受難週に入りマタイ受難曲,ヨハネ受難曲に耳を傾け,
イエスの受難の物語を自分があたかもそれぞれの場面に
いるような状況で敬虔な思索の一時を過ごした。
この機会に、バッハの主としてマタイ受難曲について調べた事を
纏めてみました。
正確を期する為に,できるだけ資料の表現をそのまま引用しましたが、
資料については,その都度引用個所を示さず最後に纏めておりますので
ご了承下さい。
マタイ受難曲は,1727年の受難週聖金曜日に初演されました。
ヨハネ受難曲は,バッハがライプチッヒに移った翌年,1724年
同じく聖金曜日に初演されております。
バッハは,1685年,中部ドイツのチューリンゲン地方の小都市アイゼナハ
に生まれましたが,ここはかってルッタ-も学び,郊外のバルトブルグ城で
新約聖書のドイツ語訳に励んだと言うルッタ-派の重要な拠点でありました。
又,ライプチッヒもルッター派神学の牙城でありました。
勿論,バッハ一族が中部ドイツを代表する作曲家・オルガン奏者であり,
バッハもアルンシュタット、ミュールハウゼン、ワイマール、ケーテン
それぞれの地で教会オルガニストを生業として来たことは
必然的にキリスト教信仰が日常生活の中心にありました。
「バッハは,教会音楽家としては厳格なルッター派プロテスタントの
信仰の真中に生きていた。彼のオルガン曲や教会カンタータ,受難曲は、
まさに彼自身が勤める教会の礼拝の中で息づき,牧師と会衆と共に
神をたたえる{音による宗教画}だったのである。
そしてまさに,キリスト教と音楽とが不即不離のかけがえのない
結びつきのうちに展開してきた長い伝統の終着点に
位置せざるを得なかった,というバッハの宿命が,
彼の最高傑作マタイ受難曲に,
彼に至る伝統の総合という性格を与えたのである。」
「ヨハネ受難曲は福音書にしたがって,
ヨハネのキリストは崇高な静けさと超越的な性格が与えられているが,
マタイは,バッハに彼自身の熱烈な<イエスの愛>を表現することを許した。
ここには,人間と神のあいだの超えがたい溝は存在しない。
主はその苦しみのうちで人間に近づき,人間も主と共に苦しむ。」
「この作品においてバッハは,まさにその全存在を賭けて
<キリストの受難>と向き合っている。
バッハは彼ら(裏切ったユダ゙,キリストを3度知らないといったペテロ,
節操のない群集など)とともに、実は自分もまたユダ゙であり,
ペテロであり,群集の一人ではなかろうか,
という切実な問いかけを自らに向けているのだ。」
この反省は,キリスト教の信者であろうと無かろうと、
マタイ受難曲を聞く人のすべての人が同じ思いを持つのではないでしょうか。
「ところが今や,日本でも,例えばドイツの合唱団が来演して,
多彩なプログラムを紹介しようとしても,
聴衆の要望が圧倒的に<マタイ受難曲>なので,
短い滞在期間に毎晩<マタイ受難曲>を演奏する,という程である。
して見ると,「受難曲」を愛する気持ちというのは、ヨーロッパだけではなく、
人間にある程度普遍的なものと考えた方が良いのかも知れない。」
「ここにおいて<マタイ受難曲>は最もキリスト教的な時代の
最もキリスト教的な作品でありながら,時代を超え宗教を超えて,
あらゆる人間の意識の深奥を揺るがさずにはいられない<普遍性>を
獲得しているのである。」
(5)マタイ受難曲或いはバッハに関するホームページの多さには
驚きとともに納得できます。(英語のYahoo!での検索)
そのなかで、http://www.prs.net/bach.html
http://www.jsbach.org/244.htmlをご紹介します。
前者は,バッハの(その他の作曲家の作品もあります)曲をmidi化したもので
その範囲の広さには驚きます。
このホームページのBGMは、出だしの合唱
「来れ,娘たちよ,われと共に嘆け,
見よ花婿を,みよそのきみの小羊のごとくにいますを。」
をそこから拝借しました。マタイ受難曲すべてが聞けますので,
関心のある方はアクセスして下さい。
後者は,幅広いバッハ関連の資料で他のリンクもあります。
マタイ受難曲のCDリストはこのページをベースにしました。
それぞれのCDの評論も視聴者から寄せられております。
英語ですが,日本語をご希望の方は,このホームページのアドレスまで
ご連絡下さい。翻訳致します。
(6)PASSIONについて
受難曲はPassionと言います。
普通の辞書で引くと情熱,激情,熱中等とあり最後のほうで
<the Passion>でキリストの受難とあります。
手元の英英でもそうでした。
研究社<英語派生語活用辞典>によると
「Passionの語源はラテン後のpatī(to suffer)-悩む-
であるが,-苦しい気持ち-の意から-激しい感情,情熱-の意へと
転化していった」とあります。
研究社<羅和辞典> patī->patior=(1)苦しむ,耐える
pasiō=(1)苦悩(2)キリストの受難(3)情熱
そこで又,O.E.D(Oxford English Dictionary)を調べました。
さすがに最初にThe suffering of painとあり,
1175年に英語として使用されたとあります。
即ち英語のpassionは,そもそもキリストの苦しみ
