ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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                    k_serika-Presents
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    [ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
                      vol.06 02.06.23
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―――――――――――――――――――――――――――――― 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」 SECOND STAGE「PAST GHOST?」 ――――――――――――――――――――――――――――――  四刀の伝説がある。  その昔、三人の高名な刀鍛冶が国家に家族を奪われた。  その刀鍛冶達は怒りに狂い、国家への怨念を込めて死ぬまで刀を打ち続けた。  それから数年後、その弟子がもう一振りの刀を打つ。  そして、国家は反乱によって滅びた。  その裏にはその四本の刀があったという。  四人の刀鍛冶が作った四本の妖刀。  その力はやがてその星を破壊するきっかけにもなった。  そんな伝説を持つ刀。  四本の刀の内、三本はあるハンターが所有している。  最後の一本はあまりにも有名になってしまった為、贋作が多数でまわっているという。  その刀こそ、オロチアギト。  今回の事件は全て其処に集約する。 「……ふむ」  寝覚めがいつも悪い自分にしては珍しく。  安らかに、目が覚めた。 「………………いたっ」  寝ている身体を起こしただけで痛みが走る。 (やられたな……だが、深刻なダメージじゃない)  大事な器官、神経はやられていない。  ……少し休めば何とかなる。 (とは言え、自分の身体の方が限界に近付きつつある、か)  自嘲気味に笑ってみせる。  20年と少し―――まあ、不安定なハニュエールとしては長く生きた所であろう。 「手酷くやられましたね」  先ほどから周りの空気に同調するように身を潜めていた人物が動く。  気付いていたが無視していた存在にラファナは視線を向けた。 「成程、あんたが助けてくれたわけか。  一応、礼を言っておくわ。ありがとう、マリア」  先日、ラファナと仕事を組んだレイキャシールの彼女がそこにいた。  しかも、あろうことか看護婦の格好をしてだ。 「で、その珍妙な格好は?」 「見ての通り、病院内の制服です。  私の副業と言った所でしょうか?  基本的に私は緊急救助やサポート専用のアンドロイドなんです」 「ふぅん。助けてくれた上に看護までするとは御苦労なこって」  適当な相槌を打ちつつ、頬にあてられた絆創膏を剥がす。 「コンセプトはフォマールやハニュエール型のアンドロイドを創るだとか。  まあ、製作者が死んでしまったのと技術的な物で途中破棄されたわけですが」 「あんたも大変だね」 「ええ。自分一人で生きていかないといけませんから」  しかし、その声には何処か嬉しそうな感じをうける。  一人で生きると言う事は新鮮なものだ。  色々な出会いや別れがある。 (しかし―――何故、今頃になってオロチアギトにこだわる?)  一人の男の顔を思い出す。  血に飢えた獣だった自分が唯一、女として接した人。  思えば、あの男と出会った事は一つの些細な転機であったかもしれない。  ラファナ・ルイが自分の生き方に疑問を覚えたのもあの男のせいだろう。 (いかん。いかん。思い出話は老人の証ってね) 「で、姉さん達は?」  そのまま一人の世界に突入する前に途切れた会話を繋ぎ直す。 「呼べばすぐに来ると思いますが―――呼びましょうか?」 「いんや、今会ったらはったおされるからやめとく」  ラファナの口調にマリアが疑問の表情を浮かべる。  以前に出会った時と明らかに様子が違う。 「マリア。あんた、私に期待してるって言ったわね?」 「はい。あっさり裏切られてしまいましたが」 「そいつは悪かったわね」  ストレートな憎まれ口にラファナの顔が笑みを作る。  その笑みに、既に彼女を覆っていた狂はなかった。 「……ラファナさん?」  それに気付いたのであろうマリアが問いかける。 「なら、もう一回チャンスを頂戴。  あんたに調べて欲しいことがあるのよ」 「なにをです?」 「ある科学者の居所よ。  「愚者」の名で有名なハンターにして科学者。  ライオットって男のこと」  ………………。 「すでに死んでますよ」  簡潔な答えが返ってくる。 「何?」 「その人が私の製作チーム総責任者です。  彼が死んだゆえに私は未完なんですよ。それが何か?」 「なら、自由意志か。  