●対談:「グッチ」製造法

by 佐藤クラリス (PC-VAN宮崎駿ネットワーカーFC)

 2000年10月05日アップデート → メールアドレス変更
 このページは、PC-VAN宮崎駿ネットワーカーFCの佐藤クラリスさんが、そこで連載した作品 ●対談:「グッチ」製造法 の全文を掲載しています。なお、無断転載等は厳禁です。(編集者)  文中に、PC-VAN宮崎駿ネットワーカーFCのフォーラムWinds Talk内のメッセージを示している箇所がありますが、原文のまま掲載しています。
『●対談:「グッチ」製造法』総集編  ’89.1.26 by佐藤

1.顔合せ

司会:
「本日はお忙しい所をおいで頂きまして有難うございます。早速ですが、佐藤さん、『グッチ』の連載ご苦労様でした。」
佐藤:
「どうも有難うございます。多くの方々から激励や感想を頂きまして、有難うございました。この場を借りてお礼申し上げます。」
司会:
「さて、対談の相手はなんとあの『コナン』で大活躍をされたモンスリーさんです。」
モン:
「はじめまして・・・」
司会:
「いやー、10年前と同じようにお美しいですねえ」
佐藤:
「ホントに・・・」
モン:
「まあ!バカね!」
司会:
「では、早速始めさせて頂きますが、対談なので私の方はあまり口出ししないようにいたしますので。では、宜しく。次回は関東オフライン関係が一段落付いた後になるでしょう。」

2.テーマについて

司会:
「12月9日以来の御無沙汰でした。では、早速始めたいと思います。本日のテーマは『テーマについて』。あれ?」
モン:
「えーと、まずグッチは何をテーマにした作品なんですか?」
佐藤:
「いやー、特に考えて居ません。こう言った事を感じて欲しいと言うよりは、多彩な人達が自分の感じたいように感じて欲しい、と言うくらいです。強いて言えば。そう言った多様性は織り込んだ積もりです」
モン:
「そうなんですか。でも、何か有りそうなもんだが。裏テーマってのも無いんですか?」
佐藤:
「・・・まあ、無い事も無いですが」
モン:
「ぜひ聞かせて下さい!」
佐藤:
「自分の書きたかった事を書いたって事ですか・・・」 (モンスリー、明らかに失望したような顔)
モン:
「じゃあ、テーマはそう言った事で・・・まあ、良いか・・」
モン:
「この作品て、ハッピーエンドみたいなんですが、その割にはシリアスの部分もあって・・・。どういう顔で読んだら良いのか分からないわ」
佐藤:
「(笑)それは言えるかも知れない! それが多様性と言うことと、考えています。でも、読むときは笑いながら読んで下さい。それが一番無難。深読みはしたい人がすれば良いんです」
モン:
「読者の対象と言うのがあると思うんですが、どう言った人達に読んで欲しいと思いますか?」
佐藤:
「先ずは『駿SIG』のメンバー、次に宮崎アニメのファン、後は一般の方ですね」
モン:
「題名は例の魔女宅をヒントにしたんだと思いますが」
佐藤:
「そうです。その時はまだ読んでなかったので、名前から想像される内容を勝手に書いたと言うところです。でも、あとで原本を読んだら全然違うので、おかしかった!予想は外れたって事ですね」

3.シリアスネタについて

モン:
「今回はグッチの重要な面を構成するシリアスネタについて、聞いて行きたいと思います」
佐藤:
「(身を乗り出して)うん、うん。」
モン:
「グッチにはいくつかのシリアスネタ、またはシリアスに読める部分が有りますが、主なものを挙げて下さい」
佐藤:
「ナチス関係が中心ですが、他に君主制に付いても少し・・・」
モン:
「詳しく説明して下さい」
佐藤:
「ナチス関係は、まず『黒シャツ隊』ですね。これは『あの』ナチスの実力部隊『突撃隊』=Sturmabteilung(略.SA)の別名に他ならない。で彼らが教会を襲撃したシーンは『水晶の夜』事件をイメージした訳です。確か1938年の11月9日夜から10日にかけてだと記憶してますが、ドイツ全土で行なわれたユダヤ教会堂と商店に対するナチスの組織的襲撃事件です。この事件では90人ばかりが殺されていますが、これは例のホロコーストのきっかけとされています。しかし、私が言いたかったのはナチスはこうだったと言う事ではなく、権力とはかく執行されると言う事ですね。大衆の抵抗、反対勢力等と言うものは組織化された国家権力の実行部隊、つまり暴力ですが、これの前には児戯に等しいと言う現実ですね。グッチでも『暴力集団』を魔法でネズミにしなければ、最も悲惨な終末になっていた訳ですから。流血と破壊、暴力と憎悪ですね」
モン:
「ふーん、なるほど。でも、大衆の人海戦術で『黒シャツ隊』を叩き潰す事も出来たんでしょう」
佐藤:
「それはきっと可能だと思います。モロゾフ司教の先導で王制を破壊する事も出来たでしょう。フランス革命のイメージになってますが。でも、考えて下さい。策をもって『黒シャツ隊』を焼き殺し、王制を倒したとしても、それから先の展望がありましたか?モロゾフ司教は自分が王にとって代わる事しか考えていなかった。大衆は王を倒して一時的には発散できただろうが、それからどうする?これがグッチのもう一つのシリアスなんですね。モロゾフ司教と言う指導者を失った大衆はクレージュ皇女の説得で、いともあっけなく『王制万歳』を叫ぶ。これが現実だと思います。今の社会においても。」
モン:
「佐藤さんは大衆に失望して居るんですか?」
佐藤:
「結局は利用されるだけなんだと言う諦めが強いですね。フランス革命のように、広範な支持、理論的な裏付けが有れば、何とか形をとどめる事が出来ると思いますが、最近は国家権力の実行部隊、例えば軍隊とかが余りに巨大な破壊力を持っていて、人海戦術なんて通用しないと思います。大衆の不満は政争に利用されるだけで、大衆は相変わらず吸い取られるだけ」
モン:
「本心じゃあ無いでしょう?実際は大衆の活力、エネルギーを信じてるんじゃ無いんですか?」
佐藤:
「(笑)まああね」

