●前回(RX-7)の反省と、これまでの教訓
前回は、トミカの2次加工品を取り巻く環境が厳しくなりつつあり、私自身非常に拙速だったと反省している。
また、あの時点では、あれが限界とも考えていたし、それ以降、ついこの間まで、もうオリジナルトミカを企画することは、無理だと考えていた。
しかし、RX-7は、この3年間で各方面から引き合いがあり、実は海外発送も何回か行っている。つまりマニアの間では、それなりの評価をいただいていると感じた。特にリミテッドの2次加工は新鮮だったようだ。しかし、私個人としては、あくまでレギュラーのトミカにこだわりたいと思っている。よって、今回のS2000にリミテッドはない。

RX-7が比較的淡白であったにもかかわらず、息の長い評価を得たのは、やはり製作数量が少なかったことによると思う。その前のR33は徹底したこだわりを持って製作したが、1種類当たり500台、という製作数は多すぎた、という感じだ。これまでの製作数は、私の記憶によれば、概ね以下の通りだと思う。
NSX 第6回信州オフ会記念 250台/種類
R33 仲間号 500台/種類
RX7 第9回信州オフ会記念 110台/種類

上記を見て分かるように、NSXは大成功と言えると思う。これは最初のブラックNSXの余波をかって、いきおいで、あっという間にこの製作数を捌いた。
R33も実は、私の手元より、250台/種類出ていることを考えると、NSX同様の成功を収めているわけだが、残りの250台/種類が、ミニカーショップを通じて、現在も捌ききれていないことを考え合わせると、各方面の方に迷惑をかけたのではないかと、憂慮している。逆の見方をすると、私からのネット譲渡でほとんどのマニアに行き渡ったことになり、インターネットの偉大さをあらためて見せつけた結果でもあった。

RX-7は、やっと私の手元に残った台数も減ってきたが、実はそれでも、まだ200台以上が手元に残っている。実は、これには訳があり、ボンネットの印刷はせずに、両サイドのみ印刷したモデルが200台ある。これは、ボンネットにシールを貼って、どこかのタイミングで配布を予定していたのだが、結果的に、私の満足のゆくものができないため、その企画は頓挫したまま、現在に至っている。このモデルが日の目を見るには、まだ時間がかかりそうだ。

●今回はデザインにこだわり、そして熱心なマニア向けに徹する。
デザインについては、毎回悩まされるところだ。今回も何回かやり直しをこころみている。あとづけのタンポ印刷が満足のゆくものになるまで試行錯誤を繰り返すしかない。今回のモデルも、私のHPのトップページを毎日チェックされている方はお気づきかもしれないが、HPにアップしただけでも3回ほどデザイン、そしてタンポ色を変えている。

現在トップページにアップされているものは、最終形で、ほぼ完成モデルに近いものであり、メインモデルに据えた自信作だ。最終的には、予想以上に、この赤ベースが、Congratulationなモデルに仕上がった。このモデルの完成形を見たとき、確かな手ごたえを感じた。これならば、自信をもって多くの人に譲渡できる。これほどCongratulationなモデルは、これまで見たことがないほど、完成度は高いと思う。

私が2次加工で目指している、一つの方向性は、端的に言うと、『感動倶楽部』の世界である。私は、『感動倶楽部』の企画立案者とは全く接点はないが、あの方の製作モデルは、一つのあこがれだ。しかし、また私自身が独自にこだわる別の世界もいくつかある。
1)1回の企画で数多くのバリエーションを製作する。
2)タンポ印刷は、天面と両サイドの両方に施す。
3)ベースモデルは、裏面の刻印がTOMICAモデル。
4)あくまでマニア向けの企画で、一般的なヒットは狙わない。

そして今回S2000で特にこだわったのは、タンポ色の発色だ。これまでも発色には悩まされていたが、R33までは、アドさん経由で加工を依頼していたため、直接的に悩むことはなかったのだが、RX-7以降は、私のほうで発色の適正判断をする必要性があるため、大いに悩んだ。結局この発色で詰まってしまうと、タンポ色は、金、銀、黒といった、隠蔽性の高い色に落ち着いてしまう。このあたりが、RX-7の企画の限界でもあった。

発色の悩みに終止符を打つもっとも確実、かつ汎用性のある方法は、白ベースをひく、ということである。これにより製作のタガが外れたように、色々なやり方が実現できるようになる。しかし、コストはかかってしまう。今回のタンポベース色は、赤茶と深緑、という比較的暗めの色であるため、タンポ印刷会社との入念な打ち合わせを行った結果、白ベースはひかず、そのままベース色をタンポ印刷することにした。通常タンポ印刷の場合、その塗料の隠蔽度は、インクジェットのクリアーラベルに印刷したものと比べると、40倍ほどの違いがあるとのことだった。

その昔、親しくしているトミカコレクターから言われた。『珍しいだけモデルではダメだ』と。これを言われたのは、別の観点ではあったものの、実はこの言葉、いつも私の脳裏に焼きついている。やはり満足のいくものか、否か、それが次の企画に繋がるかどうかの分かれ目だと思う。この3年間、次の企画ができなかったのは、私自身RX-7の仕上がりに満足していない部分が多かったからだと思う。

今回のS2000は、ひとつの大きなハードルを超えたような手ごたえを感じている。