讃美歌520番 「しずけき河のきしべを」

■悲劇的な背景を持つ歌。原作者Horatio Gates Spafford(1828-1888)は,ニューヨーク州に生まれ,法律家となった。法医学の教授としてシカゴに居住していた時、同市の大火によって家財の大部分を失い、その後1873年のヴィル・ド・アーヴル号の沈没によって子供たちを失った。彼はよくその災害に堪えて,キリスト教的信従の実例を示した。この歌は彼が2度の災害に遭った直後作ったもので,信頼の調べの高い作である。

■この曲は,BlissがSpaffordの歌詞に作曲したものであるが,今日,米国の代表的讃美歌集には出ていない。福音唱歌集や陸海軍讃美歌集に”Peace”或は”It is well ”(with my soul… おりかえしの「こころ安し,神によりて安し。」の意味。)等の曲名で収録されて,ひろく愛唱されている。

作曲者Philip Paul Bliss1838-1876 米国人)は、福音唱歌(Gospel Songs)作家中の優れた人である。ペンシルバニア州に生まれ、シカゴで音楽を学んだ後、音楽を指導し或は聖歌隊の指揮者として又日曜学校の校長として日曜学校用の歌曲を作った。19世紀項半の米国では、キリスト教の改革運動(大覚醒運動-the Great Awakening-)のうねりの中で19世紀最大の説教家(evangelist preacher)と言われるDwight Lyman Moody1837-1899)が、聖歌歌手(gospel singerIra D. Sankey1840-1908)と組んで全米はもとより英国を始め大陸諸国を巡回伝道し多くの人々を信仰へと導いたが、各地での集会でSankeyが好んで用いた聖歌の一つがブリスの作ったものである。Gospel SongsHymns)のカテゴリーは,MoodySankeyの活躍によって確立されたもので米国讃美歌の第2期黄金時代を形成した。Gospel Songsの特徴としては、福音書の教えを強調した平易、簡素で反復的、庶民的、律動感ある旋律で愉しく歌い易い作品が多い。

Gospelの起源について

英語の讃美歌”hymn”がギリシャ語”hymnos −神々、英雄或は著名人を称えるための歌―”を語源としている様に、ローマ帝国でキリスト教が認知されキリスト教が帝国の内外に布教されていったので国々固有の言葉のなかでキリスト教に関する用語(聖書、礼拝など)は当時のローマ帝国で使用されていたギリシャ語やラテン語がそのまま或は語源として取りいれられていった。教会”church”オルガン”organ”ミサ”mass”司祭”priest”などギリシャ語或はラテン語から英語になった。ところが,God”は数少ない英語のオリジナルで紀元4、5世紀から英国に移住し始めた現在の北ドイツ地方に住んでいたAnglo-Saxon系の神を表わす言葉である。6世紀の終わり頃、教王グレゴリウスが布教の為聖アウグステイヌスを英国に派遣した際、改宗を容易にするためAnglo-Saxon系民族固有の宗教用語を尊重した為といわれる。そして,Gospel”はAnglo-Saxon系の”Godspell”即ち”良き報せ=福音”から来ている。

この曲は,下記から収録しました。

 

背景のmidiは新たに作成しました。