宮崎アニメと兵器ネタの深い関係 その2
by 佐藤クラリス (PC-VAN宮崎駿ネットワーカーFC)
2000年10月05日アップデート → メールアドレス変更
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宮崎アニメと兵器ネタの深い関係 その2(前回までの粗筋)
宮崎アニメに出てくる兵器と云えば、
陸上では、戦車(ナウシカ、ルパンなど)
海上では、巨大戦艦(名探偵ホームズ)
海中では、潜水艦(名探偵ホームズ)
空では、戦闘機に飛行船
(コナン、カリ城、ナウシカ、ホームズ、ラピュタ、紅の豚など)
…とまァ、尽きないワケですが、特に戦車と飛行機には気合が入っている様です。
一方、戦艦と潜水艦はちょっと手薄です。で、ここを強化すべくネタ振りをしちゃおうと。(^_^)
(前回までの粗筋)つまり、★その1
(一部、データを追加しました)
Winds Talk
9040 98/11/22 宮崎アニメとナチスドイツ軍兵器の親密な関係(^_^;) by佐藤
一見、何気ない名前なんですが、実はこう云った歴史が有ったりすると云うのが「濃い」ですね。(^_^)
ドーラ
グスタフ
口径80cm列車砲
クルップ社製
名称:80cmK(E)
武装:80cmL/40
射程:37Km(7.1t徹甲弾)、48Km(4.8t榴弾)
全長43m、全幅7m、全高11.6m、総重量1500t
運用要員:約4000人
愛称の由来:設計者エーリッヒ・ミューラーの妻、ドーラより。
ヒトラーは重グスタフと呼称(グスタフ・フォン・ベーレン&クルップより)
カール
口径60cm自走型攻城臼砲(正式名称:040号兵器器材)
ラインメタル社製
全長11.37m、全幅3.16m、全高4.78m、重量124t
射程:6.8Km(2.17tベトン徹甲榴弾、1.70t軽ベトン徹甲榴弾)
54cm臼砲(041号兵器器材)の場合は、10.5Km
愛称の由来:担当のカール・ベッカー将軍
6台の各愛称は、アダム、イブ、トール、オーディン、ロキ、ジウ
ギガント
グライダー輸送機
メッサーシュミット社製
名称:Me321
全長28m、全幅55m、全高10.15m
貨物積載量:27t
曳航はHe111Z。後にエンジン付きのMe323
ゴリアテ
リモコン式小型搬送車
名称:SdKfz303
全長1.63m、全幅0.91m、全高0.62m、重量430Kg
爆弾積載量100Kg
クルップ社
風の丘
5283 98/ 2/26 Re:5282 テオさん、どうもです。クルップと宮崎アニメby佐藤
> 更に、宮崎さんの趣味的漫画である「雑想ノート」の「ハンスの帰還」には
>「4号戦車」(PanzerkampfwagenIV)が登場。これもクルップ社製です。
>
> まァ、元々は一九世紀初頭に創業した(創業者はAlfred Krupp)ドイツの製鋼
>業者さんですが、砲身を全て鋼鉄で造った最初の砲であるクルップ砲を発明。
>代を重ねるに従って事業を拡張、第一次、第二次世界大戦では世界有数の軍需
>産業として、その名を恣にしたワケですね。戦後は連合軍の管理下に置かれた
>そうですが、当時の西ドイツの再軍備によって、復活したそうです。
Winds Talk
5087 94/ 3/21 Model Graphix>ドイツ600m/m臼砲KARL実戦配備完了 by佐藤
かつて、口径800m/m列車砲「ドーラ」、600m/m臼砲「カール」が有ったそうですが、今回、砲兵大将カール・ベッカー開発の器材040通称カールを実戦配備しました。(^_^) (ハセガワ 1/72 ミニボックスシリーズNo.32)
