2014年3月17日
平成26年厚生委員会第3号

山加朱美 未曽有の東日本大震災から早三年を迎えたわけであります。
 先週三月十一日には都議会議場でも、全員で改めて哀悼の意を表し、黙祷をささげさせていただきました。心の中でさまざまな新たな誓いを皆立てたことと思います。被災地の一日も早い復興、そして長期避難を余儀なくされている方々の生活復興を望むばかりであります。
 また、私たちの東京においても、首都直下地震は三十年以内に七〇%の確率で起きると想定をされています。大震災への備えは、まさに待ったなしの急務であります。その災害への備えの一つとして、東日本大震災後、事業継続計画、BCPが注目をされてまいりました。
 都では、大震災前の平成二十年度には、既に都政のBCPを作成していますが、最近の調査、これは日経新聞夕刊、三月四日ですが、都道府県の政令指定都市等の大規模自治体でBCPを策定したところはまだ六割ということであります。
 国では、BCPの策定率を二〇二〇年までに、大規模はほぼ一〇〇%、中堅企業は五〇%という目的を掲げているようですが、これも先ほど、読売新聞社ですが、帝国データバンクと共同で全国約二万二千八百社に対してアンケート調査を行っています。
 ここでも、BCPを策定済みと回答した企業はわずか約一四・四%でありました。ほとんどの企業が、策定中、ノウハウがない、やり方がわからない、どうやってつくったらいいかわからないと回答しています。今後は、そうした企業に対して何らかの支援が必要と考えます。
 ところで、東日本大震災では、被災県の災害拠点病院が三十三カ所、このうち二十一の病院で、被災直後に患者の受け入れを制限せざるを得なかったと聞いております。災害時に医療機関がその機能を失わずに業務を継続させることは最も期待されることの一つであり、その点で私は、早期に病院経営本部が各都立病院のBCP作成に取り組んできたことに注目をしてまいりました。東日本大震災後は、いち早く広尾病院で都立病院BCPのモデルプランの検討を開始し、平成二十四年度には、全都立病院と病院経営本部で作成済みと聞いております。
 病院は企業と異なり、発災直後から傷病者の救命治療、医療救護班としての活動を立ち上げることになるわけですから、平時に増してその役割は大きく大きくなります。常に想定外を想定し、事前の備えを万全にしておく必要があります。そして、BCPを作成する上でも、企業のBCPとは異なり、現場感覚に基づいた実践的な計画内容とすることが必要だったことと思います。
 そこで改めて、都立病院BCPはどのような視点で作成を行ったのか伺います。

和賀井経営企画部長 都立病院BCPの作成に当たりましては、発災直後に一気に患者さんが押し寄せるため業務量が膨れ上がること、また、時間の経過とともに医療需要が変化するという病院業務特有の特徴を捉えることから始めました。
 また、首都直下地震等による東京の被害想定から、各都立病院での対応が予想される傷病者数、重傷者数を想定し、さらに阪神・淡路大震災で発生しました重傷者の傷病調査結果をもとに、受け入れ重傷者の傷病内容についても想定をいたしました。
 こうした具体的な想定をもとに、発災に備えた医薬品などの備蓄内容の見直しを行っております。
 一方、病院の事業継続の可否は、医師、看護師のマンパワーが鍵を握ることから、発災直後から一時間以内、三時間以内、二十四時間以内、七十二時間以内の部門別の参集人員を詳細に予測した上で、業務の優先順位づけと部門間の応援体制を具体的に検討し、実践的なBCPとして文書化を図ったところでございます。

山加朱美 綿密なBCP作成がなされていることを評価いたします。
 されどBCPは作成することが目的やゴールではなく、災害時にも業務継続を可能とする不断の取り組みを組織にしっかりと根づかせ、危機管理体制を強化する、事業継続マネジメント、BCMを実践することが、私は真の目的であると考えます。
 そこで、病院経営本部でのBCMの取り組み状況及び平成二十六年度の取り組み予定を伺います。