4.続・シリアスネタ

モン:
「グッチの時代はヨーロッパの中世となっていますが、これから民主主義の波がやって来る訳ですよね。」
佐藤:
「そうです。そして王家は滅んで行く。あののんびり屋の侯爵も、そしてクレージュも、後世の人は思い出す事はなくなるでしょう。如何なる大国、如何なる偉人と言えど、終わりを避ける事は出来ない。それが運命なのです。だが、その限られた中で持てるもの全てを発揮し、歴史にその名を永久にとどめようとするのも人間の力なのだと思います。長久の大河のごとき時間の流れに、自分の小ささを卑下することはない。たとえ公国が滅んでも、クレージュやグッチを、憶えてくれている人が、或はいるかも知れません。」
モン:
「ちょっと、厭世的な話じゃ有りません? 私はどっちかと言うと、大衆の活力の話をしてたんですが」
佐藤:
「ああ・・そうでしたね。ではそっちの方で。私はナチスを知るまでは、『歴史は何れは民主主義に』と考えていたのですが、ヒトラーとナチスを知るに及んで、その確信が持てなくなりました。つまり、大衆は『腐った民主主義よりは切れの良い独裁政治の方がお好き』じゃないかって。確かにフランス革命後の恐怖政治はナポレオンを要求しましたし、ワイマール共和制はヒトラーを導いた訳ですから。『これが民主主義だ』って、密室政治や腐敗政治や汚職ばっかり見せつけられると、『独裁政治の方が能率が良いんじゃないか。試しにやらせてみようじゃないか。どうせ選挙で止めさせる事が出来るんだから』と言う考えが出てきて当然だと思います。そして、ヒトラーは熱狂的な支持の下で、ヒーローになった訳です。これからもそう言った考え方が出るでしょう」
モン:
「でも、貴方の先ほどの話では『如何なる大国、如何なる偉人と言えど、終わりを避ける事は出来ない。』と言うことでしょう。ナポレオンもヒトラーも既に滅んでしまいました。大衆はいずれは眼が醒めると思いませんか?」
佐藤:
「(笑)全くその通りです。ことわざにも有りますが、『力をたのむ者は、力で滅びる』。つまり、権力者が基盤としているものにこそ、最大の弱点があるって事ですか。ただ、これは言いたいのですが、大衆は常には賢者ではない。正しい事もあるし、誤りもある。だが、その誤りを正すチャンスを提供してくれるのは唯一民主主義だって事ですね。」

5.キャラクターについて

モン:
「シリアスネタはこれくらいにして、次にキャラクター設定に付いてお聞きしたいんですが。まず、ネーミングに付いてはどんな方針だったんですか」
佐藤:
「(笑)ご覧になるとお分かりになると思いますが、いわゆる『ブランドもの』を集めただけです。オリジナルの名前も良いですが、それにエネルギーを費やすよりはこの方がよいと考えました。変更はエディターで一気に出来ますし。ただ、それだけでは能が無いので言葉のイメージに対応させてキャラに振り分けました」
モン:
「と言う事は、まず名前の無いキャラクターが先に決まったと言うことですか」
佐藤:
「そうですね。一番先は作品の題名。なにしろ、これが良くないと、それからの意欲が出ない。確か、宮崎さんがその様な事を云われていたとか聞きましたので。でも、私の場合、作品の題名とキャラクターとストーリーの大筋はは殆ど同時に決まりましたが。
1547 88/10/19 マジョの宅急便>でっち上げ作品草案        by佐藤
を見て頂くとお分かりかと思いますが、この時点での決定からあまり脱線して居ません。脱線したのは、クレージュがグッチの邪魔をすると言う部分がかなり小さくなったと言うことです。なぜ脱線しなかったかと言うと、最初の決定が完璧と云うのではなく、自分で縛ったと言う事だと思います。宮崎さんの様な馬力の有る方なら、かなり自由に変更しても、最後できちんと締める事が出来ますが、私などは何処へ行ってしまうか分からない。それで、最初のレールに従わざるを得なかったと言うのが真相でしょう。そのキャラクターですが、かなりいい加減で、3つの勢力と云う事から、侯爵関係、平民グループ、教会に3分して、更に、こう云った人間も欲しいと云うように増やして行った訳です。ゲームの感覚ですね。具体的な設定は次回と云うことで。」
モン:
「『4.続・シリアスネタ』に関して眠夢さんからご意見が来てますが」
佐藤:
「#2053の件ですが、民主主義と独裁政治は共に制度なのですから、長所と短所が有るのは当然と云う様な内容だったと思います。これ自体はごもっともだと思いますが、両者は同列ではないと思います。(これだけがポイントです)私が国王だったら独裁政治万歳を叫ぶでしょうが、事実はそうではない。国民が主権者か、それとも王の所有物かでは大きな違いがあると思う訳です。ではナチスはどうだったか。彼らは民主主義の解体を公然と叫び、『選挙によって』国政を手にいれた。民主主義は独裁政治を許す訳です。しかし、その逆はなかった。戦争という暴力的な国家体制の解体以外には。あくまで、国民から見た話なのですが、選択の自由が有るだけ民主主義の方が理想に近いのでは無いですか?」

