ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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                    k_serika-Presents
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    [ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
                      vol.07 02.06.29
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―――――――――――――――――――――――――――――― 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」 SECOND STAGE「PAST GHOST?」 ―――――――――――――――――――――――――――――― 「ターゲットはこいつだ」 「これを殺せばいいのね?」 「ああ……気をつけろよ、強いぞ」  チラッ、と渡された写真に目を落とす。 「………………」  冷たい目をした女だ。  それが最初の感想だった。  写真の女には興味はない。  今はそれよりも確認することがある。 「おい、これはなんだ?」  不快もあらわに去ろうとする男の肩を取る。 「はあ? だからターゲットだよ」 「私は人間形態の奴を殺すのは気に入らない」 「は。殺し屋が文句言ってんじゃねえよ」  パンッと手を払われて男は足を早めて裏路地から去っていく。 「…………ふん」  払われた手をつまらなそうに見つめ、背中を向く。  涼風が男の背中を軽く押した。 「……おっ?」  その途端、男の足は動かなくなった。 「追加料金だと言っておけ」  その声と共に自分の視界が汚れた地面に向く。 「なっ! えっ?」  足を踏ん張ろうとしても言う事を聞かない。  当たり前だった。  彼の足は既に繋がっていないのだから。  ………………。  相手が何をしているか?  また、どういう人間なのかなど知らない。  知ろうとも思わなかった。  標的は死ぬだけだ。  これから死ぬ人間の事を気にしても仕方ないだろう。 「……成程な」  標的はハンターとして殲滅任務を受けて惑星にいるらしい。  ラファナの仕事は事故として標的を始末することだ。 「確かに―――いい腕をしてそうだ」  資源開拓を邪魔する強暴な原生動物の死体が道しるべのように点在している。 「そう遠くないな―――近い」  血の香りがまだ新しい。  ラファナの唇が喜びに歪む。  ガサッ!  愉悦に浸る自分を邪魔するかのように手前の茂みが大きく揺れた! 「っ!」 「……なんだ、人か」  構えた銃を下ろして、つまらなそうに呟く。 「ユーリア。大丈夫、出てきてもいい」 「…………なっ」  自分は何の気配も感じなかったのに。  二人分の気配を感じ取れなかったのか? 「よっこいしょっ〜〜〜」  自分と同い年―――少し若いか。  それくらいの少女も茂みから出てくる。 「貴方がギルドの言ってた相棒?」  感情の起伏を感じない声が疑問を投げてくる。  しかし、それより何よりもその姿の違和感にラファナは声をあげる。 「お前―――それは!」 「ん?」  ラファナが彼女の背後を指差す。 「赤ん坊、マティエと言う」 「あ、あかんぼう?」 「まだ産まれたばかりなんですよ〜〜」  横にいるユーリアが自慢するような声で説明を加える。 「お前、そんなのを背負って仕事を?」 「モチッ」 「ロ〜ンッ」  二人が申し合わせたようにVサインをしてみせる。 「………………」  あれほど殺気に満ちていた自分の胸の中が不思議とすっきりした。 「フッ……ははははは」  辞めだ。  こいつらを殺す気にはなれない。 「どうした?」 「別に。興醒めだから降りるだけさ」  運がいい奴だと、胸中で呟く。 「降りるって。  仕事はもう終わっちゃってるんですけど〜〜〜?」 「それは邪魔したな、失礼」  ただの殺しにも飽きた頃だ。  そろそろ組織を抜けるのもいいだろう。 「……待て」 「ん? どうかしたか?」 「依頼は二組で受ける事になっていた。  そしてお前は遅刻。  私は二人分働く事になったわけだ。  なら、詫びに食事でも奢るのがスジというものだろう?」 「………………」 「わ〜〜〜い、ただ飯ですね〜〜」  異論を唱えようという気にもならず、軽く息を吐く。 「分かったよ。お前ら、面白い奴らだな」 「何故だ? 皆、同じ事を言う」 「そりゃ、そうだろう」  この日から、この連中との付き合いは始まったのだ。  ………………。 「―――思えば遠くに来たもんだ」  ティアの家の前で呟く。  不意に玄関の扉が軽い音を立てて開く。 「お、おねいちゃん!?」  物思いにふけっているラファナにマティエの声が響く。 「ただいまぁ―――腹減った〜ご飯よろしう」  駆け寄ってくるマティエを避けて家の中に入って行く。 「病院にいなくていいの!? 大丈夫なの!?」 「大丈夫だからご飯〜  起きてから何にも食ってないんだから」 「分かったから、ちゃんと部屋で寝ててね!」 