1冊で二度楽しめる。批判の最大のポイントは、『電車男』が「実話」ではなく、初めから自称電車男の自作自演なのではないか、という疑惑にある。「リアル・ラブストーリー」という文句で売っている以上、看板に偽りあり、というわけだ。また、本に収録された以降の掲示板では電車男と彼女の性体験報告にまで進んでおり、そのことを隠して「純愛物」として売っているのもインチキだ、という批判もあった。それらの批判は、みなもっともなのだが、興味深いことにこの話自体の面白さにケチをつけているのはほとんど見当たらないことだ。やはり、『電車男』の面白さの核心は、(実話にしろ自作自演にしろ)”電車男”と無名の掲示板住人たちとの「やりとり」の部分そのものにあるからで、住人たちがたとえ実話でないとわかっていて話に乗って盛り上げていただけだとしても(あまりその可能性はないだろうが)、ネット掲示板でのコミュニケーション、という世界の面白さを世間に(普段ネットをあまりやらない層にまで)広く知らしめたことは間違いないのだから。ともあれ、論争を巻き起こして、もっと売れてほしいものだ。

12月12日   飯島直子に・・・
先週の「おしゃれ関係」で飯島直子が紹介した占い本『魔法の杖プチ』(ソニー・マガジンズ)が大ブレイクの一週間だった。とはいえ、親本は過去に何度かブレイクしたことがあるので出版社も書店も油断していたのか、即売り切れで出版社も品切れ。年内にたくさん重版してくれるのかどうか怪しいところ。予約がたくさん入っていて、特筆すべきは一人で2冊、3冊と複数冊注文する人が多いこと。時節柄、クリスマスプレゼントで友人にでもあげるのだろう。ともあれ、思わぬところから今年最後の大ブレイク本が出現したものだ。全国の書店員は、きっとみな一様にこう思っていることだろう。
「飯島直子にまだこんな影響力があったとは・・・」

12月5日   『電車男』万歳!!
『電車男』(新潮社)読みました。これがもう最高!間違いなく今年ナンバー1の面白さ。発売当初は、インターネットで人気の掲示板の書籍化、セカチューより泣ける純愛物語、みたいな売り文句に、ふーん、と無関心ではっきり言って舐めていたのだが、意外に売れ続けているので中を見てみたところ、即、はまりました。
こりゃ売れるわけだ。というか、まだまだ売り足らないだろう。目指せ100万部!!これまで、凄く面白い本を読んだときでも、多くの人にすすめたいと思ったことはあまりなかったのだが、この本については例外的に、そこら辺の人たちを手当たり次第につかまえて猛烈にすすめまくりたい気になった。この本の魅力はまた書評欄にでも書こうと思っているが、この年末に何か面白い本ないかな、と思っている人は迷わず『電車男』買うべし!『電車男』よ、素晴らしい読書時間をありがとう!

11月22日   オニババ
『オニババ化する女たち〜女性の身体性を取り戻す』三砂ちづる(光文社新書)を読む。強烈なタイトルだけ見ると興味本位に「オニババ」という言葉が一人歩きしそうだが(あの「負け犬」論争のように)、中身はいたって真面目。副題の「女性の身体性を取り戻す」が正しく本書の内容を表している。これを読んで、人間観というか生命観というか、何か重要な、人間を見る新しい視点を得ることができたような気がする。年齢を問わず全ての女性必読、そして多くの男性も読んだほうがいい。中高生の性教育に使うのも良いと思う。忘れられがちな、動物としての人間、を再確認させられる。少し、精神世界が入ってるところが玉に瑕だが、それを差し引いても読む価値のある、刺激的な本だった。

11月18日   ラスト・クリスマス
織田裕二の「ラスト・クリスマス」に失笑の毎日だが、11月も半ばを過ぎると巷の商店はすっかりクリスマス・モード。だが、本というのはあまりに様々な分野にまたがった商品なので、店をあげてのクリスマス気分にはあまりならない所が多いと思う。学習参考書やビジネス書、理工学書なんか全く関係ない。まあ、大学の赤本や願書が出揃ったり、パソコン年賀状や確定申告の本がたくさん出たり、年末・年度末としての季節感はあったりするけど、クリスマスは関係なし。この時期の主役は、なんといっても絵本児童書、芸術書(写真集など)、そして実用書(リースやケーキの作り方などなど)かな。雑誌も表紙がクリスマス色になり華やかだ。担当分野によって書店員のクリスマス気分もまちまち。レジではプレゼント包装が増えて大変だけど喜んでもらえるのは嬉しい。しかし日本人のクリスマスというのは本当にお祭り「気分」だけで中身はない。この換骨奪胎ぶりは素晴らしいね。商売としてのクリスマス。それでいいんだけどね。真剣に神に祈らされるよりは。
 
ともあれ今年は、ジョージ・マイケルの歌う「ラスト・クリスマス」がいかに良かったか、織田さんのおかげでよくわかりました。織田さんも、もう歌なんて歌わなくていいのに。あれは歌わされてるんでしょうか?それとも周りが止めてるのに本人が歌いたがってるんでしょうか?

11月16日   アメリカ
9・11テロとアメリカの報復戦争開始以後、マイケル・ムーアを筆頭にアメリカ政府を批判した本が数え切れないほど出版された。一時期は本当に毎日のように新刊が出て、アメリカに不満を持っている人たちが実はたくさんいたんだなあと感心したものだ。だから、今回の選挙もブッシュが負けて当然だと思い込んでいたのだが・・・。今回は(笑)ちゃんとした選挙でブッシュが勝ったわけで、アメリカ人って何考えてんだ?と現実の不可解さに首をひねっている。ケリー氏に魅力がなさすぎたのかもしれないが。小泉首相が「国内外からあれだけ批判されていながら選挙に勝ったのは立派だ」というコメントをしていたが、それって、全然褒めたことにならないよなあ。あの大統領にしてこの首相あり。嘆息。
 
さて、最近悪徳書店員が愛聴しているCDは、ジョージ・ガーシュウィン、バート・バカラック、ブライアン・ウィルソン。いずれも20世紀アメリカを代表する作曲家。心踊らされる素晴らしい音楽を毎日楽しんでいるが、彼らの生み出した豊潤なメロディにはある共通した特色、うまく説明できないが「アメリカらしさ」のようなものがある。アメリカだからこそ生み出せた音楽だと強く感じる。
 
現在のアメリカ政治を見ていると、この国を嫌いになりそうなのだが、素晴らしい文化を生み出すエネルギーに満ちた国であるのは疑いようがないし、駄目な政治をきちんと批判している人たちもたくさんいるのだ。一つの、一時期の政治的側面だけを見てその国家全部を否定してしまうのは間違っていると思うし、極めて危険な態度であると思う。それは対北朝鮮問題についても言えることだと思うんだけどね。ややこしく面倒くさく難しい問題だ。

11月8日   桐野夏生
桐野夏生の『残虐記』(新潮社)を読む。人間の魂の暗部に踏み込む迫力に圧倒され、出た時にすぐ読まなかったことを後悔する。最近の若い女性たちに人気の、一山いくらの似たような自己満足的な作家たちとはレベルが格段に違う。違いすぎる。昨年話題になった『グロテスク』(文藝春秋)をまだ読んでなかったので、慌てて買って読み始める。こちらも凄い。ドストエフスキーをも想起させる水準の高さだ。

11月4日   中年日記
電話で「10年日記」ありますか?という問い合わせを受け、聞き間違えて
「はい?中年日記ですか?」と聞き返してしまった。中年女性からの電話だったもんで。失礼しました。中年日記なんてありません。

