讃美歌294番 「めぐみゆたけき」

アメリカ讃美歌中、最も有名なものの一つである。原作者Joseph Henry Gilmore1834-1918)はボストンで生まれブラウン大学とニュートン神学校を卒業しバプテスト派の牧師となった。以下は,この歌詞を作詞した経緯についてのGilmore自身の告白である。

「ある日,フィラデルフィアのバプテスト教会で詩篇23編の注解をする事になった。もう何回も行った注解だが,この時は”He Leadeth Me”の言葉のところで主の導きに感謝の思いが募ってそれ以上進めることができなかった。当時は、南北戦争の最中で全く暗闇の中にあった。この時、自分は神のお導きを信じ神が導いてくださっているかぎりは,どのように導いてくださっているか,或は,どこに導いてくださっているかは問題ではないという事を実感した。そして,集会の後,自分の確信について友人と語りながら、原稿の余白に自分の思いを書き込んだのである。数年後,説教のためロッチェスター教会に行った時,その時作った自分の詩がWilliam B.Bradburyの作曲で歌われている事を知った。原稿の余白に書いた詩を妻がボストンの出版社に送っていたのであった。」

詩篇23編は、”主はわが牧者なり,われ乏しきことあらじ。主はわれをみどりの野にふさせ,いこいの汀にともないたもう。”で始まるあまりにもよく知られた詩篇である。”いこいの汀にともないたもう”は英語で”he leads me beside quiet waters,”となっている。

作曲者William Batchelder Bradbury1816-1868)若くして音楽の才に恵まれ,バプテスト教会のオルガニストを勤めるかたわら欧州に留学後は歌唱の指導,歌唱教師の指導,歌曲集の出版等にも尽力した。この曲は、”He leadeth me”のために作曲され”AUGHTON”という曲名で1864年発表された。AUGHTONの意味はわからない。翌年,ニューヨークのロチェスターにあるバプテスト教会において1,000人の少年少女合唱団によって歌われたが,蘇の素晴らしさによって,当時Public Schoolで全く無視されていた音楽教育というものの必要性が,とみに認識されだしたといわれる。爾来,Gilmoreのこの歌詞に対して,他の曲は現れず,今日に至るまで,ブラドベリの曲だけが全米で用いられている。ブラドベリは膨大な作曲を残したが,その殆どが,単純でしかも旋律が美しいので,今日での尚広く米国人のあいだで愛唱されている。

 

背景のmidiは新たに作成しました。