牧師の窓
東方 敬信
去る五月二〇日に東京神学大学で神学校とキリスト教大学との伝道懇談会があったが、その席上で、山内真学長が教会の高齢化の傾向と献身者不足について問題提起をされました。特に後者は、日本におけるキリスト教伝道のために考えなければならない課題であると思いました。
しかし、他方で、私たちの社会は、文化情報がグローバル化して、キリスト教文化にまつわる話題が流入してくる時代になっています。全世界でなんと四〇〇〇万部も売れている超ベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』は、いまや映画ファンであれば知らない人はいないほど話題となっていると言えます。 世界中で物議を醸した原作は、いまやアメリカの流行作家になったダン・ブラウンによるものです。彼は、英語教師をしていたのですが、キリスト教信仰と科学の世界の葛藤にも関心を持っているようです。そして、美術史家であり画家であるダンの妻、ブリスはダンのよき協力者であり、彼と共に研究旅行をよくしているようです。最近はパリに行き、ルーブルを訪れました。そこでできた小説が『ダ・ヴィンチ・コード』でした。保守的なキリスト教徒が反対をしているのは、これまでも歴史の中で繰り返されてきた主イエスとマグダラのマリアの恋愛関係という設定です。しかし、そのことに目くじらを立てるのではなく、サスペンス小説として楽しむものでしょう。サスペンス好きの私は、ハラハラドキドキしながら、あっという間に読んでしまいました。さらに、考えていただきたいのは、この小説に出てくるイギリスの教会には沢山の観光客が訪れるので、その教会の牧師は、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた最後の晩餐の出来事について、何回も短い講演をしていることです。つまり、話題がキリスト教や教会になっているのです。これは伝道の好機でしょう。
さらに、『ユダの福音書』が発見されたという話題も行き交っています。四福音書よりも後代のものであり、聖書の叙述を修正するものではありませんが、一二弟子のうちのイスカリオテのユダに好意的な叙述があるというのです。ユダの存在とその行動の秘密について本格的に記したものに、カール・バルト著『イスカリオテのユダ』(新教新書)があります。新書判ですので、是非手にして欲しいものです。ちなみに希望者は、東方牧師までご連絡ください。これもキリスト者が世の人から話しかけられたり質問を受けたりするきっかけとなるものでしょう。
初めの話題に戻りますと、このような文化情報をきっかけに、あの人に聞いてみようと思われることもあると考えられますが、その対話のきっかけを大切にしてキリスト教信仰について語り合う相手になるには、日頃の生活態度が大切でしょう。聞き上手であり、相手のいうことに耳をしっかりと向けるような友情が必要でしょう。また日頃キリスト者であることを明らかにし、証をしていることも必要でしょう。献身者不足の時代だと言われますが、牧師になる訓練をうける献身の思いは、その信仰がその人の人間性の信頼にもなっていなければならないという意味では、すべてのキリスト者に共通の課題でしょう。
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