ファンタシースターオンライン二次創作「パイオニア2奮戦記!」
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                    k_serika-Presents
         - ファンタシースターオンライン二次創作 - 
    [ PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!]
                      vol.02 02.05.22
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―――――――――――――――――――――――――――――― 「PHANTASY STAR ONLINE-パイオニア2奮戦記!-」 SECOND STAGE「PAST GHOST?」 ―――――――――――――――――――――――――――――― 「ホント、なんで姉さんはああなんだか」  パタパタとハタキで埃を払いながらクレハがぼやく。 「……ああと言うと?」  モーターの作動音を鳴らしながら、クレハの後ろをセーラムはついていく。  ボディカラーをTYPE-9に変えたことで始まった今回の騒動。  ラファナの渾身の一撃で下半身を分断された彼女は現在、車椅子を使って生活している。 「だからさ、なんか子供っぽいっていうか。  ベタベタひっつきたがるでしょ?  あれをどうにかしてほしいな、と思ってるんだよ」 「つまり、いい年して何時までも弟離れ出来ない姉が煩わしいのね」  ………………。  クレハは振りかえって少し沈黙する。 「いや、そこまで言ってないけど」 「………………あっ、そう」 「なに? すっげー何か言いたそうな顔してるけど」  クレハが異議を唱えるとセーラムは顔を逸らして。 「………………別に」  とだけ、呟く。 (ボディカラーが怪しいせいか。  ……いつにも増して姉さんが不気味に見える)  一家の大黒柱であるセーラムだが、  口数が少ない上に家を空けることが多いのでクレハはあまりセーラムの事を知らない。  分かるのは口数が少なく、家にいることも少ないが奇妙な存在感がある女性だという事だ。  それと、少しだけ怪しい。 「ラファナが弟離れ出来ないのも無理はない。  あの子はマティエやあなたが可愛くて仕方無いから」 「そりゃ、そう思ってくれるのは嬉しいけどさ」 「貴方も言う通り、あの子は子供なのよ。  だからクレハが嫌がれば嫌がるほどくっつきたがる」  ………………。 「それって、つまり嫌がらなきゃいいって事?」 「さあね。でも、もっといい方法がある」 「えっ、なになに?」  ないしょ話をする時のようにクレハを手招きする。 「はっきり言えばいい。  いい加減彼氏でも作ったらどうだ? この年増、と」  ………………。 「なんで、そうやって波風立てようとするわけ?」  セーラムは頭を上げて天井を見つめること、しばし。 「……別に殴られたことを恨んでるわけじゃない」  どう考えても恨んでるとしか思えない発言を残して部屋を出て行った。  ………………。 「なんだかなあ、うちの姉達は……」  一人になったクレハは妹のマティエはまともに育つように、と祈るのであった。 「今日もパイオニア2は洗濯日和ですね〜」  移民船団の中では雨など降る事はないのだから、いつでも洗濯日和だろうが。  そういう理屈抜きに彼女は本心から口に出しているのだろう。 「で、大丈夫なんですか? ユーリアさん」  ゆったりの〜んびりと洗濯物を干しているユーリアにティアが聞く。 「……何がですか?」  ユーリアが振り返って返事するまでにたっぷり数秒。  まるで彼女の周りの時間だけ流れが遅くなっているのではないかと思わせる。  しかし、不思議と腹が立たないのは彼女の雰囲気がそれを許してしまうからだろう。 「ラファナさんですよ。  報酬が高額の仕事はつまり危険度の高い仕事なんでしょう?」  彼女の腕を見縊ってるわけではない。  が、人間というのは焦ると良い結果を生まない生物であるとティアは思う。 「大丈夫ですよ〜あの子も立派なリングの持ち主ですし」 「ユーリアさんも一緒に行ってあげればいいのでは?」  一流のフォーマルであるユーリアとハンターのラファナが組めば怖い物なしだろう。  ラファナは一人一人にノルマを課したが、何も一人きりでこなす必要もない。 「あっ、それ無理です」 「どうしてです?  家族の問題だし、協力しあえばいいじゃないですか?」  ティアの発言にユーリアはえっと、と困った顔をする。 「ラファナは誰かと組むと能力が落ちるんですよ」 「個人プレーが得意ということですか?」  はい、といつもの笑顔で頷くユーリア。 「多分、戦闘中に誰かいると落ちつかないでしょうね。  だから、いつも仕事は一人でしてます。  その反動が出て日常じゃ、クレハ達にひっつきたがるんだと私は思うわけです」 「なるほど」  ユーリアはフォマールでもあり、アンドロイド研究などの科学者でもある。  