- 「勘違いティータイム 〜ファースト&セカンドフラッシュ〜 」 -
★ぴんぽんぱんぽーん(警告音)
 このSSは当サイト管理人のおきゃんな行動を注意してくださった
『メイド愛好機関TIRNANOG』の管理人さんに捧げます。一方的に……一方的に!?Σ( ̄□ ̄;
 愛情とは与えるものであり、与えたからといって見返りを期待する物ではない。
 つまり、愛はいつも一方的! さてはキサマ! 返してもらったことがないな!!
 まぁ、そんなこんなでお楽しみ下さい。


「勘違いティータイム 〜ファースト&セカンドフラッシュ〜 」
 
「咲夜〜〜何処にいるの〜〜?」
 湖のほとりにある紅い洋館に声が響く。
 深緑の森に立つ洋館は、自己主張の激しい紅い色でありながら、周りの景色に溶け込んでいた。
 明らかに不自然な組み合わせが自然であるのは、ここが幻想郷だからかもしれない。
 そんな幻想郷だから、館に住む主人が吸血鬼であっても別段不思議はないだろう。
 この少女の名はレミリア・スカーレット。紅魔館に住む吸血鬼である。
「咲夜〜〜」
「はいはい。どうなさいましたか? お嬢様?」
 この少女が咲夜なのだろう。
 メイド服を着た少女は館の主人である少女レミリアの前に忽然と現れた。
 彼女の名は十六夜咲夜。紅魔館のメイドである。
「そろそろお茶の時間だわ」
「ああ、そうでしたね。では、今日も稀少品を用意いたしますね」
 メイドである少女は館に住む主人の趣味を正しく理解してる。
 咲夜は主人に微笑みかけるとお茶の用意をするために歩き出す。
 と、服の裾が引っ張られる感触に咲夜は振り返った。
「お嬢様? どうかなさいましたか?」
「今日はいいの。準備は出来てるから」
「えっ?」
 館の主人が自分で茶の準備をするなんていうのはあり得ないことだったが。
「さあ、行きましょうか?」
「は、はぁ……」
 困惑する彼女を他所に、吸血鬼の少女は歩き出した。

