ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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                    k_serika-Presents
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    [ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
                      vol.04 02.06.08
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―――――――――――――――――――――――――――――― 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」 SECOND STAGE「PAST GHOST?」 ――――――――――――――――――――――――――――――  何が理由かなど分からない。  きっと何をどう言っても、それは言い訳でしかないのだろう。  遺伝子操作によって生まれたハニュエールの自分。  母が目の前で死んだ時、自分は命という物に疑問を感じた。  ハニュエールには色々な問題がある。  遺伝子操作によって生まれた彼等はお世辞にも安定した存在とは言えない。  奇形児や障害者などが生まれる前に淘汰され、生まれた後の寿命も大きく差を分ける。  人が種を創り出すには、まだ解決すべき問題がありすぎた。  それは確かに『ラファナ・ルイ』という魂を作りだす因子であっただろう。  しかし、それでも彼女には無限の選択肢が存在した筈だ。  だから、こう言うしかない。 「自分はこういう生き方しか出来ない女だった」  と。  何よりも。  問題は、この女性の性格にあった。 「こいつを殺せばいいのね?」 「ああ……気をつけろよ、強いぞ」  自ら進んで闇家業へと身を投じた。  何よりも生死の境を彷徨い歩くことに快感を、悦楽を感じる女だった。  絶体絶命の境地―――そんな場面に遭遇することでしか生命を実感出来ない女。  それは自らの不安定な寿命に、少しでも生きている事を実感したいがためか?  それとも、やはり遺伝子操作で生まれた事による『歪み』なのか?  だが、それは当の本人すら知り得ない事。  彼女は母から受け継いだ刀を手に修羅場を渡り歩く。  『血煙の淫魔』の二つ名と共に。  数え切れぬ屍を踏み砕き、己が何に悦楽を感じていたかすら忘れる殺戮の果て。  そこで、淫魔は一人の女と出会う。  それが、ラファナの生誕の日。  彼女が流されるでなく、自ら選び、望んだ道を歩む日の始まりであった。  ………………。 「……最悪」  誰に言われるまでもなく目が覚め、身体を起こす。 「ぐっ……った、脆いのよ、この程度で」  歯をくいしばって痛みに耐える。  傷を受けた事がないわけじゃない、死にかけた事もある。  痛みには慣れているはずなのに、二日酔いの痛みにだけは耐えられなかった。 「姉さん? 起きてる」  弟の言葉だけで痛みが大反響して悲鳴をあげる所だった。 「みず……」  苦しげにそれだけ言う。  それだけでクレハは事情を察したようだった。  何も言わずに軽快に階段を下りていく。 「ちっ、うざったわいねぇ」  昨日、一晩中遺跡を探しまわった結果、別の場所でハンターが殺害された。  それを受けてのやけ酒である。 「あの腐れレイキャシール、次逢ったらスクラップにしてやる」 (大体、考えてみたら……穴ぼこだらけの推理じゃないのよ。  犯人は腕は立つが、頭は空っぽ。  ただ単に同じ武器を持つ奴だけを選んだ殺人狂って、線だってある) 「………………」  ぶつぶつと漏らす言葉は横にいるアプサラスにも聞こえている。  そう思ってるなら、主はやけ酒など呷ったりはしないだろう。  それにすら気付いていないとは重症だと、横にいるアプサラスは思う。 「マスター、飲み過ぎですよ?」 「うっさい。分かりきった事を言うな」  そこで扉が開く音がした。 「は〜〜〜い、お水よぉ」 「ちっ」  隠そうもせずに舌打ちを漏らす。  水を持って来たのはクレハではなくユーリアだった。 「どうかしたの?」 「あんたもうっさい」  サッ、とコップを受け取ろうとした手が空を切る。 「……ユーリア」  唸るような声でラファナが彼女の名前を呼ぶ。 「ラファナ」 「何よ?」  顔をあげた瞬間、冷たい水がひっかかった。 「少しは目が覚めた?」 「………………」 「わたしは、クレハやマティエのように甘くないから。  あなたの腐った甘えを許すほど優しくないわよ?  他人に言えない悩みでやけ酒呷るなら始末も自分でつけなさい」  半分になった水のコップをベットに置いて、ユーリアは一階へと下りていった。 「ふう……」  ポタポタと水の雫を垂らしたままコップを手に取る。  別にこれは珍しい事ではない。  元からラファナは感情の浮き沈みが激しいし、今の様にやつあたりをすることもある。  その度にユーリアがラファナを普段の彼女に引き戻している。 「さぁ………行くわよ!」  顔をブルブルと振らして、雫を払い、水を飲み干す。 「はっ?」 「始末をつけにいくのよ。相手の理由が何であれ。  ハンターキラーさえ見つかれば私の問題は終わるわ」  そして立ちあがる彼女。  確かに普段の彼女のように見える。  だが、顔に浮かぶ僅かな狂相は消えていない。  ………………。 「う〜〜〜〜〜〜ん」 「どうしたの? ユーリア姉さん?」  くるくるとリビングを行ったり来たりしているユーリア。  