10月26日   のぼり
講談社の大型企画、『DVD20世紀(全24巻)』の刊行が開始。まあ、そんなにばこばこ売れるような商品ではないのだが、講談社の気合の入れようはかなりのもの。いろんな拡販材料が送られてくるのだが、先日は「のぼり(幟)」が送られてきた。道路脇とかに「もも直売」とか立ててあるやつだ。郊外の路面店ならともかく、うちの店は建物の中に入ってる店だから立てる場所がない。無理に立てられないこともないが、最近はショップの防災意識も高く、店内ののぼりは防炎加工をしないと使えないことになっている。というわけで使わないことにしたのだが・・・。
 
 先日、古本屋で『本屋さん読本』(本の雑誌社)を買った。その中に、本屋に送られてくる拡材についての話題があった。出版社から色々送られてくるけど使わないのも結構ある、というような内容なのだが、送られて困るものとしてやはり「のぼり」が挙げられていた。郊外型店舗じゃないのに送られてきても使いようがない、出版社はもっと各店舗の立地を考えて拡材を送ってくれ、というもっともな意見だったのだが、この『本屋さん読本』が出たのはなんと15年以上前。全然改善されていないんだなー、と、むしろ感心してしまった。そんなに売れない商品にこれだけの無駄ができるとは、さすが講談社。でも、いいのかそれでほんとに?大手出版社ほど無駄なチラシやポスターなどが頼んでもいないのにばら撒かれて来る。そのうちの多くはそのままゴミ箱へ。捨てるのも嫌な気分なものですよ。で、のぼりの丈夫なポール(2本)はどこに分別して捨てればいいんですか、講談社さん?

10月11日   第2回本屋大賞
先日、本屋大賞実行委員さんから、第2回本屋大賞への参加依頼が届く。もちろん参加させていただきます!と、意気込みは抜群なのだが、一次投票後に選ばれた最終エントリー10作を読破しないと最終的に参加したことにならないので、どうなることか。前回は締切り直前に寝込んじゃったし。今年出版されたた日本小説が対象なのだが、投票対象となる本を全然読んでないからなあ。ノミネートされそうなのを今から読んどくと後から楽になるけど、それは賞の主旨に反するからしたくないし。ひたすら奥付が今年の気になる小説を読みまくるしかないね。
 今年4月に発表された第1回本屋大賞、発表時はそれほどでもなかったけど、じわじわと反響が広がっていった感じ。大賞の『博士の愛した数式』はロングセラーになっているしね。参加者としては嬉しい限り。ただ、2位以下の作品が全然目立っていないのが残念。『クライマーズ・ハイ』、最高なのに。

10月10日   韓流スターと歴史の流れ
それにしても、イ・ビョンホン写真集(扶桑社)への反響はものすごい。先月末に発売され、即売り切れ。昨日入った重版分も、全部予約だけで埋まってて店には一冊も並ばず。しかもまだ予約が残ってるんだよな。もっとたくさん重版してくれよ!と怒鳴りたい気もするが、実際、どこまで売れるか部数は読みにくいだろうなあ、とも思う。冬ソナブームも一段落し、ペ・ヨンジュンの顔は毎日CMで見れるようになってしまったので、長年湿っていた心に火をつけられた韓流ファンの渇望が、もう一人の韓国スターに一挙に情熱を傾けたせいなのだろうな、と思う。かつてのベッカムブームは一過性のもので、彼に熱をあげたたくさんの女性たちが良きサッカーファンになっているかというと、そうでもないだろう。ところが韓流ブームは、いうならば「韓国芸能界」の日本での「再発見」のようなもので、それは多くの日本人にとって「新発見」に等しいほどだったろう。ヨン様ブーム、ならそのうち終わるだろうが、韓流ブームは終わらない。もはや「ブーム」ではなく、韓国芸能という一つのジャンルとして定着するだろうからだ。ハリウッド・スターよりも韓国スターに親近感を感じるほうが自然だと思うよ。隣国間の交流が日々深まっていくのを目の当たりにするのは歴史の動きを目撃しているようでとても面白いと思う毎日。
 さて、当面の心配は来月韓国で出版されるというペ・ヨンジュン写真集の日本版予定がどうなってんのか、ってことと、ペ・ヨンジュンの来年のカレンダーが発売中止になりそう、ってこと。版権の問題なのかな。残念でしたね。冬ソナ、チェ・ジウ、イ・ビョンホンのカレンダーは出るのでそっちで我慢してください。

9月26日   愛子ちゃんとうずらちゃん
先日公開された皇太子撮影の愛子ちゃんのビデオで彼女が読んでいた絵本が案の定問い合わせ殺到。『うずらちゃんのかくれんぼ』(福音館書店)なのだが、映像が公開された当初は愛子ちゃんが絵本の表紙をチラッとしか見せてくれず、全国の書店員は「あの本の正確な題名は何だ!」とやきもきしたはず。「かくれんぼ」という言葉は見えたけど「かくれんぼ」のつく書名はたくさんあるし。もちろん児童書のプロ担当者ならすぐにわかったはずだけど、児童書未経験の自分には福音館か岩波の造本だな、というところまでしか映像を見た時点ではわからなかった。家でテレビを見てるときも本の紹介にはすかさず反応するのが書店員の習性。今回のポイントは「うずらちゃん」にあり。それにしても、愛子ちゃんの絵本を読む姿は愛らしく微笑ましかった。皇室において絵本を選書するのは、誰がどうやってるんですかね?宮内庁御用達の絵本なら間違いなく売れるんだけどね。

9月23日   9月のベストセラー
この9月のベストは『ハリー・ポッター』5巻で決まりだろう、と思い込んでいたが、週間トップを突っ走っていたのは最初の1週間くらいなもので、あっさりと思わぬ伏兵、『もうひとつの冬のソナタ』(ワニブックス)に抜かれてしまった。(もちろん売上冊数ではハリポタがダントツではあるが)。村上春樹の『アフターダーク』も好調で、ハリポタ独占にならず店員としてはなかなか面白い9月のベスト戦線だ。
『もうひとつの冬のソナタ』はドラマの脚本家本人が書いたアナザー・ストーリーなので、他の関連本とは一線を画している。世間では冬ソナオバちゃんたちに対する男性・若者からの失笑めいたものが聞こえなくもないが(『通販生活』の表紙「妻よ、そんなにヨン様がいいのか」は最高!)、かくいう悪徳書店員も『冬のソナタ』のドラマ最後の4回ほどを見て不覚にも感銘を受けてしまったので、冬ソナにはまるオバちゃんたちをバカにすることはできないのであった。

