ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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[ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
vol.03 02.06.04
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「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」
SECOND STAGE「PAST GHOST?」
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「依頼終了したよ」
「ご苦労様です。
相変わらず殲滅系のクエストがお好みなんですね」
ハンターズギルドの受けつけ嬢が帰って来たラファナを迎え入れる。
「わたしは面倒なのが嫌いなの。
『あれをしろ』とか『これをしろ』とかね。
そんな事出来るほど器用でもないしね~」
あははは~と豪快に笑うラファナに受付嬢は苦笑しつつ、話しを進める。
「ところで、出発前に頼まれていた件ですけど。
少々危険な任務ですが、高額依頼ありましたよ」
「ん、それは私向きな仕事?」
「そうだと思われます。
指名手配犯の捕縛、もしくは抹殺任務です」
言葉を受けてラファナの目付きが変わる。
「……穏やかじゃないわね。
どんなの? 内容を見せて貰えるかしら?」
「かしこまりした」
手馴れた操作で依頼内容の画面を呼び出す受付嬢。
「………………ふぅん」
依頼内容はこうだ。
最近、ラグオルの各地でハンターズが殺されているらしい。
いずれも腕には覚えのある連中ばかりで、
検死結果から見ても、どうも原生動物達の仕業ではないらしい。
つまり、ただでも危険なラグオル内において
共食いをする昆虫の様に仲間を殺しているハンターがいるという事になる。
「誰よ、こんな馬鹿な事してる奴。
移民計画が進まなきゃ、犯人も困るでしょうに」
「本当に困ってるんですよ。
他のハンターさん達にも警告してるんですが被害は減らなくて。
それだけの腕があるならもっと有効利用して欲しいんですけど」
「う~ん、かけられてる賞金もかなりの額ね。
いいでしょう。この依頼受けるわ」
報酬が魅力的なのもあるが、こんな奴がいては自分の家族とて危ない。
すでに40名近いハンターズが殺されているのだ。
次の犠牲が自分の家族だとも限らない。
「気をつけてくださいね。
相手は相当な猛者ですよ。
パーティで向かった人達も殺されてるんですから」
「はいはい、御警告どーもぉ」
知らない内に笑みがこぼれる。
血が滾るとでも言うべきか。
面白い仕事になりそうだとラファナの本能が継げている。
それに今の自分は血に飢えている。
飢えているのなら、満たさなければなるまい。
「じゃあ、早速探しに行こっと♪」
「あっ、ラファナさん。
追加で殲滅の依頼があるんですが………」
「ん? 殲滅ならやるやる!」
そういうと思ってました。と受付嬢は笑う。
「ただ、パートナーがいるんですよ。
その方と一緒ということになりますが……宜しいですか?」
ラファナが単独で仕事するのを知っていて、一応確認しているのであろう。
「う~~~仕方ないわね。
それでいいわ。実は今月もピンチなのよ」
「あら、お受けになるんですか?
相当追い詰められてますね?」
「ほっといてよ」
笑みを浮かべる受付嬢にそっぽを向くラファナ。
「それじゃ、これが現地の地図です。
場所はラグオル坑道内。パートナーの方は既に待機してます。
開始時間は丁度一時間後ですから、それまでに用意を整えてください。
くれぐれも遅刻はしないでくださいね?」
「おっけー! ラファナ様にまっかせなさい!」
グッと親指を突きたてる自分。
数時間後、彼女は自分の迂闊さを心底呪う事になる。
………………。
…………。
……。
(……機械か。機械もいいわねえ)
力任せになぎ払った大剣が生命を持たぬ機械共と吹き飛ばす。
それと同時にラファナも大きく横へと飛んでいた。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
視界が横に滑って行く中で爆音が彼女の耳を振るわせる。
坑道エネミーの中でも突出した攻撃力を持つギャランゾのミサイル攻撃である。
「必殺の一撃も外したら終わりよ!」
横に飛んだ身体が壁を蹴って、ギャランゾの元へと突っ込んで行く。
重力も慣性の束縛すらも彼女には存在しないのか?
