5月6日  「神の国の実現」  ルカによる福音書4章16節-30節

16イエスはお育ちになったナザレに来て,いつものとおり安息日に会堂に入り,聖書を朗読しようとしてお立ちになった。

17預言者イザヤの巻物が渡され,お開きになると,次のように書いてある個所が目に留まった。

18「主の霊が私の上におられる。

貧しい人に福音を告げ知らせるために、

主がわたしに油を注がれたからである。

主がわたしを遣わされたのは、

とらわれている人に開放を、

目の見えない人に視力の回復を告げ、

圧迫されている人を自由にし、

19主の恵みの年を告げるためである。」

20イエスは巻物を巻き,係りの者に返して席に座られた。会堂にいるすべての人の目がイエスに注がれていた。

21そこでイエスは,「この聖書の言葉は,今日,あなたがたが耳にしたとき.実現した」と話し始められた。

22皆はイエスをほめ,その口から出る恵み深い言葉に驚いて言った。「この人はヨセフの子ではないか。」

23イエスは言われた.「きっと,あなたがたは,[医者よ,自分自身を治せ]ということわざを引いて、[カファルナウムでいろいろなことをしたと聞いたが,郷里のここでもしてくれ]と言うにちがいない。」

24そして、言われた。「はっきり言っておく。預言者は,自分の故郷では歓迎されないものだ。

25確かに言っておく。エリヤの時代に三年六ヶ月の間,雨が降らず,その地方一帯に大飢饉が起こったとき,イスラエルには多くのやもめがいたが、

26エリヤはその中のだれにも遣わされないで,シドン地方のサレプタのやもめのもとにだけ遣わされた。

27また,預言者エリシヤの時代に,イスラエルにはらい病を患っている人が多くいたが,シリヤ人ナアマンのほかはだれも清くされなかった。」

28これを聞いた会堂内の人々は皆憤慨し、

29総立ちになって,イエスを町の外へ追い出し,町が建っている山の崖まで連れて行き,突き落とそうとした。

30しかし,イエスは人の間を通り抜けて立ち去られた。

主イエスの時代のイスラエルは外国の植民地となり,国内には無力感が充満していた。そのような状況の中で主イエスは,故郷のナザレで会衆を前にしてイザヤ書の言葉を引用し,神は決して彼らを見捨てず必ず救いに来てくださるということを教えられ,主イエスが来た時に救いは実現したと宣言した。無力感に打ちひしがれていた会衆は主イエスを救い主として褒め称え,「恵みの年」の実現として希望を抱いた。

しかし,主イエスは不思議なことに会衆の期待を裏切るような発言により,会衆を憤慨させ崖から突き落とされそうになった。ただ,この会衆の豹変こそ人間のエゴイズムの象徴である。

主イエスがこのような発言をした背景には,当時の神による「恵みの年」の思想には,報復の概念が含まれており,このような思想が含まれた神の国は,所詮人間の仲間意識(エゴイズム)の延長線上にあり,本当の神の国ではないということを教えたいという思いがあった。

主イエスが救い主となる本当の神の国は,すべて神の支配に服し,すべての重荷が取り払われ,仲間意識を脱却して,敵さえも愛する大きな愛により私達が造り変えららるのである。

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