9月14日   『キッパリ!』万引き!
先日『キッパリ!』という気持ち悪い本がベストセラーになっていてうんざりだ、と書いたが、この本の中に情報万引きを奨励する記事があり一部の書店員から返品してしまえ!という声があがっていると聞き、中をチェック。見ると、小さいメモ帳とペンを書店に持参し、気になる情報があったら忘れないうちにすぐにメモするとよい、というようなことが。そりゃどうも。カメラつき携帯で情報を写す情報万引きが昨年問題となったが、本屋というのは情報を販売している面もあるわけだから、立ち読みで暗記していったり店を出てからメモするのは咎めないが、店の中でメモするのはやはりマナー違反。CD屋の試聴機で聞きながら歌詞を書き写すようなものか?少し違うか。まあ、とは言っても実際本屋でちょこっとメモしてしまったという経験のある人は多いだろうし、ほんの少しなのであれば私個人としてはさほど目くじらを立てる気はない。問題なのは、そういうことを本の中で堂々と紹介し推奨している、この著者のことだ。この本の趣旨からいうと、そうすることが自分にとってプラスになるということか。アホか!誰がお前の本を全国で何万部も売ってあげてると思ってんだ!とゴーマンな口も叩きたくなるよ。あんたは全国の書店員を敵に回す気なのか?返品してやる!返品だ!返品だ!(←書店員の脅し文句)。
まあ、悪気がないのはわかるけど。無知で無神経なだけなんだろうけど。気持ち悪い本がやっぱり馬脚を現しやがったな、という気がするな。他人を省みないキッパリさなど糞くらえだ。オジサン向け自己啓発本の中で、「本屋で気になる部分がある本を見つけたら、その部分が少しでも買ってしまうべきだ。買わないで後から気にしたり、やっぱり買おうと思って探したりする時間と労力がもったいないからだ」という趣旨の文を読んだことあるが、偉い!立派!いいお客さん!大人ならこうありたいもんだね。

9月7日   アフターダーク
 村上春樹の新刊長編『アフターダーク』(講談社)入荷!前作『海辺のカフカ』(新潮社)の時と比べて、だいぶ宣伝も装丁も地味だが、落着いたいい感じの本。いいかげんハリー・ポッターにも飽き飽きしてたので、ハリポタ敷地を半分に減らし、アフターダーク用に。本を入れ替える作業というのはとても楽しく、書店員にしか味わえないマイナーな楽しみだろう。

9月6日   夫は邪魔!
 昨年の「衝撃のタイトル大賞」(選考:悪徳書店員)は、『夫よ!あなたがいちばんストレスです』だったが、今年になっても夫攻撃本ブームはさらに盛り上がり、『「未熟な夫」と、どうつきあうの?』(リヨン社)、『夫の言葉にグサリときたら読む本』(PHP研究所)、そして、『定年夫は、なぜこんなに「じゃま」なのか』(ソニー・マガジンズ)という凄いタイトルも登場した。世の中、ひどい夫、邪魔な夫ばかりなのですね。夫の一人としてやるせない気持ちになりますよ。さて、では夫の側から妻に文句を言う本というのは、ほとんど見たことがない。と思っていたら、先月の『プレジデント』の特集が、「不機嫌な妻、無気力な子ども」というもので珍しい。仕事に疲れて家に帰ると待っているのはプリプリ不機嫌な妻と何やらやる気のない子どもたち、一体どうなってるんだ!という悲しき父・夫のために著名な心理学者(??ともあれ心理読物を乱発している先生方)が親切に解説してくれているもの。妻子とのすれ違いのシステムやコミュニケーションのとり方など、読んでて悲しくなってくる記事だけど、ビジネス雑誌のいつもの「勝ち組企業の〜」とか「日本経済復活の〜」なんてインチキ臭い非現実的無理矢理上昇志向記事に比べたら、よっぽど現実を見つめていて良い特集なんじゃないかな、と思った。会社の株が上がろうが日本経済が「復活」しようが、自分ちで邪魔者扱いされて無視されてたら全然意味ないじゃん。そりゃ、不幸ってもんだ。別にファミリー志向になれ、と言いたいわけじゃないんだけど、「日本経済」とか「景気」みたいな実態がどこにあるのかよくわからないものよりも、目の前の人間関係こそがリアルな「現実」であり、まず先に大事にしなきゃいけないんじゃないかな、と思うだけです。ともあれ、「定年夫はなぜこんなにも邪魔なのか」なんて酷い言葉。この本自体は定年後夫婦の生き方をきちんと考える本だし、実際邪魔な定年夫が多いだろうことは想像に難くはないが。こういう題名の本にお金を出して買う人が少なからずいる現実に悲しくなってくる。

9月5日   ハリー・ポッターと不良本の墓場
 遂に発売、ハリポタ5巻。前回までの騒ぎに比べると、かなり落ち着いてきたが、それでも5巻目なのにこれだけ売れるのはたいしたもの。4200円もする本がバコバコ売れるのは爽快だね。私の周りでハリーポッター挫折者は多く、読んでる人からも「面白い」という感想は聞いたことがないんだけど。なぜなんだか。
 で、毎回必ず問題が発生するハリポタだが、今回はシュリンクパックの中の本が傷んでいるものが続出。一箱(6セット入り)に一冊くらいの割合で出てくるからたまらない。裏のストック部屋は不良本の山、山。買切のくせに、ひどいじゃないか静山社。うるさいお客からのクレームも続出。なんとかしてください。まあ、痛んでるっていっても、ほんの僅かな部分なんで、私なら全然気にしないんだけど。正直な気持ちは、そんな小さな傷気にしてんじゃねーよ、と、言いたいところ。いや、失礼。スター・ウォーズやスター・トレック関連の本も細かい傷にうるさい客が多くて嫌なんだけど、ハリポタもその一つだ。値段が高くて売れるから大事にせざるをえないが、ハリー・ポッターなんて鬱陶しいんだよ!!というのが本音。お客や店長には口が裂けても言えないが・・・。

8月24日   前言訂正
 先月の『オール讀物』に直木賞受賞作の抄録がなかったことに「露骨にケチだ」と書いたが、今月発売の号に載せてきました。前言少し撤回。私のせこい予想に反して『空中ブランコ』も『邂逅の森』も好調。よかったですね、文藝春秋さん。著者の既刊もいい動き。いいことだ。

8月21日   『キッパリ!』うんざり!
 『キッパリ! たった5分間で自分を変える方法』上大岡トメ(幻冬舎)という本が売れている。20〜30代の女性がメイン購買層。ぐうたらを直してテキパキと仕事や家事をこなせるようになるには?というような内容で、似たような本はビジネスの自己啓発本あたりにゴロゴロしている。しかし、この『キッパリ!』の特徴は、その表紙のイラストによく表れている。「コブシはギュッと握ってまっすぐ上へ」「片方の手は腰」「目線の角度60度」「肩の力は抜く」「口は閉じる」というコメントつきの女性の絵で、本の帯には「だまされたと思ってやってみてください、このポーズ!!」とある。なんだそりゃ。それでやる気がでるそうだ。アホか。中も、靴をそろえる、とかテレビは消す、とか大人向けにしては幼稚な内容。なにより最初の数ページのマンガを読むだけであまりの幼稚さ加減にうんざり。こんな本がベストセラーになっていることに、おぞましさすら感じる。草思社の好調な新刊、『あたりまえだけど、とても大切なこと』は、子どもに基本的なルールをきちんと教えるのを目的にしたしつけの本で、この本の意図はよくわかるのだが。こっちよりも『キッパリ!』の方が圧倒的に売れているということは、今しつけが必要とされているのは大人たちのほうだ、ということである。それにしても、最近の女性向け自己啓発/精神世界ブームはなんとかならないもんだろうか。気持ち悪くて仕方がない。

8月14日   『小生物語』
 乙一のホームページ日記を単行本化した『小生物語』乙一(幻冬舎)を買う。「まえがき」で著者自ら「この本に時間とお金を割くのはやめたほうがよい」と忠告してくれていた。親切だ。読んだ。確かにくだらなかった。でも面白かった。最後のほうに、この本の出版には消極的だから「せめて少しでも安い本にしてくださいと編集者には言っておいた」とある。いい人だ。それが反映されたのか、価格は税込900円。装丁も美しいので、「手抜き」の内容でも損した気はしない。むしろ乙一のファンは、この本でますます彼のことが好きになっただろう。本人はそういうのすごく嫌がりそうだが。