6.キャラクター(2)

モン:
「主人公はやっぱりクレージュとグッチでしょうね」
佐藤:
「そうですね。所で、貴女はクレージュをどんな人物だと思いますか」
モン:
「そうねえ、わがままな、おてんば娘って所かしら。そう云えば、佐藤さんは
1751 88/11/21 そうなんですよ、完全な方針変更です>ジョバンニさんby佐藤
で、以下の様に云ってましたが、これは本心なんですか?
『★グッチとクレージュは実は意気投合していないんですよ、ハイ。悪く言えば、だまし合いをやっていたんですネ。グッチはあくまで、奪われたホウキを取り戻すために身を屈していただけです。その本性はノーフェアランドに戻ってきた所で暴露されました。クレージュも同じ事。好き勝手をやって、肝心の騒動解決はグッチに任せると言う無責任さ。(まあ、子供だからしかたないか)しかも、グッチに騙されてノーフェアランドに来たふりをして、『えぇ、知ってたわ。ここに来ようと言った時からよ』と言って相手を驚かせ、次に重大事を頼み込むと言う大芝居をうつ。さすがは常人ならざる能力を持つ貴族の血。
グッチが引き受けたのはクレージュの切なる願いもあったろうが、大半は『組織』の為に生きるのは嫌だという『自由への逃走』だったのでは?つまり、『だが、これだけは言っておくよ。これはあんたを助けるためじゃあない。それに公国がどうなろうと知らないさ!ワシはただ今の生き方が嫌なんじゃ!』でも、これも本心かどうか?
一見、美しき感情から発しているような行動の裏に存在する虚々実々。又、その逆も真なり。これも人の業(ゴウ)なのかな?でも、最後には、『尊敬の絆』で結ばれるでしょう。』」
佐藤:
「いわゆる裏設定と云う風に言えると思います。グッチはコナンで言えば、ダイス船長みたいな性格ですね。私の言うところの『目的万能主義』、つまり、船に乗る為には手段を選ばないと言う感じです。ダイス船長のファンには悪いが。 で、クレージュはどうかと言えば、これも『喰えない』。クレージュこそ、この作品の中で、一番の『役者』ですね。グッチは自分の為に『組織』を裏切ると言っているが、それは単なる強がりで、実際は、クレージュと公国を守るために、死ぬのを覚悟で戦うんですね。つまり、クレージュに心酔した訳です。」
モン:
「でも、クレージュはそんなに大芝居を打っている様には見えませんが」
佐藤:
「いわゆる天才と言う奴ですね。意識しないで、それが出来る。彼女に会う者は総て、服従してしまう。ゲームの『三国志』で言えば、カリスマ98以上のおそるべき英雄です。民衆なんかもすぐに『姫様万歳』ですもんね」

7.キャラクター(3)