「………………な゛っ」
 お嬢様に案内された部屋を見て、咲夜は我が目を疑った。
 綺麗に整頓されてるはずの部屋は散々な状況になっていた。
「な、何なのよ!? これはっーー!!」
 そこら中に散乱した箱やら袋は、まるでコンパスでも使ったように正確な円を描いて放置されている。
 そして、コンパスの針が刺さる場所――つまり、円の中心には黒い少女が気楽に座っていた。
「よぉ、邪魔してるぜ?」
 咲夜の叫びを聞きながらも、顔を見ることはなく軽く手をあげて挨拶する。
 熱心に本を読んでいる黒い少女は霧雨魔理沙。
 独特な言葉遣いをする魔法使いである。
 その彼女と背中を合わせてレミリアの友人で居候のパチュリー・ノーレッジも本を読んでいる。
 どうやらお互いを背もたれにすることで、心地いい姿勢を作っているようだが、それはいい。
 咲夜は足早に魔理沙の元まで近寄って問いただす。
「ちょっと、魔理沙! これは何なの?」
「迷惑料だぜ」
 魔理沙の言葉を聞いて、咲夜は辺りに散らかったものを改めて観察する。
 どうも周りにあるのは饅頭やらクッキーやら……菓子や食べ物のたぐいのようだ。
「いつも茶をご馳走してるから? って、逆に迷惑かけてどうするのよ!」
 本から目を離す事はなく魔理沙が眉を寄せる。
「何を言ってるんだ? 私は邪魔はするが迷惑なんてかけた覚えはないな」
 どうも自覚はないらしい。
「じゃあ、何の迷惑よ?」
「いつぞや冥界の結界を修復させただろ?」
「ああっ……あれね」
 幻想郷の春を奪った亡霊少女と、その少女が弱くした冥界の結界を修復する者との戦い。
 つい、一ヶ月ほど前の弾幕ごっこである。
「あいつの家に迷い込んだ外の世界の食べ物だぜ」
「……迷い込んだって。まったく、あのすきま妖怪は」
 境界を操る少女は、たまに幻想郷と外の世界の結界を揺らがせて人を迷い込ませることもあるという。
 この食べ物もそういう神隠しにあったものなのだろう。
(食べ物の神隠しって何よ? って気もしないけどね)
 とりあえず、この散乱したものの出所は分かった。
「で、なんでこんなに散らかしてるのよ?」
 咲夜が問題にしてるのは、散らかっているものの氏素性ではなく散らかっているという事実である。
 魔理沙は本のページをめくりながら軽く答えた。
「そりゃ本を読みながら、茶菓子を摘んでるからだろう」
「あなた……自分の家もけっこう散らかってる方でしょ?」
「おっ、良く分かったな?」
 何をか言わんやとばかりに、咲夜は溜息をついた。
「そういうわけだから、今日のお茶請けは準備しなくていいのよ」
 散らかってる場所は嫌なのか、それともカーペットに直に座るのが嫌なのか。
 今まで黙っていた吸血鬼のお嬢様は魔理沙達から離れたテーブルに一人座っていた。
「そこにあるのから、お茶請けを用意してくれる?」
「はい。分かりました、お嬢様」
 境界を操る少女がくれた物は、こんな所でも境界を作っているように見える。
 そんなことを思いつつ、床に散らかってるものを拾い上げていく。
「咲夜。私も美味しいお茶が欲しいぜ」
「いつだって美味しいお茶しかありません」
「………………ほう」
 そこで魔理沙は初めて顔を上げる。
「美味しいお茶しかないんだな?」
「そうですとも。それが、なによ?」
「なら、そこら辺にあるやつを使って淹れてくれないか?」
 どうも持ってきたものの中にはお茶の葉や珈琲の豆もあるらしい。
 それらを眺めつつ、咲夜は聞いた。
「えっ? あれを使うの?」
 そもそも、出所が妖しい上にちゃんと保存されていたのか疑問が残る。
 そんな咲夜に魔理沙は不敵な笑みを浮かべる。
「美味しいお茶しかないんだろ?」
「あのねぇ……それって、屁理屈じゃない」
 呆れ顔の咲夜にレミリアは待って、と声をかけた。
「咲夜。それも面白いかもしれないわ」
「と、言いますと?」
「外の世界の飲み物にも興味があるわ。気に入るものがあるかもしれないし」
 レミリアが犬歯を覗かせつつ、楽しそうに笑う。
「は、はぁ……」
(それで外の世界の飲み物が気に入ったら、どう調達するのかしら)
 胸中で呟くが、それはないだろうと二秒後には否定する。
 吸血鬼のお嬢様が一番好むものが変わるはずもない。
 変わることがないから、この吸血鬼の少女は500年以上の長い時を生きていけるのだろう。
 500年前と然程変わらないであろう――幼いままで。
「面白いと思わない?」
「………………」
 まるで時の流れが止まってしまったようなお嬢様の在り様が、自分にはとても近しいものに思えて。
 こうして、首を傾げるその様子がとても愛しくて。
「咲夜、どうしたの? 急に笑ったりして」
「いいえ。何でもございませんわ。良い考えかと」
 自分にはとても居心地がいいから、こうしているのだ。
「そう? なら、早くお茶の時間にしたいわ」
「そうですね。では、お嬢様はどの飲み物にいたしますか?」
「咲夜が選んでいいわ。そうね……色は血のように紅いのがベストね」
 それを聞いて、魔理沙は困ったような顔をする。
「ここの飲み物は紅すぎるぜ」
「なら、貴方はこっちね」
 彼女が数ある散乱物の中から取り出したのは、すでに粉状にされた珈琲の粉末だった。
 お嬢様に紅い茶が似合うように、この魔法使いには珈琲が似合いそうなものに見えた。
「それではお嬢様。少々、お待ちを」
「手早くね?」
「じゃ、休憩にするか」
 パタン、と本を閉じて、魔理沙が立ち上がる。
「……あっ」
 魔理沙が立ちあがったせいで、背中合わせに本を読んでいたパチュリーのバランス崩れる。