科学者に在りがちな観察眼で普段のラファナの行動に憶測を立てる。 「それでもあの子は何処までも一人なんだと私は思います」 「どこまでも、ですか?」  はい、と返事をして話しを続ける。 「ラファナと私達は血の繋がりがありませんから。  結局の所、ラファナはうちのお客さんなんでしょう」 「えっ?」 「ある日、セーラム姉さんが拾って来たんですよ」  顔、あまり似てないでしょ、と付け加える。 「……そうだったんですか」  確かに言われて見ればラファナは真紅の髪をしているが。  ユーリア・ティア・クレハは銀に近い灰色の髪をしている。  普通なら血の繋がりを疑ってもおかしくないが……。 「でも、ユーリアさんが思うようには見えません。  私には、そんなこと気にしてないように見えますよ」 「そうですよねぇ」  ユーリアの肯定を受けてティアの肩が下がる。 「そうですよね……って。  だったらユーリアさんの勘違いなんじゃ?」 「他人から見れば違和感を感じないほど些細な事です。  でも、そんな些細な事がラファナには大きな問題なんですよ」  話しの内容とは裏腹にいつものニコニコ顔で話しつつ、洗濯物を干し続ける。 「私には分かりません。何が問題なんですか?」  頭の上に疑問符を浮かべるティアに洗濯物を干し終えたユーリアが歩み寄る。 「いいんですよ〜、ティアさん。  これはあの子の問題で私達には関係ないことです。  さあ、お茶にでもいたしましょう」 「お茶にしましょう、って。  ユーリアさんはお仕事行かないんですか!?」  ティアの肩を押して歩くユーリアにティアは慌てて声をかける。  しかし、聞こえてないのか無視してるのか、どんどんティアを家へ押していく。 「さあさあ、美味しいお茶が待ってますよ〜」  片手でドアを開けてぽーんっとティアを放りこむ。  そして、くるりと後ろを振り向き……。 「どちらにしろ。ラファナに心配は無用です」 「あの……ユーリアさん、一体誰に向かって言ってるんですか?」  あさっての方向を向いて言うユーリアにティアの鋭いつっこみが飛ぶのであった。 「ぎょおおおおお」  辺りの空気を振るわせるほどの声量の叫び声が森にこだまする。  噂の人物、ラファナはラグオル地表にてクエストをこなしていた。 「マスター。後方より攻性思念接近確認、数は3です」 「………………」  長年の相棒であるマグ、アプサラスの言葉に返事はかえらない。 「………………」  それどころではない。  ラファナの棍とブーマの爪が一進一退の競り合いを行っていた。  ギリギリと歯をくいしばりながら強靭な腕力を持つブーマの爪を押し返している。  拮抗した状態の二人。 「………………フッ」  棍にかけられた力が一瞬でゼロに変わる。  その強靭な力で棍を押していたブーマは虚を衝かれた。 「三流が……」  バランスを崩したブーマの足を棍がからめ取り、地に這わさせる。 「死ね」  倒れたブーマの顔面にハンドガンの銃口を押しつける。  ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!  ピッ!  返り血がラファナの頬に散った。  ハンドガンの連射は瞬く間にブーマの顔面を粉々に崩す。 「マスター!」  後ろの敵はすぐそこまで来ている。  それなのにラファナは背中を向けたままだ。 「バックパック」  流れるような動きで棍を収め、中から長大な剣を取り出す。 「マスター! 一度、離脱を!」 「………………ッ」  血に濡れた唇が薄く笑みを形作る。  同時に振りかえり、居合切りの形で銀の閃光が走った。 「失せろ!」  虫の羽音にも似た風を斬る音。  剣がモンスターの身体に接触する。 「フル・アクセル!」  片手でなぎ払った剣が凄まじい回転音と共に振動する! チュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!  まさしく、横一文字。  扇状に広がったエネミー三体の身体が上半身と下半身で分離する。 「アプサラス」 「はっ?」 「……なんか言った?」  その声と共に鮮血が迸り、重い巨体が大地を揺らした。 「いえ……見事、でございます」  三体を横一文字で裂くとは、もはや人間離れした膂力だ。  さすがは名実共にせりか家の最強となった彼女だけある。 「敵の殲滅を確認。ラファナ様、依頼は終了いたしました」 「………………」  ラファナの目線は倒れた死体から動かない。  その目は、いつもの彼女の趣きとは違っている。 「……ラファナ様?」  普段とは違う主の様子にアプサラスが声をかける。 「森は終わり。次は洞窟に行くよ」 「……はい」  チェイン・ソードのモーター音を鳴らしたまま、血で滑る床を歩く。  その姿を見れば、どんな者でも彼女を避けて通るだろう。  幽鬼のような気配を放ち、返り血に濡れた彼女は皆の知るラファナの姿ではなかった。  To be continued..... ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