モン:
「うーん、そこまで考える必要が有るのかなあ。ちょっと考えすぎじゃない?やっぱり無邪気な女の子と言うので十分だと思うわ。だって、最後はグッチを助けようとネズミの中に飛び込むじゃ無いですか?あれって純粋にグッチを助けたかったんでしょう」
佐藤:
「そんなものじゃない。感情の爆発と言って良いものですね。まともな人間ならあの場面で気を失うか、逃げだしている。それ無しに自ら死地に突入するのは、彼女の場合勇気ではなく、一種のヒステリー状態ですね。常に第三者的な見方の出来る彼女にこんな一面が有ったのかと驚かされる、殆ど狂的な感情ですね」
モン:
「私はやっぱり、グッチを助けたかったんだと思うわ。佐藤さんだって『最後には、『尊敬の絆』で結ばれる』って書いてるじゃ無いですか」
佐藤:
「それは結果論です。グッチを助けたと言う事実が、二人に『ああ、大事な存在だったんだ』と気付かせてくれたんですよ。だから二人の関係は、クレージュがネズミの中に飛び込んだ瞬間に変わったんですよ」
モン:
「ふーん、そんなもんなのかしらねえ」
佐藤:
「大体、わがままなタダの女の子が、あんなこと出来ます?ナウシカ張りの派手な冒険を。生まれながらにして只者ではないんですよ、あの人は」
モン:
「じゃあ、まあ、そう言ったことで、クレージュとグッチは置いといて、次にカリオストロ侯爵とサンローランですが、余り出番がなかったようですが」
佐藤:
「役どころとしては、侯爵はですね、平凡な人間と言うことですね。つまり、人の上に立てる人物ではなかった。で、バーバリー当りに良い様にされてしまう。こういう社長って居ますよね。組織を潰す為に居る様なのが。独裁政治の欠点ですね。で、サンローランは結構賢くて、忠告をするんだが、暗愚な王は悟らない。これでサンローランがもっと強いと女帝と言う事になるんでしょうが、そこまでは行かない。何もなければ、公国はこのまま潰れるところだったんです。クレージュとグッチはまさに救世主ですね。公国にとっては。
モン:
「平民グループはどうですか?」
佐藤:
「民主主義を目指す戦士達と言うところですか。結局は全滅ですが」
モン:
「佐藤さんは民主主義を支持してるんでしょう。だったら、彼らに勝たせたら良かったんじゃないんですか?」
佐藤:
「この作品は民主主義が敗北し、王制が脈々と生き続けると言うお話なんですよクレージュ皇女の大活躍でね。これは戦争なのです。平民グループは破れた。それをお忘れなく」
モン:
「私の台詞を真似するんじゃ無い!」

8.キャラクター(4)

モン:
「黒シャツ隊と平民グループをネズミに変えてしまい、最後は消滅させてしまいますが、これって可愛そうじゃありませんか?ダックスなんか、バーバリーに命令されてやって居るんでしょう。それなのに全部で600人も殺しちゃうなんて」
佐藤:
「右だろうが左だろうが、上だろうが下だろうが、暴力集団は大嫌いなんです。力は人間を悪魔にしちゃうんですよ。レプカを見なさい。ムスカを見なさい。彼らは確かに野心家ではあった。だが、ギガントやラピュタが無ければ、只の野心家で一生を終わって居るはずです。所が、その野心を実現する力が手に入るとなると、もう完全に悪魔そのものになってしまう。人間×力=悪魔 なんですよ。だから、暴力集団に道徳を説いても何にもならない。聖戦とか正義の戦いなんて無いと思いますよ。戦いは単なる悪魔的破壊に過ぎない。モンスリーさんも『大変動』で数10億の人間と数万種の生物の犠牲を知っておられるはず。だから暴力集団には消えてもらわなければならなかったんです」
モン:
「・・・その点は同感です」
佐藤:
「司教のモロゾフも同じ事です。なんと言ったって『幻魔株式会社』の秘密社員ですからね。」
モン:
「秘密社員ってのはどう言ったものなんですか?」
佐藤:
「『幻魔株式会社』の社員、つまり悪魔なんですが、その正体を隠して活動した方が色々メリットが有る場合、仮面を被るんです。江戸時代の『草』、あるいはスパイ用語の『スリーパー』と言った所です。で、やる事は悪魔そのもの」
モン:
「先ほど出た、力を持った人間とは違う訳ですか?」
佐藤:
「力を持った人間はもともと人間です。力が無くなれば、元に戻ります。だが、秘密社員は、もともとが悪魔ですので、力を持とうが持つまいが関係なく、悪い事をするんです。モロゾフなんかは人気のある司教で、いかにも清廉で、権力には関係なさそうに見えますが、実態は悪魔的破壊をもくろんでいる。大体坊主ってのは昔から悪い事をするように出来て居るんじゃ無いですか?『水滸伝』(すいこでん)を読んでもらうと分かりますが」
モン:
「モロゾフと愛人メリーは死にませんね。単に眠っているだけですが。これは何か意味が有るんですか。それともケーキの都合でそうなったとか?」
佐藤:
「鋭いなあ(笑)。本当は後者だったんですが、ついでにと言う事で、悪魔にしてしまった。でも、ちゃんと後の事を考えてますよ。モロゾフとメリーはいずれ蘇るんです。ナポレオンとかヒトラーとしてね。だから死ななかったんです」

9.キャラクター(5)

モン:
「最後はサタンとデーモン、そして佐藤上人ですが、これは善と悪の最終戦争と言った意味合いなんですか?」
佐藤:
「そうですね。あくまで悪い奴が居て、こいつを倒す。それでめでたしめでたしと言うのが好きですから。」
モン:
「どうして『幻魔株式会社』の女社長とか、辣腕部長なんですか?悪魔が会社組織になっていると言うのは何か意味が有るんですか」
佐藤:
「これは私の組織観の反映です。つまり、組織と個人はその徳とする所が異なると言うのが持論です。個人は個性と自由を重んじ、組織はそれを必要としない。いや、かえってそんな物が有ると組織の活動を妨害するので積極的に排除しようとする。組織に組み込まれた人間は、まさに将棋の駒か歯車のように動く事を要求されるんです。これはまさに非人間的な世界です。たとえば軍隊などはその最たる例でしょう。そこには当然反戦主義者や平和主義の人間も含まれているが、戦場では『組織が、敵と認めた相手』を殺す事が唯一の任務です。それに反抗する事は、自分の死を意味します。デモ隊の同胞を殺す事を命令されたら、たとえそこに両親兄弟が居ても、機関銃の引金を引かなくてはならない。これって、まさに悪魔の世界だと思いませんか。組織すべてが、この様な事を要求する訳では有りませんが、不合理な配置転換、とか強制転勤と言ったものは、これに類するものだと思います。『いやなら、会社を辞めてもいいんだよ』と言う、一見自由寛大な発言は、軍隊に於ける『死』を意味して居るんですよね。普段は気にもならないが、一旦極限状態になると、組織と個人はその本性をむき出しにして、ぶつかり合う。個人の自由にとって、組織は相入れないものだと思いますね。ですから、サタンとデーモンは組織の代表、佐藤上人は、それに対する自由人の代表と言う事です。」
モン:
「佐藤さんは会社に勤めてるんでしょう。こういう考えでは、ストレスが溜ってしょうがないでしょう」
佐藤:
「いや、そう言う事はないです。頭の中で考えている事と、実際の行動はまた別ですから(笑)」