 彼女が軽い音を立てて、カーペットに背中を合わせた時には――全ては終わっていた。

「はい、出来上がりましたよ」
 あれだけ散らかっていた菓子などが一所に集められている。
 テーブルには放置されたものから選んだのだろう。
 色とりどりの和菓子に洋菓子が綺麗に皿の上を飾っていた。
「いつもながら鮮やかね」
 整列したチェスの駒にも似たお菓子の盛り付け具合にお嬢様は満足している。
「相変わらず便利だな」
 魔理沙は、この咲夜以外には見れない幕間劇を見て、別の感想を漏らす。
 外の世界では説明出来ないだろう不思議な光景。
 幻想郷にあるこの館では刻が止まるという。
 それは嘘ではない。
「さあ、お茶にいたしましょう。時間は無限ではございませんよ」
 紅魔館の瀟洒なメイド。十六夜咲夜は刻を操る程度の力を持っているのだ。



「この後からつけ加えたような香り、舌を刺すような刺激、胃が太鼓でも叩きそうな味」
「………………」
「この珈琲は悪いものだな」
 魔理沙は飲めたものではないとばかりに、軽く舌を出しながら珈琲カップを置いた。
「出所が怪しいんだから、仕方ないわね」
「他のにしてくれると助かるぜ」
「はいはい。これはバツ、と」
 そうして、テーブルの隅に材料であった粉末珈琲の袋を置く。
「咲夜〜〜。これも不味いわ」
「はいはい。すぐに新しいのを御用意しますね」
 先程からお茶会ならぬ珈琲と紅茶の品評会が行われていた。
「外の世界のお茶と言っても、あまり変わらないものなのね」
「まぁ、出所がアレですから……幻想郷のものなのかもしれませんが」
 やはりと言うべきか、お嬢様の口には合わなかったようだ。
「でも、まだまだ一杯あるわ。次はどれにしようかしら?」
「………………」
 きらきら、と楽しそうに袋を選ぶお嬢様を他所に、咲夜の頬には一筋の汗が流れていた。
 先程から咲夜はお嬢様が不合格にした紅茶を飲んでいる。
 せっかく淹れた茶を飲まずに捨てるということは自分には出来ないから仕方ない。
 とは言え、このまま続くのも勘弁して欲しいところだった。
「ほら、パチュリー。珈琲だぜ」
 一方、魔理沙は不合格にした珈琲をパチュリーに勧めていた。
「……ありがと。なんか、数分前にも飲んだ気がするんだけど」
「それはきっと気のせいだぜ」
 あちらはあちらで、そう遠くないうちに限界が来るだろう。
(……どうしたものかしらねぇ)
「咲夜、これがいいわ」
「はい。こちらでございますね」
 そう言ってレミリアが選んだ物は、かなりまともそうなものだった。
 しっかりとした造りの瓶に入れられた紅茶葉だ。
 瓶のラベルに書かれた文字を読み取るとダージリンの三番茶と書かれてある。
「ダージリンの三番茶。これならミルクを入れると美味しく頂けますよ?」
「……ミルク。白いのは好きじゃないわ」
「なら、こっちにファーストフラッシュが一杯あるぜ」
 魔理沙が指差す先には、紅茶の袋が整列するように並んである。
「………………ん?」
 それをざっと見て、妙なことに気づいた。
「魔理沙。これ、どうしてファーストフラッシュばかりなの?」
「ん? どういう意味だ?」
「セカンドフラッシュの茶葉がないじゃない」
「ああ……それは霊夢にあげたぜ」
「え? なんで?」
「なんで、って……霊夢も働いたんだから迷惑料を貰う権利があるだろ?」
 確かに冥界の結界を修復するのに働いたのは霊夢・魔理沙・咲夜の三人であったが。
「どうしてファーストとセカンドを均等に分けようとしないのよ」
「甘いな」
「……苦い」
 パチュリーが先程の珈琲を飲んで感想を漏らす。
「今日の私は気勢が乗ってるんだ」
「良く意味が分からないわ」
「仲良く均等にという考えは似合わないぜ。そもそも、私と霊夢は意見が分かれるんだ」
「成程、いつものスペルカードルールで競ったってわけね」
 その通り、とばかりに魔理沙が頷く。
「そして、私が勝ったわけだ」
 そして、にんやりと自信に満ちた顔で微笑んだ。
「……はい?」
「ああ、もう。分からないやつだな。
 だーーかーーらーー、私が勝ったからファーストフラッシュは持っていたんだよ」
「で、霊夢がセカンドフラッシュを貰ったと」
「そういうことだな」
「魔理沙……それは、間違ってる」
 屋敷の知恵袋で居候。魔理沙と同じ魔法使いのパチュリーが口を挟む。
「あーー? 何がだ?」
「紅茶で味がいいのはファーストフラッシュじゃなくて、セカンドフラッシュなの」
「………………」
 まるで、開始直後に敵の弾幕に直撃したような冷めた沈黙が部屋を支配した。
「なに?」
「飲めば分かると思うけど……ファーストよりセカンドのほうがコクがあって、甘くて美味しい、と思う」
「ファーストフラッシュは香りがいいんだけどね。知らなかったの?」
 咲夜の問いかけに答えることなく『うっ〜〜』と唸る魔理沙。
「騙された。霊夢のやつ、『やっぱりお茶はファーストフラッシュに限る』とかしみじみ言うから」
「ふうん……霊夢もねぇ」
 と、言う事はあの霊夢も紅茶のイロハは知らなかったのだろうか。
「ううっ〜〜、霊夢のやつめ。
 曲がりなりにも紅白ともあろうものが紅茶のイロハも知らないとは許せないな」
「……自分は棚の上に置いて、すごい言い草ね」
「私は黒い魔だから珈琲通なんだ」
 魔理沙は椅子から下りると、立てかけてあった箒を手に取った。
「邪魔したな。また邪魔するぜ」
 別れの挨拶を口にすると、部屋の窓を開け放って箒にまたがる。
「邪魔はするな」
「……いってらっしゃい」
 咲夜とパチュリーの声を背に、黒い魔は箒にまたがり幻想郷の空を飛んでいく。
 目指すは幻想郷の境にある博霊神社。
 曲がりなりにも紅白な巫女。博霊霊夢はそこに住んでいる。


