マタイ受難曲

受難週に入りマタイ受難曲,ヨハネ受難曲に耳を傾け,
イエスの受難の物語を自分があたかもそれぞれの場面に
いるような状況で敬虔な思索の一時を過ごした。

この機会に、バッハの主としてマタイ受難曲について調べた事を
纏めてみました。
正確を期する為に
,できるだけ資料の表現をそのまま引用しましたが、
資料については
,
その都度引用個所を示さず最後に纏めておりますので
ご了承下さい。

  1. マタイ受難曲は,バッハが最後の居所としたライプチッヒ(ドイツ)で
    彼の人生の最も充実した時期に精魂込めて作曲されたもので
    バッハの作品の最高峰と位置付けられております。
    この頃バッハはライプチッヒの
    4教会の音楽の創作を受け持っており
    毎日曜日1曲の割合で自作の教会カンタータ
    -
    を作曲上演しておりました。
  2. マタイ受難曲は,1727年の受難週聖金曜日に初演されました。
    ヨハネ受難曲は
    ,バッハがライプチッヒに移った翌年,1724

    同じく聖金曜日に初演されております。

     

  3. マタイ受難曲はバッハの死後長らく忘れられていたが,
    1829
    311,ベルリンのジングアカデミー演奏会において
    メンデルスゾーンの手で上演され
    ,
    19
    世紀におけるバッハ復活の大きな原動力になりました。
  4.  

  5. バッハとキリスト教について
  6. バッハは,1685,中部ドイツのチューリンゲン地方の小都市アイゼナハ
    に生まれましたが
    ,ここはかってルッタ-も学び,郊外のバルトブルグ城で
    新約聖書のドイツ語訳に励んだと言うルッタ
    -
    派の重要な拠点でありました。

    ,ライプチッヒもルッター派神学の牙城でありました。
    勿論
    ,バッハ一族が中部ドイツを代表する作曲家・オルガン奏者であり,

    バッハもアルンシュタット、ミュールハウゼン、ワイマール、ケーテン
    それぞれの地で教会オルガニストを生業として来たことは

    必然的にキリスト教信仰が日常生活の中心にありました。

    「バッハは,教会音楽家としては厳格なルッター派プロテスタントの
    信仰の真中に生きていた。
    彼のオルガン曲や教会カンタータ,受難曲は、
    まさに彼自身が勤める教会の礼拝の中で息づき
    ,牧師と会衆と共に
    神をたたえる{音による宗教画}だったのである。

    そしてまさに
    ,キリスト教と音楽とが不即不離のかけがえのない
    結びつきのうちに展開してきた長い伝統の終着点に
    位置せざるを得なかった,というバッハの宿命が
    ,
    彼の最高傑作マタイ受難曲に
    ,

    彼に至る伝統の総合という性格を与えたのである。」

     

  7. マタイ受難曲におけるバッハの姿勢

「ヨハネ受難曲は福音書にしたがって,
ヨハネのキリストは崇高な静けさと超越的な性格が与えられているが
,
マタイは
,バッハに彼自身の熱烈な<イエスの愛>を表現することを許した。
ここには
,人間と神のあいだの超えがたい溝は存在しない。
主はその苦しみのうちで人間に近づき
,
人間も主と共に苦しむ。」

「この作品においてバッハは,まさにその全存在を賭けて
<キリストの受難>と向き合っている。
バッハは彼ら(裏切ったユダ゙
,キリストを3度知らないといったペテロ,
節操のない群集など)とともに、実は自分もまたユダ゙であり
,
ペテロであり
,群集の一人ではなかろうか,

という切実な問いかけを自らに向けているのだ。」

この反省は,キリスト教の信者であろうと無かろうと、
マタイ受難曲を聞く人のすべての人が同じ思いを持つのではないでしょうか。

「ところが今や,日本でも,例えばドイツの合唱団が来演して,
多彩なプログラムを紹介しようとしても
,
聴衆の要望が圧倒的に<マタイ受難曲>なので
,
短い滞在期間に毎晩<マタイ受難曲>を演奏する,という程である。
して見ると
,
「受難曲」を愛する気持ちというのは、ヨーロッパだけではなく、
人間にある程度普遍的なものと考えた方が良いのかも知れない。」

「ここにおいて<マタイ受難曲>は最もキリスト教的な時代の
最もキリスト教的な作品でありながら
,時代を超え宗教を超えて,
あらゆる人間の意識の深奥を揺るがさずにはいられない<普遍性>を
獲得しているのである。」

(5)マタイ受難曲或いはバッハに関するホームページの多さには
驚きとともに納得できます。(英語の
Yahoo!での検索)
そのなかで、
http://www.prs.net/bach.html
http://www.jsbach.org/244.html
をご紹介します。
前者は
,バッハの(その他の作曲家の作品もあります)曲をmidi化したもので
その範囲の広さには驚きます。
このホームページの
BGMは、出だしの合唱
「来れ,娘たちよ,われと共に嘆け,
見よ花婿を
,みよそのきみの小羊のごとくにいますを。」

をそこから拝借しました。マタイ受難曲すべてが聞けますので
,
関心のある方はアクセスして下さい。
後者は
,幅広いバッハ関連の資料で他のリンクもあります。
マタイ受難曲の
CDリストはこのページをベースにしました。
それぞれの
CDの評論も視聴者から寄せられております。
英語ですが
,日本語をご希望の方は,
このホームページのアドレスまで
ご連絡下さい。翻訳致します。

(6)PASSIONについて

受難曲はPassionと言います。
普通の辞書で引くと情熱
,激情,熱中等とあり最後のほうで
the Passion
>でキリストの受難とあります。
手元の英英でもそうでした。