気になり、クレハが聞いて見る。 「……二律背反」 「そうなんですよ〜」 (どうなんだよ?)  何故か会話が成立してるセーラムとユーリアに胸中で突っ込みを入れる。 「ねえ、クレハ。  最近ラファナの様子がおかしいと思わない?」 「少し前からかなりイライラしてるね」 「普段から気分屋だから、よくあることだけど。  今回はちょっと根が深そうなのよ〜」  そんなことはユーリアに言われなくても分かっている。  だが、それは本人がいつの間にか解決していくものだろう。 「ねえねえ! やっぱ借金のせい?」  食器を洗いつつ、マティエが口を挟む。 「違う」  マティエの言葉をセーラムは一刀両断で斬り捨てた。 「ねえさん?」 「じゃあ、何なの?」  セーラムは口数が少なく、その言葉は足りない。  だが、いつも有無を言わさない迫力と説得力を持っている。 「ラファナが覚醒しようとしてる」 「「覚醒?」」  クレハとマティエが疑問符を浮かべる横でユーリアの顔に驚愕が走る。 「まいったわねぇ………姉さん、私」 「行った方がいい」 「はい」  ユーリアはすでに戦闘準備は済ませている様だ。  すぐさま玄関へと歩いて行く。  …………………………。 「姉さん。僕とマティエにはまったく事態が分からない」 「………………」  セーラムはクレハの顔を見つめるだけで言葉を発しようとはしない。 「説明してくれるよね?」 「知る必要はない」 「なっ!?」  暖かさも冷たさも感じないセーラムの言葉は時として人の神経を必要以上に逆撫でする。 「同じ家族だろ!? 知る必要がないってどういう事さ!」 「言えない」  それだけ言うとセーラムは車椅子の背を向ける。 「姉さん!!」  背を向ける姉に回りこんで、再度詰め寄るクレハ。 「マティエが困ってる。あまり怒鳴るな」 「だったら言えばいいだろ!  僕もマティエも、もうハンターズの一員なんだから!!」 「フウッ……やれやれ」  疲れたように溜息一つ。 「言う気になった?」 「子供は聞きわけがなくていけない」  セーラムの視線が鋭く光る。 「!!」  自分の眉間に光の線が走る。  それが意味するのは攻撃の軌道だ。  だが、自分の腕が防御に走るより早く、セーラムの腕が閃光と消える。 「……まだまだ、半人前」 「くっ!」  セーラムの指先はクレハの眉間を指していた。 「どんな時でも冷静さを失うな。  状況を感情でなく理性で判断しなさい。  それが出来ない以上、あなたに話しても不利益はあっても利益にはならない」  これで話しは終わりだとばかりにセーラムはクレハの横を通り過ぎる。 (来るのが分かってたのに、防げなかった) 「―――お兄ちゃん」 「分かってる。姉さんが意地悪で言わないんじゃないってのは」  そしてクレハは拳を握る。 「僕は姉さん達の足手まといだって事か」  ラファナを中心に波紋が走り出す。  波紋は絆を走りぬけ、崩壊という破滅を望む。  それはあたかもラグオルに潜む悪意がパイオニア2の彼等を貶める様に。  ………………。 「もっと、まだ……足りないぃぃぃぃぃぃ!」  唇の端を吊り上げてラファナは叫ぶ。  まるで出鱈目の軌道を走る刃が滅茶苦茶にエネミーの身体を切り飛ばす。 「マスター、精神パルスが異常です! 一度、退却を!!」  ラファナにその声は届かない。  彼女の耳にはヘッドホンのようなものがついている。  隣にいても充分にうるさい音量は彼女の脳に凄まじい電子音を反響させる。  これは彼女の一種の精神統一だった。  聴覚を一つの音によって統一し、外部との接触を隔絶する。  そして、視覚はただ獲物を追い求める。  ただ一つを追い求め、それ以外の全ての不用な物を切り捨てて、己の姿を変えていく。  知る者がいるなら、言っただろう。  それではまるで禅ではないか、と。  次々と襲いかかるエネミーは一刀、もしくは二刀の元に血の海に沈む。  その血が呼び水となり、さらにエネミーを引き寄せる。  それは血煙の淫魔を呼び起こす儀式だ。 (行けっ!)  大剣の刃が生む旋風が閃光へと姿を変える。 (行けっ!!行けっ!)  耳元で唸る電子音がそのトーンを高く高く上げる。 「行けええええええええええええええええええ!!」  そして閃光が神速の斬撃へ昇華する! 「よっしゃあああああああ!」  辺りに散らばる遺体と、  むせかえるほどの血の匂いが自分の能力を最大限に引きあげる。  これがラファナ・ルイの強さだった。  その昔、闇家業を渡り歩いていた時に身につけた精神制御法。  催眠術によって深層意識に一つのキーワードを焼きつけ、  それをバネに感情を爆発させて潜在能力を引き出す暗殺術。 「我求めるモノはただひとつ―――其の為に葬るは汝の命」  彼女は『血』というキーワードによって戦闘力を極限まで高める。 (ご丁寧に場所まで指定してくれたんだ。  これで相手が三流ハンターだったら、生きたまま切り刻んでやる!!)  昨日、ハンターギルドに流した情報は正解だった。  自分のプロフィールに主力武器『オロチアギト』と流したのは。  一日経たずで、自分を呼び出してきたのだから。 「さあ、殺してやるわ」  もう、どうでもいいのだ。  ここまで自分が目覚めた以上、相手が何であれ解体されるしかない。  ……解体しなければ戻れない。 「……冷めるまでに終わらせる」  転移法陣が組まれてラファナを所定の場所まで飛ばす。  指定場所は遺跡。滝の流れ落ちる場所。  ………………。  すでに死体しかなくなったラグオル地表に、  ラファナの哄笑だけが亡霊のように山彦を響かせていた。  To be continued..... ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