 一目散に幻想郷の境にある博霊神社を目指す。
 博霊神社の巫女であるところの紅白。博霊霊夢は縁側に座って、ぼんやりとしていた。
「霊夢〜〜」
 空の上で一声かけてから、境内に降り立つ。
 そのまま『のしのし』という擬音でも似合いそうな歩き方で近づいてくる魔理沙。
 そんな魔理沙を見ても、霊夢はいつもと変わらない調子で声をかけた。
「あら、魔理沙じゃない?」
「あら、魔理沙じゃない!」
 霊夢は不思議そうに首を傾げる。
「じゃあ、偽者かしら?」
「本物に決まってるだろ!」
「なら、魔理沙じゃない」
 おかしなこと言うのね、と笑いながら霊夢は自分の横に敷かれている座布団をぽんぽんと叩く。
 座ったら? という意思表示らしい。
 魔理沙は勢い良く座り込むと、その勢いのまま霊夢に吠える。
「私のことはどっちでもいいんだ。それよりも、さっきはよくも騙してくれたな」
「騙した……って、何が?」
 霊夢は魔理沙のほうを見ることなく日光浴をしながら聞く。
「さっきの勝負に決まってるだろ?」
「……さっきの勝負ねぇ。何か騙したかしら?」
「ほらほら、早く思い出して楽になれ」
 魔理沙の何処か鳥でも追い立てるような口調とは対照的に霊夢はぼんやりと空を見上げる。
「う〜〜ん」
 青い空を見つめながら、霊夢は記憶を日干しにしてみる。