研究社<英語派生語活用辞典>によると
「Passionの語源はラテン後のpat
ī(to suffer)-悩む-
であるが,-苦しい気持ち-の意から-激しい感情,情熱-の意へと
転化していった」とあります。

研究社<羅和辞典> patī->patior=(1)苦しむ,耐える
          pasi
ō=(1)苦悩(2)キリストの受難(3)情熱 

そこで又,O.E.DOxford English Dictionary)を調べました。
さすがに最初に
The suffering of painとあり,
1175年に英語として使用されたとあります。
即ち英語のpassionは,そもそもキリストの苦しみ
の意味で使われ始めたわけです。

(7)参考書(日本の書籍)*の著書より引用させて頂きました。

著書名

副題

著者

出版社

出版年

バッハ

 

樋口隆一

新潮文庫

 

J.Sバッハ

 

辻荘一

岩波新書

 

バッハ

大作曲家・人と作品

角倉一朗

音楽之友社

1963

バッハ

魂のエバンゲリスト

礒山雅

東京書籍

1985

スフィンクスの囁き

バッハの生涯と作品

三宅卓士

五柳書院

1992

*バッハ探求

 

樋口隆一

春秋社

1993

*バッハの音楽的宇宙

 

大村恵美子

丸善ライブラリー

1994

<大作曲家バッハ>

 

Martin Geck

大角欣也訳

音楽之友社

1995

*バッハ辞典

 

礒山雅・他編著

東京書籍

1996

J.Sバッハ

 

礒山雅

講談社現代新書

1990

ミューズの道草

 

樋口隆一

春秋社

1983

バッハの旅

 

樋口隆一

音楽之友社

1986

<以下は専門書>        

J.S.バッハ

生涯と作品

W.フェーリクス

杉山好訳

国際文化出版社

1985

バッハ

その生涯と音楽

K.ガイリンガー

角倉一朗訳

白水社

1970

バッハ

全三巻

シュバイツアー

浅井真昭他訳

白水社

1983

バッハ叢書

10

角倉一朗監修

白水社

1976

原典版のはなし

 

樋口隆一

全音楽譜出版社

1986

バッハ・カンタータ研究

 

樋口隆一

音楽之友社

1987

バッハへの新しい視点

 

角倉一朗編

音楽之友社

1988

(7)マタイ受難曲 レコーデイング リスト
The J.S.Bach Home Pageをベースに作成)http://www.jsbach.org/244.html

番号  指揮者       楽団      録音年 演奏時間

1  Leonard Bernstein   N.Y.Phil      1961? 2.5h

2  Stephen Cleobury  King's College,
                  Cambridge     1994 2h41m 

 John Eliot        English Baroque
   
Gardiner      Soloists      1989 1h57m

 Eric Ericson    Drottningholm 
                Baroque Ensemble  1994 2h8m  

5  Wilhelm 
   Furtwangler    Wiener Phil     1954 2h30m

6  Sir Georg Solti  Chicago Sym     1987               

7  Paul Goodwin  Choir and Orchestra 1995 2h31m

 Wolfgang Gn  Suddeutscher 
  
nenwein      Madrigalchor     1969 3h16m

 Nikolaus      Concentus 
  
Harnoncourt   Musicus Wien    1970 2h54m 

10 Philippe       Chapelle Royale     1985
   Herreweghe            

11 Philippe       Collegium Vocale  
    Herreweghe     Gent        1998

12 Eugen Jochem  Concertgebouw Orch.
           
Amsterdam      19603.5h

13 Otto Klemperer  Philhermonia 
           
Orchestra       1962  3h34m

14 Otto Klemperer   Philhermonia
           
Orchestra       1961 3h45m

15 Ton Koopman  Amsterdam Baroque
            
Orch        1992 3h34m

16 Gustav       Orchestra La Petite
    Leonhardt     Bande        1989 2h52m

17 Thomanerchor 
    Liepzig     Berlin Symphony   1995 4h15m

18 Rudolf         Gewandhaus 
   Mauersberger   Orchestra Leipzig   1977 3h15m
         

19 Willem        Amsterdam Toonkunst 
    Mengelberg    Choir          1939 2h43m

20 Karl Stuttgart  Chamber Orchestra 
    
Munchinger              1965 3h16m

21 Geza Oberfrank  Hungarian State 
             
Symphony     1993 2h43m

22 Karl Richter   Munchener Bach 
               
Orchester    1958 3h

23 Karl Richter   Munchener Bach 
               
Orchester    1980 3h15m

24 Helmuth Rilling  Stuttgart Kanterchor  1994 2h57m

25 Hermann      Symphony Orchestra 
    Scherchen     & Chorus        1953 3h18m

26 J. Somary                 1992

27 Christoph Spering Das Neue Orchester 1992 2h12m

28 Herbert 
    vonKarajan    Berliner Phil.    1972 3h24m

29 Hans Weisbach  Gewandhaus Orch.
             
Of Leipzig    1935 2h26m 

30 David Willcocks  The Bach Choir&
                    ThamesChamber 1979   

31 Mogens Woeldike  Vienna State Opera
              
Orchestrer    1968 3h18m

 

:(1)Soloist(マタイ受難曲の有名歌手は省きました。)

5,13,14,28: Dietrich Fischer-Dieskau   6: Kiri Te Kanawa 

13,14: Elisabeth Schwarzkopf

(2)16:Authentic Instruments

(3)22,23:広く親しまれている作品

(4)1841年メンデルスゾーンのライプチッヒ演奏による楽譜

上記以外で銀座ヤマノにあるCD;クーゼビッキー(英語盤,Boston,カール.ベーム(Wienna)、ダウス、アーノンクール,小澤征爾(サイトウキネン),鈴木雅明(バッハ.コレジアム),等があります。

 

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