讃美歌195番 「いのちの君にます主よ」

■この歌は「教会」の項目に入っているが、本来は平和を求める祈りである。

原作者マトイス・A・フォン・レヴェンシュターン(Matthäus Appelles von Löwenstern1594-1648)はドイツ人で、馬具屋の子として生まれたが、音楽の天分に恵まれ、ドイツ皇帝(神聖ローマ帝国皇帝)フェルデイナンド二世、及び三世の重用を受けた。この歌は30年戦争の終わり頃(1644年)、平和を熱望して作られたもので、作者の意欲が強くあらわれている。30年戦争は、フェルデイナンド二世の治世に始まり、作者が亡くなった1648年(フェルデイナンド三世の時)に和平が実現したことは作者の平和への祈りが叶えられたのであろうか。原作はドイツ語であるが、Philip Pusey1799-1855)によって“Lord of our life”というタイトルで英訳され、Hymns Ancient and Modern(初版1861年)の補遺版(1868年)に発表され、これに対しJoseph Barnby1838-1896 英国人)が作曲したものである。曲名の“Cloisters”は、修道院の中庭を囲む回廊の意味である。

Joseph Barnbyは、英国各地の教会でオルガニストとして務め、又、合唱団の指揮者、音楽学校の校長などに就任するなど当時の英国楽壇に対する貢献は大で、晩年,Knightの称号を与えられた。オラトリオ、アンセム、サーヴィス、一般合唱曲、讃美歌等の作曲は無数にある。J. Barnby が作曲した "Sweet and Low"(Alfred Tennyson の作詩による男声四重唱の子守歌;1863)は日本でもしばしば歌われている。

30年戦争:1618-1648年、反宗教改革の進展期、ドイツ全土を戦場とした宗教戦争。ハプスブルグ家の弾圧に対するボヘミアプロテスタントの反乱に始まり、次第に政治的性格を強め、ヨーロッパ列強の介入する国際戦争に発展した。戦争のもたらした農村の荒廃、都市の疲弊は、ドイツの発展を著しく遅らせた。1648年締結されたウエストファリア条約によりドイツにおける皇帝権力(神聖ローマ皇帝)の失墜とカトリック、ルター派、改革派の同権を確認し、これによりドイツは各領邦国家が自立、領邦教会制度が確定した。オランダ、スイスはプロテスタント国家として独立した。(岩波:キリスト教辞典)

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