それはまさに死を舞い、命を散らす、死神の輪舞だった。
(次の一撃で奴は終わる。その次はパートナーのフォローね)
既に彼女の思考は二手、三手先へと向かっている。
目の前の敵は彼女にとって、ただの死体なのだ。
「せぇい!」
高速回転した刃が身体の中央に突き刺さる。
迸る鮮血の代わりに凄まじい火花が散っていく!
「あはははははははははははははははは」
中のコードや部品をぶち切る手応えにラファナの精神が最大限に高揚する。
「だっしゃああああああああああああ!!!」
剣が力任せに天に薙ぐ!
剣はギャランゾの頭を半分に断ち、機械の束縛から解放される。
(機械なら別に憂いもなく思う存分壊せるしね)
物騒な事を頭の芯で考えながらも、足は次の得物を求めて駆ける。
だが、それも一瞬の間。
「っ!」
全身が総毛立つ。
「ちぃ!」
反射的に繰り出した剣が甲高い金属音と共に火花を散らした。
「シノワビート、ね。油断したわ」
高揚した精神に冷水の束を浴びせられ、ラファナが唇を噛んだ。
………………。
「依頼終了、っと」
最後に残ったカナディンを棍で叩き落とし、踏み潰す。
「………………」
「いやーはっはっはっは。やっぱ、二人で組むと早いわねぇ」
横にいるレイキャシールのパートナーに話し掛けるラファナ。
「凄まじい腕ですね。ラファナさん」
「いやいや、どーも。
あんたも中々のサポートぶりだったよ、マリア」
「お誉めに預かり光栄です」
(レイキャシール、か。
以前のシノと同じで礼儀正しいわね。
それとも元が機械だからか?)
それを言うならラファナの姉。
セーラムもレイキャシールだが、
彼女は事故でそうなったに過ぎないので除外しておく。
(でも、完全自立型のアンドロイドねぇ。
ユーリアとかモンタギューなら詳しいんでしょうけど。
私には今一つ、分からないわね)
完全自立型。
つまるところ人と同じように思考し、行動するのである。
(そら恐ろしい事をするもんだわ、人間も)
己自身で思考し、行動する人が生み出した偽りの生命体。
いつから人は神の真似事をするようになったのか?
(とは言え偽りの生命と言うなら私も似たようなものだけど)
そこでつまらない事を思い出した自分をいさめる。
「………………」
「……どうかした? 何か言いたい事でもあるの?」
さっきから何やら妙な視線を向けてくるアンドロイドにラファナは聞く。
「ええ、あります」
その口調はかなり機嫌が悪い様に聞こえた。
「遠慮せんと言ってみ?」
「では、お言葉に甘えます」
「うんうん」
彼女の返答はラファナの想像をぶっちぎったものだった。
「単刀直入にいいます。
今、私はあなたがラグオル内ハンター殺傷の犯人だと思っています」
………………。
「なんですってええええええええええええええ!!」
「血圧上昇、動揺してますね?」
彼女のアンドロイド然とした発言にラファナの頬がひきつる。
「どこからそんな結論が出たのよ!?
ちなみに動揺してるんじゃなくて怒ってるとは思えないの!?」
「言い訳は見苦しいですよ?」
(このポンコツレイキャシールがぁ!?)
「なんで私が犯人だと思うのよ!
なんか証拠でもあるんでしょうね!!」
まるっきり追い詰められた犯人の台詞で反論するラファナ。
「先程の戦闘を見た上での私の推測です。
あなたは物を『壊すこと』
何かを『殺すこと』を異常に楽しんでいます」
「う”っ!!」
先程までの戦闘が脳裏に甦る。
確かにアレを見た後では、そう思われても仕方ない気もする。
「いや、あれは……その、趣味ってやつ?」
指をくるくると回しながら言い訳するラファナにマリアが詰め寄る。
「殺人や破壊を嗜好しているわけですね。
ますますパイオニア2当局が考える犯人像に酷似しますね」
(しまったぁ!)
どうして、もっとまともな言い訳が思いつかないのだと反省する。
「マリア、確かにあんたの言う通りだわ」
「犯人だと認めるのですか?」
「ちっがーーーーう!