和賀井経営企画部長 理事ご指摘のとおり、BCPを生きた計画として活用するためには、PDCAサイクルを通じた事業継続マネジメント、いわゆるBCMの実践こそ重要だと認識をしております。
 BCPの作成後も、平成二十四年十一月の東京都地域防災計画等の修正に基づきまして、被害想定の見直しへの対応を行うとともに、平成二十五年四月施行の帰宅困難者条例の趣旨を踏まえ、外来患者や見舞い客への対応等を加筆するなど、適宜要所の改定を行っております。
 また、今年度から各病院の副院長を中心メンバーとしました都立病院医療危機管理ネットワーク運用委員会におきまして、災害対策の点検、検証を行い、常に対策を見直す観点から各病院の災害対策の状況を共有し、共通課題の解決に向けた検討を行っております。
 一つ、具体的な例を申し上げますと、平成二十三年度に配備しました衛星通信機器は、通信訓練の際に通信に支障が生じる病院が多かったことがございました。
 こうしたことから、屋外アンテナを各都立病院に設置するという提案がございまして、平成二十六年度予算案において経費を計上しているところでございます。

山加朱美 BCPが、いざというときにその機能を十分に発揮するためには、今、ご答弁にもありましたが、点検、検証、そこから生じる新たな共通課題の解決に向けた検討、このように常に見直しを繰り返し、最新の状態を維持していくことが重要だと考えます。今後も、ぜひとも継続した取り組みをお願いしたいと思います。
 そして、想定外の状況に陥ることが十分予測される災害時に、あらかじめ作成したBCPだけをもって、次々に起こる状況変化に対応していくことは困難であります。
 平常時の医療は、資源を最大限に活用し、一人一人に最良の治療を提供することを目指しますが、災害などの有事には、限られたマンパワー、また、限られた医療資源で一人でも多くの人を救うことを目的に発想を転換することが必要であります。
 平時から、しっかりとそのことを認識しておくことが大切と思います。BCPを作成し、そのBCPを職員にしっかりと浸透させ、発災時には確実に業務継続を実行していく、職員の育成が必要と考えます。
 研修、訓練、これは行っているとのことですが、具体的にどのように行っているのでしょうか。

和賀井経営企画部長 災害時の業務継続には職員一人一人の災害対応能力が不可欠であり、これまでも、各病院及び病院経営本部では防災訓練や研修を実施してまいりました。
 今年度からは、病院経営本部への転入職員、新規採用職員全員を対象としました、災害医療入門研修を実施しております。また、東京都の中で、東京都の災害医療体制や災害時の都立病院の役割などの講義を行っております。
 また、災害時に的確な判断と指揮命令を行えるようにするために、災害対策本部員として病院内で指揮をとる立場にあります病院の幹部を対象に、実践的なシミュレーション訓練、コンフリクトゲームというものを盛り込んだ研修を実施いたしました。このコンフリクトゲームというのは、例えば、職員の参集がおくれまして、想定の半分しか職員が来なかったというような状況を想定しまして、その上で医療救護班の派遣要請を受けた場合にどのような決断をするか、参加者同士で討論をするというゲーム形式での訓練でございます。
 平成二十六年度もこれらの取り組みを着実に実施し、職員のさらなる災害対応力の向上を図ってまいります。

山加朱美 私は昨年、警察・消防委員長を務めさせていただきました。さまざまな現場に足を運ばせていただいたわけでありますが、当時の北村消防総監が、いかなる現場においても訓練以上のことはできないと、常々に訓練の重要性を口になさっていらっしゃいました。
 私も、医療救護活動では警察や消防との連携は絶対に欠かせない、その思いを強くしたところであります。特に、患者搬送を担う消防機関とは、日ごろの訓練時からしっかりと連携を図っていくことが大切だと思います。
 現在放映中のTBSドラマ、毎週木曜日、私も見ているんですが、「Dr.DMAT」の中で、十秒迷えば一つの命が消えていく、私はこのフレーズを大変、心に刻んでいるんですけれども、このドラマの中では、有栖川総合病院は都立広尾病院がモデルと聞いております。また、ドラマの監修は佐々木勝院長がなさっていらっしゃいますが、災害時には、押し寄せる傷病者を的確にトリアージする知識と技術が多くの命を救うことにつながってくるわけであります。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、一刻も早く災害に強い世界一の都市を実現することが望まれます。
 都立病院では早くからBCPの取り組みをスタートさせていますが、今後も訓練や研修を通じ、災害時にはその力を十分に発揮できる職員を育成する不断の取り組みをお願いしたいと思います。
 そして、有事、これはあってはならないことでありますけれども、しかし、いつあるかわからない、あったときには日ごろの訓練の成果をいかんなく発揮することが、一人でも多くの命を救うことにつながってまいります。
 ぜひとも医療救護活動の先頭に立つ都立病院が、都民にとって力強い病院となっていただくことを大きく期待し、質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。






もどる