8月10日   続 商魂 文藝春秋
 今日発売の『文藝春秋』に、芥川賞受賞作のモブ・ノリオ『介護入門』が全文掲載。というわけで、注目の文春の宣伝だが、朝日新聞になんと全面広告が!下部には特大サイズでモブさんのあの変なメガネが。必死にキャラで売ろうとしてますね。がんばってください。

8月9日   relax
 マガジンハウスの雑誌『relax』を初めて買った。この雑誌、いつもおしゃれで格好いい装丁&特集で人気だけど、私のような悪徳貧乏書店員には縁のない雑誌で「けっ、気取りやがって」と負け惜しみの悪態をついていたものだった。しかし、今回の特集は「ペットサウンズと読書」。「ペット・サウンズ」とはビーチ・ボーイズの代表的アルバムで、ビーチ・ボーイズファンの悪徳書店員としては見逃せず、ついに「relax」の軍門に下ってしまったのだった。で、読んでみたところ、やっぱり気取ってました。気取りすぎでかなり恥ずかしい。でも憎めないのは、やはりこのアルバムへの愛情が多分に感じられるから。それに、ビーチ・ボーイズのメンバー、マイク・ラヴのインタビューを敢行したのも表彰ものだ!ビーチ・ボーイズはどうしても中心メンバーの天才ブライアン・ウィルソンへの関心ばかりが高く、他のメンバーの情報が極めて少なかったからだ。音楽性を考えたらそれも仕方ないけど、やはりマイク・ラヴの低音なくして初期ビーチ・ボーイズの素晴らしいコーラスは成り立たないのだ!と、今回は音楽ネタばかり話してしまいましたが、ファンなもので・・・。ちなみに、もう一つの読書の特集は普通でした。

7月31日   商魂・文藝春秋
 また芥川・直木賞ネタですが。1月の受賞があまりに派手だったもんで、今回はえらく反響が少ないように感じるが、本来こんなもんだったんだ。直木賞二作品と、8月にでる芥川賞作、いずれも文藝春秋発行というところがなんとも。前回のお祭り時には文藝春秋の本は一つもなく、『文藝春秋』を懸命に売ろうとしていたのが面白かったが、今回は余裕しゃくしゃくで、いつもなら直木賞作が抄録される『オール讀物』にも掲載なし。露骨にケチだなあ。『邂逅の森』は骨太な作品のようだし、『空中ブランコ』も面白そうだけど『イン・ザ・プール』の続編ということになっているから、どちらも爆発はしないだろう。あとは『介護入門』がどういう動きをするかが楽しみというところ。なかなかの充実作ぞろいだとは思うんだけど。本の売り方って、難しいですよね、文藝春秋さん。

7月19日   そんなに珍しくはない
 先日、芥川賞『介護入門』モブ・ノリオ氏、直木賞『邂逅の森』熊谷達也氏、『空中ブランコ』奥田英朗氏の受賞が発表された。うちの店に長く勤めるバイト君が「芥川賞って、年に2回もあったんですか!」と今さらなことを言っていたが、今年は前回があまりに話題になったんで印象深かったから、え、もう?と思ったのだろう。普段は芥川賞といってもたいして売れないから年に2回もあるということを実感できてなかったんだろうな。直木賞なんて前回も今回も二人ずつ受賞してるから今年だけで4人。三島由紀夫賞とか山本周五郎賞とか江戸川乱歩賞とか、他の文学賞の方が希少価値が高いよなあ、明らかに。
 つい先日、30年以上前の芥川賞受賞作家が「たま出版」から本を出していたが・・・。

7月15日   出版社めった斬り!
 『本の雑誌』8月号の「出版社めった斬り!」が面白かった。大手出版社の営業スタイルや重版の姿勢などを突っ込んだ座談会で、うなずかされることしきり。新潮社の重版がいつもせこくて売り逃して困ってるのはうちだけじゃないんだなーと。『博士の愛した数式』を、ゴールデンウィーク前に大宣伝しておきながら本を刷らない、というのは異常だよやっぱり。この座談会では褒められてたけど、小学館も重版が遅くて困るときが多い。特にゲーム攻略本関係。どうせ重版するならもっと早くしてくれればいいのに。そのタイムラグのせいでものすごい数の売り逃しをしてますよ!『世界の中心で愛をさけぶ』は、うまく重版が続いて助かったけど。数年前の『プラトニック・セックス』の時は散々だったから、その時の反省を生かしたのかも。けど、同じ片山恭一の『満月の夜モビイ・ディックが』は最近まで長い間品切れのままだった。小耳に挟んだ噂によると、担当者が『世界の中心』で忙しく『モビイ・ディック』にまで手が回らなかったとか。誰かフォローしてくれないのか?
 とまあ、書店員は勝手なことばかり言って、と出版社の営業の人は思うだろうけど、それも売り逃しを惜しむ気持ちからなんです。出版社にとっても売れるほうがいいでしょう(当たり前だが)。書店出身の人が版元営業にいると少しは温度差がなくなるのかもしれないなあ。

7月13日   万引きネタはやめてくれ
 最近読んだ小説2作に、万引きする少年が登場してきてうんざりしている。
前回紹介した井坂幸太郎『チルドレン』と、滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』(角川文庫)だ。万引きを小説に絶対に登場させるな!なんてことは言わないが、使われ方があまりに安易なのだ。「根はいいやつなんだけど、ちょっと悪ぶってる少年」を出したい、という創作上の理由が見え見えなんだ。しかも、そのことに作家自身が無自覚らしいところに一番腹が立つ。少年犯罪でも、いじめや性犯罪などと比べて、万引きは人格とあまり関係ない「出来心で」的な悪さだ、と思ってるからネタとして使いやすいんだろうな。安易な設定なんだよ!!もし本が万引きされたら、あんたたちの本を売っている書店の経営に響いてくるんだぜ。最終的にはあんたたちの収入にも。万引き犯に困っている書店の現場(自分の作品を売っている)のことを少しでも考える頭があれば、こんなに簡単に書けないと思うんだけど。井坂幸太郎は『アヒルと鴨のコインロッカー』でも派手な辞書泥棒を登場させていた。本屋への愛情の裏返しなのかどうか知らんが、彼が書店員の間に絶大なる人気があるというのも不思議な話だ。ともあれ、万引き少年の相手をするのは、現実だけでもうたくさんだよ。

7月12日   かけこみ読み
 前から読もうかなと思っていた本が直木賞の候補になると「受賞する前に読んでおこう」という気になって買ってしまう。なかなか浅ましいことではある。もしその作品が受賞した際には、「ああ、なかなかよかったからね」とか「うーん、あんな作品に賞をあげちゃだめだよなあ」とかなんとか人に言ってみたいんだろうな(といって自分のことだが)。で、今回は井坂幸太郎『チルドレン』(講談社)を、直木賞発表前のかけこみ読みしました。本の作りが素敵で、傑作の雰囲気が漂っていたので。読後。話は面白かったんだけど、何かが決定的に物足りない。それは彼の『重力ピエロ』と『アヒルと鴨のコインロッカー』にも共通に感じられたもので、この物足りなさは一体なにに起因するものなのだろう、とここ数日考えているところ。
 さて、もしこの作品が受賞したら、自分は何と言うだろうか。「ちょっと物足りないけど、これからへの期待票ということで、いいんじゃないかな」。えらそーに。