しっかし、重量120トンと云う世界最大の自走砲だけあって、実に巨大です。それにも増して感心したのは関係車両の膨大さですね。鉄道で砲を運ぶ為には、専用貨車2台を使用して吊り下げます。自動車で運ぶ場合は分解して移動用トレーラーに載せて運びます。砲弾は4号砲弾運搬車と云うのが必要になります。車両だけでもこれだけ必要になるのですから、関係車両を含めた実際の整備・運用にはどれ程膨大な人員が必要だったか想像も出来ません。きっとハンスの様な人間が無数に群がってやったのでしょう。正に「整備士によって成し遂げられたドイツ軍の栄光」と云う奴ですね。
所で、このカールは試作型1両、量産型6両が造られ、各々の砲には愛称が付いている様です。例えば3号車は「Thor(北欧神話の雷神。ドイツ名:Donar。銀英伝のファンの方にはトゥール・ハンマーと云う名でお馴染みですね)」、5号車は「Loki(ローキー。北欧神話の火焔・破壊・邪悪の神)」、6号車は「Ziu(ツィウ。古代ゲルマン神話の軍神Zeus。所謂ゼウスですね)」ハセガワのキットでは、6号車で「Thor」となっていましたので、これは間違いでしょう。Model Graphix Vol.94の120ページからと132ページ辺りを見る限りでは、その様です。
Model Graphix Vol.113 3月号73ページを見ると、ドーラも出ているし、Gustavと云う名のカールも出ているので、ついでに口径1600m/mのKlarissin(クララ会修女=アッシジの聖フランシス尼僧団の尼僧)が有ったらいいなと。(^_^) 弾頭は勿論「美少女爆弾」だ。「一発でも世界を滅ぼす事が出来るのだ」(開発のブライアック・ラオ博士談)射程は1000メートルで十分だな、何処に射とうと結果は同じだし。(^_^)
Winds Talk
7065 96/10/ 5 書籍>ENCYCLOPEDIA OF GERMAN TANKS OF WORLD WAR TWOby佐藤
(株式会社大日本絵画,ISBN 4-499-20533-6 C0049 P4200E)
近くに出来た書店を観に行ったら、置いてあったので、小野不由美「図南の翼」と一緒に買ってしまいました。(^_^;)
宮崎監督の愛読書(^_^) と云う事で、「宮崎駿の雑想ノート」(株式会社大日本絵画,ISBN 4-499-20602-2 C0079 P2300E)の107ページにも登場していますね。お馴染みの4号戦車H形(Panzerkampfwagen IV Ausf H)は勿論、ドイツ軍が使用した鹵獲敵国車両とか、60cm及び54cm(040式及び041式)自走式攻城用臼砲(2種類の砲身は交換可能)、通称 Karlなんか、イイですね。(^_^) 因に、040式及び041式は、1号砲がアダム、以下、イブ、トール、オーディン、ロキ、ジウとなっています。(ふ、最初がアダムってのがミソですね。(^_^) )
あと、結構ショックだったのは、ドイツ機甲師団群の戦力の薄さです。何と云っても、電撃戦(Blitz Krieg,1940/05/10〜06/04)で西欧の大軍を完膚無き迄に叩き潰したのですから、さぞや強力な戦車が無数に有ったのではと想像しちゃいますが、実は戦闘用戦車は僅か533両しか無かったっ!…そうです。(装甲車両総数は5420両)正に「戦術の勝利」だった様です。西欧の連中の油断ぶりと、更に、何度も進撃停止命令を出したヒトラーの行動が疑問だったのですが、これを観ると当然と云う気がします。これじゃあ誰もドイツの圧勝を予想出来るはずがない。逆にその隙を突いて敵をパニックに陥れた戦術と、無線による戦車群の連携運用こそ賞賛に値すると云えるでしょう。ま、外から観ると無謀と紙一重ですが、ハインツ・グーデリアンには必勝の自信が有ったのでしょう。