 それは丁度、霊夢が朝食を取り終えた頃のことであった。

「よう、霊夢」
「あら、魔理沙じゃない?」
 朝食を取り終え「ごちそうさまでした」と手を合わせたところに魔理沙が入ってきた。
「おっ、朝食か?」
「もう食べ終えたけどね」
「それは見れば分かるが……これはどうしたんだ?」
 魔理沙は畳に散乱したものを見て、困惑する。
「まさか……とうとう、店じまいか?」
「神社が店じまいなんてするわけないでしょ! これは迷惑料よ」
「迷惑料?」
 オウム返しに聞いてくる魔理沙を見て、霊夢はこくりと頷いた。
「冥界の結界を修復させたでしょ? なんか、うさんくさい妖怪に」
「ああ……あれか。あいつはうさんくさいのか?」
「知らないけど。きっと、うさんくさいわね」
 根拠のない自信たっぷりに霊夢は再び頷いた。
「そいつは、ひどい言い様な気もするぜ」
「そうかしら? ともかく、あいつが置いてったのよ。自分は食べないから、ってね」
 ふ〜〜ん、と相槌を打ちながら魔理沙は畳に置かれたものを手にとって眺めている。
「必要ないなら、どうしてこんなに集めたんだ?」
「外の世界から迷い込んできたものだそうよ」
「成程な。しかし、何で食料品ばかりなんだ?」
 ざっと見渡した限り、自分の興味を引きそうな物は見当たらないので聞いてみる。
「お花見するのに丁度いいからでしょう?」
「……花見の時期はもう過ぎてる気もするが」
 霊夢の頭はいつでも春満開だから関係ないかもしれない。
「まぁ、丁度いいじゃないか。食後のお茶の時間にしようぜ」
 そういうと魔理沙は畳の上に座りこむ。
「お茶の時間かもしれないけど、お茶の葉は残り少ないわよ」
「お茶には困らないだろ? そこら辺にある」
 珈琲に紅茶……袋、缶、瓶に入ったものまで色とりどりだ。
「ん〜〜困らないかもしれないけど」
 だが、霊夢は右手で口を隠すようにして、何か問題でもあるような表情でお茶の山を見ている。
「まっ、とにかくお茶の用意を頼むぜ」
「えっ?」
 お茶の山を見ていた霊夢が魔理沙を見て、目を瞬かせる。
「私が用意するわけ?」
「当たり前じゃないか。客は持て成すものだと相場が決まってるだろ?」
「あら、さっき魔理沙は『食後のお茶の時間にしよう』って言ったでしょ?
 こういう場合は、提案した魔理沙が私にお茶を淹れるのが相場じゃない?」
 今度は魔理沙がなんだと、と両手を腰にあてて不満を漏らす。
「おいおい、客に茶を淹れさせる気か? それは夢のない話しだぜ」
「あら、神社のお客と言うからにはお賽銭が必要だわ」
「長い間、空だった賽銭箱の歴史を私が壊すわけにはいかないな。
 それに金を払ってお茶を出していいのは喫茶店だけだぜ? 本当に店じまいか?」
 お互いの目線に軽い火花が散る。
「筋はどっちかが折れなきゃ話しが進まないわね」
 霊夢の言葉に魔理沙が返す。
「こうなったら白黒つけるべきだな」
 それを聞いて霊夢はくすっ、と軽く微笑んだ。
「あら、魔理沙がそういう事をいうのどうかしら? 私は紅白よ?」
「ふんっ、そういうことはやってみないと分からないぜ」
 勢い良く出て行く魔理沙に対して、霊夢はのんびりと歩いて外に向かう。
 一対一のスペルカードルール。
 幻想郷の弾幕ごっこである。