7月11日   ガッツ伝説!
 ガッツ石松にまつわる面白ネタを満載した『最驚!ガッツ伝説』(光文社)が
入荷即日売り切れ。その後も問い合わせ多数。ガッツってこんなに人気あったのか・・・。はなわのCDを買うよりも内容豊富で本のほうが断然お買い得。で、ひとつ新しい発見が。この本を問い合わせてくるのは、意外にも中年の人が多いということ。てっきり、若い人たちがおもろいオッサンとしてのガッツを求めているのだと思いこんでいたのだが、彼と同世代の人たちにはむしろ共感をもって受け入れられているのかもしれないなあ、と思った。若者とのディスコミュニケーションを堂々と披露し、一般常識とのズレを恥ではなくネタにして笑いをとれる唯一の(?)男。
こんなところに中年のヒーローがいたのだなあ、とガッツ観が大きく変わったのでした。

6月29日   自殺
 今朝の新聞を開いて驚きの声をあげた。野沢尚自殺。なんとまあ。先月の
鷺沢萌に続いて悲しい知らせ。才能があって、これからも面白い作品を書いてくれたであろう優れた作家が自ら命を絶ってしまうのは本当に惜しいことで、悲しい。  作家というのは、人間の、そして自分の内面と深く向き合わねばならない職業なので、心の深い闇に陥る危険と常に隣あわせなのだろう。もちろん死の直接の動機は本人にしかわからないし、あるいは本人にもわからなかったのかもしれないが。野沢ドラマ『青い鳥』が好きだった。

6月26日   「僕はオヤジになった」
 うちの店は夜10時まで開いているんだけど、土日祝日なんかだと、夜9時過ぎまで小学生がうろうろしてコミックを買っていく。たいていは親と一緒に来てるんだろうけど、どうみても友人同士なのもいて、それは塾帰りなのだろうか。自分が小学生の頃は、土曜といえば8時前に風呂と食事をすませて『8時だよ全員集合』を見終わったらすぐ寝る、という生活で、多くの同級生もそんな感じだったと思うんで、どうにも隔世の感がある。さらに子どもにクレジットカード持たせて買わせようとするアホな親もいたりして。一体世の中どうなっとるんだ!と、ブツブツ愚痴をこぼしながら、ああ、俺もようやく若者に説教をするオヤジに自然になれたのだなあ、と時の流れを感じて遠い目でレジに立ち尽くす梅雨の夜。

6月23日   ポスト現代
 「週刊ポスト」がヌードグラビアをやめると発表した。「オヤジ雑誌」からの脱却を図っているのだろうが、一体どんな誌面になっていくのだろうか。ヌードで稼いだ部数のおかげでスクープ取材費を賄えた一面もあっただろうに。「週刊文春」  「週刊新潮」路線を進んでも新鮮味はない。小学館、というところからして、なんとなく「SAPIO」の週刊誌版になっていくような予感がする。バリバリの右寄りの。 そうなったら鬱陶しいなあ。ともあれ、これに対して「週刊現代」がどう変わっていくかの方が楽しみだ。グラビアオヤジ路線を突っ走ってほしい。

6月4日   『イラクの中心で、バカとさけぶ』
 先日イラクで襲撃された戦場専門カメラマン高橋信介さんが1月に出していた著書『イラクの中心で、バカとさけぶ』(アスコム)の重版が入荷。この本は前から気になっていて、今年のベストタイトル賞最有力候補として紹介しようと思っていたところ、思わぬことで話題の本になってしまった。この本の魅力は高橋さんの人柄を表す軽妙な語り口の文章。60過ぎても何かを求めて動かずにはいられないカメラマン魂が素晴らしい。こういう結果になってから「あとがきにかえて」を読むと、月並みな表現だが本当に「惜しい人を亡くしてしまった」と思わずにいられない。

5月24日   器を作っている場合じゃない
 かつて日本中に政治改革の期待を抱かせておきながら一年足らずで逃げ去っていった元首相、細川護熙氏のエッセイ『不東庵日常』(小学館)が発売された。帯の文句を引用「湯河原の私邸・不東庵での晴耕雨読と作陶の日々。元首相の充実した残生の実践!」だって。湯河原の私邸ですか、晴耕雨読ですか、器を作ってるんですか、充実した余生でいいですね。って、混迷する現在の政治情勢なんてもう関係ありません、と言っているような態度。無責任すぎて腹が立ってくるな。あんたにも責任の一つは確実にあるんだから。まあ、引退してからあれこれ口出しするよりはいいか・・?・・・?あんたを見てるとなんだかんだいっていろんなことをやっている小泉首相が立派にさえ思えてくるよ。錯覚だけど。晴耕雨読は勝手だけど、そんな本出すなよ。まあその無神経さが「細川元首相」らしいのかもな。

5月23日   『100%勇気』
 「諸星和己」という名前を聞いてどれだけの人が反応するのかわからないが、元・光GENJIの中心人物だった彼のエッセイ『くそ長〜いプロフィール』(主婦と生活社)が発売され、売れ行き好調である。一般的にはたまーにテレビで見かける程度だけど、根強いファンがたくさんいるのだ。ファンというのはありがたいものだ。飛鳥涼が作曲した光GENJIの初期シングルはアイドル・ポップスの名曲だと今でも思っているが、あれだけの圧倒的人気と反比例するような各メンバーのその後の凋落ぶりに、SMAP的商法が確立する以前のジャニーズグループの売り方の失敗を見る。SMAPはともかく、TOKIO・V6・嵐などの三流グループが光GENJIや男闘呼組より特に優れているわけでもなかろう。ジャニーズならなんでも売れるという現状は、「ジャニーズ」という一つのジャンルが芸能界のシステムに有機的かつ特権的に取り込まれた結果なのだろう。その直前に稼ぎまくってくれた光GENJIがその礎となったのかもしれない・・・。などと思いつつ、解散後もNHK「忍たま乱太郎」の主題歌として流れ続けていた『100%勇気』が昨年ジャニーズの後輩に奪われ、最後の砦も陥落。この本の最終章の言葉「人生、賢く安全に生きたいとは思わない」、帯の文句「断っておくが生きていく上でためになるようなことは一切書いてない」というのは(彼の現在の売りが「悪ぶってる」ところにあるのは差し引いても)なかなか本音なのかもしれない。

5月17日   『17歳、悪の履歴書』
 前回、『13歳のハローワーク』を「17歳の履歴書」と間違えた大学生の話をしたが、その間違えの元ネタがわかった。18年前の女子高生コンクリート殺人事件を描いた話題のDVD『コンクリート』の原作のタイトルが、『17歳、悪の履歴書』(作品社)だった。DVDは来月発売で多少話題になっているので、例の学生はどこかで情報が混ざってしまったのだろう。ともあれ、納得。

5月14日   17歳の履歴書
 『13歳のハローワーク』が100万部突破したということだ。以前この頁で、
値段が高くてしかも有意義な本がたくさん売れるのは嬉しいことだ、と書いたが、
この本が多くの人に「必要とされている」ことが証明された記録と言えるだろう。
今年大記録を作った『バカの壁』と『世界の中心で愛をさけぶ』は、はっきり言って「売れているから」「他の人も読んでいるから」バカ売れしたタイプのベストセラーであり、内容が際立って特殊だったりするわけではない(読んでないのに断言するのもなんだけど読んだ人の意見を総合すると断言してよさそうに思う)。
対して『13歳〜』は類書がなく、村上龍のしっかりとした問題意識に基づいて製作されているので、値段の高さも関係なく必要な人が買っていく。実際、この本は「売れてるみたいだから私も読んでみようかな」と気軽に買うタイプの本ではない(内容もだけど、分厚くて重くてデカくて電車とかじゃまず読めない。事典のように使う本だから)。だからこそ、100万部という記録は本当に凄いと思う。これを機にまだこの本を知らなかった読者が買ってくれるだろう。世の中捨てたもんじゃない。
ちなみに、この本を「『17歳の履歴書』ありますか?」と尋ねてきた大学生(男)がいたけど・・・。尾崎豊と日経新聞がごちゃまぜになってるぞ!大丈夫か?

