ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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                    k_serika-Presents
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    [ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
                      vol.10 02.08.02
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―――――――――――――――――――――――――――――― 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」 SECOND STAGE「PAST GHOST?」エピローグ ――――――――――――――――――――――――――――――  夢の中で、何度も私は母を失う。  あの人の唐突な死。  ほんの十数秒前まで舞うように命を狩っていた人。  あの日の私には……何が起きたのか理解出来なかった。  理解できないままに屍すら残さないで、母はこの世を去ってしまった。  数年が経ち、生活にも余裕が出来るようになると私は色々と考えこむようになった。  母が何故、あのような形で死ななければならなかったのかを。  ある人物は因果応報だと答えた。  殺して生きる者は、いつか殺されないといけないのだと。  そんな答えじゃ、私には納得できなかった。  そんな答えを認める訳にはいかなかった。  私は生きる限り殺し続ける。  そして、私は決して誰にも殺されたりしない。  最後まで、笑って生きて、死んでみせる。  殺し続けた物達の死を、無駄にはしないために。  そして、幾度も繰り返された夢に終わりが来る。  あの日、あの時、あの場所に。  私は立つ。 「……フッ!!」  オロチアギトの刃が翻り、エネミーを血の海に叩き落としていく。  そして最後の一体になった所。  ―――ここだ。 「………………」  振り下ろした刃を返し、正眼に構える。  それが、彼女の最後。 「!!」  瞬間、私は駆ける!  地を振るわせるエネミーの怒号。  あの時の私は―――それに怯えて何も出来なかった。 「やらせない!!」  母の手からオロチアギトの刃を取る。  既に開いた顎は私の前に迫っている。 「せりゃああああああっ!!」  一閃。  私の剣は母に喰らいつこうとする化け物の身体を上下に断つ。  物言わぬ屍が大地に落ちて音を立てた。 「……やった?」  私は、ただ死体を見ているだけだった。  そして―――いつしか、涙が出た。  分かってるんだ。  所詮は夢だなんてこと。 「それでもね。私は、認める訳にはいかなかったんだ」  母が誰を殺したのか、何も知らないけど。  あの人は―――あんな死に様をしなきゃいけないほど悪くなかった。  そう、信じたかったんだ。 「……ラファナ?」  頭の上に柔らかくて暖かい感触。 「えっ?」  振りかえれば、母が笑って立っていた。 「ありがとう」 「………………」  私も母に微笑み返す。  ずっと言いたかった事がある。 「さよなら、母さん」  母は何も言わずに頷いた。  そして―――夢は終わりを告げる。  私はやっと、あの人に別れを告げることが出来た。  今まで、言えなかった言葉を。  これで、もう―――この夢を見る事はないと思う。
「……あれ?」  何処か記憶の隅に残る空間。 「目が覚めましたか?」 「ああ、病院か」  横に立っているレイキャシール、マリアを見て気付く。 「本当に、危ない所でしたよ。  よくもまあ、あんな体調で戦闘なんかしましたね」  どうやらまだ大丈夫らしい。 「でも一体、どういう事?  誰が私をここまで運んでくれたわけ?」  自分は気を失ってしまったのだ。  その自分が何故、病院に? 「ユーリアさんが運んでくれたんですよ。  後、今回の犯人も彼女がハンターズギルドへ引き渡しました」 「そう……」  やれやれ、隙のない女だ。 「頼りになる人ですね」  マリアが言った言葉に頷く。 「だって私の妹だもの」  いつも、自分の手の届かない場所をユーリアは何も言わずにフォローしてくれる。  だから自分は無茶が出来る。 「ところで、ラファナさんの体調の事ですけど」 「……うん」  エデンと戦った時とは別の緊張感が身体を震わせる。 「かなり危険な状態でしたよ。  アルコール分の過剰摂取などによる食道粘膜層の拡張。  それが激しい運動などによって血流阻害を起こして―――」 「ゴメン、もうちょっと分かり易く言ってくれると……」  乞う目でいうラファナを一瞥し、マリアは結論を述べる。 「要するに飲み過ぎで死の一歩手前だったと言う事です」 「……そこまで酷かったんか」  水のようにガバガバと飲んでいてマティエ達に注意される事はあったが。  自分では抑制していたつもりだが、本気でつもりだっただけなようだ。 「酷いなんてものじゃありませんよ。  これから十年は一滴の酒も飲んじゃ駄目です。  というより一生飲まないことをお勧めします」  つまりは一生分位の量を飲んでしまったわけだ。 