2002年3月18日
平成14年 厚生委員会第4号
山加朱美
私は、東京都動物の保護及び管理に関する条例の一部を改正する条例に関しまして、幾つか伺わせていただきたいと思います。

 最近、動物を飼う家庭が大変ふえてまいりまして、これら家庭で飼育されている動物は、単なるペットとしてではなくて、家族の一員として、飼い主の心の支えとなるばかりではなく、飼い主の生活の一部としては、なくてはならない存在といっても過言ではないと思います。

 しかし、動物を飼育するとき、それは飼い主との関係だけではなくて、近隣住民にとってもかかわりを持つ存在でありますので、それだけに、動物が飼い主により適正に飼育をされ、また、飼い主と動物との関係が地域社会に温かく受け入れられることが、動物愛護を推進していく上では大切なことであると考えます。

 ところで、衛生局では昨年の十月一日から、動物保護相談センターで収容した動物の情報を収容動物情報といたしまして、これは都道府県レベルでは全国で初めてと思いますが、画像情報としてホームページで公開をしております。

 私も、このホームページを拝見いたしましたけれども、動物によって、収容された場所、そして、日にち別、動物の種類、管理支所別と、大変詳しく、わかりやすく、すばらしい思いで、私も、もし自分の飼っている大切な動物が迷子になったときに、それを飼い主としては必死で捜すわけですから、そんなときにどんなに心強い思いがすることかと思いまして、このホームページを見せていただきました。

 そこで伺いますけれども、このホームページの収容動物情報には、都民からどのくらいのアクセスがあり、また、具体的な都民の反応があれば、それをまずお伺いさせていただきたいと思います。
河津生活環境部長
ホームページの収容動物情報についてでございますけれども、まず、アクセスにつきましては、画像による情報提供を開始いたしました昨年十月から本年二月までの五カ月間に、二万一千三十八人の方から、延べ二十八万八千六百四件ございました。

 次に、都民の方からの反応でございますけれども、お礼とかお褒めのお言葉ばかりでございます。(笑声)具体的には、例えばですけれども、返還を受けた飼い主の方から、休日で窓口が閉まっている、その動物保護相談センター等が休んでいるというときですけれども、そういう場合でも、画像情報により自分の犬が収容されていることを知り、安心できたといった、こういうメールなどが多数寄せられております。
山加朱美
ただいま伺った二十八万八千六百四件、アクセス数を見ても、動物についての都民の関心の高さがわかりますけれども、こうした中で、今回、これまでの動物の保護及び管理に関する条例を、新たに、動物の愛護及び管理に関する条例として改正するとの提案がなされております。
そこで、今回の条例改正の趣旨を含めまして、幾つかの点について伺いたいと思います。

 まず最初に、一昨年、動物の保護及び管理に関する法律が動物の愛護及び管理に関する法律という題名に改正されました。

今回の条例改正では、法律と同じように、題名の中で保護という言葉が使われていたところを愛護に変更するとのことですが、この変更の趣旨について伺います。
河津生活環境部長
国は、法律の題名を保護から愛護に変更した理由といたしまして、動物の適正飼養に加えまして、法の目指すところである、人と動物とのよりよい関係づくりを通じた生命の尊重、友愛等の情操の涵養に、よりふさわしいという趣旨によるものという説明をしております。
 都は、今回の条例改正で、このような法改正の趣旨を踏まえますとともに、飼い主のみならず、地域の人々全体で、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を目指すということを意図いたしまして、愛護という言葉を使用することとしたものでございます。
山加朱美
ただいまの答弁にもありましたけれども、条例の目的といたしまして、新たに人と動物との調和のとれた共生社会の実現を掲げていますけれども、この共生社会とはどのような社会をいうのか、ちょっと伺わせてください。
河津生活環境部長
人と動物との調和のとれた共生社会のその意味するところでございますけれども、動物が、物ではなくて命あるものとして適正に飼育され、また、動物を愛護することを通じて、人々の間にも生命尊重や友愛の気風が招来されるような社会というように考えております。
山加朱美
条例の目的とする、人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、まず、飼い主みずからが動物を適正に飼育することが大切であると思います。

最近は、集合住宅での動物飼育が普及しつつあるようですが、集合住宅で動物を飼う場合はもちろん、東京のような都市化の進んだ地域で動物を飼う場合には、特にそれ相応の配慮が飼い主に必要であると思います。

 そこで伺いますが、今回の条例改正によって、飼い主の責任というものはどのように強化されたのでしょうか。
河津生活環境部長
今回の改正におきまして、新たに飼い主の責務としてつけ加えましたことは、周辺環境に配慮して近隣住民の理解が得られるように心がけること、動物を飼えなくなった場合には新たな飼い主の発見に努めること、動物の健康状態を把握し、異常を認めた場合には必要な措置を講ずることなどでございます。