5月13日   持ってる奴は持っている
 ここ半年ほど「株」の本が良く売れている。新刊も毎日のように出版され、置く場所がなく困っている。これだけ出るってことは、株やってる人が増えているってことで、金持ってない人は株なんて買えないだろうから、不景気だなんだいっても持ってる奴は持ってるんだなあ、と妙な感慨を。ただ、ひとつとても不思議なことは、株の本を買っていくのは中年以上のオジサンオバサンが中心なんだけど、あまり金持ちそうじゃない、別な言い方をすれば身なりがどちらかといえば貧相な感じでせかせかと落ち着きのない人が多いような気がすること。金持ちらしい余裕が見られないというか、ファッション・センスがないというか、金持ってるはずなのに自分を豊かにするために使っていなさそうというか・・・。偏見に満ちたこと書いてるってわかってるけど、なんだか、金を増やすことにだけ執着があって、金を豊かに使うって意味がわかってなさそうな気がするんだ。日本人の投資は欧米に比べてまだまだ未成熟だということを読んだことがあるけど、こういう人たちを見てると、なんとなく納得してしまうものがあるな。今の株ブームは、なんだか危うい気がするよ。

5月8日   世界の中心で帯を真似る
 『世界の中心で愛をさけぶ』片山恭一(小学館)が250万部を突破し、それまで 村上春樹の『ノルウェイの森(上)』(講談社)が持っていた日本作家小説の発行部数記録を抜いてトップになった、ということだ。「日本作家」というただし書きがついているのは「ハリー・ポッター」があるからなんだろう。今日から映画が始まったばかりだし、『世界〜』はまだまだ売り上げ伸びる。たいしたもんだ。
この本が最初から売れていたわけではなく、
 
 『泣きながら一気に読みました。
 私もこれからこんな恋愛をしてみたいなって思いました/柴咲コウ』
 
という帯がついてから火がついたのは有名な話。(ちなみに『世界の中心で〜』の題名は著者がつけたのではなく編集者がつけたのも有名な話)。
 さて、最近出た貫井徳郎の『さよならの代わりに』(幻冬舎)の帯を見ると・・・。
 
『「またね」、その、凛とした別れの言葉の切実さに、涙がこぼれました
                                     /長谷川京子』
 
 いやー、さすが幻冬舎。『世界〜』の見事なパロディだ。笑わせてもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パロディだよね?
 

4月30日   ベッカム/ヨンジュン/ビンラディン
 右を向いても左を向いても、あの微笑の貴公子の眼鏡顔。それにしても、の  ヨン様ブームである。4月からの「冬のソナタ」再放送で、冬ソナ・韓国ドラマ関連本ラッシュにさらに加速が。表紙はもちろん優しく微笑むペ・ヨンジュン。少し前まで一部の人しか知らなかった外国人が突然日本中で大ブレイクする例は、ワールドカップ時のベッカムと9・11テロ後のビンラディンが記憶に新しい。雑誌や相次ぐ関連本の表紙を華々しく飾って書店の棚を占領し、気がつくといつの間にかみんなの熱が冷めていて、売れなくなった棚には彼らの変わらぬ笑顔が・・・(ビンラディンもよく微笑む写真が使われていた)。ともあれ、『冬のソナタ』は「韓国ドラマ」という新しい鉱脈を掘り起こしてくれた点で意味深い。ファンの年齢層高いから購買力もあるし。本を売るためにも頑張ってくれヨン様!

4月28日   占い師のリスク管理
 ぱる出版から『誰も教えてくれない●●の始め方儲け方』というシリーズが出ている。●●には業種が入る。「ラーメン屋」とか「居酒屋」といった普通の店から、「お掃除業」や「屋台」などユニークな仕事、さらに「デリヘル」「アダルトサイト」といった風俗系までカヴァーしている異色のシリーズなのだが、最新刊はなんと『占い師の始め方』!この本は目次を見ているだけで楽しい。「占いは当たるのか?」「資格は取るべきか?」「占い師としての能力を磨く」「占い師のリスク管理」「どこで占うか」等等。いいなあ、リスク管理。すぐに類書であふれかえるビジネス書業界において、「このシリーズは何故かどこも真似しないんですよねー」と出版社の人も不思議がっていた。『13歳のハローワーク』裏バージョンとして読める(?)大好きなシリーズだ。

4月24日   『新現実Vol.3』
 大塚英志主宰のサブカル思想雑誌『新現実』の第3号が発売された。今号の目玉は中上健次の遺稿未発表作掲載なのだが、それが読みたくてこの本を手にした読者は表紙を見て度肝を抜かれるだろう。これまでもアニメ風のイラストが表紙を飾っていたのだが、今回はもろにロリアニメ絵。硬派なイメージのある中上健次の名とこれほどミスマッチな絵もあまりないだろう。この過激な組み合わせがひどくパンクっぽいと言えないこともないが・・・。中上健次全集の隣にこの表紙が置かれている中上ファンの書棚を想像すると、なんとも微笑ましい。もっとも、いずれ単行本化されるということなのだが。とりあえず、非常に買いにくい表紙であることは確かだ。そのせいで売れ行きも少し落ちてしまうんだろうな。

4月21日   『硝子のハンマー』
 貴志祐介4年半ぶり(!)の新刊、『硝子のハンマー』(角川書店)が入荷。   付属のPOPには著者の言葉で、この密室トリックはまず見抜けないだろう、というようなことが書いてあった。きっと、「そりゃないだろう」というようなオチなのかもしれないぞ、と警戒しつつ、でも、もしかしたら本当に凄いトリックなのかも、とすごく気にもなる。なかなか憎らしいPOPだ。

4月18日   ???
 今日の女子学生客(大学生?)二人の会話。
   「わたし、学校でカバーなしで読んでても恥ずかしくない本買いたいな」
   「うん」
   普段どんな本読んでるんだ?

4月12日   本屋大賞発表!
 今日、本屋大賞が発表された。詳しくはホームページを。http://best1.webdokusho.com/index.html
『ららら科學の子』が最下位なのは悔しい限り!