「はいはい」  いつもの歩調で自分に宛がわれた部屋へと向かう。 (歩くたびに少し痛むな。まあ、この程度なら可愛いもんか)  一週間後の戦いに向けて、色々と用意がいる。  自分の部屋に戻るとそこには先客がいた。 「ただいま〜〜」 「お帰りなさい」 「何よ? いつも愛想のいいアンタが神妙な顔して」  ラファナの言う通りユーリアは普段はしない生真面目な顔つきで立っていた。 「最近、様子がおかしかったでしょ?  その上に今回の事故。少しは真面目にもなるわよ」  おっとりのんびりのユーリアが語尾を伸ばしたりしない。  これは機嫌の悪い証拠だ。 「心配かけさせたみたいで悪いわね。  でも、もう大丈夫。安心しなさいって」 「何を安心するというの?  そんな身体して……病院にいなくていいの?」 「はいはい、どいてどいて」  まだ何か言いたそうなユーリアを横へやって屈みこむ。 「確か―――ここら辺に置いた筈。  ん〜〜〜〜〜っと、おっ、これこれ」  ベットの下から何かを引きずり出してくる。 「……それは?」 「ん? オロチアギト」  あぐらをかいて、刀についた埃を払う。  最早、過去と言うにも古過ぎる拵えをした武器。  俗に日本刀などと呼ばれている前時代の遺物だ。 「それ、封印したんじゃなかったの?」 「……うん、したよ」  鞘から刃が抜かれぬ様に鎖で雁字搦めにされてある。  自分がこの家の養女になった時に自ら封印したのだ。 「これは母さんの愛刀で剣士の誇りだった。  でも、私はこの刀を汚してしまったから」 「………………」  ラファナについて知ってる事は少ない。  あまり過去を口にしないし、それを聞き出すような真似はしたくなかった。  言いたくなれば自分から話す。  そして今がその時だ。 「この刀はその昔に家族を奪われた男達の弟子が作り上げた刀。  終わる事のない憎しみの連鎖の果てに産まれた刀。  その力は巨大で、星すら滅ぼす要因になったと言われてる」  知る者なら知っている四刀の伝説だ。 「だけど人間は何時までも同じ場所に立っていない。  憎しみの果てに造られた刀なら、誰かが終止符を打たないといけない。  それが母さんの口癖だった」 「………………」 「奪われた者が取り戻したかった者を。  奪われる前に、護れるように。  この刀の打ち手は本当はそう思ったんじゃないかってね」 「―――そう」  ただ復讐の為だけに刀を打つ師を、弟子はそう見たのではないかと。  母の姿が思い浮かぶ。  そして、忘れないでね。  いつか、この刀を貴方が手に取る時。  決して、血塗られた道を歩ませぬ様にと。 「私は愚かだった。  欲しかった物を手に入れたのに、昔の自分の力に頼って。  中途半端なままで戦って、運良く生き延びただけだった」  ゆっくり立ちあがり、絡まった鎖に指をおく。 「母さんの誇りまで泥を塗った。  だからこの刀は一生使わないつもりだった」 「………………」  ゆっくりと、刀を封じる鎖が解けていく。 「でも、失敗ならやり直せばいい。  人は、いつまでも同じ場所を立ってはいないから。  だから、私は変われる。これからも変わっていける。  そして、いつか母が目指した剣士になってみせる!」  澄んだ輝きを見せる刃が二人の前に顔を見せる。  これがオロチアギト。  妖刀と恐れられた、四刀の最後の一本。 「いつの間にか、一人で解決しちゃったのね」 「だから言ったでしょ?  私はもう大丈夫だって。  今回の一件には感謝してる。  これで、私はやっと―――昔の私を思い出に出来る」 「……ラファナ」  胸に抱いた不安が霧散していくのを感じている。  もう、ラファナは普段の彼女に戻っている。  いや、彼女は成長した。  これまで以上に頼りに出来る。 「で、ハンターキラーはどうするの?」 「勿論、私が倒すよ。アイツは私と同じだからね」 「同じって?」  ユーリアの疑問に鼻の頭を掻きつつ答える。 「たった一つの為に生きて。  でも、たった一つの事しか見てないから本質に気付けない。  答えなんて、すぐ其処にあるのにね」  抽象的な表現にユーリアが首を傾げる。 「良く分からないけど。  察するに超えないといけない壁、かしら?」 「いんや、どっちかというと馬鹿な妹みたいなもん」  刀の刃をひとしきり眺めて、鞘へ納める。 「あーーーーーー!!  寝てないと駄目でしょおおおおお!!」  そこでマティエの声がかかった。 「そんなに五月蝿くしなくても大丈夫だって。  それにこれから刀の調整とか色々雑用が……」 「駄目! 寝とかないと御飯はなし!  皆、心配してたんだからね! 言う事を聞きなさい!」  何か言い返そうにもマティエの気迫の前に声が出ない。 「あの赤ん坊がこうなるなんてねぇ……」 「……あら。随分と懐かしいことを思い出すのね」  クスクスと思い出し笑いを始める二人にマティエ一人だけが置いていかれる。 「へっ? 赤ん坊?  え! 二人とも一体何の話ししてるの!?」 「さあて」 「何なのかしらね〜〜」 「ずるいーーーーーー気になるよ〜〜〜」  こうして彼女の一日目は過ぎていく。  決戦の日まで残り六日。  まだ、準備は出来ていない。  しかし―――恐れるものは何もない。  To be continued..... ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