 ………………。

「妙よね〜〜」
 ここまで思い出して、霊夢は首を傾げた。
「おっ、やっと思い出したか?」
 縁側で霊夢が頭の春を満開にさせてる間に、魔理沙は大福を三つも摘んでいた。
「どうして、黒いのに白くなったのかしら」
「あっーー? まだ肝心な所までいってないのか?」
 失礼ね、と霊夢は軽く真剣な表情をして口を開く。
「店じまいはしてないわよ」
「戻るな! この話の大事なところは私が勝った後だ!!」
「えっと……魔理沙が勝った後は」
 もう一回空を見上げた霊夢の後ろに立って目隠しをする。
「ちょっと……見えないじゃない?」
「いや、霊夢は何か寄り道しそうだから、私が説明する」
 覆っていた手を退けて、霊夢の肩を掴むと向かい合うように座らせる。
「なんだか真面目な会話みたいだわ」
「いいから、聞いてくれ。あの勝負には私が勝った。だから、霊夢が茶を淹れることになったわけだ」
「ええ、そうね。で、私は巫女なのに茶坊主をすることになったのよ」
 どんどん確信へ迫るように、二人は今朝の会話を掘り出していく。
 そのうちお互いは立ち上がって、舞台を演じる役者のように朝の光景を再現し始めた。
「茶坊主の霊夢か。くくくっ……本当に店じまいしたみたいだな」
「そんな事言うと死ぬほど苦いお茶を出すわよ」
 含み笑いを漏らしていた魔理沙の笑みがピタリと止まる。
「そいつは困るから、美味いお茶を頼むぜ」
「分かったわ。早速、淹れてくるわね」
 何もそこまで真似しなくてもいいだろうに、霊夢は戸棚に向かって歩き出す。
「あっ、そうだ」
 そこで思い出したように振り返った。
「んっ? どうしたんだ?」
「あそこにある荷物なんだけど、適当に見繕って紅魔館に届けてくれないかしら?」
 勿論、荷物とは食料である。
「何故、私がおつかいに行かないといけないんだ?」
「最近、紅魔館に入り浸ってるでしょ? お茶代に、おつかいしても罰は当たらないわ」
 巫女の私が言ってるんだから、絶対ね。
 と、霊夢は自信満々に腕を組んで答えるが、魔理沙が素直に首を縦に振ろうはずもない。
「それじゃ交換条件だ。わたしは勝負に勝ったからお茶を淹れてもらってるんだぜ?」
「なら、迷惑料の中から魔理沙が一番いいものを選んでいいわ。これで、どう?」
「……!」
 魔理沙の目線が一瞬、鋭く引き絞られる。
 話の焦点はここにある。
「待った!」
 魔理沙がびしいっ、と霊夢を指差す。
「ふふふっ、どうやら次の台詞が思い出せないようね」
「………………おい」
 霊夢の勝ち誇った顔を見て、魔理沙はとうとう畳に突っ伏した。
 ばたんと倒れた魔理沙に霊夢はすすすっ、と軽い音を立てて近寄ると魔理沙の元にしゃがみこむ。
「なかったことにするのはなしよ?」
 魔理沙は今にも倒れそうに腕を震わして、顔を上げる。
「いや、待て。いつの間に趣旨換えをしたんだ? 話しはここで終わりだ」
「え? でも、ここまでで何か問題があった?」
 どうやら、当の問題も忘れたわけではないらしい。
「もう、本当に頼むぜ」
 うつぶせの状態だった身体をひっくり返して寝転がる。
 何となく疲れたので、このままの状態で話を進める。
「要は迷惑量の配分に問題があると言いたいんだ」
 自分を覗き込んでいる霊夢の顔を見ながら、魔理沙はようやく待ちかねた本題に入った。
「配分って?」
 純粋な、まるで理由が分かってない童女のように透明な疑問である。
 霊夢と話すには互いの焦点があってないと会話が続かない。
 勝負でもそうだが、霊夢は掴み所がなくて困る。
「ファーストフラッシュだ」
「……ファーストフラッシュ?」
 聞き返して数秒後、霊夢の頭の上に花が開花するような絵が見えた気がした。