確かに少しは怪しまれても仕方ないって事よ。
ただ言わせてもらうなら、
私みたいな人間はハンターズの中じゃ、珍しくないわよ」
これは嘘ではない。
ハンターズの中ではラファナのような嗜好はまだ浅いレベルであると言えよう。
「確かに。決定的な証拠に欠けますね」
ラファナの意見にマリアは頷く。
「って、あくまで私を疑うわけね。あんたは……」
「理由は他にもあります。
殺害されたハンターズは例外なくアギトの所有者です」
「………………」
マリアの予期せぬ発言にラファナの思考が停止する。
「私の憶測ですが犯人もアギトの所有者であると思われます。
そして極めて人間的な思考の持ち主。
つまり犯人はアンドロイドではなく人でしょう。
目的は本物のアギトを探している。のではないでしょうか?」
「あんた……その情報を何処から仕入れたの?」
ハンターズギルドは必要な情報を全て公開する筈である。
しかし、その情報の中には被害者がアギトの持ち主であるとは書かれていなかった。
なら、このアンドロイドは何故、被害者の共通点を知っている?
そして、何故『アギト』から『ラファナ』という思考に至った?
(こいつ、私がアレの持ち主だって知っている?)
今となってはセーラムとユーリアくらいしか知ってるものはいないと思ったが。
「独自の情報網です」
しかし、マリアは詳しく語るつもりはないようだ。
「……そう。
非礼を詫びるわ。
さっきのサポートから二流ハンターだと踏んだけど。
情報収集能力で修正して一流レベルじゃない」
すでにラファナからも友好的な気配は消えている。
クレハやマティエがいたら慌てていただろう。
この気配はラファナがぶち切れる寸前の気配だ。
「やっと、先程のあなたの顔に戻りましたね。
それが貴方の素顔です。ラファナ・ルイ」
その言葉が……ラファナの逆鱗に触れた。
「アギトだの、ラファナ・ルイだの。
ちくいち、人の昔を掘り出しやがって」
空調の効いた坑道内の空気が真夏のそれへと姿を変える。
目付きも普段の戦闘時よりも鋭く、とても同じ人間とは思えないほどに変わる。
「………………」
「うざったわいねぇ、あんた。
今なら許してやるから、とっとと消えな」
ラファナの殺気に呼応するかのようにチェイン・ソードのモーター音が高くなる。
だが、マリアはフッと脱力するように肩を下げる。
「本当に。その姿を見ると、あなたが犯人じゃないのかと思いますよ」
「なんですって?」
(このアマ……どういうつもりだ?)
今の自分はいつ斬りかかっても可笑しくない気配を漂わせている。
だと言うのに、まったくの自然体。
一体、何が目的なのだ?
「犯人の狙いが『アギト』なら貴方の元に必ず来ます。
待つよりは討って出たほうがいいですよ。
今回の犯人は貴方を呼ぶ為なら、どんな手でも使うような人物でしょうし」
それだけ言うとアンドロイドには不釣合いなほどの人間的な笑みを浮かべて背を向ける。
「あんた、もしかして犯人を知ってるの!?」
「いいえ、単に運が良かっただけです。
私はラファナ・ルイという人物に前から興味がありました。
そして、偶々今回の事件にアギトが関わってるのを知った。
後は私の単なる憶測です」
「………………」
「私、期待してます。
ハンターの貴方じゃなく。
オロチアギトのラファナ・ルイに。
それではパイオニア2の幸運を」
………………。
…………。
……。
そんな彼女を黙って見送る。
「言いたいだけ言って去りやがって。
討って出る―――言われずともそのつもりよ」
形にならない疑問だけが胸に残る。
『それが貴方の素顔です。ラファナ・ルイ』
握りこんだ拳から血が流れ落ちる。
「わたしは、もうラファナ・ルイなんかじゃない!!
今のままでも!
狂ったハンターキラーなんかに負けるもんですか!!」
………………。
彼女の叫びに、答えるものなどない。
ただ、辺りの機械の作動音と空調だけが彼女の叫びを反響させる。
「なんだってのよ……ったく」
ラファナは剣を片手に、ただ一人機械の残骸と共に立ち尽くしていた。
To be continued.....
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