 さらに、今回の改正では、これから飼い主になろうとする者の責務も新たに定めまして、安易に動物を飼い始めることのないよう、動物の本能、習性等を理解し、飼育目的や環境等に適した動物を選択するように努めることも規定をいたしました。
山加朱美
ただいま伺いますと、飼い主の責任が今までより強化されたわけですけれども、これを徹底するためには、飼い主がその責任を果たさず、条例に違反した場合の罰則を強化するべきとの考え方もあると思いますが、いかがでしょうか。
河津生活環境部長
今回の条例改正では、飼い主等の責務規定を強化いたしましたが、これらは、人と動物との調和のとれた共生社会を実現するために、飼い主等に対して、それぞれの規定の趣旨に沿った一定の行動を期待するものでございます。
 飼い主等の行動に問題が生じました場合、例えば、動物の虐待であるとか、あるいは犬の係留義務を怠ったような場合には、現行の法及び条例に基づく行政指導や罰則で対応は十分可能であると考えておりますので、今回の条例改正では新たな罰則規定は設けておりません。
山加朱美
ということであれば、今回強化された飼い主の責務について普及啓発するとともに、動物の愛護について都民の理解を得るということが重要になってくると思います。

 動物の愛護及び管理に関する法律の中には、動物愛護推進員の制度が定められており、また、今回、条例でも動物愛護推進員の規定が設けられ、動物愛護の推進に重要な役割を担うことが期待されますけれども、この動物愛護推進員はどのような活動を行っていくのか伺わせてください。
河津生活環境部長
動物愛護推進員の活動でございますけれども、行政施策に必要な協力をすること、動物の愛護と適正な飼養の重要性について住民の理解を深めること等と定めております。

ただいまのは法でございますけれども、法ではそのように定めております。

 都の条例は、これらの活動内容に加えまして、飼い主になろうとする者に対する適切な動物の選択についての助言や、飼い主に対する適正な飼養方法についての助言など、より具体的に、都独自の活動内容を加えております。動物愛護推進員は、これら法、条例の規定に従って活動していくことになります。
山加朱美
動物愛護と適正飼養を都民の間に浸透させるためには、行政だけでなく、都民が行政と連携をして活動していくことが何よりも大切であります。

その意味では、動物愛護推進員をいち早く委嘱しなければならないと思いますが、この動物愛護推進員の制度というのは、いつごろからスタートをさせる予定なんでしょうか。
木村参事
動物愛護推進員の地域における活動を実効あるものにするためには、その活動の場となる区市町村や動物愛護団体等の協力と理解が不可欠でございます。

 法は、動物愛護推進員の委嘱を推進し、その活動を支援するための組織として、都道府県や愛護団体等で協議会を設置することができることとしております。

 現在、関係団体等と協議中でございますが、その準備会を設置して、いろいろと協議しているところでございます。動物愛護推進員の選出方法や支援体制のあり方について、検討を行っておるところでございます。これらの結果を踏まえまして、来年度のできるだけ早い時期に動物愛護推進員を委嘱できるよう努力してまいりたいと思います。
山加朱美
動物行政を推進する上では、動物に関する専門的知識を有する団体、それから、動物愛護を目的とする団体との連携、協力も欠かせないと考えます。

今後、これら関係団体との連携を一層強化する必要があると考えますが、所見を伺います。
河津生活環境部長
都はこれまでも、獣医師会や動物愛護団体と協働して、三宅島から避難をしてきた犬や猫の救援活動を行うなど、関係団体等との連携を図ってまいりました。

今後とも、これら関係団体との連携を一層密にして、人と動物との調和のとれた共生社会の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
山加朱美
最後に、人と動物との共生社会を実現するためには、今後、都はどのように取り組んでいくのかを伺います。

 また、冒頭にお聞きした画像情報のようなすばらしい取り組みについては、やはりどんなにすばらしいものであっても、もっともっと都民に知ってもらうべきであると思います。

知ってもらわなければ、理解もされない、行動もしていただけないわけでございますから。そして、あわせて、ただいまお尋ねをしてまいりましたように、今回の条例改正で充実される内容についても、やはり広く都民へ周知していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
河津生活環境部長
まず、今後の都の取り組みですけれども、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を図るためには、飼い主はもとより、地域住民に対しましても、動物が私たちと同じ社会に共生する命ある存在であるということの理解と協力を求めていくことが大切だと考えております。

 都としては、このような考えをベースにいたしまして、都及び区市町村、さらには都民や関係団体が果たすべき役割や連携のあり方などを明らかにいたしますとともに、動物愛護や適正飼養に係る施策を総合的に推進していきたいと考えております。

 また、都民への周知につきましては、保健所窓口等のほか、動物病院やペットショップなどを通じて情報提供を図りますとともに、都の広報紙やホームページなど、さまざまな方法を用いて、画像情報や都の施策について周知をしてまいります。
山加朱美
今回の改正によりまして、私は、動物を、命あるものである動物という表現を、今までになかった表現をもって、人と動物との共生社会の実現に一歩踏み込んだことを大変高く評価をしております。

 確かに動物は、人に対して危害を加える動物もいるわけですけれども、でも、例えば医療分野におきましても、動物と人との、命あるものとしての動物とのかかわり合いが、非常に医学的に効果を有する場合があるということも、私は多々伺っております。

 そして、これは特殊な例ではございますけれども、例えば訓練をされた盲導犬、聴導犬、生活犬、介助犬、ハンディキャップを持った者とともに歩む、そのような共生社会の中で、本当に人と動物との共生社会が今までになかった。これは、私は、世界の中でも日本は大きなおくれをとっていると思っているわけですけれども、今回の改正によりまして、それに一歩近づく扉が、私は開かれたのではないかと思っております。都の動物行政が新たなスタートを切ったといっても、私は過言でないと思っております。

 今後とも、都民の希望に、より適切に対応していただきまして、地域社会においては動物愛護の精神が一層浸透することを強く希望して、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
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資料URL  http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/kousei/d3050054.htm