の意味で使われ始めたわけです。
(7)参考書(日本の書籍)*の著書より引用させて頂きました。
著書名 |
副題 |
著者 |
出版社 |
出版年 |
バッハ |
|
樋口隆一 |
新潮文庫 |
|
J.Sバッハ |
|
辻荘一 |
岩波新書 |
|
バッハ |
大作曲家・人と作品 |
角倉一朗 |
音楽之友社 |
1963 |
バッハ |
魂のエバンゲリスト |
礒山雅 |
東京書籍 |
1985 |
スフィンクスの囁き |
バッハの生涯と作品 |
三宅卓士 |
五柳書院 |
1992 |
*バッハ探求 |
|
樋口隆一 |
春秋社 |
1993 |
*バッハの音楽的宇宙 |
|
大村恵美子 |
丸善ライブラリー |
1994 |
<大作曲家バッハ> |
|
Martin Geck 大角欣也訳 |
音楽之友社 |
1995 |
*バッハ辞典 |
|
礒山雅・他編著 |
東京書籍 |
1996 |
J.Sバッハ |
|
礒山雅 |
講談社現代新書 |
1990 |
ミューズの道草 |
|
樋口隆一 |
春秋社 |
1983 |
バッハの旅 |
|
樋口隆一 |
音楽之友社 |
1986 |
<以下は専門書> | ||||
J.S.バッハ |
生涯と作品 |
W.フェーリクス 杉山好訳 |
国際文化出版社 |
1985 |
バッハ |
その生涯と音楽 |
K.ガイリンガー 角倉一朗訳 |
白水社 |
1970 |
バッハ |
全三巻 |
シュバイツアー 浅井真昭他訳 |
白水社 |
1983 |
バッハ叢書 |
10巻 |
角倉一朗監修 |
白水社 |
1976~ |
原典版のはなし |
|
樋口隆一 |
全音楽譜出版社 |
1986 |
バッハ・カンタータ研究 |
|
樋口隆一 |
音楽之友社 |
1987 |
バッハへの新しい視点 |
|
角倉一朗編 |
音楽之友社 |
1988 |
(7)マタイ受難曲 レコーデイング リスト
(The J.S.Bach Home Pageをベースに作成)http://www.jsbach.org/244.html
番号 指揮者 楽団 録音年 演奏時間 |
1 Leonard Bernstein N.Y.Phil 1961? 2.5h |
2
Stephen Cleobury King's College, |
3
John
Eliot English Baroque |
4
Eric
Ericson Drottningholm |
5
Wilhelm |
6 Sir Georg Solti Chicago Sym 1987 |
7 Paul Goodwin Choir and Orchestra 1995 2h31m |
8
Wolfgang
G Suddeutscher |
9
Nikolaus
Concentus |
10
Philippe Chapelle Royale 1985 |
11
Philippe Collegium Vocale
|
12
Eugen Jochem Concertgebouw Orch. |
13
Otto Klemperer Philhermonia |
14
Otto Klemperer
Philhermonia |
15
Ton Koopman Amsterdam Baroque |
16
Gustav Orchestra La Petite
|
17
Thomanerchor |
18
Rudolf Gewandhaus |
19
Willem Amsterdam Toonkunst
|
20
Karl Stuttgart Chamber Orchestra |
21
Geza Oberfrank Hungarian State |
22
Karl Richter Munchener Bach |
23
Karl Richter Munchener Bach |
24 Helmuth Rilling Stuttgart Kanterchor 1994 2h57m |
25
Hermann Symphony Orchestra
|
26 J. Somary 1992 |
27 Christoph Spering Das Neue Orchester 1992 2h12m |
28
Herbert |
29
Hans Weisbach Gewandhaus Orch. |
30
David Willcocks The Bach Choir& |
31
Mogens Woeldike Vienna State Opera |
|
注:(1)Soloist(マタイ受難曲の有名歌手は省きました。)
5,13,14,28: Dietrich Fischer-Dieskau 6: Kiri Te Kanawa
13,14: Elisabeth Schwarzkopf
(2)16:Authentic Instruments
(3)22,23:広く親しまれている作品
(4)1841年メンデルスゾーンのライプチッヒ演奏による楽譜
上記以外で銀座ヤマノにあるCD;クーゼビッキー(英語盤,Boston),カール.ベーム(Wienna)、ダウス、アーノンクール,小澤征爾(サイトウキネン),鈴木雅明(バッハ.コレジアム),等があります。