4月9日   きせかえ人形
 女の子連れの母親に、紙のきせかえ人形はありませんか?と尋ねられた。昔、よく雑誌の付録についていたあれだ。調べてみると、店にはディズニー・プリンセスのものだけかろうじてあった。そういえば、最近めっきり見かけなくなったような気がする。もっとも男の子だった自分にとって、紙のきせかえ人形はハズレの付録だったから関心はなかったんだけど。この母親も、子どもにせがまれたのではなく、自分の少女時代に遊んだのを懐かしんで聞いてきたんだろうな、と思う。

4月5日   総額表示
 先月末から、例の消費税込総額表示問題でドタバタしている。雑誌はもともと内税表示だからよいのだが、書籍はスリップの頭の部分にだけ総額を表示して対処する出版社が多い。けど、普通のお客さんはスリップの表示なんて見ないよなー。スーパーで食品なんか買うと、「お、総額表示だから消費税はつかないのか!」と変な錯覚などしてしまい政府の思うツボにはまってしまうのだが、それはそれで新鮮な感じはした。でも、消費者にとって、本屋に関しては当分、今までとあんまり変わった気がしないだろうな、と思う。

3月30日   ふんどしビジュアル系
・『日本オタク大賞2004』(扶桑社)入荷。唐沢俊一や岡田斗司夫らが選考していて面白そう。面白そうな本が入ってきても仕事なのですぐにじっくり読めないところがいつももどかしい。
 
・京本政樹『苦悩』(講談社)入荷。帯:「45歳、元祖ビジュアル系が内なる自分をヌードで告白!」。そして口絵カラーに、ふんどし姿の京サマの姿が・・・。ああ・・・・(脱力)。帯にはさらに藤原紀香の応援コメントも。ああ・・・。

3月24日   すべる本
 『トリビアの泉』の5巻と6巻が入荷。で、店に出そうとたくさん抱えて歩いていたら、本のカバーのビニールがすべるので落としそうになり、落ちないように不自然な体勢で頑張ったもののついに崩落。床じゅうにぶちまけてしまった。出版社の人にぜひ言いたいんだけど、重ねるとすべる本はやめてくれ!これは全国の書店員共通の意見だと思うぞ。『トリビア』は以前も立ち読み防止の帯封が破れやすくてイライラしたこともあり。改善を望む!

3月19日   こんなことなら
 出版業界は、週刊文春問題で大騒ぎの数日間だった。それにしても、問題の記事そのものは、当人には悪いがたいしたネタではなく、多くの人にとって「ふーん」という以上に興味をひかれる内容ではないと思う。文春読者と広告を見た人くらいにしか知られず、すぐ忘れ去られる記事だった。それが出版差し止めで大騒ぎになったせいでテレビ、新聞でがんがん報道され、普段週刊誌なんか読まない層にまで、老若男女全国津々浦々にまで離婚のことが知られてしまい、さらに出版界の重大事件として後々まで語られ記憶されることになってしまった。田中氏の長女はきっと、こんなことになるなら普通に報道させておいたほうが目立たなかったのかも、と後悔してるかもしれないな。

3月12日   梶原紀香
 藤原紀香の写真集『Origin Norika in Kenya』(ワニブックス)が発売されたが、予約も問い合わせもなく売れ行きもさっぱり。彼女の時代はもはや遠い過去へ。思い出すのは、2000年に、藤原紀香のそっくりさん(?)「梶原紀香」のヌード写真集が入荷してきたとき。あの時はみんなで大笑いしたなあ。その後、梶原紀香のビデオも入荷してまた爆笑。楽しい思い出だ。そっくりさんが出てくれるうちが華ということか。

3月8日   ジョン・ムウェテ・ムルアカ
 かつて一世を風靡した、鈴木宗男氏の秘書ジョン・ムウェテ・ムルアカ氏が書いた『ムルアカ・クレッシェンド〜あなたはムルアカを知ってますか?〜』(モッツ出版)が新刊で入荷した。「知ってますか?」と聞かれても困るが、ムルアカ氏はなんとも憎めない人なのでこの本も気になってしまう。身辺雑記のような本だが、巻末になぜかカラーでアフリカ料理の紹介が載っていて、これがまた心魅かれる。関係者とムルアカファンにしか売れないこと間違いないが、好きだなあ、こういう本。

3月6日   石田衣良万歳!
 3月3日の朝日新聞に、石田衣良氏が「本屋大賞」を宣伝・応援するコメントを寄せている。
(前・中盤略)
「一冊の本が読者の手元に届くまでには、「仕事だけじゃ、こんなきついことやってらんない、やっぱり本が好きだからなあ」という無数の有志が欠かせません。その本好きが損得抜きで選ぶ新しい賞です。がんばれ、本屋さん、いいぞ、本屋大賞」
 
がんばれ本屋さん、なんて言われたことないので、すごく嬉しい。しかも優れた作家に言われるなんて。最近疲れてたので、久々に元気になった感じ。石田衣良さんありがとう!

3月2日   SHOOL
 『蛇にピアス』単行本のラスト数行は、雑誌掲載時のものより少し書き換えられているそうだ。出版社からの「読み比べてみてください」みたいなFAXで知ったのだが、単行本にはその旨何の注記もない。大筋に影響はないとはいえ、初出誌が記してあるのだから、若干の加筆修正があることを明記するのは当然の義務ではないか。しかも、ラストという重要なポイントになる部分なのだから。『文藝春秋』のせいで単行本の売れ行きが落ちた分の巻き返しを狙ってのアピールなのだろうが、逆に版元への不信感を抱く結果となった。
 
 大沢在昌の新刊の版元製POPを破棄してくれという連絡が。著者自筆の文字が印刷されていたのだが、”SCHOOL”という単語が”SHOOL”と間違った綴りになっていたため、という理由。これは著者の情けないミスだが、誰にも気づかれずに書店まで届いてしまったというのが愉快。

2月27日   「本屋大賞」に投票
 「本屋大賞」の候補10作をなんとか読み終えたので、投票する。
25日が締切だったんだけど、一週間延びてくれたおかげで間に合った。最後に残していた『終戦のローレライ』がきつかった。2段組上下巻1000頁超の大作。
つまらなくはないのだが、自分には興味が全くない潜水艦や武器の説明と長々と続く戦闘シーンには閉口した。さて、投票はベスト3までなのだが、せっかく頑張って10作読破したので、悪徳書店員のランキングを載せてみたい。
 
●1位●『クライマーズ・ハイ』      横山秀夫 (文藝春秋)
●2位●『ららら科學の子』       矢作俊彦 (文藝春秋)
●3位●『永遠の出口』         森絵都   (集英社)
●4位●『博士の愛した数式』     小川洋子  (新潮社)
●5位●『重力ピエロ』          井坂幸太郎 (新潮社)
●6位●『陰摩羅鬼の瑕』        京極夏彦  (講談社)
●7位●『アヒルと鴨のコインロッカー』 井坂幸太郎 (東京創元社)
●8位●『4teen』             石田衣良  (新潮社)
●9位●『デッドエンドの思い出』    よしもとばなな (文藝春秋)
●10位●『終戦のローレライ』     福井晴敏   (講談社)
 
こんなところ。個々の作品についてのコメントは、またの機会に「書評」の頁で。
ともあれ、この一ヶ月、課題の本を読み続ける毎日だったので、試験が終わった後の受験生のような、ほっとした清々しい気分。

2月25日   『僕たちは何だかすべて忘れてしまうね』岡崎京子(平凡社)
 事故に遭う前までに書かれた物語を集めた単行本が発売された。岡崎京子と小沢健二という二人の名前には、90年代前半に若者時代を過ごした者にとって、何かある特別な感慨を引き起こすものがあると思うんだけど、どうでしょうか?即、買ってしまった。

2月22日   『ぼくドラ』
 20日に創刊した『ぼく ドラえもん』がもの凄い売れ行きで、あれよあれよという間に売り切れてしまう。久々に反響の大きい創刊誌だ。ドラえもん人気の根強さを思い知らされた。「ドラゴンボール」や「ワンピース」では、人気があってもこういう売れ方はしないだろうなあと思う。もっとも、創刊号がバカ売れしたのは豪華な四大付録がついているから。この号単独でモトは取れてるんだろうか?重版は決まったそうだが、付録の製作に時間がかかるので入荷はだいぶ先になりそう。