ただ、問題はその後で、ドイツは戦車の大量生産の必要性を感じていなかった(^_^;)様で、ソビエトにボロ負けしてからやっと大量生産に着手した様です。でも、生産量の差は歴然。電撃戦当時、ソビエトは既に2万両近くの装甲戦闘車両を保有しており、終戦間近、ドイツが8万9千両造っている間、ソビエトは12万5千両造ったそうです。ソビエトは「戦車の数の多い方が勝ちっ!」と考えていたのかも知れません。(^_^)
それは正しい様で、最初からティガーが5万両位有れば(^_^;)ドイツはソビエトに圧勝していたかも知れない。
宮崎アニメと兵器ネタの深い関係 その2(酸素魚雷)
名探偵ホームズ「海底の財宝」は、イギリス海軍の新兵器、潜航艇がモリアーティー教授一味に盗まれ、ライサンダー大佐が引き上げた海底の財宝を強奪するために使われると云う話でした。
特に印象的だったのは、テムズ川に進出したイギリス海軍の巨大戦艦を魚雷一発で沈めると云う所だったと思います。
ものの本によりますと、最初の魚雷はアメリカ合衆国の独立戦争当時、アメリカ人デビット・ブッシュネルが作ったものだそうです。潜水艦の原型と云える「タートル」と云う船に爆薬を搭載したものだそうです。無人の特攻艦みたいですね。彼はその爆薬を「トピードー・エレクトリカス」(シビレエイの一種)と名付けた事から、以来、水雷=トピードーとなったそうです。
さて、1910年頃、魚雷にピンチがやってきました。各国の巡洋戦艦の速度が速くなった事です。魚雷に要求される仕様は雷速46ノット(時速約85Km)以上、射程は出来るだけ長く…です。
当時の魚雷は石油を燃やした高温高圧ガスが動力源でした。(空気魚雷)
よって、決め手は如何に大量の空気を小さなスペースに圧縮して使うか…に掛かっていました。
基本的な疑問が浮かびます。空気ではなく、純粋な酸素を使えば良いではないか、と。
しかも排出する二酸化炭素と水蒸気は全て海中に溶けてしまうので、雷跡は殆ど出ず、海上から探知する事は困難となり、「恐るべき兵器」の条件を満たしています。
当然、各国の軍もそう考えて開発を行いましたが、純粋な酸素を燃焼に使うのは実に危険で、各国の開発は全て失敗に終わっていました。唯一イギリス海軍が実用配備の実績を持っていましたが、数回の爆発事故を起こし、結局破棄されていました。
しかし、必須の物ならば努力と根性で突破する日本海軍は、文字通り命賭けで開発を行い、1931年頃、酸素濃度60%の酸素魚雷を完成させました。
雷速40ノット、射程20Km。
海軍部内ではこれで十分との意見が大半でしたが、1931年に艦政本部水雷部主任に着任した岸本鹿子治大佐は、アメリカ海軍殲滅の兵器はこれしか無いと、100%酸素魚雷の開発を強力に主張し、軍務局長は「人を殺さない条件付きならば」と云う事で開発を許可しました。
ついに1940年、93式魚雷(最初の実験に成功した昭和8年が、皇紀2593年)として制式化しました。
直径61cm、全長9m、雷速50ノット、射程20Km、炸薬量500Kg、重量2800Kg
93式3型
直径61cm、全長9m、雷速40ノット、射程25Km、炸薬量800Kg、重量2800Kg
他国の魚雷性能は、雷速50ノットでも、射程4Km、炸薬量300Kg止まりなので、全くダントツの性能となっています。この魚雷に当たると、重巡でも二つ折りになって轟沈してしまう程です。戦艦は良くて大破、下手をすると沈没してしまう威力です。
名探偵ホームズでは、それほど大型の魚雷でも無いのに、戦艦を楽勝で撃沈していますが、戦艦の装甲が薄かったのかな?
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