「うげぇ……私の楽しみがぁ」 「一時の享楽に魂を売り渡しますか。  それもまた、いいでしょう。私は止めませんよ。  悲しむのは貴方じゃありませんしね」  マリアは痛い所をついてくる。  まあ、確かに命には代えられまい。 「……分かった。お酒はひかえる」 「控えるのではなく、やめるんです」 「何とか―――してみる」  苦い口調で言ってはいたが、内心はホッとしていた。  どうやら、まだもう少し時間はあるようだ。  そして病室に沈黙が訪れる。 「静かねぇ、ここ」 「病院ですから。  あっ、当たり前ですけど騒がないでくださいね」 「はいはい……あれ?」  ペッタペッタと、こちらに向かって歩いてくる足音が響いてる。  その、のんびりしたテンポで足音の持ち主は知れた。 「どうやら誰か来られたみたいですね。  それでは、ラファナさん。  ゆっくりと静養してくださいね」  丁寧に頭を下げて部屋を出て行くマリア。  それに入れ替わって黒い帽子が入りこんで来る。 「……ごくろうさま」 「んっ」  右に左に帽子の飾りを揺らして入って来たのはユーリアだ。 「わざわざ運んでくれてありがと」  まずはお礼だ。  あのままなら自分は失血多量で死んでいただろう。 「もう、勝負に勝っても生きて戻ってこれないんじゃ意味がないでしょ?」 「ははは、そこら辺は感謝してるわ」  ラファナの笑みに苦笑してから、ユーリアは真剣な表情に戻る。 「―――エデンさんの事だけど。  パイオニア2は彼女をラグオルの探査に使うそうよ」 「そうか。  確かに今は人手が欲しい時期だもんね。  処罰するより使う方が得策か」  となると、彼女は相当危険な任務に回されるであろう。  死と隣り合わせの地獄に落ちたも同然だ。 「彼女から伝言を預かってるわ。  ありがとう、って。  もう一度、死ぬ気でやり直してみせるってね」 「そっか。  うん、大丈夫。  あの子も私もまだ終わったわけじゃない。  幾らでも好きなように変われるよ」 (……まったく、もう。  自分を殺そうとした相手なのに嬉しそうにしちゃって)  ユーリアの心境は複雑だ。  いつもは自分のことをおっとりしてるだの、何だの言ってるが。  ラファナの呑気さも相当なものだ。 「で、……心配した?」 「えっ?」 「心配したかって聞いたの」  身体を起こしてこちらを見るラファナ。 「勿論よ。あなたは無茶するから」 「そう」  返事をすると頭をこつんとユーリアの身体にあてる。 「ラファナ?」 「流石に……死ぬかと思ったよ」 「………………」  自然とユーリアはラファナを抱きしめる。 「でも、もう大丈夫。  無茶したりしない。  心配かけて―――ゴメンね」 「……ええ」  ガチャ 「あっ……」 「おっ?」 「あらあら〜」  扉の音に二人が振り向くと其処にはマティエが立っていた。 「お、お姉ちゃん達が―――」 「……レズってる」 「セーラムさん。もっと他に何かいう事が」  ぞろぞろと入ってくるティアと家族を前にしてラファナの顔が見る見るうちに赤くなる。 「ちっ、違う! これはそーいうんじゃ!  ちょっとユーリア! 離れなさいって!!」 「だ〜〜〜〜め。私も偶には美味しい所貰わないと」  今回は本当に心配したんだから。 「あんたいっつもイイトコどりしてるでしょーが!!」 「だって〜ラファナは私に甘えてくれないんだもの」  そう言うとギュッとラファナを抱きしめるユーリア。 「マティエ! こいつをどーにかしてえ!!」  引き剥がそうにも怪我や点滴が邪魔して力の入らないラファナが叫ぶ。 「はいはい。  ラファナお姉ちゃんはいつもユーリアお姉ちゃんやクレハお兄ちゃんばっかし」  ぶつくさと文句を言いながらユーリアの手に触れた途端、逆に手を掴まれる。 「……あれっ?」 「あら? ジェラってるの? じゃあ、マティエも一緒に♪」 「うにょわああああああああああ!!」 (……マティエちゃんまで捕食されてる)  遠くから様子を窺っていたティアは思わず笑みを漏らした。  こんな風に仲の良い家族を見ていると、幸せになれる。  そんな気がする。 「………………」  そこでティアは不意に気付いた。 「ねえ、止めないの? クレハくん」 「へっ? えっ、あっ、はい!」  夢うつつな返事を返すクレハにティアは半眼でつげる。 「……シスコン」 「えっ!! ちがっ!!」 「うそ。どもってるもの」  こちらはこちらでガヤガヤと騒ぎ始める。 「……仲良き事は美しきかな」  未だ馬鹿騒ぎを続ける皆に向かって、聞こえないだろうが言う。  まもなく、看護婦が来て平謝りすることになるだろう。  その心構えだけしておきながらセーラムは一人一人を視線で追っていく。  過去と決別し、新たな道を歩もうとする妹。  そして、未来に向かって突き進もうとする弟達。  それを遠くから見る新しい仲間。  まだまだ―――自分達の旅は終わりそうにもない。  そう結論付けた時、神経質そうな顔立ちをした看護婦が部屋に入って来た。 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」  SECOND STAGE「PAST GHOST?」―――Fin――― ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