成程な―――道理で。  なんとなく全体の流れが見えて来たぞ」  納得いったと頷くラファナにマリアが詰め寄る。 「彼を知っているのですか?」 「ああ、知ってる。  アイツは昔の知り合いだから。  それに、今回の事件の黒幕も分かった」 「ライオット博士が関わっていた、と?」 「いんや。おせっかいなだけだろう。  だが―――悪くない。面白くなってきた」  意気を込めるように拳を思いきり握る。  まるで少女のような無邪気な微笑。  これがこの前に出会った女性だと言うのか? 「何だか、この前の事が夢の様です」 「ん?」 「以前に会った貴方は血煙の淫魔と呼ばれた貴方でした。  身の毛もよだつような殺気と吐き気をもよおすような存在感。  これが妖刀と呼ばれたオロチアギトの使い手なのだと納得したんです」  だが、今はまるで別人だ。 「ああ。ほら―――私って気分屋だから。  体調が悪いとね。地が出るのよ。  でも、あれが最後かな―――もう、戻れない気がする」 「どうしてですか?」  ようやく、最早、寿命も長くないことに気付いた時。  悟ってしまった。 「今回の事で。私が、求めていた物を見つけたから」  握り締めた拳を開き、手の平を見つめる。 「………………」  その顔は女性特有の暖かな優しい笑み。  それは喜ばしい事なのだろう。  だが、マリアは聞く。 「それで、勝てるのですか?」 「………………」  マリアの言葉に瞳を閉じる。  浮かぶのは過去の思い出。  母の死。  そして、自ら作り上げた屍の道を歩きつづける自分。  その果てに出会った自分の姉。  最後に、自分の大事な家族。 「……はっ」  ラファナの強気に満ちた瞳がマリアを射抜く。 「アイツは私の過去の鏡像。  私自身の亡霊だ。  勝てるだと? 勝ってみせる!!」  ………………。  その自信に満ちた言葉を誰が否定出来るだろうか? 「今度は、私を失望させないでくださいね?」 「まっかせなさい!  次はあんな不様な負け方はしない。  血煙の淫魔じゃない私の実力を見せてやるわ!」  ここが、自分の正念場だ。  決して負けるわけにはいかない。 「そうとなったら私は退院するから!  んじゃ、お後宜しくね〜〜〜〜〜〜」 「……はっ?」  腕にささった点滴を抜いてベットから降りる。 「ちょっとラファナさん!  歩いたりすると怪我が悪化しますよ!!」 「大丈夫。もう縫い合わせしてるみたいだし。  私の回復力は常人より早いから傷は塞がりかかってるよ」  ここら辺が遺伝子を組替え、戦闘に特化するように創られた自分の強みである。 「しかしですねぇ! マグの記録によればラファナさんは体内にも!」 「マリア―――私にはそんな事よりも大事な事がある。  だから、ここは目を瞑ってくれないかな?」  答えに迷う。  安静が必要な患者を退院させていいものか。 「後、我侭ついでに着替えも欲しいかな」 「………………」  まったく―――なんて自分勝手な。  しかし、駄目だと言っても脱走するのがオチであろう。 「これが終わったら精密検査をする。約束出来るなら退院を許可します」 「おっけ。話しが分かるじゃないの♪」  ラファナがぐっ、と親指を立てる。 「調子のいい事を。元々、私に選択肢は残ってないでしょう。  こんなのは医療に関わるものとして、決してしてはいけないことなんですよ」 「それは悪いと思ってる」  真剣に話すマリアにラファナは頭を下げる。  それを見てからマリアは笑った。 「構いません。だから私は未完成の欠陥品なんです。  それじゃ、適当な服を取ってきますね」 「あ―――そうだ。マリア?」 「はい。なんでしょう?」  自分達の戦いの最中に来た女性の事が気になった。 「……私以外に生存者は?」 「意識不明の方が一人います。  でも―――正直な所、キツイですね」 「……そっか。ありがとう」  頷いて、マリアは部屋を出ていく。  死んではいなかったか。  その事に安心するが、不安は拭えない。 「死なないでよ。  私はあんたに礼を言わなきゃいけないんだから」  名も知らぬ女性のお蔭で自分は求めていた物を見つけられたのだから。 「それと詫びもね」  今は彼女が生きてくれるよう祈る。  自分に出来るのは彼女の無事を祈ることと、彼女を殺そうとした奴を止める事くらいだ。 (私の傷は……完治するまでに後一週間はかかる)  まあ、充分な時間だろう。  手元に置いてある自分のバックパックからハンターズ支給の通信機を取り出す。 「拝啓:愚者の後継者へ―――って所か」  手早くメールを打ちこんで相手へと送る。  相手がラファナの事を知っていた様に、ラファナも相手の事を知ってる。 (奴は必ず来る。それが奴のキーワードだから)  時は一週間後。  場所は以前と同じ。 「今度は楽には勝たせないわよ」  今一度、オロチアギトとアギトの刃はぶつかりあおうとしていた。  To be continued..... ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