讃美歌第二編177番 「あなたも見ていたのか」
■受難の黒人霊歌として、特に深い宗教的感情を表現した、今私たちの一人一人に訴えかけてくるような、不思議な力のある歌詞である。
■2004年2月25日の「灰の水曜日」に全米で上映され、大きな感動と論議を巻き起こしたメル・ギブソン作品の映画「パッション The Passion of the Christ」を見たキリスト者の殆どは、恐らくこの讃美歌を思い起こしたに違いない。この映画は、我々一人一人がキリストが十字架につけられるのを側で傍観していた、否、映画の中でメル・ギブソンの手がイエスを十字架につける釘を打ったように、自分がイエスを十字架につけたのだということを実感して、この歌詞にあるように体が「ふるえてくる」のである。
■キリストの代わりに釈放されたバラバも,自然と足がゴルゴダの丘に向かい、遠くからキリストの十字架を最後まで見届けたと、スエーデンのノーベル賞作家P・ラーゲルクヴィストは小説『バラバ』で書いている。バラバは、その後、ペテロと思われる人物と出会い、キリスト者とはならなかったけれども、ローマでキリスト教徒と共に磔で死んだという。
■William
Barton が雑誌(The New England Magazine, Vol. 25, Issue 6, Feb. 1899)の連載記事の中で紹介したものが最初の印刷版であり、同じ年に他の記事と一緒に単行本(Old
Plantation Hymns)に収められた。訳詞の1−3番はバートン版に基づいている(ただし、旋律のほうには若干の違いがある)。旋律と4番の歌詞はJohn
Wesley Work, Folk Songs of the American Negro (1915)
に由来するものと思われる。他にもいくつかの歌詞が知られていて、中には最後にイエスの復活を歌った歌詞を含むものがある。なお、George
Pullen Jackson
という白人霊歌研究者は、白人霊歌を作り変えたものと言っているが、元歌とされるものはとはかなりの違いがある。
■以下はバートン版である。1,2,4行目が同じで、tremble
(身が震える)
という語を3回繰り返すなど、素朴な歌詞でありながら強いメッセージを伝えている。
WERE
YOU THERE?
1.
Were you there when they crucified my Lord? (Were you there?)
Were you there when they crucified my Lord?
0 sometimes it causes me to tremble! tremble! tremble!
Were you there when they crucified my Lord?
2.
Were you there when they nail'd him to the cross? (Were you there?)
Were you there when they nail'd him to the cross?
0 sometimes it causes me to tremble! tremble! tremble!
Were you there when they nail'd him to the cross?
3.
Were you there when they pierced him in the side? (Were you there?)
Were you there when they pierced him in the side?
0 sometimes it causes me to tremble! tremble! tremble!
Were you there when they pierced him in the side?
4.
Were you there when the sun refused to shine? (Were you there?)
Were you there when the sun refused to shine?
0 sometimes it causes me to tremble! tremble! tremble!
Were you there when the sun refused to shine?
背景のmidiは新たに作成しました。
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