10.キャラ(6/6)

モン:
「佐藤上人って、出番が少ししかなかった様なんですが、活躍に期待の声も有ったんじゃないですか」
佐藤:
「そうですね、でも、そればっかりやると、佐藤上人が主人公になってしまう。それに上人ですからあまり出過ぎるのもまずいと思います。本当に偉い奴は肝心な時に出てきて、大仕事を簡単に片付けて、さっさと去って行くのがカッコいいんです。(笑)」
モン:
「キャラの中では誰が好きと言うか、入れ込んだのですか?」
佐藤:
「私はやっぱりグッチが好きですね。カッコよくないし、ドジなんですが、向上心に溢れていると思いますね。実は彼女のモデルは『みにくいアヒルの子』なんですよ。つまり、みにくいアヒルの子=ドジな魔女 は、実は 白鳥=天使 だったんだと、言う事ですね。私はこの作品をハッピーエンドにしようと思いましたから、立派な魔女にするよりは、やっぱり天使にしたいと思いましたね。彼女が天使になって行く過程で、クレージュも博愛と友情を知り、本物の心優しい女性になれたんだと思います。結局、女性の自立ってのを書いたんですね、私は。私なりのをね。きっと。もともと、それが発端ですから」
モン:
「私は、クレージュってのは始めから無邪気だと思っているんですが。それで、結構好きなんですが」
佐藤:
「まあ、実際はそうなのかも知れません。実際無邪気です。彼女に関しては前にかなり批判的な事を書きましたが、そこまで荷物を載せなくてもいいのでしょう。彼女は単におとぎの世界に行った様な積もりだったのかも知れない。こう言ってはおかしいですが、書いている内に、私の手を離れてしまったようですね。で、わたしにこう書けと言うのです。私はハイハイと言って、彼女の言う通りに書いて行った。(笑)だから、彼女の事は全然分かっていない。困ったものです(笑)」

11.ストーリー(1)

モン:
「グッチの始まりって、最初から悪魔が出てきて、なんかおどろおどろしいと言うか、そんな気がしたんですが。」
佐藤:
「(笑)いやー。そう言う積もりはなかったんですが。まあ、それ迄のシリアスネタの『後遺症』も有ったんでしょうが、どちらかと言うと脚本家ジェームズ三木の言うところの『番組を見てもらえるかどうかは、最初の10分で勝負が決まる』と言う話から、最初は度肝を抜くような事をしなけりゃあと思った訳ですね。」
モン:
「それも有るでしょうが、佐藤さんの好きな『世界制覇ネタ』でしょう。特徴がよく出ているなあと思いましたが」
佐藤:
「まあ、自分に気合いを入れる意味も有ったかも知れませんね」
モン:
「で、ノーフェアランド。これは『何処でも無い所』の意味なんでしょ」
佐藤:
「そうです。ビートルズの『Nowhere Man』に出ています。あの曲って結構好きなんです。自分を見抜かれている様で」
モン:
「出張所ってなんか凄く寂しい感じですね」
佐藤:
「ここはもう、究極の窓際族と言う感じを出すために、みじめったらしく描きました」
モン:
「中世なのにFAXってのが何とも・・・」
佐藤:
「(笑)中世だけど、中世じゃなかったって積もりかもよ」
モン:
「17年も窓際族だったんですか」
佐藤:
「前回の火星大接近の時に活躍したきりだったんです。で、そこでドジをやってしまって、遥か網走にじゃなかった、ノーフェアランドに」
モン:
「苦情があった『魔法のホウキ・ユーザーズマニュアル』ですが、この辺の『仕掛』は、後のストーリーの関係で作ったんですか」
佐藤:
「それからのストーリーは細かいところは全然決って無かった。でも、クレージュが魔法を横取りする事は分かっていたので、この様な、パスワードを使う方式にしました。呪文と言えば、『リテ・ラト・・・』に決まってますし、ペンでホウキにパスワードを書けば、その内消えてしまうだろうと」
モン:
「第二章の最後で、グッチが小屋を後にするとき、意外なくらい感傷的なシーンが有りますが」
佐藤:
「グッチは始めから『良い人(?)』なんですよ。バカはしますが。それのサインですね、この人はホントは魔女じゃないんだよってね」

