讃美歌537番 「わが主のみまえに」
■この讃美歌については,大塚野百合著「讃美歌と大作曲家たち」創元社の第3章”奥野昌綱 日本人最初の牧師”から引用します。
作詞者は,日本人最初の牧師となった奥野昌綱(1823-1910)であるとしています。日本人で最初の牧師になった優秀な人物であり,聖書と讃美歌の翻訳に素晴らしい貢献をした人で,讃美歌の作詞者でもありました。
奥野は,文政6年(1823年)江戸幕府の下級武士の三男として生まれたが, 強烈な個性と抜きん出た才能が認められ上野寛永寺と関係ある奥野家の養子となり,幕府が門跡として迎えた後の北白川宮に仕え明治維新を迎えた。明治4年に宣教師ヘボン(医者でもあり又ヘボン式ローマ字の創始者)の日本語教師となり,又,ヘボンの助手として日本で初めての和英事典の編集と新約聖書の翻訳を手伝った。明治5年,49歳にして横浜日本基督公会でサムエル・ブラウンから洗礼を受け日本で27人目のキリスト者となった。明治11年按手礼を受け小川義綏(ヨシヤス)と共に日本人で初めてのプロテスタントの牧師となった。明治43年88歳で召されるまで3回にわたって日本各地に伝道旅行をした。
奥野昌綱の作詞による現行讃美歌は6篇ありいずれも心を打つ言葉で綴られている歌である。
97番:朝日は昇りて
293:知恵とちからの
323:よしや世のひとの
356:わが君イエスよ
397:やまいの床にも
537:わが主のみまえに
現讃美歌にある「わが主のみまえに」の歌詞は,明治14,15年の讃美歌集を経て明治21年「新撰讃美歌」に採用された時のものと多少異なっている。即ち、「わが主のみまえに よろこびつどいて、」は、当初は「キリストのまえに よろこびつどいて」となっていた。又,曲も『新撰讃美歌』237番「キリストのみまえに」ではBARNBYが当てられていたが、1903年版『讃美歌』454番「わが主のみまえに」で現行のタウナーの曲が配されて,新しい魅力を獲得している。
■原曲はロビンズ(Gurdon
Robins)作詞・タウナー(D.B.
Towner)作曲の
“The Better Land” で、タウナーが編集したHymns
of Faith and Praise
(1901) に収められた。天国を歌ったもので、日本語歌詞とは内容が違う。ワッソンの讃美歌曲目索引(Wasson,
Hymntune
Index)に載っていないので、アメリカではほとんど知られていない曲と思われる。原曲“The
Better Land”の旋律と楽譜についてはここをクリック。
■作曲のDaniel Brink Towner(1850-1919 米国人)は、19世紀米国の偉大な伝道者ムーデイに出会って,彼が創立したムーデイ学院(Moody Bible Institute)の音楽部長になり2000以上の賛美歌を作曲した。なお,Cyber Hymnalという讃美歌サイトにはTownerという曲名はあるがこの讃美歌の旋律ではない。
背景のmidiは新たに作成しました。