2月20日   『冠婚葬祭入門』
 19日に『バカの壁』の発行部数が311万部で新書新記録に達したとのこと。さんざん売っているのにもかかわらず中を見たことは全然ないなあ。目の前にたくさん積んであっても興味がないと「読む本」として目に入ってこない。単なる売るだけの「商品」になってしまって。これまでの最高記録だった『冠婚葬祭入門』塩月弥栄子/光文社(1970年)の方が興味深い。こういう本が308万部も売れていたなんて・・・。

2月16日   日曜の朝
 昨日、初めて『金色のガッシュベル』のアニメを見た。いつも子どもたちが嬉々としてコミックや攻略本やカードを買っているのを見て、こんなに子どもたちが楽しんでいるんだから、きっと面白いんだろうなと思ったのだ。で、実際、なかなか面白かった。『コロコロコミック』のTVコマーシャルも見れて満足。日曜朝の子ども向けテレビタイムは、本屋としてとても勉強になり参考になる時間帯だなと思った。『ガッシュベル』のカードバトルもやってみたくなった・・・。

2月13日   『SFが読みたい!』
 早川書房の『SFが読みたい!2004年版』が入荷。ランクされた作品の多くを全然知らなくて(題名すら!)愕然とする。私がSF読者ではないにしても、文芸書や文庫の担当者ではないにしても、どう言い訳したところで書店員として恥ずかしいこと極まりない。情けなさを引きずりつつ、もっと精進せねばと反省。

2月12日   作家の顔・再び
●『文藝春秋』3月号は、話題の芥川賞2作品全文掲載ということでものすごい
売れ行き。笑えるのは、いつもは地味な二色刷りのチンビラしかついてこないのに、今回は二人の顔写真入りフルカラーのポスターとPOPまでついてきたこと。文春も「顔」で売る気だね。今回の芥川/直木賞受賞作には文春発行の本がなかったせいか、売る気マンマン。重版も決まったみたいだし。まあ、『文藝春秋』の方が選評が読めて面白いから、確かにお買い得な号ではある。
 
●『ファウスト』2号、好調な売れ行きで嬉しい。

2月11日   ファン層が変わるとき
 広末涼子のエッセイ『Sketch』(小学館)が発売された。タレントの本の割には、写真に彼女はほとんど写ってなく、洒落た雰囲気の本に仕上がっている。どうやら読者は同世代の女性に設定されているような作りだ。私が本屋に勤め始めた頃、ちょうど彼女の初写真集『R』と『H』がバカ売れしており、たくさんの男たちに
売った印象が強く残っているので、このファン層の変化に時の流れを強く感じてしまった。トップアイドルから一転して失墜、妊娠、結婚という人生の変遷を経て、偶像から生身の人間の姿をさらしていく様子を見て、同世代の女性は共感をおぼえていくようになり、男性ファンは次々と去ってしまうのか。その転換点は一体どのあたりにあったのか、興味深い。
 かつて広末涼子が独占していた雑誌の表紙クイーンの座に現在君臨している
上戸彩の営業スマイルを見るたびに、「いつまでもアイドルを続けていくわけにはいかないんだよなあ」という当たり前のことを考えてしまった。

2月9日   『ファウスト』/『日本国勢図絵』
●昨年末に創刊した異色文芸誌『ファウスト』(講談社)待望の第2号が入荷。複数の棚に置いてみるが、ノベルスの棚からサクサク売れていく。今号の目玉はなんと言っても巻頭の乙一作品。乙一効果で前号の売り上げを超えられるか?
 
●吉本隆明『「ならずもの国家」異論』(光文社)重版分が入荷。パラパラと中を覗いてみると、「素晴らしい本二冊」というエッセイで、『日本国勢図絵』(矢野恒太郎記念会)と『成長する都市 衰退する都市』佐貫利雄(時事通信社)を紹介していた。『成長する都市・・・』はあいにく絶版になっていたが、『日本国勢図絵』は前々から工夫してもっと売ってみたい本だったので、これはネタに使えるかも、と考える。

2月3日   『13歳のハローワーク』
 村上龍監修の『13歳のハローワーク』(幻冬舎)がよく売れ続けている。2600円もする本がたくさん売れるのは、それだけで店にとって大変ありがたいことだが、このように社会的に有意義と思われる本が値段と関係なく買われていくという状況は、書店員として非常に嬉しいことだ。世の中には様々な職業が存在し、選択の可能性があるということを、子どもたちにまず知らせなければいけない、ということを村上龍はここ数年言い続けていたが、それが結実した仕事であり、世の中もそれを求めていたということなのだろう。

2月1日   作家の顔
 「蛇にピアス」の重版分についてきたポスターに著者の大きい顔写真が載っているのだが、それを見て驚く。芥川賞受賞時のTV報道で見た顔とまるで別人みたいじゃないか!と。おいおい、いくらなんでもフラッシュたきすぎなんじゃないか?と突っ込みたくなるくらい白く光って、美容室の広告かお見合い写真か年配の女優の写真みたいになってしまっている。本人の意志ではないのだろうが、綿矢りさに負けるな!という集英社の意気込みと焦りが伝わってくるかのような一枚で、つい笑ってしまった。そんなに無理して顔出さなくてもいいのに。作家なんだから。

1月31日   本屋大賞
作家や編集者や一般読者ではなく、本屋の店員のみの投票によって年間ベストを決めるという画期的な「第1回本屋大賞」に勇んで参加したものの、候補作をなかなか読み進められず焦っている。年末の一次投票で選ばれた10作をすべて読まなければいけないのだが、まだ3作しか読み終えていない。全国の書店員選りすぐりの作品だけあって、本の面白さは保証つきなのだが、それだけにじっくり読みふけってしまい、読み飛ばすことなどできるはずもない。私の読書ペースだと、あと一月弱で7作品はきついかな。無理かも・・・・・・と弱音を吐く。

1月30日   芥川賞効果
なるほど、『蛇にピアス』と『蹴りたい背中』はここ数年の芥川賞受賞作の中では抜群の売れ行きだ。いつになく話題性があり、TVや雑誌で連日報道してくれた効果だ。だが、ある新聞は「アイドル並みの容姿」と書き、『週刊現代』には「お父さんのための新芥川賞作家ピチピチ娘二人の楽しみ方」という記事が。恥ずかしすぎる・・・。芥川賞は作家ではなく作品に与えられる、という選考委員のコメントがあったが、やはり「若くてかわいい女の子がダブル受賞したから」というのが売れている一番の理由なのだろう。まあ、理由はともあれ、多くの人が本を買って(しかも小説を)読んでくれるというのは嬉しいことだ。芥川賞/直木賞というのは本屋にとって夏と冬のお祭りみたいなものだから、どうせなら祭はにぎやかなほうが面白い。私は未読なので作品についてコメントはできないが。

1月29日   水曜どうでしょう
『クイック・ジャパン』の52号が「水曜どうでしょう」の特集号で注文多数!私も好きな番組ではあったのだが、これほどまでに人気があるとは・・・。
 しかも8割以上が女性からの注文。これは意外だった。私も一冊欲しいのだが、ほとぼりが冷めるまで待とう。表紙は窪塚洋介なんだけど、だんだん大泉洋に見えて・・・こないか。

1月28日   悪徳書店員日誌はじめました
しがない雇われ書店員。きしむ腰をさすりながらの、本との格闘の日々。
駄文におつきあい頂けましたら幸いです。

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