12.ストーリー(2)

モン:
「『第三章 カリオストロ公国』では、各勢力の様子を描いていますが、設定はどの様に決めたんですか」
佐藤:
「時代劇の世界ですよ。カリオストロ公国は『お任せ政治』で腐っている。こう言うのは、『水戸黄門』で、おなじみですよね。殿様が若くて、悪い家老が商人と結託して私腹を肥すって。それで、それに反対する勢力が当然有るんです。『地下組織』がね。如何にして家老を倒すかと若侍達が、お寺か何処かで密談するんです。で、政治と結託した坊主は二つの顔を使って、どちらが勝っても不利にならないようにする。もうう、時代劇そのものです(笑)」
モン:
「モロゾフの別な顔がまた、凄い変わりようですね。人望高い聖職者が愛人囲って言いたい放題だなんて」
佐藤:
「お堅い事が嫌いなんですね。私は。自分が聖職者だったらきっとこうなるだろうなって。(笑)」
モン:
「ケーキの描写は佳子さんのリクエストでしたよね」
佐藤:
「(笑)そうです。他に最後の『バルス』もリクエストでしたよ。誰かからだったかな」
モン:
「モロゾフのお話に2匹のトラが出てきますが」
佐藤:
「これは『漁夫の利』からと、確か『水滸伝』にも出てきますね」
モン:
「モロゾフって結構、戦略家ですねえ。大衆扇動に長けている気がしますが」
佐藤:
「(笑)何と言っても、後のアドルフ・ヒトラーですから、この程度の事が出来なくては」
モン:
「『第四章  お姫様と魔女』では、いよいよグッチとクレージュの遭遇が有りますが、グッチを『引っ掛ける』所が又なんとも言えないですねえ。ホントひねていると言うか」
佐藤:
「(笑)結構ショックでしたか。でも、クレージュも王族なんで一応『帝王学』なるものをやっていると思いましてね。しらんぷりして、部下に質問して試すとか、知らないのに『そうだろう』なんて言って白状させるのは基本ですよ。『韓非子』でも読めば分かりますが。だから、クレージュはひねているのではなく、逆に素直なんですね」
モン:
「でも、それからも結構キツイことをやってグッチを困らせていますが、これも『帝王学』の為せる技なんですか?」
佐藤:
「やっぱり、ひねているのかなあ(笑)」
モン:
「で、結局、ホウキに書いた呪文は消えてしまいましたが、これは予定通りですよね」
佐藤:
「そうです。で、クレージュとグッチの立場は逆転してしまい、グッチは『観念』する訳ですね。まあ、本心からじゃ無いですが。その件は前にも述べましたね」
モン:
「二人はバーバリーの私邸に忍び込むんですが、この私邸がまた広いようですね」
佐藤:
「ウサギ小屋に棲む人間の願望ですね。これだけ広かったら、絶対文句は言わないぞって」
モン:
「ここでのポイントは金塊の隠し場所を知ると言うことですね。腐敗政治の物的証拠の」
佐藤:
「はい、そうですね。で、バーバリーに教えてもらうんですが、この辺のストーリーて、似たような物を見た事有りませんか?」
モン:
「そういえば・・・」
佐藤:
「シャーロック・ホームズです。『ノーウッドの建築業者』とか言う作品の中に出てきます」
モン:
「自分が殺されたと見せかけ、昔の恋人とその息子に復讐するって奴ですね」
佐藤:
「そうです。それと『ボヘミア国家のスキャンダル』、『海軍条約事件』がヒントですね。題名は本によって違うかも知れませんが」
モン:
「(笑)エドガー・アラン・ポーの『黒猫』がちょっと出てきますが」
佐藤:
「(笑)魔女と言えば黒猫、ですからね。しかも壁を崩すなんて話ですし」
モン:
「さて、いよいよ、問題の『クレージュの大芝居』ですが」
佐藤:
「これは、もう賛否両論が有りました。私としては、『帝王学』の延長の積もりだったんですが」
モン:
「私はそうは思いません。クレージュの本心だったと思います」
佐藤:
「ま、議論するだけの価値が有ることだけは確かですね」

13.ストーリー(3/3)

