ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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                    k_serika-Presents
         - ファンタシースターオンライン二次創作 - 
    [ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
                      vol.05 02.06.14
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―――――――――――――――――――――――――――――― 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」 SECOND STAGE「PAST GHOST?」 ―――――――――――――――――――――――――――――― 「………………」  靴音が静かに遺跡内部を反響する。  一歩、一歩、床の感触を確かめるように歩きながら、  ラファナは目的の場所へと進んでいた。  これから殺しあいになるだろうにラファナは涼しい顔で歩いていく。 「マスター、私はギルドへの報告を提案します」 「……ああっ?」  ガラの悪い声で返事するラファナ。 「件のハンターキラーを捕らえるのにわざわざ危険を冒す必要はありません。  ギルドへ報告し、しかるべき戦力をもって向かえば……」 「却下。確かに軍の連中だって一枚岩じゃないだろ。  そりゃ、使える奴はいるでしょうね。  だけど大人数でいけば、自ずと実力にも差が出てくる。  そしたら相手は気配を察知して逃げるがオチ、よ」 「では、ラファナ様と同等レベルの実力者を用意すれば……」  ラファナは立ち止まり、アプサラスに視線を向ける。  風が舞った。 「つまり、何か?  おまえは私が死ぬと言いたいのか?」  アプサラスの身体には大剣の刃が触れていた。  恐ろしく自然な動作で視線を向けると同時に抜いたのだ。  まるで風が舞うように。  このレベルまで達したら、斬られたことに気付かぬまま死ぬ事すらある。  それは、つまりラファナの実力の証明だ。 「そうではありません」 「なら、なんだ?」  刃は未だ自分の身体から離れない。  アプサラスはそれに臆することなく続ける。 「マスターの実力は100%引き出されています。  今の貴方を止められる人間はパイオニア2でもそうはいないでしょう」 「なら、大人しくついてこい」  刃を納めて、歩き出すラファナ。  しかし、アプサラスはそれについていこうとしない。  ………………。 「主の言う事を聞かないマグなど、最低のマグだぞ」  つまらない物でも見るような興醒めした視線。  家族の誰よりも長くラファナの側にいたアプサラス。  今のラファナに過去の姿が重なる。 「ここ数日のマスターはおかしいです。  精神パルスが安定していません。  何か問題があるのではないのですか?」 「………………」  冷めた瞳に変化が生じる。 「マスター?」  アプサラスの言葉にラファナは目を閉じる。 「血が、止まらない」  重い何かを吐き出すような声だった。 「は?」 「数日前から吐血が続いてる。  私も……もう、長くないという事だろう。  その性で昔の夢を見るだけだ」  血がラファナという魂の鍵なのだから。 「な、何故、そのような事を黙っていたのです!」  閉じた瞼が物憂げに開く。 「言えば、おまえは私を助けられるのか?」 「そ、それは……」 「行くぞ。さっきから血の匂いがする。  どうやら私の到着が待ち切れなかったみたいだ」  目的の場所は近い。  ラファナは話しを切り上げて、駆ける。  アプサラスの不安は最大限に広がっていく。  そして。 「……こ、これは!?」  視界が大きく開けて目的の場所へと着く。  そこに入った瞬間、アプサラスは驚愕の声をあげた。 「パイオニア2の軍関係者、か」  一面は軍服を着た死体とそれが流す血で一杯だった。 「マスター。  心臓をモニターしてみましたが、誰一人動いていません」 「そうか」  そんな事はどうでもいい。  ラファナの全神経は目的の者を探している。 (おかしい。軍人とて烏合の衆じゃない。  この人数を一人で殺すなんて……出来るのか?)  30体はある死体を製造したのが今回の犯人なら。  こいつは危険過ぎる。 (可能性1、一人一人を遺跡内で殺して死体をここに集めた)  なくはないだろうが、それを行う意味がない。 (可能性2、今回の犯人、ハンターキラーは尋常じゃない力を持っている)  それこそパイオニア2の軍人30名を圧倒するような力を。  否定素材はないが、それは現実的ではない。 (可能性3、なんらかの罠によってはめられた)  それならば30名が殺されたのも頷ける。  だが、床の死体は全員刃物による裂傷が死因だ。  もしくは自分では思いつかないような手があるのかもしれない。 「オロチアギトはどうした?」  ゾクリ、と首の後ろに悪寒が走った。 「上!?」  顔をあげるよりも早く、ラファナは立っている場所を飛び退いた。  ドンッ! ドンッ!  硬質の床をフォトンの弾がえぐる!  飛び退きながらラファナは目的の者を探し当てる。  タンッ!  軽い音を立てて、天井から降り立つ、その姿。  背を向けて立つ姿は女性のそれだった。 「女のレイマーとは珍しいな」 「………………」  ラファナの軽口に応じる様子はない。  だが、放つ気配と匂いで理解出来る。  自分に勝るとも劣らない鬼気と大量の血臭。  この地獄絵図を作ったのは間違いなく彼女だ。 「もう一度聞く。オロチアギトはどうした?」  しかし、この女は何故ここまでオロチアギトにこだわる?  疑問が浮かび上がるが、それは聞かずに笑みを浮かべる。 「残念だったな」 「?」 「私はオロチアギトを使わない!」  ブンッと重い音を立ててチェイン・ソードを抜く。  すでに剣を抜いたラファナを前に女性は尚も振り向く様子はない。 「何故使わない?  それでもオロチアギトの持ち主エリス・ルイの娘か?」  ドクン!  心臓が大きく跳ねる。 「血煙の淫魔が使う剣は『ソレ』ではない筈だ」  スウッ、とバックパックから一本の剣を取り出す女性。 (……アギト?)  思わぬ名を呼ばれて動揺しつつも、冷静に相手の武器を観察する。 (AUW1991年製……キコク作)  一瞬で彼女が手にした刀の鑑定を行う。 「そうだ。世界に数あるアギトの内の一つだ」  ラファナの胸中の声に答える形で女性は言った。 「そう、数ある内の一つ。  つまり、贋作だ。  本物のオロチアギトは、確かに私が持っている」 「―――そんな事は知っているさ」  女性は、ラファナの声に少しだけトーンを落として答えた。 「だが……」  くるり、と振りかえる。 「贋作が総じて本物より劣るものとは言い切れまい?」 「……お前」  とんだ思い違いだ。  こいつはレイマーなどではない。  生粋の『剣士』だ。  それもラファナと同じく、限界近くまで昇りつめた。 「その為にアギトの持ち主を狩ったのか?」 「そうだ。お前が快楽の為に人を殺したように、な」  誰が見ても分かる。  コイツは壊れている。  少なくとも、パイオニア2の人間はコイツを受け入れたりしない。 「知った風な口を聞く」  ラファナの目から感情が消える。 「賢しいわ。  その贋作ごと、あの世へ送ってやる」  ラファナの殺気に呼応するようにチェイン・ソードの刃が回転する。 「悪いが、アギトを持たないお前に用はない」 「……言ってろ」  瞬間、ラファナが駆ける! 「この場で屍をさらすがいい!」 「……フッ!」  互いの呼気が吐き出され、戦いは始まった。  獲物を見つけた鷹が舞い降りるように。  数メートルの間合を一呼吸で詰め、ラファナの剣が薙ぎ払われる! 「甘いぞ! ラファナ・ルイ」  暴風の如き横凪の刃に向かって閃光が走る。  ギンッ!  チェイン・ソードの刃がアギトの突きによって弾かれる。  ラファナの顔に冷酷な笑みが浮かぶ。 「反応が遅いいいいいいいい!」  弾かれた勢いそのままにチェイン・ソードの刃が躍り、追撃をかける。  一方、相手は突いた体勢のままだ。 (決まった! こいつはもう死んでる!)  ラファナは勝利を確信する。  今からどんな体勢で攻撃しようが、先に自分の剣が女性を両断する。 「死ぬぇ!!」  チュイイイイイイイイイイイイイン!!  チェインソードの刃が虚しく空を切る。 「な、に!?」  辛うじて見えた。  女が刃の間合を回転して避け、そのまま居合切りを放つ姿が。  放たれた銀の軌跡は自分の頭を狙っている! 「ちいぃ!」  反射的に手甲に仕込んだナックルが刃を打つ。  苦し紛れの選択は自分の命を救った。 「……普通の奴なら終わってたよ」  余裕の面持ちで呟くハンターキラー。  対してラファナの顔は緊張に強張った。 (お、重い!)  拳をガードするナックル越しからビリビリと衝撃が伝わってくる。  