羽根色遺伝の基礎知識
野生に住んでいる小桜インコは羽根色が緑で、赤い額、ピンクの胸、腰は青く尾羽は青やオレンジ色でとても美しいエキゾチックな色をしています。この野生の小桜インコから、私たちがよく見かけるタイガーやブルーなど、野生のいろとは異なった羽根色の鳥がなぜうまれてきたのでしょうか?またこの色変わりは親から子へとどのような過程をへて伝えられていくのでしょうか?ここでは、小桜インコの羽根色がどのように伝えられていくのかについて簡単に説明いたしました。参考になれば幸いです。

まず、鳥の遺伝情報は染色体の中の遺伝子によって伝えられ、それは私たち人間の
場合と同じです。
鳥の色変わりには、色々な遺伝子が関係していますが、遺伝子は常に2本一組です。
一本が父親、もう1本が母親に由来するものです。
私たちがよく「お父さんに似ている」とか「お母さんに似ている」といわれるのも
このためです。
両親から子へ伝えられる遺伝子は、それぞれに2つの性格が1つのペアになって
存在していて、ペアになっているもの同士は、対立しているといわれます。
このうち、常に優位な立場をとっているのが優性形質、優位な立場をとる性質の
陰で隠れている(劣位)のが劣性形質です。

優位な立場をとる遺伝子を普通大文字で表します。
劣位な立場をとる遺伝子を普通小文字で表します。

ここで、実例を見てみましょう。

(例1)劣性遺伝

小桜インコのノーマル色は、優性形質を表す(Y)で表されます。
ノーマル色を表す優性形質の陰で隠れているの劣性形質は(y)で表されます。
(Y)は黄色の色素を作る性質を持っています。
(y)は黄色の色素を作ることができません。

ノーマル色に関しての遺伝子もやはり2本で一組なので、
遺伝子は両親から受け渡されたときに、次のような組み合わせが考えられます。
遺伝子の組み合わせを表すときは(お父さんからの遺伝子、お母さんからの遺伝子)
と書き表します。

父親から(Y)、母親から(Y)をもらうと子は(YY)
父親から(y)、母親から(Y)をもらうと子は(yY)
父親から(Y)、母親から(y)をもらうと子は(Yy)
父親から(y)、母親から(y)をもらうと子は(yy)

以上の4組の組み合わせとなります。
このうち(Yy)と(yY)とは同じですから。
組み合わせとして3種となります(YY)(Yy)(yy)

次にこの組み合わせの遺伝子が、どんな羽根色を意味しているのか
考えてみましょう。

(YY)を持つ子は、両親から優性形質をもらっているため、ノーマルとなります。
(Yy)を持つ子は、片方の親から優性形質をもらっているため、ノーマルとなります。
(yy)を持つ子は、両親から優性形質の(Y)をもらっていませんので、優性形質があるため
隠れていた、(y)の劣性形質がやっと羽根色に現れて来ます。
この(yy)の色は、くすんだブルーです、ブルーと言うよりは、緑がかった
ブルーと言った方がいいでしょう。いわゆるブルーチェリーです。

このように、優性形質を示す遺伝子が1本でも存在すると、
隠れていた劣性形質が現れず、劣性形質に羽根色の変化をもたらす性質がある場合を、
劣性遺伝と言います。
小桜インコの色変わりは劣性遺伝が多いです。

(例2)優性遺伝

次に、人気の高いバイオレットについて考えてみましょう。
バイオレットは、正しくはデニッシュバイオレットと呼ばれます。
優位の形質を示すのは(V)劣位の形質を示すのは(v)です。
(V)は、バイオレット色を作ります。
(v)は、バイオレット色を作りません。
この場合も次のような組み合わせが考えられます。

父親から(V)、母親から(V)をもらうと子は(VV)
父親から(V)、母親から(v)をもらうと子は(Vv)
父親から(v)、母親から(V)をもらうと子は(vV)
父親から(v)、母親から(v)をもらうと子は(vv)

以上の組み合わせが存在しています。
この場合も、先に挙げたのと同じように、
(VV)(Vv)(vv)の3種があります。
次にこの組み合わせの遺伝子が、どんな羽根色を意味しているのか
考えてみましょう。

(VV)を持つ子は、両親から優性形質をもらっているため、きれいなバイオレット色となります。
(Vv)を持つ子は、片方の親から優性形質をもらっているため、羽根の一部がバイオレット色です。
(vv)を持つ子は、両親から優性形質の(V)をもらっていませんので、バイオレットになりません。

このように、劣性形質しか持たない場合は羽根色に変化が現れず、優性形質を持った場合に
羽根色に変化が現れ、それも1本持つ場合と、2本持つ場合とでは差が出る場合の遺伝を
優性遺伝と呼んでいます。
(人などでは、1本とか2本の区別はあまり見られませんが、
小桜インコの場合には、優性遺伝の場合遺伝子が何本存在してるのか重要のようです。)
優性遺伝は少ないのですが、オレンジフェース、ダークなどが優性遺伝です。

小桜インコの遺伝はほんとうはこんなに簡単なものではなく、
実際には沢山の遺伝情報が存在しているため、遺伝子の組み合わせ方によっては
まったく別の色になったり、遺伝子が途中で切れ、別の遺伝子とくっついてしまうため、
異なった色になってしまったり、期待したはずの色が出なかったりするのですが、
上に述べた優性遺伝と劣性遺伝の法則が基礎になっていることは明らかです。
これが有名なメンデルの遺伝の第一の法則です。