モン:
「『第五章  対決』ってのは人間達の対決と天人対悪魔の対決の両方なんですね」
佐藤:
「まさにその通りです。人間達の方はおとりの『武器』を巡って『平民グループ』と『黒シャツ隊』の決戦。『教会』は一気に『漁夫の利』を狙う。しかし、それはクレージュの意を受けたグッチにより粉砕され、公国には王家と、無防備の国民が残される。王家の安泰は必至ですね」
モン:
「それにしても、金塊と『アルセーヌ・ルパンの手紙』、それに『クレージュの演説』と言う連携プレーは見事でしたね」
佐藤:
「何と言っても、この作品の最大の見せ場。いままで育てたものを一気に収穫する場面ですから」
モン:
「でも、民衆が余りにも簡単に服従してしまったように感じましたが」
佐藤:
「きっと、グッチが民衆に化けて、世論を操作したんでしょう。クレージュのカリスマも有ったでしょうが」
モン:
「そして、クレージュとグッチの感動の対話のシーンですね。」
佐藤:
「(笑)丘の上ってのがまた意味深ですね。そして、ここはもう、カリ城のラストシーンのイメージです。『行ってしまうの?』とかね」
モン:
「クレージュとグッチはここで、尊敬と友情に結ばれたと考えて良いんですか」
佐藤:
「デーモンの攻撃を受ける前ではまだ50%程度と考えています。ネズミにされたグッチをクレージュが決死で助けようとした時点で、二人は完全に『調和』と言うか『浄化』したと考えています」
モン:
「デーモンって、ピッコロ大魔王みたいな感じですね」
佐藤:
「もう、この辺はドラゴンボールとビックリマンの世界です」
モン:
「で、佐藤上人の登場となるんですが」
佐藤:
「(笑)あの人は宮崎アニメの台詞を言う為に来たようなもんです」
モン:
「この辺は連発でしたね。『これは戦争なのだ。既にお前達は破れた。それを忘れるな。』(コナン)『けっ!サタンは何度でも蘇るさ! サタンの力を欲しがっているのは、他な らぬ人間だからだ』(ラピュタ)『そうかもしれない。だが、お前達は勝てない。決して! いずれ分かるだろ う』(コナン)『それでは来るがいい。見せてあげよう! 私の本当の力を』(ラピュタ)『バルス!』(ラピュタ)。でも、上人が喋るシーンはもう無いんですね。グッチに天使の方が向いているとか」
佐藤:
「前にも言いましたが、要は『男は黙って・・・』と言うことですね。大体、天人がおしゃべりだなんて、見たくないですよ」
モン:
「最後の『第六章  エピローグ』ですが、これがプロローグと同じ始まりなんですね」
佐藤:
「(笑)こう言うのが好きなんですよ。終わりは始まり。輪廻の世界です。」
モン:
「今までとは打って変わって、ロマンチックな雰囲気でしたね」
佐藤:
「プロローグでは、サタンとデーモンが出てきましたが、エピローグでは彼らが消え、代わりにクレージュ以下王家の連中が登場しました。星も、戦いの星=火星が消え、グッチの星が出てきました。これはまさに作品の内容を象徴的に表わしたものと言えますね」

14.感想(1)

モン:
「今回から、私のグッチの感想を基に、色々議論して行きたいと思います」
佐藤:
「(笑)楽しみというか、正直な所、恐いなあ」 (作者: こんな分裂症的な企画が長く続くわけが無い)
モン:
「この作品って、一種の冒険小説なんですね。でも、いわゆる冒険小説と言うと、コナンみたいな元気な男の子が出てきて、悪漢相手に大暴れするってのが、相場だと思うんですが、これはそうではない。女が主人公ですからね。クレージュにしてもグッチにしても。王子様ってのがいない冒険小説なんだと言うのが、まず感想ですね」
佐藤:
「コナンとかパズーとかピーターパンとかいますけど、今の時代じゃ、過去の存在なんじゃないですか。つまり、女性が闊歩している時代では。男の暴れる場所が無い。その『プレゼンス』を示す場所も必要性もなくなっている。完全にモノセクシャル化しているんですね。だから、グッチを王子様と考えれば事が済むんです」
モン:
「それが女性の自立なんですか。女性は王子様を必要としないと言うのが」
佐藤:
「そうです。もう、自分で全部やって行ける。未だに王子様を期待しているのは、言うなればシンデレラシンドロームでしかないと思いますが」
モン:
「たとえシンデレラシンドロームでも、そう言った願望は必ず有ると思います。その感情を無視するのは、本当の自立ではないと思いますが」
佐藤:
「そうかも知れません。でも、作品の中では最後はシンデレラシンドロームに決別出来たんではないですか」
モン:
「決別出来てないんじゃないですか。たとえ、グッチは星となっても、それに対する感情は変わらないと思いますが。確かに作品の中ではグッチは王子様役なのかも知れませんが、同性に対する感情と異性に対するそれは本質的に違うと思います」
佐藤:
「同性の場合は共鳴し易いのかも。異性の場合は距離が有るんじゃないですか」
モン:
「そもそもの立場が違うと思います。女性と男性では。結局、いくらモノセクシャル化しても、男性は王子様としか生きられないんじゃないかと思います。グッチは王子様役だが、あくまで女性なんだ。つまり宝塚の男役の女性なんだなって」

15.感想(2)

