讃美歌392番 「神のみ声は」

この曲は、Welsh,Hymn Melodyとなっており,英国、ウエールズ地方で歌われていた賛美歌が原曲である。392番はウエールズ生まれのウイリアム・ロイドWilliam Lloyd(1786-1852)によって編曲されたものである。賛美歌略解「讃美歌略解」によると、この曲は彼の持っていた手記の歌曲集の中に発見されたとあり、ロイドはウエールズの農夫であったが,生来美声の持ち主で且つ音楽好きであったので、家畜を売買するためにイングランドに旅行する度に,教会に行って会衆の歌う美しい讃美歌を聞き,それを覚えてウエールズの農民達に教え、そのうち自らウエールズ各地方で『歌う会 Singing meeting』を催したりその指導をした。曲名の”MEIRIONYDD”は原曲名ではなく、ロイドが住んでいた地方の郡名”Merioneth”のウエールズ語名に因んだものである。この美しい旋律は,今日広く英米で愛唱され,歌詞も色々なものがあてはめられている。ちなみに275番「強き神の子,朽ちぬ愛よ Strong Son of God、 immortal Love」のメロデイもこの曲を採用している。

■作詞者ジョン・ホームズ(John H.Holmes 1879-1964)はアメリカ人で、ハーヴァード大学を卒業してユニテリアン派の牧師となりマサセッツ州とニューヨーク州の教会で牧会をした。彼は世界平和と社会改造とシオン運動とのために戦い、この歌は彼の信仰と思想とを率直に披瀝したものであると解説にある通り、第1節ではイザヤ書6章8節のイザヤの召命の場面が引用されている。「そのとき、わたしは主の御声を聞いた。『誰を遣わすべきか。誰が我々に代わって行くだろうか。』わたしは言った。『わたしがここにおります。わたしを遣わしてください。』」

■20世紀当初のアメリカは自動車、石油、鉄鋼などの基幹産業の発展と大衆消費時代の幕開けにより大きな経済発展の途上にあったが、一方では労働条件、貧富の格差など影の部分も拡大し社会的諸問題が顕在化しつつあった時代であった。ホームズはこうした社会の底辺にあって苦しみ、虐げられ、絶望感にある人達を救うために,神に「どうかわたしを遣わしてください。弱き我々をあなたの栄光を現すために用いてください」との祈りをこの歌に込めている。

 

背景のmidiは新たに作成しました。