「ああ、ファーストフラッシュね。でも、あれは魔理沙が選んだんじゃない?」
「確かにそうだが……霊夢はあの時、言っただろ?」
「何を?」
「どうせならファーストフラッシュが飲みたかったとか」
「ええ、飲みたかったわよ?」
 そこまで言って霊夢が『んっ?』と頭の上に疑問符を浮かべる。
「魔理沙ってば、私が欲しがるのを持っていこうとしたの?」
「………………うっ」
 霊夢が寝転がった魔理沙を覗き込むと、それを避けるように畳の上を転がる。
「それも全部?」
 が、転がった自分の視界には霊夢の足袋が見えた。
 まるで瞬間移動でもしたような速度だ。
「……ううっ」
 藪をつついたつもりはないが蛇を出してしまったようだ。
 魔理沙が慎重に顔を上げて、霊夢の顔を観察する。
「もう、意地悪ね」
 霊夢は子供をあやすような優しい声と苦笑を浮かべていた。
「まっ、待て。そんな顔をするな」
 このまま霊夢に子供扱いされるのは困る。
 魔理沙は軽く反動をつけて立ち上がった。
 無闇に反論すると本当に子供みたいなので、魔理沙は余裕たっぷりにからかうことにした。
「霊夢が可愛いから意地悪したくなるんだ」
「………………はぁ?」
 呆れたように――本当に呆れたんだろうが。
 糸が切れた操り人形のように、霊夢は両肩を力なくだらりとぶら下げる。
 それから少し放心した後、霊夢はくすくすと堪えきれない笑いを漏らす。
「はいはい。困った負けず嫌いさんね」
 しかし、魔理沙は両手を上下に振りながら必死に否定する。
「いや、友と認めるから容赦しないのかもしれないぞ?」
「もう、どっちでもいいから。で、ファーストフラッシュがどうしたのよ?」
 気がつけば、いつの間にか霊夢が話の主導権を握っている。
「むうっ……散々、話しを伸ばしておいて酷いぜ」
 これでは、まるで自分が散々話しを伸ばしたみたいではないか。
「いや、咲夜が紅茶はセカンドフラッシュの方が美味いと言ってたぜ?」
「ああ、成程。だから、騙したなって言ったのね」
 魔理沙はこくりと頷いた。
「別に騙したつもりはないんだけどね。じゃ、交換しましょうか?」
「な、なにっ?」
 自分がこだわっていたものを、霊夢はあっさりと譲ろうかと言ってくる。
「うっ……それは」
「それは?」
 これは俗に言う『試合に勝って、勝負に負けた』状態である。
 自分としては勝負に負けたというのは困る。
 しかし、ここで霊夢の提案を呑んで交換すれば……それはそれで霊夢に度量で負けたようで困る。
(何を言ってるんだ、私? 勝利者の権利なんだから負けでも何でもないぜ)
 心の中で自分が呟く。
 いや、しかしだ。ここでセカンドフラッシュに交換してもらうのはどうだ。
 霊夢に『本当に困った負けず嫌いさんよね〜〜』と笑われないか?
 じゃあ、返してもらわなければいいのか。いや、それじゃ勝負はどうなる?
「ま、まいったぜ。回避出来ない」
 まるで避けても逃げても追ってくる霊夢の弾幕のようだ。
「くっ……こうやって、ああすると……いや、それじゃ格好がつかないぜ」
「………………」
 魔理沙はぶつぶつと独り言を呟きながら、どうにか回避策を考えているようだ。
「なんだか知らないけど、大変そうね」
 なにやら時間がかかりそうなので、霊夢は部屋の奥へ引っ込むことにした。
(……う〜〜ん。しかし、このままではいけないわね)
 巫女として目の前に迷っている者を放っておくのはどうだろう、と霊夢は思う。
 巫女は迷えるものには救いを与える……って、それでは教会である。
(ま、間をとって迷いを取り除くってところかしらね)
 ここは魔理沙に店じまいをしてないところを見せてやろうじゃないか。
「これを使ってね」
 霊夢は茶目っ気たっぷりの笑顔で、戸棚の奥にあるものを取り出した。