佐藤:
「そうすると、王子様が出てこない冒険小説は違和感が有りますか?」
モン:
「自立かどうかは別にして、結構楽しめました。その時は別に気にもしませんでしたが、今まで対談をやって、結構シリアルな内容も含んでいるんだなあって思うようになりました。それにしても、世界制覇ネタが好きなんですねえ」
佐藤:
「小さい時から好きでしたね。で、その頃は『絶対俺は世界の王になるんだ』って信じていたから恐ろしいですねえ。でも、大きくなると、そう言うものにはなかなか成れるもんじゃないんだって事がやっと分かってきまして・・・。自分じゃ出来ないもんだから、こういう所でうさ晴らしをしているんですね」
モン:
「男の人ってのは、どうして世界制覇が好きなんでしょうねえ。レプカにしても、ムスカにしても」
佐藤:
「やっぱり自分の存在感を示したいと考えているんじゃないですか?」
モン:
「でも、他の方法が幾らでもあるでしょう。わざわざ世界制覇を選ばなくたって」
佐藤:
「私が思うには、これは歴史の影響だと思うんですよね。例えば、世界史を読めば、アレキサンダー大王がどうしたとか、ローマ帝国とか、ジンギスカンとか、ヒトラーが出てきますよね。日本史じゃ、大したのはいないが、天才織田信長とか出てきますよね。これって子供にとっても凄いショックなんですよね。自分が死んだらこの様に名が残るだろうか。いや、誰も覚えちゃいない。だったら、自分も死んだ後まで名を残したいって考えるんですよね。『トラは死して皮を残し、人は死して名を残す』ってやつですね」
モン:
「相当影響されたんですか?」
佐藤:
「ほとんど完璧に(笑)」
モン:
「私が思うには、単なる男のわがままなんじゃないですか。何でも自分の思う通りやりたいとか。世界制覇すれば、そう言う事が出来るだろうって。でも、独裁者ってのは結局寂しく死んで行くんじゃないですか。側近はおべっかばかりで、不信感の中で。だから、一体何が残るんだろうなって。名前と膨大な死だけ。結果的に満足は無いんですよね。どちらかと言うと制覇している過程が目的なんじゃないかって考えたりします。つまり、既成の物をぶっこわすと言う。結局男の人は破壊衝動の塊なのかなって考えたりします」

16.感想(3/3)

佐藤:
「次はどの様な作品を読みたいと思いますか?」
モン:
「佐藤作(笑)ではもっと明るいのが良いですね。深読み出来るのも良いが、こうもっと単純な、、単純なんだけど明るいってのが良いですね。『内面小説
「エフタルの黄昏」』とか、『グッチ』もそれなりの人が、それなりに読めば面白いが、『暗い』のは否めませんね」
佐藤:
「やっぱり、エフタルも暗かったですか?」
モン:
「そりゃあねえ・・・」
佐藤:
「以前に比べれば随分明るくなったなあと、自分では思って居るんですがね」
モン:
「ソーですか・・前のはそんなに酷かったんですか?」
佐藤:
「暗いの南野。もう10年以上前に書いたのなんか、最終戦争物で最悪。サワリだけ、聞きたいですか?」
モン:
「(嫌そうな顔で)・・・・まあ」
佐藤:
「・・・選挙で合法的に『日本第2帝国』が誕生したんです」
モン:
「また、ナチスですか!?」(呆れかえった様な顔)
佐藤:
「で、そこでは世界制覇をもう一度とばかりに、核兵器を封じる為のビールス兵器を開発したんです。なぜ核兵器を封じれるかは言いませんが」
モン:
「はあ・・・」(どうでも良いと言う様な顔)
佐藤:
「で、太平洋戦争で失った旧領土の回復を宣言して、世界戦争になるんです」
モン:
「メチャクチャだなあ、それ」
佐藤:
「で、超大国は日本を物理的に滅ぼそうとするが失敗して、自分の方が先に滅亡するんです。でも、放出された膨大な放射能のために地球が絶滅するのは時間の問題。ラストシーンは、老人が海を見おろす断崖の上から、真っ赤な朝焼けを見送る、とまあ、こんな感じですね。実際はだいぶ違うが」
モン:
「はああ、アレキサンダー・ケイより暗いんじゃないですか。『浄化』もなさそうだし」
佐藤:
「明るいと言うとメルヘン物とか・・」
モン:
「そうそう、ファンダジーとか、童話風の物とか」
佐藤:
「そう言うのよりも、こう、心理をえぐる様なものも良いんじゃないですか?」
モン:
「だから!それは暗いでしょう!」
佐藤:
「(笑)まあ、冗談はさておき、そうですね。中国古典文学か、中国史書あたりを基礎にした様なのも良いかな。得意分野だし。冒険、野心、葛藤、友情、裏切り、深慮遠謀、大戦略、権謀術数の限りを尽くし燃え上がる男たちのドラマ! なんちゃって」
モン:
「おおー!『三国志』とか『水滸伝』の世界ですね。結構面白そうじゃないですか。『女の自立』の次に来るのは、『男の復権』て読みですね」
佐藤:
「良いでしょ」
モン:
「いつから始めるんですか?」
佐藤:
「気が向いたらね。きっと、来年当りじゃないかな。今年は『魔女宅』と『ナウシカ5巻』で忙しそうだし」
モン:
「そうですか、まあ、気が向いたら書いてみて下さい。期待してますから」
佐藤:
「まあ、さっき出た童話風の小品なら書くかも知れませんがね」
モン:
「そっちの方が面白いかなあ」
佐藤:
「おいおい」
モン:
「(笑)えーと、次期作品の話題も出たことですし、話題も一巡したようですので、じゃあ、そろそろこの辺でおしまいにしたいと思います。良いですよね。では、どうも長い時間、有難うございました。」
佐藤:
「・・・また会えるよね!」
モン:
「会えますとも!!必ず!」
                           おしまい
EHF41721 佐藤

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