大剣を扱う自分よりも、明らかに強い力だった。  限界まで鍛え上げた自分の力がこうも容易く破られるとは!? (このままでは負ける!)  ならば、己の力を暴走させるまでだ! 「我求めるモノは一つ」  自分がその昔に施した催眠暗示。  それは潜在する力を限界以上に引き出す諸刃の剣!  呪文の様に呟き、血で濡れた地面を転がる。 「―――其の為に葬るは汝の命!!」  体勢を整え、神速の斬撃を放つラファナ。  ギンッ!  渾身の斬撃はまたも突きによって流された。 (なんでだっ!) 「エリスの娘よ……お前は、その程度なのか?」 「黙れえええええええ!」  手の平から電撃が放出される。  雷系中級テクニック「ギゾンテ」だ。 「オロチアギトの持ち主は……その程度なのか!!」  女性は手に持った銃を投げつけて囮にする。  雷が銃をからめ取り、黒い煙を吐き出した。 「マスター、退却を!  この間合なら間に合います!」  それは出来ない!  自分は今、強烈な暗示をかけている。  これが解けないと家族に合わす顔がない!  プシュー!  圧縮した空気が放たれる音。 「「!!!」」  予想外の事態に二人の視線が集中する。  部屋に見知らぬ人影が入り込んで来たのだ。 「……見られたか」  ラファナを覆っていた氷の冷たさを持つ空気が霧散する。 「にげなさい!!」  それは予想外の侵入者に向けられた。 「……あっ、」  殺気に気圧された女性は動く事すら出来ない。  このままでは数秒後には殺されてしまう。 「間に合ええええええぇぇぇぇぇ!!」  大地を蹴り、ハンターキラーを追い駆ける。  わずかに自分の方が速い! 「ちっ!」  女性が舌打ちを鳴らす。  このままでは目撃者を殺した後、ラファナの斬撃が自分を殺す。  だが、目撃者を放っておけば自分の目的が……。 「仕方ない」  自分の素性がばれてしまうだろうが、背に腹は変えられない。 「マックスパワー!」  その声と共に女性の姿がかき消される。 「逃げてえええええええ!!」  胸中で絶望的な何かが広がる。  そこから先は何が起きたか分からなかった。  忽然と姿を現すハンターキラー。  恐怖に悲鳴を上げる目撃者。  刀が振りかぶられ………。 「!!」  女性が血を舞い散らせ。  ゆっくりと、地に……倒れる。  いつか、何処かで見た風景。 「………………あ」  灰色の一枚絵がラファナの脳に投射される。  それは彼女の忘れてしまっていた記憶。  捨て去った過去の鏡象だった。 「きさまああああああああああああああああ」 「むっ!」  叫びに呼応するようにラファナの気が爆発する。  それはアプサラスすら初めて見る。  ラファナの頂点を超えた怒りの迸り。  オーバーロードさせたチェイン・ソードの突きでラファナが突貫する。  放たれた矢のように、鋭く―――ただ、一点に向かう。 「はああああああ!」  そのラファナに対抗すべく、大きく息を吐くハンターキラー。  狙うはチェイン・ソードの中心。  刃の腹だ。 「死ねえっ!?」 「無駄だっ!!」  怒りに暴走したチェイン・ソードの刃とアギトの静なる刃音がぶつかり合う!  ぎぃぃぃぃぃぃぃぃん!!  甲高い音を立てて。  チェイン・ソードの刃が銀の破片を散らす。  ビッ! 「っ!」  砕け散った刃が持ち主であるラファナの頬をざっくりと切った。  ラファナは飛び散る刃を信じられない物でも見るように見つめている。 「そんな力では勝てない」  ヒュン、と耳元で風を切る音がした。 「……終わりだ」  カチン。  アギトの刃が納刀され、殺気も消えうせる。  瞳に映る女の姿は先程とはまったく異なっている。  ラファナは、ようやくこの女の正体を察した。 「何を言ってる? 勝負は……………ぐっ!」  ラファナが咄嗟に口を手で押さえる。 「マスター!?」  ごぼっ、と大量の血液がラファナの口から吐き出される。  まるでその瞬間を待っていたように赤い線が袈裟懸けに身体を走った。 「これで終わるなら、お前の家族の相手をする必要もない」 「ぐっ……」  ラファナの身体を己の血が染めていく。 「終わらないなら、本気で来い。  ……でなければお前は全てを失う」 「待て……」  血が止まらない。  どんどん意識が遠のいていく。  そして彼女の姿が消えたと、同時。 「……ここまで、か」  ラファナも幾多の死体と同じに、血の海へと堕ちていった。  To be continued..... ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