 ………………。

 それから、しばらくして霊夢が戻ってきても魔理沙は真剣に悩んでいた。
「いっそのことファーストフラッシュも返すか?
 元々、私は紅茶に興味ないって。いや、それは負け惜しみだろ?」
「まだ、やってる」
 霊夢はそんな魔理沙の元まで近寄ると、軽く肩を叩く。
「魔理沙。魔理沙」
「なんだ? 今、お茶のことで取り込み中だ」
「そう。じゃ、お茶でも飲んで落ち着いたらいいじゃない。はい。どうぞ」
「何だ? これは?」
 魔理沙は霊夢が手に持ったお盆を見つめる。
「決まってるじゃない。ファーストフラッシュよ」
「ファーストフラッシュ?」
 新緑の色でありながら底まで透き通る透明さをもつ液体。
「やっぱり、神社のお茶はこれじゃないとね」
 それは湯飲みに入れられた玉露であった。

――「勘違いティータイム 〜ファースト&セカンドフラッシュ〜 」END――





〜あとがきのような言い訳〜
 最初に書いているが、これは当ニュースで『メイド愛好機関TIRNANOG』さんの
 東方永夜抄一面ボス絵と二面ボス絵を間違えた言い訳のようなSSである。

 つまり、魔理沙は紅茶を。霊夢は日本茶の話をしていたわけである。
 紅茶のことなんて知らないって人はファースト・セカンドと聞くと勘違いすんじゃないかと。
 そんなことを思って、茶葉を題材にして幻想郷の方々に壮大な言い訳劇を演じて頂いた。
 作品を通して作者が言いたいのは『一番と二番を勘違いするなんてことあるよねっ★』だ。
 お前、反省してないだろ? と思わないで頂きたい。馬鹿じゃないので、ちゃんと反省してます。
 余談ではあるが、この作者は某オンラインゲームUOの取引掲示板で、
『リコールスクロール1500本製作依頼』を
『ブランクスクロール1500本製作依頼』と勘違いしたおきゃんぶりで用意するのに苦労した経験がある。
 後、某サイトの可南子さんと乃梨子さんを見間違えたり_| ̄|○
 多分、勝手に思い込んでいて、本当は分かってるんだけど間違って打ってしまうんだと思う。
 これを読んでいるサイト管理人の皆様。
 ニュース本文の説明とキャラが違ってたら悪気じゃないので「違うわ!」とハリセンで叩いてあげて欲しい。
 忘れ物を捜してるときに目の前にあるのに気づかないのに似てるのかもしれない。

 後、紅茶のセカンドフラッシュの方が美味しいと言われるが、味の好みは万人それぞれなわけで。
 ファーストフラッシュのほうが美味いぜ、とか突っ込まれると小説の存在意義に関わるので勘弁。
 一応、紅茶は『香りのファーストフラッシュ』『味のセカンドフラッシュ』なんて言われてもいる。
 甘いほうが美味しいと思うのであればセカンドを選ぶと良い。
 私はファーストフラッシュと聞くと日本茶を思い出す。

 途中で書いてて思ったのだが、私が書いた魔理沙はそこらに愛人を持つ人みたいだなぁとか思った。
 そんな事を思いつつ書いてるから……。
 魔理沙は霊夢の腰に右手をまわして強く引き寄せる。
「えっ……」
 魔理沙は驚く霊夢の頬に左手をあてて、自分の顔に向けて言った。
「霊夢が可愛いから意地悪したくなるんだ」
 とか言い出したのだろう。(一部脚色)

 本当は最初は咲夜がレミリアにファーストフラッシュを出して、魔理沙がそれを指摘。
 レミリアが『お仕置きが必要ね』とか言って、世間の一部の方が思い浮かべる
『ご主人様がメイドにお仕置きする図』をしようとかして、逃げ惑う話しを予定。
 で、ドタバタ芸をしてる紅魔館を他所に霊夢が縁側で茶を啜りつつ
『やっぱり玉露(ファーストフラッシュ)が一番ね』というのでエンド。が、没シナリオでありました。


〜私はここに誓う!〜
 もしも、また東方関連とマリみてでキャラの見間違いなどしたとして。
 そこの管理人さんに「間違ってるわ! この馬鹿管理人!!」とハリセンで叩かれたら。
「あひんっ」とか言いつつSSでお返ししようと思います。間違えませんと思いますが。
 では、長々とお付き合いくださいまして、ありがとうございます。    BY 電脳喫茶「桜の森」管理人


《 良ければ感想くださいね 》